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チーム・バチスタの栄光

2008年、「チーム・バチスタ」製作委員会、海堂尊原作、斉藤ひろし+蒔田光治脚本、中村義洋監督作品。

※この作品は、比較的新作で、なおかつミステリですが、ここでは最後まで詳細にストーリーを記していますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

東城大学医学部付属病院の手術室で、心臓のバチスタ手術が行われていた。

心筋拡張症を直すため、心臓移植の代替医療として、肥大した心筋の一部を切除して縫合する間、一旦、心臓を止め、人工心肺装置でバックアップすると云う危険度の高い手術だったが、桐生恭一(吉川晃司)をリーダーとするチーム・バチスタと云うこのグループの成功率は高く、「チーム・バチスタの栄光」と称されていた。

タイトル

しかし、その日の手術では、縫合後、大動脈遮断解除しても、心臓は再鼓動しなかった。

不定愁訴外来、通称「愚痴外来」の女医、田口公子(竹内結子)は、その日も、お馴染みの常連客、市川留蔵(上田耕一)の愚痴をじっと聞いていた。

額に出来たおできの手術を頼んだだけなのに、仏ほくろまで切除されてしまったので、告訴してやると云う内容だった。

この患者は、異常に縁起をかつぐ人間らしく、次の診療日が「仏滅」だと知ると別の日にしてくれと申し出る始末。

市川が帰った後、有働教授(ベンガル)がみえたと、ベテラン看護婦の藤原真琴 (野際陽子)が声をかける。

院長から頼み事をされたと云う有働教授の話を聞いた田口は、明日から予定していた銀婚式の世界一周旅行を優先しなければ、奥さん可哀想でしょうとアドバイスする。

ところが、これがとんだ「やぶ蛇」で、有働教授は、自分の代わりに君がやってくれと申し出て来る。

田口は一瞬、「私が世界一周?」とぼけてしまう。

有働教授に代わって、院長室に行った田口だったが、高階院長(國村隼)は、一瞬、彼女の顔が分からなかった様子。

それでも、彼女でも良いか…と気乗りしなそうに、自分に言い聞かせる。

その直後、心臓第一外科の桐生が入って来て、成功率60%と云われる「バチスタ手術」の事を知らない様子の田口にちょっと呆れるが、それでも、これまで自分の手術では26連勝の成功率を誇っていたのだが、ここの所、立て続けに3例失敗していると説明する。

手術室で、患者の鼓動が戻って来ないときの恐怖を二度と味わいたくなく、この事件の解明を君にしてもらいたいと云うではないか。

院長も、近々「訳ありな手術」も控えているので…と、田口に期待するような素振り。

田口は、あまりにも突然で、なおかつ畑違いの自分にそんな事が出来るはずがないと断ろうとするが、あなたならきっとやってくれる。そんな気がして来たと桐生から握手を求めて来られると、力なく手を握り返すしかなかった。

やがて、過去の手術に関する資料がどっさり田口の元に届けられる。

ざっとそれを読んで、バチスタ手術の概略、チーム・バチスタと呼ばれるメンバーの基本情報を手に入れた田口は、過去の手術例のうち、子供に関してだけは、失敗例がない事に気づく。

気がつくと、看護婦の藤原は、亡くなった三人の名前の画数などを計算している。

田口は、取りあえず、バチスタメンバーの一人一人に会って、話を聞いてみる事にする。

まず会いに行ったのは、第一助手の垣谷雄次 (佐野史郎)

その部屋には、様々な模型が作られて飾られており、垣谷本人も、米粒に般若心経を書いている最中だった。

手先の練習になるのだと言う。

田口は、優秀だった前任者の看護婦の星野(野波麻帆)が抜けて、現在の大友に代わったケース27以後、死亡事故が続いているようだがと報告を読んだ感想を伝えると、垣谷も、確かに、大谷看護婦に代わってから、手術のリズムが狂って来たと認める。

田口は、報告書を書いている自分のパソコンに、垣谷の印象を「もぐら」と例えて記入する。

桐生は「鷲」の印象だった。

続いて会った第二助手の酒井(玉山鉄二)は、手術の失敗を一番喜んでいるのは垣谷ではないかと指摘する。

本来なら、自分がなるはずだった心臓外科の主任の立場に、いきなりアメリカから呼び寄せた桐生が抜擢されたのだから、最初から面白くなかったに違いないと云うのであった。

田口は、酒井の印象を「スピッツ」と記入する。

三番目に会った看護婦の大友直美(井川遥)は、いきなり、自分のせいだ。機械出しするタイミングがなかなか合わず、どんなに努力しても、前任者の星野さんにはかなわないと泣き出す。

