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グラン・トリノ

2009年、アメリカ映画、ニック・シェンク脚本、クリント・イーストウッド監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

教会では、ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)の妻、ドロシーの葬儀が行われていた。

長男ミッチ(ブライアン・ヘイリー)と、次男スティーブ(ブライアン・ホウ)の家族も参列していたが、へそだしルックでケイタイを手放さない孫娘や、冒涜的な祈りの言葉を吐くなど、ウォルトが呆れるような孫ばかりだった。

ミッチとスティーブ兄弟の方にしても、子供の頃からいつも機嫌が悪く、今でも50年代風の生き方しか出来ない父親に対しては良い思い出がなかったので、独り身になった父親を今度誰が面倒を見るかで、二人とも憂鬱になっていた。

葬儀の後、ウォルトの家で親族たちが集まり食事界が行われるが、地下室では、孫たちが、ウォルトがかつて行っていた朝鮮戦争の時の写真を物珍しそうに眺めていた。

そこに、座る椅子が足りなくなったので、ウォルト自らが取りに降りて来る。

地下室にいた孫たちはあわてて、大人しくソファーに座っているまねをする。

へそだしルックだったアシュリー(ドリーマ・ウォーカー)は、父親スティーブから、椅子を運ぶのを手伝ってやれと命じられ膨れっ面になる。

ウォルトは、次々と弔問に訪れる客たちを観て、ネズミ共が、一対何人来るんだ…と一人、悪態をついていた。

その後、ガレージに向かったウォルトは、そこで煙草を吹かしていたアシュリーと出会う。

アシュリーは、慌ててタバコを捨てると、ガレージの中に置いてあったビンテージカーを褒め始める。

それは、1972年製グラン・トリノと云う車だった。

アシュリーは、露骨にもの欲しそうな目つきになり、おじいちゃんが死んだら、この車はどうなるの?と聞くが、ウォルトは返事もせず、その場につばを吐いて立ち去る。

そんなウォルトの元にやって来たのは、まだ若いヤノヴィッチ神父(クリストファー・カーリー)だった。

亡くなったドロシーから、生前、主人に今度も目をかけ、懺悔させて欲しいと頼まれていたのだと云う。

しかし、ウォルトは、神学校を出たてのような男に話す事など何もないと追い返してしまう。

息子夫婦が、トヨタに乗って帰るのを観たウォルトは、最近は何でも外国産だと不機嫌になる。

彼は長年、フォード社で働いていたのだった。

葬儀が終わり、一人暮らしが始まったウォルトは、左隣の中国人家族が、庭先で鶏の首を斬っているのを見て、野蛮な奴らだと顔をしかめる。

最近、この町には白人がほとんどいなくなり、アフリカ系やアジア系の住民が大半になりつつあった。

とうとう、右隣もアジア人家族が住むようになる。

そのアジア人家族には、タオ・ロー(ビー・ヴァン)と云う青年がおり、いつも女性のように大人し過ぎると、親族中から心配されていたのだが、まだ、そんな内情はウォルトが知るはずもなかった。

玄関前のポーチに置かれた安楽椅子に腰掛けたウォルトは、右隣の家の同じ位置に座っているアジア人老婆が、ちらちらこちらを睨みつけている所から、自分を嫌っていることに気づく。

確かに、その老婆は、なぜ白人がまだ住んでいるのかと家族に愚痴をこぼしていた。

そんなウィルトは、又、あの神父がやって来たので、27歳の童貞野郎なんかの説教なんか聞きたくないと追い返す。

ある日、タオが一人で歩いていると、近所に住むメキシコ人の不良たちが乗った車が横をのろのろと並走し始め、あれこれからかって来るが、タオは一切無視していた。

その様子に気づいたのが、近くの車の中にチンピラ仲間「スパイダー」と一緒に乗っていた、タオの従兄弟だった。

チンピラ従兄弟は、自分たちの車をメキシコ人たちの車に近づけると、マシンガンを取り出して見せ、追い払ってやる。

その後、従兄弟はタオに、俺たちの仲間になれと誘いかけるが、タオは無視し続ける。

従兄弟とその仲間たちは、その後、タオに家までやって来て、庭いじりをしていたタオにしつこく声をかけて来るが、玄関前にいた姉のスー(アーニー・ハー)も彼らを嫌っており、弟に話しかけるなと注意する。

