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戦争を知らない子供たち

1973年、東宝映画、北山修原案、大和屋竺+藤田敏八+古俣則男脚本、松本正志脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

武蔵野学園高校のある日の放課後、生徒たちが帰った後、居残りがいないか見回りをしていた飯島教頭(杉田俊也)は、教室内でキスをしている男女を見つけ、慌てて、担任の二条早苗(酒井和歌子)を教員室に呼びに行く。

二人が戻ってみると、教室内では、先ほどキスをしていたはずの森川博(沢井正延)が一人でギターを弾いているだけだった。

飯島教頭は激怒する。

タイトル

森川とキスをしていた荻野麗子(加藤小夜子)は、臆する事もなく教頭たちの目の前で、キスをしている所を再現してみせ、職員会議では、一人反対する二条先生の努力も空しく、この二人を停学謹慎処分にする事を決定する。

その後、停学になった博と一緒に、自衛隊の駐屯地横を歩いていた同級生島田一郎(島村美輝)は、謹慎の意味を知らない森川に何もしない事だと教えていた。

だったら、楽じゃないかと喜ぶ森川に、一郎は、反省もしなくちゃダメなんだ。風紀乱したんだから…と補足しながらも、どんな味だった?と好奇心をあらわにしたので、博は、麗子の奴が、この間見た映画の再現をしたいと云い出して…と、二人はふざけ合いながら道を走り出す。

すると、二人の刑事に呼び止められ、職質をかけられてしまう。

二人が、ただ散歩をしていただけだと説明すると、みだりに走っちゃいかんと説教されてしまう。

二人は、いつしか、側にある「自衛隊駐屯実力阻止」と看板が立てられた活動家が立てこもる櫓にやって来る。

そこには、二人の先輩に当る岡田(斉藤宜丈)と言う男がおり、二人が後輩である事を知ると、二条先生は元気かと聞いて来る。

何でも、一昨年、岡田たちがバリストをやった時、あの人が我々を説得しようと一人でやっつけたので、理論闘争をやってやり、その時、彼女は泣き出して、その一筋の涙が胸元に落ちたのを覚えているのだと話し、今度来る時は、差し入れでも持って来いと突き放す。

仕方がないので、博と一郎は、又元来た道を帰りかけるが、さっきの刑事が二人見張っていたので、つい二人は逃げようと走り出してしまった為、刑事に捕まってしまう。

警察所に連行された一郎を引き取りに父親、島田敏夫(原保美)がやって来るが、彼は戦時中、その当時上等兵だったここの署長の上官に当る将校だった事が分かり、二人は昔話に花を咲かせる。

その後、父親の運転する車で帰る事になった一郎は、パパは戦争で何人殺したのと問いかける。

敏夫は、13人と正直に答え、パパは死ぬまで犯罪者なのだよ。間違った戦争をしてしまったのだから…と答える。

「徐州 徐州と人馬は進む〜♩」と、ふざけて一郎が軍歌「麦と兵隊」を唄い出すと、敏夫は「戦争を知らない子供たち」を朗々と唄い始める。

あまりにその歌がうまいので、聞いていた一郎はしらけてしまう。

家に戻った一郎は、勉強部屋に中から鍵をかけてしまい、母親が何度呼びかけても出て来ようとしなくなる。

「ウッドストック」のロックを、一人ヘッドフォンで聴いていたのだ。

翌日、高校へ行った一郎は、博から呼び出だれ、麗子たちと一緒に学校を封鎖する、もう六人集まったと告げられる。

一郎はごめんだと言い、悪いのとキスしたなと博に同情する。

その夜、ゴーゴー喫茶で麗子たちグループは作戦会議を行い、一郎はゴーゴーを踊り、一人は慣れた所でタバコを吸っていた。

そこへやって来たのが、二条先生だと知り、お腹が痛いとの理由で授業をさぼっていた一郎は慌てるが、二条先生は森川と萩野さんと話したいと云って来る。

しかし、二人とも、もう店から姿を消していたので、一郎は先生を誘って踊り出す。

意外と、二条先生が踊りが巧かったので感心すると、踊りは好きよと云う。

一応は思わず、僕は先生が好きだと口に出してしまうが、店に鳴り響いていた「はしだのりひことクライマックス」の「花嫁」のメロディに打ち消されて、二条先生には聞こえなかったようだった。

二人で帰る道すがら、二人を励ますつもりだったんだけどと云う二条先生は、最近はこの辺も明るくなったけど、昔は怖いGIがいたのよなどと話す。

そんな二条先生に、ヨッパライが絡んで来たので、思わず、一郎は先生をかばう。

二条先生は礼を言うが、自分の腕を握った一郎が、そのまま顔を近づけようとして来たので、慌ててビンタをして身を振り払うと、生徒と二人で夜道を帰るなんて軽率だったわと言い、タクシーを拾って帰ってしまう。