感情的に大袈裟な大友の印象は「巻貝」と記入する。

続いて会ったのは。臨床工学技師羽場貴之(田口浩正)、人工心肺の説明をする、一見大人しそうな男だったが、会話中、突然かかって来た妻からの電話には、急に居丈高な口調で応対し出したので、二面性があるプチジギルとハイドであり、印象として「カメレオン」とする。

そんなある日、東城大学医学部付属病院に、ヘリで一人の黒人の子供が運び込まれて来る。

藤原看護婦の説明によると、西アフリカの少年兵で、重度の心筋拡張症だと判明したが、子供ながら反アメリカの立場にいるので、国境なき医師団のアメリカ側が治療をしようとせず、仕方がないので、うちが引き受ける事になったらしい。

田口は、アガピ・アルノイド(アミル)と云うこの子の手術こそ、院長が言っていた「訳ありの手術」だと云う事を知る。

麻酔担当の氷室(田中直樹)に声をかけるが、掛け持ちで忙しい彼は、昼食の代わりだと云って、自分が買って来たアイスを一本田口に手渡す。

ドリンクとアイスしか喉に通らないくらい過労状態で辛いと云う。

麻酔担当は奴隷のような状態だともぼやく彼は、でも次の手術は子供なので大丈夫だろう。桐生先生は子供の手術に強いからと言い残し、仕事現場に戻って行く。

そんな氷室の印象は「白ヤギ」とした。

最後に会ったのは、桐生の義弟で病理医の鳴海(池内博之)。

彼の仕事は、デジェネレージョンした部位の確認と説明するが、田口は、彼の右手の傷の方が気になった。

その視線に気づいたのか、鳴海は、自分も元は外科医だったが、手術中にミスをして手を怪我してしまい、それで、病理医に転向したのだと言いながら、田口先生は、今回の事例は殺人だと思っているでしょうとかまをかけて来る。

その印象は「コヨーテ」とパソコンに記入する事にする。

いよいよ、ケース31、アガピ君の手術が始まる。

田口も、手術に立ち会う事にするが、参加メンバーが一人多い事に気づく。

それは黒崎外科教授(平泉成)だった。

手術は開始され、いつも通り、桐生が鮮やかな手際で切除と縫合を完了、バックアップを止め、再鼓動を待つだけとなるが、なかなか戻らない。

手術室にはまたもや緊張が走るが、やがて、少年の心臓は動き始めた。

成功した事を知った大友看護婦はその場で泣き始める。

黒崎教授は「良くやった」と褒めると、すぐさま、病院内で待機していたマスコミ陣の前に向かい、手術が無事成功したと誇らし気に報告する。

その夜、田口は、趣味で参加しているソフトボールのピッチャーをやっていた。

そこに、突然乱入して来た男は、注意する病院関係者メンバーに名刺を差し出すと、何故か、メンバーたちは大人しく、彼をピンチヒッターとして認めると言い出す。

そして、田口の投じた自信玉を、あっさりホームランにして照明灯の一部を破壊してしまう。

翌日、田口の不定愁訴外来に、あのホームラン男がやって来て、レストランで隣のテーブルの料理が気になって仕方がないなどと訴え始める。

すぐに、藤原看護婦がやって来て、その人は患者ではないと田口に教える。

その男が差し出した名刺には、「厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長 白鳥圭輔」とあった。

白鳥(阿部寛)は、あなたを助けに来たと云う。

あなたがギブアップしたのでと続ける白鳥に、自分は、あの件には、問題はなかったと結論づけただけだがと田口は反論するが、白鳥は「あれは殺人だ。チーム・バチスタの中には殺人者がいるんですよ」と言い出す。

白鳥が、自分は、昔から古い付き合いの高階院長から呼ばれたと云うので、さっそく院長に電話を入れると、あいつの相手をする為には、自分の気持ちを守れと忠告される。

白鳥は、あんたの薄っぺらい報告書は読んだが、あれは単に、人の話をそのまま鵜呑みにして書いただけで、これから自分が、アクティブ・ヒアリングで本格的捜査を始めると言い出す。

