TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

唐獅子株式会社

1983年、東映東京、小林信彦原作、内藤誠+桂千穂脚本、曽根中生監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

刑務所から出て来た受刑者を、待っていたらしき車の運転者から「兄貴、お勤め、ご苦労様でした」と挨拶され、車に乗り込む。

その車が立ち去った後、続いて出て来たダーク荒巻(横山やすし)は、同じようにやって来た車から、「兄貴、お勤めご苦労様でした」と挨拶され、その車に乗せられるが、車の中にいたのは、ダークに顔を傷つけられたライバル組織島田組の子分たちだった。

後部座席で銃を突きつけられたダークは、仕返しのため、このままセメント詰めにして海に放り込んでやると言われたので、暴れるが、すぐに紐で運転席のシートに後ろ向きの姿で縛り付けられてしまう。

やがて、渋滞に引っかかってしまったので、やるのなら、さっさとやってもらおう、あの救急車に付いて行けとダークが言うので、島田組の面々も喜び、「ランナウェイ」を唄いながら、車の間を通過する救急車の後を付いて走り始める。

所が、十字路で、救急車通過後、すぐに横から進入して来たトラックと島田組の車は衝突。

大破した車の中から、紐が切れたダークは、島田組の面々が傷ついて動けなくなったのを幸いに、何とか逃げ出す事に成功する。

ダークは、車が走り抜ける車道のど真ん中を堂々と歩いて、とある建物の場所までやって来る。

そこには「唐獅子株式会社」と書かれてあった。

入り口に立っていたダークに、書籍を抱えて二階から降りて来た男がぶつかって、持っていた書籍を落としてしまう。

その男こそ、先ほど、刑務所で、ダークとは別の男を出迎えて車に乗せた原田(桑名正博)だった。

「須磨組はどこだ?」と云うダークに、怪訝そうにここだと答える原田。

二階に上がってみると、馬六(荒勢)ら子分たちがダークを侵入者扱いで威嚇し始めるが、そこに出て来た黒田哲夫(伊東四朗)を見つけたダークが声をかけると、はじめて、黒田もダークを認め、原田に、刑務所から一体誰を連れて来たんだと問いただす。