しかし、あまりにしつこく言いよって来るので、とうとう「何をすれば良いのだ?」とタオが聞くと、「隣の車を頂くんだ」と言う。

あのウォルトのグラン・トリノのことであった。

ある日、ウォルトが酒場のカウンターで飲んでいると、又、ヤノヴィッチ神父がやって来て話がしたいと云う。

ウォルトがテーブルに誘うと、神父がコーラを頼んだので、ここは飲み屋だぞと注意し、結局、神父はジントニックを注文し、生と死の話をしましょうと言い出す。

ウォルトは観念したかのように、朝鮮で3年過ごしたと自分の過去を話し始める。

17才の朝鮮人をシャベルで殴り殺したこともあり、そうした記憶は一生頭に焼き付いているとも。

その後、生還して家族を持ったと、短く話を締めくくるウォルト。

その夜、ベッドで寝ていたウォルトは、ガレージで物音がするのに気づくと、猟銃を取り出し、ガレージに向かう。

中に入ったウィルトは注意深く相手を捜したが、一瞬の隙を突かれ、突如出現した相手が振り回したチェーンで顔を殴られ逃げられてしまう。

翌日、珍しく息子から電話をもらったウォルトだったが、どうやら相手の真の目的が、NBLのチケットをウォルトの友達から手に入れられないかと言うことらしかったので、呆れて電話を切ってしまう。

一方、グラン・トリノを盗むことに失敗したタオは、又、家にやって来たスパーダーたちに捕まり、もう一度やれと、ウォルトの家の前庭の方に押し込まれそうになるが、そこには銃をかまえたウィルトが待ち構えており、家の芝生から出て行けと恫喝する。

タオをその場に残し逃げ出したスパイダー一味を見ていた姉のスーが、ウォルトに感謝して来る。

ウォルトは不機嫌そうに、家の芝生に入るなと念を押しただけで家に入るが、翌日、玄関を開けたウォルトは、玄関前の階段に並べられた大量の花や食事を見て驚く。

見知らぬ東洋人の女たちが、次々に運んで来るではないか。

隣の庭に立っていたスーが、昨日の感謝の気持よ。あなたは私たちにとって英雄よと、唖然としているウィルトに告げる。

スーと一緒にいたタオも、恥ずかしそうに謝罪するが、ウォルトは、今度庭に入ったら命はないからなと釘を刺すだけだった。

その後、階段に置かれていたプレゼント類を全て面倒くさそうにゴミ箱に捨てていたウォルトの元にやって来たのは、又、ヤノヴィッチ神父だった。

彼は、昨日の騒ぎを聞きつけたらしく、モン族の若者たちのことは警察に知らせた方が良いと忠告に来たのだった。

さらに、先日聞いた朝鮮戦争での心の重荷を少し軽くした方が良いのではないか?神に打ち明ければ安らぎが与えられると懺悔を勧めるが、ウォルトは、上官に命令をされたのでもなく、当時、自分の判断でやってしまったことの方が怖いんだと云うだけだった。

その後、ウォルトは、馴染みのイタリア系店主の理髪店で、悪態を付き合っていた。

その日、スーは、白人の男友達トレイと談笑しながら道を歩いていたが、そこに、アフリカ系の不良たちが立ちふさがり、男友達を脅して去らせる。

そんな様子に気づいたのが、たまたま車で近くを通りかかったウォルト、一人残されたスーに、不良たちが絡んでいる所だった。

スーは、気丈にも、一人で不良たちの相手をしていたが、さすがに見かねたウォルトは、車をスーの前に止める。

ウォルトは、最初、指で拳銃の形を作り、不良たちを追い払おうとするが、相手にされなかったので、本当の拳銃を取り出して突きつけ、不良たちを追い払う。

さらに、近くで立ち去りかねていたトレイも腰抜けと罵倒して追っ払うと、スーを車に乗せると家まで送って行く。

車の中で、スーは、自分たちモン族は、ラオス、タイ、中国などに接する地域に住む民族だったが、ベトナム戦争の時、アメリカ側に加担した為、戦後、地元にいられなくなり、アメリカに移住してきたのだと説明する。