一人取り残された一郎は、ビンタされた頬をさすりながら、もう一方の手を股間に持って行き、壁に身を委ねるが、側で犬が自分の方をじっと見ている事に気づくと、一郎は思わず涙が出て来るのだった。

一郎は、麗子たちと、高校内にバリケードを築く計画に参加する事になり、ヘルメットをかぶる。

彼らは、夜中のうちに屋上の時計台の部屋を占拠すると、翌朝、何も知らずに登校して来る生徒たちを屋上から観察し始める。

その内、運動場では、体育の授業が始まり、みんな体育教師の前で体操を始める。

ここぞとばかり、麗子は拡声器を使って「教室でキスするのがどうして悪いの?」と叫び出す。

しかし、体育教師は「無視しろ!」と命じ、体操を続ける生徒たちの中からは、「先天的欲情魔」などと野次が飛ばされる。

続いて、麗子の女友達が、「最近、この学校、全然面白くないんだけど」と応援メッセージをしゃべり出すが、その内、拡声器の調子がおかしくなる。

焼き芋屋から借りて来た拡声器だったせいかも知れない。

そうした屋上の犯行グループの様子を、飯島教頭はじっと監視していた。

バリケード内に持ち込んでいたトランジスタラジオから、「ピンクの戦車」がかかる中、女子たちは眠っていた。

一郎は、少年マガジンを読んでいた博に、何でも良いから演説してみろよとけしかけ、自分は「男おいどん」のページを破って紙飛行機を作ると、校庭に向かって飛ばす。

麗子たちの行動は、軟弱きわまりない右翼的行動と云う事で、学内の活動家たちからも攻撃のターゲットとなる。

夜、部屋の中で焚き火を囲み、みんなが寒さに震え上がっているとき、下から二条先生が階段を上って来るのが見える。

あなたたちの処分はまだ決まっていないが、私を人質にしなさい。このままでは、あなたたち、無視されて終わるわ。何でも話して頂戴と話しかけて来た二条先生だったが、その言葉にむかついた麗子は、彼女を部屋の中に引きずり入れると、服を引き裂き、男子にやれと命ずる。

しかし、一郎も博も何もで出来なかった。

そんな二人のふがいなさを見た女子たちは、「やってられないよ。こんなの」と捨て台詞を残し、一人去り、二人去り、その内、麗子と男子二人以外はみんないなくなってしまう。

帰りましょうと三人に話しかけた二条先生は、焚き火を見ながら、田舎の信州を思い出すと話す。

すると、一郎が「お母〜さ〜ん」と、味噌のテレビコマーシャルのまねをする。

一郎は二条先生に、今日は泣きませんでしたねと言い、きょとんとさせる。

その直後、室内に、黒ヘルメットで、タオルで顔を隠した一団が乱入して来て、二条先生以外の三人組を袋だたきにして逃げる。

二条先生は、そんな暴行グループを追って出て行ってしまった。

傷だらけになった麗子は「行こう、こんな所!」と男子たちに告げる。

麗子は、展示してある機関車に乗って手を振る。

一郎と博は、電車ごっこのまねをして進む。

いつの間にか、彼ら三人は、信州の雪山の中に来ていた。

一郎はギターを持っていた。

麗子は、馬に乗ったりして、博と仲睦まじく旅を続けていたが、一郎は、自分だけ邪魔者のような疎外感を感じていた。

麗子が運転手にキスさせてると云う条件で、トラックに乗せてもらい、降りる時、約束通り、目の前で、麗子が中年の運転手から濃厚なキスをされた事は、さすがに、男子二人は後ろめたかった。

