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伊豆の踊り子('63)

1963年、日活、川端康成原作、井手俊郎脚本、西河克己脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

白黒画面の大学構内。

スピーカーから、教授の声が流れている。

教室で、哲学の授業を終えた教授(宇野重吉)は、帰り際、一人の男子学生(浜田光夫)から声をかけられる。

以前相談していた結婚を決意したので、仲人になってくれと云うのだった。

学生の目線を追うと、公衆電話の影で、ユミと呼ばれた一人の少女(吉永小百合)がこちらをうかがっている。

何をしている子かと聞くと、少女歌劇をやっていたんだけど、今後は本格的なバレエをやりたいらしいと学生は答える。

それを聞いた教授は、まぶしそうに少女を見やると「踊り子か…」と呟く。

その言葉を聞いた学生は、彼女の職業を蔑まれたのかと勘違いしてか、一瞬、不安がるが、教授は誤解だとすぐに謝る。

それを聞いて安心した学生は、少女の元に駆け寄り、二人して楽しそうに、その場で話し始める。そんな二人の様子を見ながら、教授はもう一度呟いた。「踊り子か…」と。

画面は、カラーの木々の絵になる。

あれは、もう40年も昔になるか、私は20歳、高等学校の制帽をかぶり、伊豆に旅行に出て四日目だった。

九十九折りを過ぎた所で、道ばたに休んでいた旅芸人一座と書生(高橋英樹)はすれ違う。

その中にいた、一人の少女薫(吉永小百合)は、白い子犬と戯れていた。

間もなく行くと、書生は、「物乞い、旅芸人入るべからず」と書かれた立て札が立った村の側でタバコを吸いながら休憩をしていたが、その横を、先ほどの芸人たちが通り過ぎて行く。

子供達は、その一座に気づくと、一斉に近づいて来て、彼らをからかい始めるが、先ほどの少女薫は子供好きなようで、怒るどころか、子供たちに声をかけられ、むしろ嬉しそうだった。

その後、山道を進んでいた書生は、雨に降られたので、目についた一軒の茶屋に飛び込むが、そこには、先ほどの旅芸人一行が先に休んでいた。

書生と目が合った薫は、慌てたように、タバコ盆を差し出すが、書生に気づいた店の老婆(小峰千代子)が、彼を奥に招き入れる。

いろりのある奥の部屋に入った書生は、そこにいた老人を見て驚くが、老婆は、中風で動けないので許してくれと謝る。

どこまで行くのかと聞く老婆に、湯ヶ野を廻って、下田へ出ようと思っていると書生が答えると、旦那さん、女にだけは気をつけなさいよと教え、あの人達はどこに泊るのでしょう?と、雨がやんだので店を出て行った旅芸人の事を書生が何気なく聞くと、今夜の宛てなどございますものかと吐き捨てるように老婆は答えるのだった。

書生が、50銭も心付けを置いたのに恐縮した老婆は、書生の鞄を持って、途中まで送って来ようとしたが、老人を一人にしてはいけないからと言い聞かせ、書生は老婆に茶店に戻るよう説得するのだった。

その後、急ぎ足でトンネルを抜けた書生は、そこで、先に歩いていた先ほどの芸人一座と出会う。

薫は、道ばたに咲いていた花を摘もうとしていた。

並んで歩き始めた書生に、薫は急に、島にも学生さん来ますよと独り言のように言い出す。

一座の中の男栄吉(大坂志郎)が、大島の事だと説明する。

さらに、学生さん、たくさん波浮の港に来ますもの…と薫が云うので、それは夏の事でしょう?と書生が問いかけると、薫は困ったように「冬も…」と答える。

修善寺に着いて、旅芸人と同じ宿に入った書生に、薫はお茶を運んで来るが、畳に置こうとしてこぼしてしまう。

それを見ていた芸人一座のお芳(浪花千栄子)は、色気づいたんだよ、あの子とからかう。

その後、栄吉が、書生を別の宿に案内する。

書生は、二階の部屋から、下の道を帰りかけた栄吉に向かい、金を包んだ紙包みを、果物でも買って下さい。二階から失礼と云いながら放るが、それを受け取った栄吉は、こんな事をなさっちゃいけませんと投げ返す。

しかし、書生が、又投げて来たので、栄吉はちょっと複雑な表情で押し頂いて帰る。

その夜、修善寺の町を練り歩いていた芸人一座の側を、一人の酌婦が、料理人らしき男から追いかけられていた。

その後、とある宿の宴会場に現れたその酌婦お咲(南田洋子)は、土地の有力者である鶴の屋の主人(深見泰三)と、その息子で人夫頭の若旦那(郷鍈治)を相手に酌をし始める。