その時、三階から下りて来たのが、原田が刑務所から連れて来た男(島田紳助)、間違えたと知った組員たちは、にやついていたその男を、窓から放り投げてしまう。

改めて、三年振りの再会を喜んで抱き合うダークと黒田。

三階の黒田の部屋に落ち着いたダークは、この組の様変わりはどうした事かと聞きただす。

傍らで、恐縮して立っていた原田は、面接で入って来た新人なので、人間違えした無礼は許してくれと謝る黒田。

須磨親分の意向で、慣れん雑誌を作り始めたので…と弁解しながら、黒田は、胃が悪いのか、薬を飲み始める。

「唐獅子通信」と云う雑誌を発刊したのだと言う。

その後、黒田に付いて行くと、波止場で、褌一つの裸姿で港に佇む、須磨組組長須磨義輝(丹波哲郎)が、雑誌用のグラビア撮影している現場を見る事になる。

黒田が云うには、先月号では、ニューヨークの世界貿易センタービル前で撮影し、その前はモナコ海岸だったと云う。

あまりに予算を使いすぎるので、今回、国内で撮影と云う事にしたら、えらく須磨の機嫌が悪くなったらしい。

黒田と共に須磨の邸宅に連れて行かれたダークは、大きなテーブルに座らせられ、「ダークよ、ご苦労だった」と、ワインを乾杯しながら、須磨からねぎらいの言葉を受ける。

そこに須磨のペットのブルドッグが入って来るが、それを見た須磨は、俺に吠えたので、指を詰めてやったとダークに云う。

そこに、料理を運んで来たのは、須磨の長男須磨安輝 (木村一八)だった。

須磨は、この安輝はヤクザを継ごうとはせず、フランス料理のコックを目指すと云うので、これでは後継者がいなくなると嘆く。

さらに、須磨は、肝心なのは「人の輪」、その考えを、他の組の者や一般人にも伝える為に雑誌を作ったのだと云う。

そして、須磨は黒田に向かい、「来月の新年号向けの俳句が出来た。元旦や 今年もあるぞ 大晦日」とくだらない句を披露する。

さらにもう一句、「初日の出 心に誓う 島荒らし」

「柏手を 打って 出入りの策を練る」

「脱獄に 使えぬものか 奴だこ」

それを聞いていたダークは、自分もムショの中で考えた句があると云い出し、

「起きてみつ 寝てみつ 部屋の広さかな」と披露し、リアリズム俳句やと自慢する。

その時、須磨の娘の輝子(斉藤ゆう子)が部屋にやって来て、これからのビジネスは、ビデオ時代なので、ソフトウェアで稼がないとと須磨に言い聞かせる。

デザートは、アイスクリームの周囲に垂らした酒に、安輝が火をつけてサービスしてくれる。

その夜、妻ひろ子(佳那晃子)にやらせている店にダークを連れて来た黒田は、親分は,恒久平和を願うため、ハジキを全部売ってしまい、それを全部買い取ったのが島田組だと云う。

オリンピック前までは、広島は血の海だった…と黒田は懐かしそうに、古き良き時代を懐かしむ。

ハジキを売って得た金は、ビデオ会社の出資金にしてしまったのだとも。

その後、一人で法善寺横町にやって来たサングラス姿のダーク、一軒のお好み焼きの店の前に立つと、そこには「サングラス もんもん入りはお断り」と貼り紙が貼ってあったが、それを無視して店の中に入る。

それを見た女店員が、ダークと言い争いを始めた様子なのを、店の奥から気づいた店長(岡本信人)は、包丁を後ろ手に隠して女店員とダークに近づく。

女店員は、店長の妻夕子(風祭ゆき)だったからだ。

しかし、その夕子は、ダークの事を兄だと夫に紹介したので、早合点したと気づいた店長は、思わず、後ろ手に持っていた包丁を床に落としてしまう。

それに気づいたダークはかちんと来る。

妹の亭主たる人間が、自分を兄だと知らず、ただのヤクザ扱いしようとした事に気づいたからだ。

今まで、喧嘩を我慢して来たダークは、こんな店、二度と来るか!と捨て台詞をはいたので、怒った夕子が、お好み焼きをダークの顔にぶつけ、やがて、店内にいた客たちも巻き込み、店はお好み焼き投げの嵐になる。

その後、床屋に入ったダークを待ち受けていたのは、白髪染めのため同じ店に先に来ていた栗林警部補(杉浦直樹)だった。

15年来の付き合いだった栗林は、ダークとの三年半振りの再会を喜ぶように近づいて来て、島田組も須磨組も潰してやるとにらみをきかす。

いよいよ、唐獅子ビデオの初作品の撮影が開始される。

監督は、原田だったが、芸大出身の彼は、芸術作品のようにスローを使おうとするので、単なるエロビデオに凝るなと切れた黒田は、すぐに男優の水戸コージ(明石家さんま)を呼ぶと、その場で女優に襲いかからせる。

ところが、女優が「止めて!」と叫ぶのを、側で聞いていたダークは、女が嫌がっているのに止めんか!と水戸コージを殴り始めたので現場は台無しになる。

そんな黒田とダークは、再び須磨邸に呼び出される。

部屋の入り口付近にブルドッグがにらみをきかせていたので、入るのを躊躇っていた二人だったが、そいつは安輝に噛み付いたので、剥製にしてやったのだと云う。

その安輝が、アイスを運んで来たので、又、全員、火を自分で付けようとライターを付けてアイスに近づけるが、安輝は「それは、ただのアイスだよ」と行って部屋を出て行く。

今日、二人を呼んだのは、新しく「唐獅子芸能社」を始めたいと言い出す。

側にいた輝子は、これからはマネージメント産業と音楽著作権だと、又生意気な事を助言する。

「第二の百恵を見つけた」と、須磨は黒田とダークに一枚の写真を見せる。

輝子は、その子を、もうすぐ開かれる坂津音楽祭に出場させるのだと云う。

須磨が差し出したタバコをうっかり受け取ってしまったダークは、彼女をスターにすると云う依頼を引き受けたと解釈されてしまう。

早速、その夜、その伊吹ひとみ(甲斐智枝美)と云う歌手が唄っている店に出向いたダークは、須磨が作詞したと云うド演歌を唄うひとみを見て、これはダメだとがっかりする。

しかし、そこに須磨本人がやって来て嬉しそうに拍手をするので、呆れてしまう。

ダークは、ひとみを、原田が同級生に頼んで部屋を借りたと云う天満中央病院に連れて来るが、気がつくと、その部屋の窓から云える向いの建物は、栗林がいる天満警察署だった。