食堂に入った時、博の所持金は675円しか残っていなかった。

思わず一郎は、俺、分かれようかと遠慮がちに二人に聞くが、二人はそんな事気にしていないと云う。

その時、店に、時代劇の娘に扮した客が入って来て「素うどん」を注文したので、三人は思わず、その一団の方を意識する。

時代劇の扮装をしていたのは、たまたま近くの小屋に来ていた「市川金五郎一座」と云う旅回りの芸人一座だったのである。

金がない三人は、好奇心も手伝い、その劇団に雇ってもらう事にする。

麗子はレコード係、一郎と博は照明係として採用され、市川金五郎(寄山弘)の舞台「瞼の母」の手伝いを始める。

男たちは風呂に一緒に入り、金五郎が湯船の湯で始めて白塗りを洗い落とした時、一郎と博は、その素顔を見る事が出来た。

その時、女湯の方から麗子の唄う声が響いて来たので、金五郎は感心する。

食事の時、座長市川金時(三上左京)の女房よね(寺島信子)は、露骨に、突然飛び込んで来た三人の学生を迷惑がるが、座長は、その内出て行くさと説得する。

座員たちは、昼間はチンドン屋のまねをして、村人たちに芝居の宣伝をする。

その後ろから付いて行った一郎は、無表情な娘役の市川加代子(大槻純子)と目が合ってしまう。

いつしか、三人は劇団の雑用にも慣れ始め、弘と一郎は、舞台のまねをしてチャンバラごっこなどに興じたりするようになる。

博と麗子は、もう恋人同士のように抱き合うようになっていた。

一郎は、舞台に腰掛けて、ギターなどを弾きながら唄っていたが、そんな一郎の姿を笑顔で見つめていたのは加代子だった。

そんな金五郎一座に、ある日、仁義を来て挨拶をする男が現れる。

同じ旅芸人の浜長こと、浜田山長太郎(三重街恒二)と云う男だった。

座長の金時が仁義を受けると、あっという間に、浜長の一座が乱入して来る。

浜長は、小屋に入って来るなり、麗子に色目を使い、尻を触って行く。

浜長一座の売りは、麻胡アケミ(水城リカ)のストリップだったが、そのアケミは、舞台が撥ねた後、うちのダーリンに麗子が色目を使ったと因縁をつけて来る。

ダーリンとは、浜長の事らしい。

しかし、気の強さでは負けない麗子は相手にしない。

その内、博が、こんな事をしていて何になる?と一郎に疑問をぶつけて来る。

しかし、一郎は何も考えず「珍しいじゃない。生活が」と答えるだけだった。

その内、アケミと麗子が取っ組み合いの喧嘩を始め、それを止めようと男たちが二人を引き離そうとしていて、舞台上になだれ込んで客に野次られると云う騒ぎが起きる。

博は、傷ついた麗子に絆創膏を貼ってやり、アケミの方は、一郎にちょっかいを出して来て、キスをする。

そうした二人の横を通り過ぎ、アケミの私物をわざと踏んで行ったのは加代子だった。

弘と一郎は、寝床の中で、「愛って何だろう?」と議論していた。

「勃起する事だよ」と一郎は言い切る。

そんな一郎が、もう夫婦の営みをやったかと聞くと、博はうんと答える。

「勃起する?」と一郎が聞くと、「身体を触るとね」と答える博。

面白くなくなったら、どこ行こうか?と聞く一郎。

「そりゃあ、田舎さ。お母〜さ〜ん」と、又、混ぜっ返す博。

「上と下の瞼を閉じても、誰の顔も浮かんで来ないよ」と、「瞼の母」を引用してしらける一郎。

そこに、酔っぱらった麗子がやって来て「喧嘩の手打ち式をやって来た」と云うなり、舞台の上に上がり込み、そのまま寝てしまう。

翌朝、博は、一人で帰ると言い出し小屋を出る。

途中まで送って来た一郎は、寂しがるよ、あいつと、麗子の事を気遣うが、それで良いのさ。分かれるのさ。ざまあみろと云い残し、博は一人、雪道を歩き始めたので、思わず、一郎は「バカ」と言い、振り向きもせず博も「バカ」と云い残して去って行く。

いつしか、麗子は「星野キララ」の芸名で、舞台でストリップをやるようになっていた。

その身体に照明を当てる一郎。

舞台の麗子は、ロック風にアレンジした「戦争を知らない子供たち」の曲で踊り出す。

しかし、そんな気丈に見える麗子でも、博が突然出て行った事にはショックを受けたらしく、愛していたのよ、博の事、最高に…と、泣きながら、一郎にすがりついて来て、「抱いて…」と迫る。

市川金五郎一座が土地を離れる事になり、小屋の看板がヌードショーの看板に付け替えられる。

浜長一座はまだ残る事になったのだ。

一郎と麗子も、浜長一座の手伝いとして残る事になる。

トラックに乗り込んだ金五郎は、見送る一郎について来ないかと誘うが、僕は根が続かないから…と、一郎は断る。

そんな一郎をじっと見つめる加代子もトラックに乗っていた。

「自衛隊が市川に駐屯する事になった」と新聞に載ったある日、一郎が照明器具を磨いていると、闇に沈んだ舞台上に、浜長が誰か時若い娘を連れて来て、「金が良いからこっちに乗り換えるそうだ」と云いながら、一郎に照明を当てるように命じる。