話を聞いているうちに、スーはユーモアも勇気もある賢い女性であることにウォルトは気づく。

スーは、さらに、弟タオは何かに迷っている。男は順応性がないからと打ち明ける。

帰宅後、いつものように、玄関前のポーチで安楽椅子に腰掛けたウォルトは、隣の同じ場所で同じように座ってこちらを睨んでいるスーの祖母が、自分を嫌っているなと呟きながら、新聞の運勢欄などを読むと、そこには「運命の岐路に立つ」と書いてあった。

その時、向いの家の老婆が、車から荷物を取り出そうとして落とし、なかなか持ち上げられないで難儀しているのを、隣のタオが進んで手伝っている所を目撃したウォルトは、彼もなかなか見込みがある青年なんだと気づく。

ある日、自分の誕生日祝いに思いがけなくもやって来た息子夫婦に驚いたウォルトだったが、彼らが自分に、老人ホームへの入居を勧めたり、マジックハンドや老人向けの文字の大きな電話をプレゼントしてくれたので又不機嫌になり、二人を追い返してしまう。

その後、ウォルトは、ポーチでいつものように安楽椅子に腰掛け、缶ビールを飲んでいたが、買いだめしておいたビールが切れたので、又不機嫌になる。

その時、隣からスーがやって来て、家でバーベキューをやっているので来ないかと誘うが、ウォルトは丁重に断る。

しかし、ウォルトの気性を見抜いていたスーは、ビールもあるわよとなおもしつこく食い下がる。

折れたウォルトは、今日は誕生日だから、一人で飯を食うよりはマシかと負け惜しみを言い、取りあえずビールだけでもごちそうになろうかと隣の家に向かうことにする。

しかし、親族だけでやっていたパーティに入って来たウォルトを観た老婆は怒り出す。

スーは、そんな祖母をなだめ、ウォルトは、近づいて来た幼児の頭をなでてやったが、その行為をとがめるように、その場にいた親族たちがウォルトを睨みつける。

スーが云うには、勝手に人の頭を触るのはモン族ではタブーとされており、人の目をまっすぐ見るのもダメなのだそうだった。

しかし、その直後、自分をじっと見つめている痩せた男に気づき、怪訝に思ったウォルトだったが、あれは、祈祷師のコア・クーで、あなたの心が読みたいそうなのだが…とスーから教わる。

ウォルトは、そんなものには興味がなかったので気軽に承知したが、彼に近づいたコア・クーが、誰もがあなたを避ける。何を食べても味はない。過去の自分が犯した過ちを許せない。人生に幸せもくつろぎもないと言い出したので、絶句してしまう。