まず、白鳥が向かったのは黒崎教授の所で、自分に人事権があると思っていたあなたにとって、高階院長が勝手に桐生をアメリカから呼び戻した事は面白くなかったはずだが、今では、すっかり桐生を自分が呼んだかのように振る舞っている、あなたは変わり身が早い人だと挑発的な言葉を投げかけると、明らかに黒崎は怒り出す。

部屋を後にした白鳥は、あの人は小さな人だと田口に告げる。

垣谷に対しても、手術が失敗するよう仕向けたのはあなたですね?と挑発すると、またもや怒り出したので、その表情を読んでいた白鳥は、容疑者リストから外したと云う。

大友看護婦と酒井は、一緒に看護士部屋に読んで話を聞く事にする。

大友は、みんなが私のせいじゃないと言うし、死亡事例に関しては特に反省はしていないと泣き出すと、白鳥はそれが嘘泣きだと見抜く。

さらに、あれこれ、横から口を挟んで来る酒井には、これまでの手術の様子をVTRで全部チェックしたが、あなたの技術は下手だったと云うと、怒った酒井は、白鳥に殴り掛かって来る。

昼食時、白鳥は、うどんをおかずにそばを食べると云う奇妙な食事をしていた。

本当に、手術のVTRを観たのかと聞く田口に、これから観ると答える白鳥。

さっきの言葉ははったりだったのだ。

田口は、やはりバチスタには特に問題がないと思うがと云うと、白鳥は、次は死人が出ると言い切る。

その白鳥は、これから自分はフロリダに行くが、次の手術までには戻って来ると約束する。

アガピが退院する事になり、又、黒崎教授がマスコミ相手に挨拶をしていた。

田口は、又、不定愁訴外来の業務に戻っていた。

そこへ、大友看護婦が、次のバチスタ手術の患者を連れて来る。

手術が成功したら、若い頃からの夢だったロックをやりたいのだと、小倉(山口良一)と云うその患者は小さな声で話し出す。

心臓が弱いので、大きな声が出せないのだった。

シャウトしたり、口から火を吹いたりしたいのだが、出来るでしょうかと云うので、出来ますよと田口がお愛想で言うと、では見てくれと言い出す。

結局、小倉の演奏を、田口は病院内の中庭で聞かされるはめになる。

小倉は、声こそ小さく、歌詞も「レモンティー」などと云う大人しい内容だったが、エレキの演奏などは巧かった。

田口は、「次は又、死人が出る」と云う白鳥の言葉を想い出し、複雑な心境で聞いていた。

その小倉には、手術先日から、背中に、局所麻酔薬を硬膜外腔に投与するエピドラのためのカテーテルが挿入されていた。

桐生は田口に、明日の手術にも立ち会ってくれますねと言葉をかけて来たので、田口は大丈夫ですよと、手を差し出すが、桐生はそれを無視して立ち去る。

その夜、ベッドに寝ていた小倉は急に苦しみ出す。

発作を起こしたと云うので、緊急手術を始める事にする。

その頃、白鳥は成田に戻って来たばかりだったが、田口から手術時間が早まった事を携帯で知らされると、緊急手術を止めろ!と怒鳴る。

ケース32が始まる。

桐生と共に、患者の心臓を見守った鳴海は、イージーだと、桐生の耳元でささやくが、心臓の縫合後、鼓動は復活しなかった。

桐生は、ショックを受けたように、人工心肺を止めて、胸を閉じてくれと命じるが、その時、手術室に白鳥が乱入して来る。

そして、オートプシー・イメージング(死亡時画像診断)を要求する。

通常、生きた患者対象に行う画像診断を死者に行えと云うので、前例がないMRI(核磁気共鳴画像法)担当医は拒否反応を示すが、これは私への挑戦だと憤る白鳥の迫力に負ける形で行われる。

小倉の死亡にショックを受けた田口は廊下にへたり込み、再鼓動が来なかったときの恐怖は、その場にいたものにしか分からないと言う先生の言葉の意味が今こそ分かりましたと、心配して近づいて来た桐生に告げる。