案の定、栗林は、警察署の窓から、こちらの様子をうかがっている。

そんな部屋で、原田から歌のレッスンを受けろとダークがひとみに命じると、すでにプロ歌手として活躍していたひとみは、こんな素人のレッスンなんか受けられないと不機嫌になる。

芸大出の原田が見事なピアノの腕を披露すると、側で聞いていたダークも感心するが、鍵盤を叩く原田の左手の小指がない事息づく。

原田は悪びれる風でもなく、学生時代、ポーカーで負けてしまい、指を失ったので、音楽家になる夢は諦めたのだと打ち明ける。

ひとみは、そんな原田の指示に従おうとはせず、ふてくされたように反抗的な態度を改めないので、ついダークは顔を殴りつけてしまう。

ひとみの悲鳴を聞きつけて、部屋の前に集まった医者(出光元)や看護婦(坂本スミ子)たちは、どうしようかと右往左往するだけ。

そこに、栗林が乗り込んで来て、婦女暴行の現行犯と云う事で、ダークと原田、ひとみの三人を隣の警察署に連行する。

もちろん、誤解だった事がすぐに分かって放免された三人だったが、こんな仕事は到底自分には出来ないと悟ったダークは、須磨に、ひとみは歌手には向いていないので、この仕事から降ろさせてくれと頼みに行く。

しかし、須磨は、お前は黒田に15年仕えて来たんだろう?その黒田が苦労しているんやと説得されると、それ以上固辞する事は出来なかった。

さらに、たまには、安輝を外に連れて行ってやってくれと頼まれたダークは、安輝や馬六らを引き連れて、遊園地のゴーカートに乗りに行く。

安輝は大喜びだったが、ダークや馬六たちは、ゴーカートに酔ってへろへろの状態になる。

その時、場内から、突然大音響が聞こえて来たので、頭に響くと文句を言いに行ったダークらは、そこで演奏していたロックと云うものをはじめて知り、ダークは何かを発見したように上機嫌になる。

さっそく病院の一室に戻って来たダークは、原田にロックを作曲しろと命ずる。

振り付けはダークが担当する事になり、早速、新曲をひとみは練習し始める。

夜、ひろ子の店に出向いたダークは、黒田は最近、借金を返すため、あちこち飛び回っているのだと聞かされる。

その日、その店には栗林も飲みに来ており、いよいよ須磨組も東京進出か?とかまをかけて来る。

そんな栗林が帰った後、ひろ子は、東京に向かうひとみを、島田組から守ってくれとダークに頼む。

そこに、唐獅子通信社にいた黒田から電話が入り、東京進出を島田組に感づかれたと聞かされるダーク。

東京に向かうひとみを空港まで見張っていた栗林は、ダークたちの姿がないので安心するが、実は、ひとみが持ち込んだ二つの大きなトランクの中に、原田とダークが入り込んでいたのだった。

ひとみは、だんだん、栗林の人柄を見直すようになっていた。

無事、栗林や島田組の目をかいくぐって、東京に到着したダークと原田は、これからは、東京の音楽関係者やテレビ関係者に会わなければ行けないので、くれぐれも言葉遣いには気をつけるように互いに戒め合う。

テレビ局などに、ヤクザと云う正体がばれたら、即座に出入り禁止になるからだった。

さっそく、ひとみを連れて、スーパースターコンテストと云う番組の審査委員長である首沢(なぎら健壱)と、テレビプロデューサーの小森(深水三章)に会い、売り込みをかけるダークは、二人に20万円づつ現金を手渡す。

しかし、首沢は、審査員は五名おり、そのそれぞれにレコード会社の紐が付いていると云い出したので、全員買収するには100万は必要と云う事で、それを聞いたダークは、さすがに切れかける。