若旦那は、外から聞こえて来る三味線の音で、旅芸人が来ている事に気づき、呼び寄せる事にする。

その頃、その宿の隣に泊っていた書生は、風呂で出会った反物の行商人(井上昭文)相手に碁を打っていた。

行商人は、隣から聞こえて来る宴会騒ぎの音を聞きながら、湯ヶ野もガラが悪くなってきましたねと話す。

若旦那は、薫に酒の酌をさせていた。

その様子を、どじょうすくいをしながら、油断なく見ていたのは栄吉。

一方、行商人は、湯ヶ島で去年、16、7の娘を見つけたんだが、婆さんとの商談が上手く行かず、手に入れそこなったなどと下びた話を続けながら碁を打っていたが、書生が碁に集中しておらず、隣の宿の様子ばかり気にしている事に気づき出す。

そこに、宿の女中が、行商人の売りものである反物をもらうよ、夕べの約束だろう?と部屋に入って来たので、慌てた行商人は、その女中をなだめながら、外に出て行く。

一人になった書生は、窓から隣を眺めると、若旦那に顎を触られている薫の姿を目にしてしまう。

その夜、書生は、宿に忍び込んで来た若旦那に、薫が襲われ、それを助けようとした自分が、若旦那に川に突き落とされる悪夢にうなされ目を覚ます。

起きた書生は、窓から隣の宿を見るのだった。

共同浴場で栄吉と一緒になるが、そこから見える露天風呂から薫が全裸のまま飛び出して来て、こちらに手を振っているので、栄吉は、まだ子供なんですと恐縮する。

風呂上がりも、薫は村の子供たちと遊んでいたので、お芳が叱るが、薫はその後も、子供たちと鬼ごっこをして遊び続けていた。

やがて、とある一軒家に迷い込んだ薫は、そこで寝ていた一人の少女を発見する。

子供達は、彼女の事を良く知っているようで、間もなく死ぬのだと平然と云う。

お清(十朱幸代)と呼ばれたその少女も、自分の死を受け止めているらしく、子供達と、自分が死んだら、棺桶について来てねと指切りをして約束している。

そこに、お咲がやって来て、卵をお清の枕元に置くが、客がここまでやって来て、病人のお清を抱いて行ったと聞き、男達の浅ましさ、欲望に怒り出す。

さらに、横で呆然と立ち尽くしている薫に気づいたお咲は、何、見てんだよ!いずれはお前さんもこうなるんだよ!と怒鳴りつける。

堪らなくなった薫はその場を逃げ出し宿に掛け戻るが、ちょうどそこに来ていた書生に気づくと、何も言わず、中に逃げ込む。

その夜も、芸人一座は町を廻り、宿の二階からおひねりなどを投げられていた。

夕食をとっていた書生の元に、又、碁を指しに行商人がやって来るが、隣の宿から芸人たちに音が聞こえて来ると、後ほどにしましょうと帰りかける。

書生が、芸人一座が隣に来ると、そちらにばかり気を引かれ、碁に集中しない事に気づいたからだ。

部屋から帰りしな、行商人は、親指と人差し指を丸め、ふんだくられないように気をつけなさいよ。旅芸人なんて、ろくな奴いないんだからと忠告する。

気にせず、書生が、外を通りかかった芸人一座を呼ぶと、食事の後片付けをして帰って行く女中お時(安田千永子)もからかうのだった。

部屋に上って来た薫は、碁盤を見つけると、やりましょうかと誘うが、お芳がここで風呂を頂けるそうだからと呼びに来たので、渋々浴場へ向かう。

しかし、逸る気持ちを抑えきれず、雀の行水のようにさっさとお湯につかっただけで戻って来た薫に気づいた書生は、自分も勉強をしていた振りをする。

薫が、始めた碁とは「五目並べ」の事だった。

書生は苦笑しながらも、その相手をし始め、碁盤に集中している薫の頭に飾られたかんざしに気を取られる。

その後、風呂から上がって来たお芳は、今朝から機嫌が悪かったくせにと薫をからかいながら、明日下田に発つと告げるので、書生も同行する約束をする。

しかし、薫は、又不機嫌そうに、窓辺に佇んだ後、百合達と共に、自分たちの宿へ帰って行く。

翌朝、書生が、一座の宿に迎えに行くと、まだ全員寝込んでおり、栄吉が云うには、夕べお座敷がかかったので、一日延ばす事にした。自分たちの下田での定宿は甲州屋なので、そこでお会いしましょうと恐縮する。