白鳥は、田口から、次の手術予定日を聞き出す。

16日、後四日だった。

その夜、外来診療を終えた田口は、院内のどこかから聞こえて来る物音に気付き、気になって音のする部屋に入ってみる。

そこには、カップ麺をすすりながら、これまでの手術VTRを全てチャックしている白鳥の姿があった。

白鳥は、近づいて来た田口に、アメリカのフロリダには心臓疾患専門病院があり、桐生と鳴海の二人はそこで働いていたのだと教える。

鳴海の右手の傷は、交通事故で多数のケガ人が出た大混乱の手術現場で、桐生が過て傷つけてしまったものだとも。

そんな白鳥は、田口から聞き取り調査を再開すると言い出す。

オセロゲームを手術室のバチスタチームになぞらえ、誰が患者を死に至らしめる立場にいたか考えてみろと云う。

田口は、自分に事件の調査を頼んだ桐生や鳴海には動機がないと、鷲とコヨーテを描いた駒をひっくり返し、鳴海はアメリカで桐生をしのぐ腕を持っていただけに、自分の外科医生命を断ち切られた桐生には恨みを持っているはずだと云う白鳥を唖然とさせる。

残る駒は、巻貝の大友看護婦と、もぐらの垣谷、そしてスピッツの酒井だった。

白鳥は、その三人が共謀すると犯行は可能だと愉快そうに云うが、リアリティはなかった。

田口は、桐生が手術中、目を閉じて、鳴海の所見を聞き入っていた事を白鳥に教えるが、それを聞いた白鳥も、云った本人も、何か重大な事に気づき黙り込む。

二人は、桐生と鳴海を呼び出す。

少し遅れて、高階院長も部屋にやって来る。

白鳥は、三人を前に、「犯人が分かった」と告げる。

まず、田口が、最初のバチスタ手術である「ケース1」の手術VTRを部屋上部と床に置かれたモニターに映し出す。

さらに「ケース26」、星野看護婦がいた時代の手術は、桐生の手際も際立っていた。

続いて、看護婦が大友に変わった「ケース27」のVTRでは、明らかに、手際が悪くなっていた。

そして「ケース29」…

桐生は、モニターの映像が出ていないが?と、いぶかし気に指摘する。

それを聞いていた高階院長や鳴海は凍り付く。

モニターには、映像が出ていたからである。

ただし、それは、上部のモニターではなく、床に置かれたモニターだけに…であった。

桐生は、覚悟を決めたかのように、自分の視野に欠損がある事をその場で告白する。

アメリカ時代から、目の下半分がほとんど見えなくなったのだと云う。

田口は、自分が握手をしようと差し出した手を桐生が無視したのは、見えなかったからだと気づく。

鳴海は、その桐生のハンデを補う為に、自分が観た手術中の心臓の所見を桐生の耳元で教え込んでいたのだ。

桐生は、天からの声を聞いた。まだやれると…と続ける。

自分の腕を信じて待っている患者が大勢いたので、自分の体調を理由に断る事が出来なかったのだと言い訳する。

高階院長が、そんな君が、なぜ今回の事件の調査を依頼したのかと聞くと、一連の手術の失敗は自分のせいではないかもしれないと云う一縷の望みがあり、もし原因が突き止められ、それを取り除けば、又、手術が出来るかもしれないと思っていたからだと桐生は答える。

横で聞いていた鳴海は、それでも、自分の目と桐生の腕を組み合わせれば、世界でもトップクラスの技術である事に違いないと反論するが、白鳥は、二人でようやく一人前に過ぎないと答える。