本当に心を読まれたと焦ったウォルトは、急に咳き込み出すと、二階の洗面所に駆け込む。

手には血痕が付いていた。

喀血したのだ。

その手を洗いながらウォルトは、何故か、自分の家族より、ここの連中の方が身内のように感じていた。

心配したスーが表で声をかけたので、心配ないと答えたウォルトは、下に降り、女性たちが次々に勧める料理に戸惑っていた。

そんなウォルトを地下室へと誘ったスー。

そこには、若者たちが集まっており、隅の方には、あのタオも静かに座っていた。

そんなタオを見つめていた紫色のセーターを着たデイジーは、ウォルトに気づくと、なぜここにいるの?とか、仕事は何?などと、質問して来る。

ウォルトは、色々修理している、あの乾燥機とかと、今座った時、ぐらついていたので、すぐに足下を修理してやった乾燥機を指しながら答える。

その後、タオに近づいたウォルトは、親しげに「トロ助」とタオを呼ぶと、今の女の子(デイジー)はずっとお前を観ていたぞ。なぜ付き合わない?いくじなしめと挑発する。

家に帰ったウォルトだったが、その後も、女たちが肉団子を運んで来たので、いつも食べているビーフジャーキーよりは旨いと、今度は素直に受け取るのだった。

その後、スーと母親が連れ立ってやって来ると、タオがお詫びに働くって言っていると告げる。

ウォルトが即座に辞退すると、母親が断られたのは屈辱だと言っているとスーが訳す。

困りきったウォルトは、明日の朝から来るようにと渋々承知することになる。

翌朝、約束通り玄関先に現れたタオを観たウォルトは、処置に困り、取りあえず、木に留った鳥の数を数えていろと命じる。

そんな仕打ちに懲り、一日で来なくなるかと期待したタオだったが、二日目の朝も律儀にやって来た。

困ったウォルトは、壊れかけた屋根を修理しろと命ずる。

タオは、その命令を素直に守り、雨の日もまじめに修理の仕事を続けるのだった。

そんなまじめなタオの様子を、ウォルトはじっと見つめていた。

そんなウォルトの元に、近所のじいさんが女の子連れで、蜂の巣があると知らせに来る。

タオは毎日嬉しそうに通うようになるが、ウォルトは自宅で喀血をしているのを気づかれないよう、その日はタオに帰れと命ずる。

久々に病院に行ってみたウォルトは、すっかり患者たちの顔ぶれが変わってしまった事に気づく。

皆、白人ではなくなっているのだ。

アフリカ系の看護婦から、おかしな訛で名前を呼ばれたので、診療室に入ってみると、そこには見知らぬアジア系の女医がいた。

かかりつけの医者は?とウォルトが聞くと、3年前に退任したと云う。

病状を知らされたウォルトは一気に絶望感に襲われ、自宅に帰ると、珍しく息子に自分から電話をしてみるが、出て来た息子は忙しそうであまり相手をしてくれない。

そんなウォルトとタオの家の前をスパイダーが様子をうかがうかのように車で通り過ぎる。

次の日、家の蛇口の調子が悪いので修理してくれとウォルトに頼みに来る。

ウォルトが、工具類を閉まっている倉庫に連れて行くと、タオは、何年にも渡ってウォルトが収集して来た様々な工具類の多さに驚く。

そんな工具類の中から、ウォルトはタオに三つ修理用品を渡す。

ウォルトの喀血はその後も続いていた。

タオに、スパイダーの一味の事をウォルトが訳を聞くと、モン族のチンピラたちで、ウォルトのグラン・トリノを盗む手助けをしろと云われたとタオは正直に教える。

ある日、フリーザーを二階に持って行くとしていたウォルトは、とても一人では上がらないので、隣のタオを呼びに行き手伝ってくれと頼む。

このフリーザーをどうするのかと聞くタオに、60ドルで売ろうと思っているとウォルトが打ち明けると、家のフリーザーも調子が悪いのでもっと安かったら買うとタオが言う。

結局、ウォルトは25ドルでタオにフリーザーを売ってやる事にする。

スーはウォルトに、タオの面倒を見てもらった事に感謝する。

国では、庭いじりなど女の仕事なので、タオのような男は尊敬されなかったのだと説明し、ウォルトに身体の為に煙草をやめるように忠告する。

ある日、ウォルトはタオに将来何になりたいのかと聞く。

タオはセールスマンにでもなると云う。この国では、外国人ができる仕事自体が限られているのだ。

大学には行かないつもりかと聞くと、タオは金がかかると言う。

そんな夢がないタオにいら立ったウォルトは、自分は建設関係にならコネがある。ミスヤムヤム(デイジー)とデートしろ!男同士の会話を学べ!と父親のように説教する。

実習のため、ウォルトは行きつけのイタリア系マーティンの床屋に行くと、いつのもごとく、毒舌の挨拶をしてみせた後、お前もやってみろと勧める。

しかし、慣れないタオは、いきなりマーティンにため口を聞いたので、マーティンは猟銃を突きつけて脅す。

ウォルトは呆れて、その場にいない奴の悪口を言っておけとアドバイスし、女も車も持ってないなんて…と呆れる。

翌日、馴染みのティム・ケネディが現場監督をやっている建設現場にタオを連れて行ったウォルトは、二人を紹介してやる。

タオは、昨日のアドバイス通り、男の会話を無事こなし、明日から来いと云われる。

その足で、工具店にタオを連れて行ったウォルトは、必要最低限の道具を買って与え、工具は自分のを貸してやると言う。

こうしてタオは建設現場で働き始めるが、ある日の帰り道、スパイダーの一味に待ち伏せされ、持っていたウォルトの工具を壊され、タバコの火を押し付けられるなど拷問を受ける。