さらに、勝手なお願いですが、もし良かったら、明後日は子供の四十九日なので、もう一日待ってもらって拝んで行って下さいと書生に頭を下げる。

その後、書生と共に、近くの河原に散歩に出向いた栄吉は、自分には兄が甲府のおり、立派にやっているが、自分は昔、東京で新派をやっていたと語り始める。

さらに、薫は自分の妹であり、女房の実母があのお芳、もう一人の百合は、大島で雇ったのだと一座の説明をする。

女房は、旅先で早産してしまい、生まれていた子供は、一週間生きて死んでしまった。前の子供も死なせてしまったと、つらい過去を打ち明ける。

宿に戻った書生は、馴染み客から鳥鍋をごちそうになっている所なので、ご一緒に行きませんかと、お芳に誘われる。

行ってみると、鳥屋(桂小金治)だと云う男が、薫や百合達に鳥鍋を食べさせていた。

食事を先に終えた薫は、鳥屋に「水戸黄門」の講談本を読んでくれとねだるが、その途中でお座敷がかかってしまい、渋々その場を離れて行く。

隣の宿で、栄吉が国定忠次を演じ始めたのを見ながら、鳥屋は「新派の役者が落ちぶれたもんだね…」とつぶやき、その場に残って鳥鍋を食べていたお芳からたしなめられる。

しかし、そのお芳も、同じように思っているらしかったが、その内、隣の宿の宴会場で踊っている薫の姿を、窓から凝視している書生の姿に気づく。

座敷から戻って来た薫は、すでに鳥屋が帰った事を知ると、「水戸黄門」の続きがどうなったか知りたかったのでがっかりする。

それで、気をきかせたつもりの書生が、その本の続きを読んでやりはじめると、「明日も早いから」とお芳が止めさせる。

残念がりながらも、帰る薫は書生に、カツドウに連れて行って下さいましねとねだるのだった。

その後、共同浴場に浸かっていた書生は、岩の反対側に入っていた女中お時達が自分の噂をしている事に気づき、出るに出られなくなる。

そこにやって来たのは、お咲だった。

女中達は、酌婦のお咲たちを嫌っているらしく、汚いと侮蔑の言葉をかけるが、自分が汚いのなら、この辺の男達は皆汚いとお咲は言い返す。

そんなお咲にお時は、お清が今日の夕方死んだ事を教える。まだ17だったと云うのだ。

お時たちが、お前さんは酌婦の手本だとお咲をからかったので、風呂の中でつかみ合いの喧嘩が始まってしまう。

翌早朝、お清の棺桶は、誰にも知られないように、ひっそりと運び出されていた。

もちろん、約束をした子供達がいるはずもない。

そんな棺桶が通り過ぎた後、書生は旅立っていた。

側の竹林の中では、一升瓶の酒を飲みながら、やけになったお咲が、抱きに来た男(土方弘)から金を要求していた。

書生は、見晴らしの良い所に差し掛かった所で、大島が見えると、旅芸人一座に教える。

栄吉は、煙を噴いているのは三原山だと教え、ちょっと険しいが、近道をしませんかと誘う。

若い書生と薫は、ぐんぐん一座を置いて先に山に登り、上で一休みをする。

すっかり薫は、書生が、このまま自分たちと一緒に大島まで付いて来ると思い込んでいる様子。

島では普段何をやっているのかと書生がきくと、ぶどう畑で遊んだとか、薫は、何故か甲府の話しかしなかった。

幼い頃、弟を背負って学校に行っていたけれど、その弟も死んでしまったのだと薫は云う。

その後、薫は水を探しに行き、呼ばれたので書生もその小川に行ってみると、すでに追いついていたお芳が、女の後だと気持ち悪いでしょうし、手を入れると水が濁るので、先にお飲みなさいと待っていた。

休憩中、薫が、櫛を下田で新しく買うのと話していると、それを聞いた書生が、その櫛の方が良いのにと口を挟む。

そうした二人の様子も、お芳はじっと見つめていた。

下り坂に差し掛かった時、薫は、道ばたに立てかけてあった竹束の一本を引き抜いて来て、書生に渡そうとする。

杖にしろと云うつもりだったらしいが、栄吉は、そんな太いのは、すぐに盗んだとばれてしまうではないか、返して来いと叱る。

ところが、薫は、今度は細いのを抜いて持って来たので、さすがに、書生は笑って、杖を作る。

やがて一行は下田に到着し、全員甲州屋に落ち着く。

またもや、栄吉は書生を別の宿に案内する。

その宿の部屋に入った書生は、側の部屋に入って来る客の会話を聞く。

どうやら、学士になる息子を送りに来た母親のようで、あなたの身体は自分一人のものではありませんよと、息子に期待する親の本音が透けて見える言葉だった。

それを聞いた書生は、今の自分の事に重ねて聞いてしまう。

甲州屋では、薫が折り鶴を織りながら、カツドウ屋へ誘いに来るはずの書生を待ちわびていた。

やがて、書生がやって来たのを二階の窓から見つけると、嬉しそうに、織り上がった鶴を書生に投げて来る。

カツドウに行くので金をくれと手を伸ばした薫に、お芳は、座敷がかかったので支度しろと言い出す。

落胆した薫は部屋を飛び出して行く。

栄吉も不思議がり、今日は休みのはずだったのでは?カツドウくらい行かせてやれよと云うが、それに対し、お芳は、旅芸人が学生に惚れてもしようがない。あの学生が良い人だと云う事は分かるけど、世の中には、良い人が何百人いようが、どうしようもない事があると言い聞かせる。