そして、白鳥は、鳴海こそ、桐生の気持ちを利用し、彼の腕を代用にして、自分が外科医を続けている気になる悪魔のような幻想を持っていたと喝破する。

それを聞いた鳴海は激怒し、白鳥に飛びかかろうとするが、桐生が必死に押さえる。

どんな理由があろうとも、あなたはメスを持つべきではなかったと桐生に言い残し、白鳥は部屋を後にする。

次の手術日、桐生は、垣谷に自分の立場を託したいとメンバーたちに告げる。

自分は、サポートに廻ると云うのだ。

垣谷は承諾するが、部屋の中に重苦しい緊張感が走る。

ケース33の手術が始まる。

垣谷は、手際よく仕事を進め、酒井や羽場は、呆然とその仕事を見つめていた。

縫合が無事終了し、再鼓動を待つが、なかなか心臓は動かない。

酒井は焦るが、垣谷はもう少し待てと命じる。

桐生が「来た!」と声を発し、心臓は再鼓動を開始する。

その直後、緊張感から解き放たれたように、垣谷は後ろに倒れ込もうとする。

垣谷が恥ずかしそうに、手を洗い直して来ると部屋を出て行こうとした時、白鳥が入って来る。

さらに、反対側の扉からは、高階院長とMRI担当医たちも。

白鳥は、小倉の死因が分かったと云うのだ。

MRI担当医は、白鳥から強要され念のため撮っておいたと云う、小倉の頭部の画像を全員に見せる。

全員凍り付く。

小倉の脳は、明らかに偏っていた。

白鳥は、脳幹部付近に何か圧力がかかったと指摘する。

その場にいた医師たちは、あれこれこの信じられない症状の原因を推理し合うが、白鳥は、硬膜外腔麻酔(エピドラ)によって脳に圧力をかけたのだと指摘する。

通常、気体化して使用する吸入麻酔剤を、液体のままエピドラのカテーテルに流し込むとどうなるか?

液体は体内で気化して、脳出血を起こしてしまう…と桐生が気づく。

全員の目は、麻酔担当の氷室に向けられたが、氷室は笑いながら、何を証拠に…と云う。

今日の手術では、その麻酔液を入れた注射器を、田口があらかじめすり替えておいたので患者が死ななかったのだが、そのすり替えた注射器を調べたら、吸入麻酔液が入っていたと、白鳥がその注射器を証拠物件として差し出す。

それを聞いていた氷室は、そうか、それで今日は死ななかったのかと呟く。

高階院長は、緊急事態発生を告げ、各員の行動を素早く支持する。

田口は、どうしてこんな事を…と氷室に聞こうとするが、白鳥は「もう、こいつは人間じゃない!」と吐き捨てる。

「自分にも、娯楽は必要でしょう?」そう氷室は答えていた。

鼓動が戻らなかったときの、手術室全体のパニック感を見ているのが溜らなく面白かったのだと云う。

誰も、遺体を解剖しようなどとは言い出さない。

確実に人を殺すには、医者の前で殺す事だとうれしそうに続ける氷室に、小倉の発作はあなたの仕業でしょうと田口が迫ると、アレルギーを起こす胃薬を飲ませたのだと告白する氷室。

子供の手術で死亡事故が起きなかったのは、うちの大学では、子供にはエピドラをしないからだとこともなげに答える氷室。

田口は、最初にあなたと話した時、気づいてあげるべきだったと後悔する。

白鳥は、君のおかげで、厚生省が病院管理に乗り出す法律を作りやすくなったと氷室に皮肉る。

その後、高階院長らは、マスコミ陣の前で、今回の不祥事を詫びる記者会見を行う。

田口は、外来信頼が出来ないほど落ち込んでいたが、心配して覗き込んで来た常連患者たちから、逆に励まされる。

後日、田口は桐生から礼を言われる。

自分はもう、メスを置く事にしたと云う。

その内、不定愁訴外来に自分も行くかもしれないと云う桐生に、田口は「お待ちしてます」と笑顔で答える。

田口は、又、ソフトボールをやっていたが、そこに、自分が打てば、逆転出来るだろうと云いながら、あの白鳥がユニフォームを着てバッターボックスに立とうとする。

頭に来た田口は、自らピッチャー交代を告げ、再び敵のピッチャーとしてマウンドに向かうと、豪速球で白鳥を空振りにしとめる。

白鳥の手から飛んだバットだけが、照明灯を又しても破壊する。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

医療ミステリなので専門用語も多く、一見難解そうだが、映画では、なるべく分かりやすく描いてあるので、特に理解出来ないと云うほどではなく楽しめる。

特に、原作では男だった田口を、映画では、いかにも頼りな気な女性にする事によって、観客の目線に近づけようとしている工夫が感じられる。

田口をワトソン役として、途中から登場して来る白鳥は、奇矯な行動や言動からして、古くからある「変わり者の名探偵パターンそのもの」

映像で観ると、かなりわざとらしくも感じるが、大衆娯楽としては、このくらいはっきりとしたキャラクターにしないと観客に受けないのかもしれない。

事件そのものは、やはり専門知識がないものにとっては推理しようがない部分があり、参加型ミステリとは云い難いが、それでも、二段構えの落ちには意外さがある。

それなりにまとまった娯楽ミステリと云った所か。

久々に重要な役所を演じている吉川晃司は、特に違和感もなく、それなりに巧みに演じていると思う。

「欽どこ」の「良い子悪い子普通の子」で、お茶の間の人気者だった山口良一の老け方には、一抹の寂しさも感じたが…