言われるがまま、一郎が舞台に照明を当てると、そこに立っていたのは、あの加代子だった。

一郎と離れがたく、ヌードダンサーに志願して来たのだと分かる。

浜長が、その場で脱いでみろと言い出したので、一郎はとても舞台を制止出来なくなり、吐き気を催すと、そのまま外に駆け出し、雪の中に嘔吐してしまう。

気がつくと、近くに加代子がたってじっと一郎を見つめているではないか。

小屋を抜けようと決心した一郎は、二日酔いで寝ていた麗子のバッグから、金を盗み出そうとしていたが、目覚めた麗子に邪魔されてしまう。

麗子は水を要求したので、持って来てやり、急に「キスしたいんだけど」と言い出した一郎。

麗子は素直に目をつぶるが、一郎はやっぱり止めとくと言う。

部屋を出た一郎を、布団の中にいた麗子は笑い始める。

一郎は、外に出て逃げ出していた。

しかし、加代子も付いて来ている事が分かる。

来るなよ!付いて来るなよ!と叫んでも、無言で加代子は一郎に付いて来る。

豪雪の中、どこまでも、どこまでも…

ようやく、都会に向かうトラックの荷台に乗せてもらった一郎は、一緒に乗って来た加代子に、知らないぞ、死んでも…と脅すが、加代子は、自分の母親もどさ回りの芸人で、蛇女をやっていたが、やがて芸者になり、慰安婦にまでなったと言い、自分は誰の子か分からないのだと打ち明ける。

そんな二人は、いつしか、雨の降りしきる中、あの地元の自衛隊の駐屯地側の活動家の砦にやって来ていた。

二人を見た岡田は、他に行く所がないからって、こんな頃に来るなと叱りつける。

他の活動家たちも、ここは戦場なんだぞと、場違いな侵入者に顔をしかめる。

一郎は、今度来る時には、何か差し入れを持って来いと云っていたでしょうと答える。

戦う気のない奴は出て行けと云われた一郎の横に立っていた加代子が、突然。、「寝て上げる。私」と言い出す。

「みんな、明日死ぬんでしょう?」

その言葉を呆然と聞く活動家たち。

泣き笑いのような表情になる。

その夜、砦で寝る事を許された一郎だったが、加代子が寝ている部屋から抜け出した彼は、一目散に外に飛び出して行く。

翌朝、一郎は、母校の近くにある工事現場のブルドーザーの下で目を覚ましていた。

そのまま、学校に向かい、教室のドアを開けた一郎は、ちょうど英語の授業中だった二条先生から、「島田君、お帰りなさい!良かったわね」と声をかけられ、先に学校生活に戻っていた博も、笑いかけて来る。

職員室では、今回の騒ぎを引き起こした一郎の処分を取り下げる為には、両親の同意書が必要だと、飯島教頭が主張していた。

そこに、近所で作業をしていた工事人がやって来て、不発弾が出て来たので、至急避難してくれと云う。

教師たちは、授業を取りやめ、生徒たちを一斉に避難させる事にするが、一人教室に残った一郎は、何事かを思い詰めているようで、博が逃げようと声をかけても返事もせず、じっと窓から外を睨みつけていた。

やがて、地面の側面から滑り落ちた不発弾が地面に落ちる。

原爆のイメージ映像。

一郎は、何を思ったか、その不発弾の方向へ走って行くと、爆弾に抱きつく。

県警の爆発物処理班やマスコミが、一斉に不発弾現場に殺到して来る。

爆発物処理班が、一郎に、その爆弾は28年前に落とされた一屯爆弾なので、速やかに逃げなさいと拡声器を使って説得し始めるが、一郎は、地面のぬかるんだドロを両耳に詰めて何も聞こえないようにする。

一郎は、市川金五郎一座でチンドン屋をした時の事を思い出していた。

機動隊員たちが、一郎に近づこうとすると、一郎はすかさず、近くに落ちていたハンマーを振りかざし、信管を叩くまねをして脅す。

二条先生は一郎の元へ向かおうとするが、それを男性教諭に止められたので、いつも私たち、生徒の本当の苦しみ分かってなかったじゃないですかと抗議する。

息子を説得するため呼び出された父親敏夫は、マスコミのインタビューに答え、息子はかねがね自衛隊の駐屯に反対していた。憎むべき戦争の爪痕から息子を救い出すため、あそこへ行きますと分かったような事を言う。

その頃、聞こえないはずの一郎の耳に、自分の名を呼ぶ女の声がする。

誰だと聞いても相手は答えない。

麗子だろうか?加代子だろうか?