その時、思わず地が出たダークの言葉遣いや、原田の小指がない事に気づいた小森の方は、受け取った封筒を返し、止めときましょうと席を立ちかける。

この機を逃してはならじと、かねてより考えていた原田を、ホモの首沢に向かわせようとしたダークだったが、意外な事に、首沢が気に入ったのはダークの方だった。

首沢は、ダークと踊りたいと言い出す。

その時、その店に入って来た大阪のドンを呼ばれる男こそ、須磨組の天敵とも云うべきライバル組織島田組の会長で、かつてダークに顔を切られた島田清太郎(遠藤太津朗)だった。

その子分に、首沢がぶつかって因縁をつけられたので、義侠心から、ダークがその子分を殴りつける。

それを見ていた島田は、命あって何よりだなぁと、ダークと対峙する。

しかし、その様子を見守っていた原田が、兄貴、我慢してくれ!コンテスト出れんようになる!と声をかける。

それを聞き、肝を据えたダークは、かけていた眼鏡をひとみに投げ渡す。

ダークは、その場で、島田組の子分たちから袋だたきにされる。

ひとみは、それを止めようと近づこうとするが、それを小森が必死にかかわり合いになるなと云わんばかりに止める。

しかし、それを振り切ったひとみは、倒れたダークに抱きつき、原田諸共、島田組に別の部屋に連れて行かれる。

部屋の中に入れられたダーク、ひとみ、原田の三人はガムテープで口を塞がれ、入り口の外から、やくざたちに銃で狙いすまされる。

筒型の容器を頭からかぶせられたダークをからかうように打つ子分。

しかし、それを見ていた店長は、店の中でこんな事は止めてくれと島田に泣きつく。

島田は、それなら、ダークを大阪に送って来いと命じて、その場を納める。

室内に閉じ込められた三人は、何とかここから脱出しようと、原田、ひとみ、と肩車をして行き、一番上にダークが登って、何とか天井から脱出出来ないかと手を伸ばすが、そこにあった吸水管を掴んで外してしまい、大量の水が室内にこぼれ落ちる始末。

しかし、諦めきれないダークは、水が部屋に充満して来たら、上に浮かんで天井の排水溝から逃げられるとみんなを励ます。

水が部屋を満たし始める中、ダークはひとみに、練習をしておけと命ずる。

今ではすっかり素直になったひとみは、ぐしょ濡れになりながらも、水の中で歌の練習を始める。

部屋の外では、子分の一人石倉(安岡力也)が、見張り番として、近くの部屋の中で夜を明かしていたが、いつしか、部屋の扉から溢れ出て来た水に気づき、不思議に思って扉を開けると、大量の水と一緒に、ダーク、ひとみ、原田の三人が流れ出て来る。

ぐしょ濡れ状態の三人は、そのまま歌舞伎町方面に逃げて、テレビ局を目指す。

テレビ局では、もう「第七回スーパースターコンテスト」が終わろうとしており、ディレクターの山口(小野ヤスシ)が、やって来ないひとみを諦め、そろそろ審査を始めないかと、首沢に相談していた。

しかし、首沢は、一度聞いてみたい気がするんだよね、山ちゃんなどと言い、未練を見せる。

司会者(夏木ゆたか)が、そろそろコンテストの締めに入ろうとしたそのとき、ダークと原田に連れられたドロドロ状態のひとみがスタジオに入って来る。

さすがにその姿を見た山口は、このままの状態でのテレビ出演はそうも…と難色を示すが、小森が、演出だと思えば奇抜なんじゃないかと助け舟を出し、急遽、そのままの状態でコンテストのラストを締める事になる。

カメラに向かったダークは「伊吹ひとみの唐獅子ロックを宜しく!」と挨拶をする。

ひとみがステージで唄い始めた時、スタジオ内に、追って来た島田組の面々の姿が目に入ったダークは、原田にひとみを託すと、自分は、スタジオの二階から外に抜け出し、島田組を撮影所内におびき出す。

スタジオ内に停めてあったトラックに乗り込んだダークを見失った島田組の面々は、スタッフからエキストラと間違われ、出発を待っていたロケバスに乗せられ、そのまま発車してしまう。