その言葉を、階段を降りかけていた薫もじっと聞いていた。

やがて、外で待っていた書生に近づくと、今日は行けなくなったと断る。

書生は驚きながらも、ちょっと皆さんに挨拶して来ようと甲州屋に入ろうとするが、良いのと薫は止めようとする。

しかし、二階に上がった書生は、栄吉たちに、明日の一番の船で東京に帰る事にしたと知らせる。

その頃、薫は、同じ旅芸人仲間の子供が病気で寝込んでいる部屋で看病しながら、じっと耐えていた。

その夜、薫たちは、お座敷でいつものように踊っていた。

書生の方は、宿で、薫からもらった折り鶴をじっと見つめた後、握りつぶし、棚に置いた学帽をじっと見て、勉強を始めるのだった。

翌朝、栄吉だけが港に見送りに来ていた。

薫も起きて、港に向かいかけていたが、途中、船員ら酔客たちに取り囲まれてしまう。

栄吉は、書生に「KAOL」と云う銘柄のタバコを土産として差し出す。

一方、窮地に陥った薫を救ったのは、たまたま当地に遊びに来ていた鶴の屋のの若旦那だった。

酔客達を追い払うと、港に向かっていたらしい薫に気づき、せいぜい別れを惜しんで来るんだなと声をかける。

港に駆けつけた薫は、すでに小舟に乗って書生が定期船に乗り込もうとしている所を見つける。

汽笛が鳴り、定期船が出航する。

薫は夢中でハンカチを振っていた。

甲板にいた書生は、その姿に気づき、こちらも必死に帽子を振り返す。

薫はいつしか泣いており、書生は何度も「お〜い!と呼びかけるが、その声はもう届かない。

時代は、現在の白黒画像に戻り、あの男子学生が「お願いですよ、絶対ですよ」と頭を下げると、ユミと云う少女と一緒に立ち去って行く。

その後ろ姿を、教授はじっと見つめていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

田中絹代版(1933)、美空ひばり版(1954)、鰐淵晴子版(1960)に次ぐ、四度目の映画化作品。

冒頭とラストに、書生の現代の姿を登場させて、過去の方をカラーで表現しているいる所が異色であるが、内容は、その後の映画版の基本になったような形になっている。

まず、お清と云う、この後、二木てるみ(内藤洋子版)、石川さゆり(山口百恵版)に受け継がれる、原作にはない映画オリジナルのキャラクターが登場している事。

本作では、新人だった十朱幸代が演じている。

若くして死ぬ、この薄幸の酌婦の印象は強烈で、南田洋子演じる同じ酌婦のお咲の姿と共に、観客の脳裏に焼き付く。

この酌婦達の描写だけではなく、当時、女性の地位が低かった事を強調する描写は随所に登場する。

下田に向かう山中、水を飲みに小川に近づいた書生に、お芳が、「女が先に手を入れたら気持ち悪いでしょうし…」と、男に先に飲むようにと勧めている所。

鳥鍋を一緒にどうぞと連れて行かれた書生に、先に食べていた女たちが、「女が箸を入れた鍋は気持ち悪いでしょうが、笑い話の種とお思いになって…」などとへりくだって勧める所など、当時の事を知らないと、見過ごしてしまいがちなセリフだが、戦前はこうしたものだったのである。

女性は身分が低いだけではなく、不浄のものと云う考え方があったのだ。

まだ子供で無邪気な踊り子とは対照的に、お芳やお咲が、当時の大人の女性の哀れさを表現している。

特に、お芳を演じている浪花千栄子の巧みさには、改めて舌を巻いてしまう。

吉永小百合が演じる薫の姿が、無垢で無邪気であればあるほど、その後の彼女に待ち受けている暗い運命が暗示されており、観るものの胸を締め付ける。

吉永小百合も又、子供のように愛らしく笑っている姿、恥じらう姿、落ち込んで哀しむ姿、そして、現代娘のユミと、いくつもの少女の姿を巧みに演じ分けている。

ちなみに、露天風呂から全裸のままの薫が、書生に向かって手を振るシーンは、本作では忠実に描かれている。(もちろん、別人の吹き替えではあるが)

お清同様、原作には登場しない若旦那役の郷鍈治の存在も、ちょっと印象に残る。

見ようによっては、薫の将来の暗示(若旦那の玉の輿に乗るのでは?)とも取れるからだ。

主演の吉永小百合のイメージだけで語られそうなこの作品だが、なかなか細部にわたって工夫が凝らされていると感じられる秀作になっている。