その頃、麗子は、テレビで、一郎の爆弾立てこもり事件を報じている中、化粧台の前で口紅を指し、降りて来たアケミに代わって舞台に出ようとしていた。

アケミから、テレビで何をやっているのと聞かれても、観ていなかったと答える麗子。

一郎の耳には、だま女の笑い声が響いていた。

その時、父親敏夫 が姿を現し、一郎に呼びかけ始める。(俺のパパ)一郎は心で語る。

パパは思い出したんだよ。君と議論した時を。(俺のパパは偉い)

パパは、君の事を大人だと認めていたつもりだったが、どこかで君を、まだ子供扱いしていた所があったのかも知れない。(パパはすごい。パパはいつも笑っている)

パパも、君の仲間にしてくれないか?今日からパパも一緒に戦うんだ。良いんだね?良く決心してくれた。

そう云いながら敏夫が近づこうとすると、一郎は立ち上がってハンマーを振り上げてみせる。

夜になると、その側で野外コンサートが始まる。

その連中に迫る機動隊。

やがて、右翼の街宣車もやって来る。

岡田裕介が、何故かふらりと現場に姿を見せたり、襟川クロまでやって来て、早口で実況中継をし始める。

その内、その場に集まった若者たちが踊り始める。

一人の女が、上半身をはだけ、一郎の方へ向かおうとするのを機動隊が取り囲んで阻止する。

風船が、夜空に舞い上がる。

締め込み一つの裸の集団が「ええじゃないか」と踊り狂い始める。

大混乱になった責任を、かつての上官である島田敏夫に押し付けようとする警察署長。

怖いのは、あんたの息子のようなバカな奴だ。戦争にはロボットにならんといかん事もあるんだ!と説教された敏夫だったが、自らの無力感を知り、私には出来ないと泣き出していた。

夜が明け、うたた寝をしていた一郎の耳から、乾いた土がこぼれ落ちる。

目覚めた一郎が見たのは、高校の時計台の上からこちらを狙っている狙撃手の姿だった。

思わず一郎は立ち上がり、ハンマーを振り上げると信管を叩くが爆発しない。

もう一度叩いても、爆弾は爆発しなかった。

さらにもう一回…

一郎は、長髪を切り、制帽、学生服を着ると、革靴を履き、安心したような母親に見送られ家を出ると、何事もなかったかのように、前のように高校へ向かう。

そこに重なる、歌い上げるタイプの「戦争を知らない子供たち」の唄。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルからは想像もできないような不思議な展開だが、観終わってみると、まさしく70年代そのものを観たと云う印象が残る。

学生運動が終焉を迎え、目的意識を失った若者。

強くなった女の子たち、それに対し男の子たちは、今で言う「草食系男子」に近づいている。

性欲はあっても、自分から女を犯すような気迫も勇気もない。

父親の権力に抵抗感はあっても、自分と違って、父親が立派すぎるのだと逃げてしまう臆病さ。

学校に不満があるようで、何が不満なのかも良く分からない。

活動家たちの行動の意味も熱意も分からない。

まさしく「無気力・無関心・無責任」の「しらけ世代」そのままの姿がここにある。

ココリコ田中に、どこか風貌が似た島村美輝が、新人ながら、良く主人公を演じ切っている。

清純派のアイドルだった酒井和歌子も、上着を引き裂かれ、胸元の下着が見えると言った「汚れ役風」の役まで演じているのも珍しい。

それでも、奔放な荻野麗子を演じた加藤小夜子の迫力には勝てない。

特に美人と云うタイプでもないが、かと言って不器量でもなく、何となく男心をくすぐるような目力を持った新人女優である。

もう一人の目力女優は、加代子を演じた大槻純子。

こちらは、純日本風の顔立ちながら、口数が少ないその佇まいは、麗子とは又違った怖さと魅力を併せ持っている。

彼女が赤いケープを頭からかぶった姿は、雪山に良く映え、画面を引き締める役目も果たしている。

クライマックスの混沌としたばか騒ぎも、いかにも70年代らしい。

今や、東映の社長となった岡田裕介氏が、当時はアイドル的にゲスト出演させられている所にも注目したい。

若い頃の襟川クロなどの姿も珍しい。

又、TVの人気特撮ドラマ「怪奇大作戦」の的矢所長役で有名だった原保美が登場しているのも嬉しい。

無名の新人が主役を演じたと云う事で、興行的には厳しかったに違いないこの作品だが、はしだのりひことシューベルツの音楽が流れたり、「戦争を知らない子供たち」の編曲バージョンなどが出て来るなど、当時を懐かしむ、又は70年代を知る手がかりとしては絶好の作品だと思う。