収録スタジオにも戻って来たダークは、そこで、見事に優勝を果たしたひとみの姿を見る。

喜んだダーク、ひとみ、原田の三人は、雨の中で踊り出す。

その後、旅館に先に戻って来たダークは、料理を運んでいた仲居さんを部屋に引きづり込むと、抱こうとするが逃げられる。

部屋のテーブルの下に潜り込んだダークは「ひとみ〜!一回で良いから、抱かせてくれ〜!」と叫んでいた。

そこに戻って来たひとみは、惚れたらあかん!しかし、親分、良い女を見つけよったな。指詰めよか…、逃げよか…、諦めようかな〜…、女がなんぼのもんじゃい!と泣き始めたダークの姿を、呆然と立ちすくんで聞いてしまう。

そして、溜らなくなったひとみはダークに抱きつくと「本当に好き!抱いて!」と迫るが、ダークはそれを振り払って、部屋から飛び出して行く。

そこに原田が戻って来て、「どないしたんや?」と聞くと、今度はひとみはその原田にむしゃぶりつき、「私寂しい。原田さん!」と迫って来る。

しかし、原田も又、「俺はブルドッグになりたくない」と、冷たくひとみを遠ざけるのだった。

新幹線で坂津に戻って来たひとみたちは、車の中で「ダークさんのおかげよ」と云いながら、後部座席の隣に座っていたダークに抱きつく。

それを、助手席で苦々しそうに見ていたのは黒田だった。

親父に挨拶に行かないと…と云う黒田だったが、路上でダークと二人きりになると、黒田はいきなりダークを殴りつける。

ヤクザの掟として、親分の女に手を出す事は御法度のはずだと云うのだ。

ダークは誤解だ!と言い、俺は親分の代わりに3年半も臭い飯を食うて来たやないかと弁解する。

しかし、黒田は、坂津音楽祭が終わったら、きちりオトシマエ付けるからなとダークに告げる。

ひとみは、須磨から買ってもらった、8000万のマンションに戻るが、黒田の兄貴の前で何であんな事をしたと聞くダークに、良い気味よ、女の気持が分からないんだからと不機嫌な様子のひとみ。

その時、島田組の子分の一人御影池(阿藤海)らが、TV局の人間を騙って、部屋に進入して来る。

玄関口に出た原田がそれを阻止している間に、ダークはひとみを連れて外に逃げ出す。

途中でタクシーを奪い、それに乗って追って来る御影池たちから、台車に乗り、必死に逃げるダークとひとみ。

一方、島田組の動きを知った栗林警部補は、覆面パトで、御影池たちの後を追跡していた。

ダークとひとみはクルーザーに乗り、海に逃げるが、御影池たちもクルーザーに乗って追いかけて来る。

御影池たちが、発砲し始めたので、取りあえず、ひとみを陸に逃がすダーク。

ちょうど、栗林が到着した事を発見したからだった。

栗林は、近くに停めてあったトラックの運転席にひとみを乗せると、それを運転して逃げようとするが、自分が撃たれてしまう。

ダークは、相手のクルーザーの側面に、自らのクルーザーを激突させる。

後日、栗林の自宅を訪れたダークとひとみは、家の中で大勢の子供の姿を見る。

妻に先立たれた栗林は、子だくさんだったのだ。

怪我をして休んでいた栗林は、食事の支度もままならないようだったので、ひとみが台所に立って料理を作り始める。

その姿を見た幼い女の子は、「お母ちゃんみたい」と呟く。

坂津音楽祭に出場したひとみの晴れ姿に感心する黒田に、ダークは、この仕事は辛いと漏らす。

山本譲二から花束を受け取るひとみ。

音楽祭の後、楽屋のひとみに花束を持って黒田とダークが訪ねて来る。

栗林も、子供たちを連れてやって来る。

栗林は、子供がひとみさんに会いたいと云うのでと言い訳するが、子供から、お父さんが会いたがっていたんじゃないかと反論され照れる。

そんな栗林にダークは、ひとみ、あんたの事、好きやと云うとりましたわ、あいつは、原田や俺みたいなダニと付き合うような奴やないと言い、黒田もその通りやと同調する。

その言葉を聞いたひとみは驚いてダークを見るが、栗林は嬉しそうだった。

誰もいない舞台にやって来たダークは黒田に、兄貴、すんませんと謝るが、黒田は、元気出せや。親分には私から良いように言っておくから、あんじょうやったやないか。惚れた女を他人に譲るのはきついもんやと慰める。

その後、黒田からひとみが男に惚れたと聞かされた須磨は驚くが、相手が大阪府警の栗林警部補だと聞くと、それ以上文句は云えないようだった。

安輝がコーヒーを運んで来て、黒田が帰った後、須磨は「栗林か〜…、栗林か~…」と呟きながら、悔し紛れに、テーブ上の缶ビールを空手チョップで潰し始めるのだった。

エンドクレジット

黒田、原田、そしてダークは、今日も、肩で風を切って町を歩く。

停まっていた車の列で、前に進めなくなると、ダークは文句を言いながら、ボンネットの上に登るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

小林信彦の小説の映画化。

小林氏自身が、この作品の事をあまり上手くいかなかったとどこかで書いていたような記憶があったので、あまり期待せず見始めたが、案に相違して、そこそこ楽しめるプログラムピクチャーにはなっていると感じた。

低予算なりに、アイデアが詰め込まれている感じがするのだ。

ただ、一つ一つのアイデアが生きているかと云うと、確かにあまり成功しているとは云いがたい。

せっかく叩き台としてのアイデアはあるのに、それを十分練って、熟成しきらないまま発表してしまった感じ。

この辺が、時間的制約がある日本のプログラムピクチャーの限界なのかも知れない。

何と言っても気になるのが、主役ダーク荒巻を演じる横山やっさんの身体の小ささ。

少しも強そうに見えない。

口だけは威勢がいいが、見た目はひょろひょろで、強面と云う面構えでもない。

いかにも強そうな外見がないと、後半の恋の悩みとのギャップが巧く生きて来ないような気がするのだ。

伊吹ひとみ役の甲斐智枝美にしても、どうもミスキャストっぽく、「魅力は胸のでかさだけ」とダークが云うような体型でもないし、歌はからきしダメと云う程下手でもない。

最初の演歌を歌っているシーンから、それなりに唄えているので、原田との特訓によって、歌がぐんぐん巧くなると云う快感や驚きがないのだ。

原田役の桑名正博にしても同様で、メインに近い脇役としては、印象に残るような、残らないような、何とも微妙な感じと云うしかない。

一番、安心して観ていられたのは、伊東四朗演ずる黒田と杉浦直樹演ずる栗林警部補くらいだろうか?

お好み焼きを使ったパイ投げシーンとか、台車や乳母車、ペンキ屋の梯子などの小道具を使った古典的なスラップスティックな追いかけシーンなども中途半端で、古典映画ファンが、あぁなるほど、あのアイデアね…と、ちょっと気づくくらいのレベルにしかなっていない。

中でも、ちょっと笑えたのは、島田に捕まり、閉じ込められた部屋の中で、水攻め状態になっている中でも、歌の練習をし始めるひとみのばかばかしさ。

もう少し、こう云うシーンのばかばかしさを、徹底して描いてくれたら、もっと腹から笑える映画になっていたであろうにと悔やまれる。

…と書いて来ると、いかにも失敗作のような印象を受けるかも知れないが、普通に観ている分には、それほど退屈する事もなく、今となっては、懐かし要素も手伝って、なかなか面白く観れるのだ。

丹波哲郎のおとぼけ演技とか、ちょい役の島田紳助や明石家さんま、横山やすしの実子で、当時まだ子供だった木村一八、懐かしの吉本新喜劇の面々の姿などをかいま見れるだけでもありがたい気がする。

そう云えば、メガネっ子キャラの斉藤ゆう子などと云う吉本タレントもいたな〜、今頃どうしているんだろう?などと、妙な感慨に耽らせてくれたりする。

冒頭部分にタイトルが一切なく、最後にタイトルが流れるスタイルは、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)などで知られているが、この作品の方が先である。


【送料無料】 DVD/邦画/唐獅子株式会社/DSTD-2618

【送料無料】 DVD/邦画/唐獅子株式会社/DSTD-2618
価格:4,860円(税込、送料込)

横山やすし/唐獅子株式会社

横山やすし/唐獅子株式会社
価格:4,860円(税込、送料別)