その後、タオの怪我に気づいたウォルトは訳を聞くが、工具を壊されたので弁償すると言うので、そんな事は気にしなくて良いから、何か欲しい工具があったら言えと云う。

ウォルトは、スパイダー一味を何とかしないと、今後もタオやスー家族は面倒を抱えると感じ、秘かにスパイダー一味の同棲を探り始める。

スパイダー一味のねぐらを突き止めると、留守番一人しかいないのを見計らい、そいつを外に呼び出すと、これ以上タオに手を出すなとこてんぱんに殴りつける。

雨の中、言えに帰って来たウォルトに、スーたちがステーキを食べに来ないかと誘いに来る。

ウォルトは、彼女とのデートに使えと、グラン・トリノのキーをタオに貸してやる。

しかし、後日、スパイダー一味が、タオの家に向かってマシンガンを連射しながら車で通過して行く。

ウォルトは、すぐさまタオの家に駆け込むと、スーの姿が見えないのに気づき、すぐにスーに電話しろとタオに命ずる。

案の定、スーが出かけた先にスーはいないと云う。

ウォルトは、自分が余計な事をしたばっかりに…と悔やむ。

やがて、タオの家の前に車が停まり、家にスーが戻って来る。

その姿は、明らかに暴行を受けたものだった。

その姿を見たウォルトは、自宅に戻ると暴れ始める。

翌日、ヤノヴィッチ神父がやって来て、タオの家族は警察の事情聴取にも何も語ろうとしないとウォルトに教える。スーは入院して怯えているらしい。

タオはあなたを待っています。私があなたなら復讐しますとまで神父は言い、ビールを飲みながら、今回の事件を酷すぎると嘆く。

ウォルトは、このままでは済ませんと考え込んでいた。

その後、タオがウィルトの家にやって来て、復讐しようと言い出す。

ウォルトは、慎重に計画を練るんだ。夕方4時にここへ来い。急にヒーロー気取りか?経験もないくせにと云ってタオを一旦家に帰らせる。

ウォルトは一人入浴すると、タバコをくゆらせる。

マーティンの床屋に行くとヒゲを当らせ、さらに、洋服屋に行き、服を直させると、教会に向かう。

ヤノヴィッチ神父に懺悔をしたいと申し出るウォルト。

1968年、ベティにキスをした。ボートを勝手に売って900ドル手に入れた。二人の息子たちとの間には溝があるなど、たあいない事を打ち明けるウォルト。

ヤノヴィッチ神父は、そんなウォルトに復讐する気ですかと尋ね、毎日家に行きますと申し出るが、もう俺の心は安らいでいるとウォルトは答えるだけだった。

夕方、タオがやって来たので、ウォルトは地下室に案内する。

タオは、そこで勲章を見つける。

1952年、ウォルトが朝鮮戦争の功績でもらった勲章だったが、ウォルトはあっさり、お前にやると云い出す。

何人、挑戦で殺したのかとタオが聞くと、ウォルトは13人以上…とつらそうに答える。

先に地下室を登って行ったウォルトは、突然、地下室の入り口のシャッターを閉め、鍵をかけてしまう。

中に閉じ込められたタオは驚いて、出してくれと叫ぶが、ウォルトは、人を殺して最悪の気持になるのが理解出来るか?朝鮮の時、俺はお前のようにガキだった…と言い残し、一人家を出ると、愛犬を連れてとなりのばあさんの所へ行くと、そのまま、ばあさんが座っていた安楽椅子に紐を結ぶと、面倒を見てやってくれと頼む。

モン族の婆さんは怒って何か言っていたが、言葉がわからないので、ウォルトはそのまま家に戻ると、スーに電話をする。

病院から自宅に戻っていたスーは、ウォルトからの電話で、タオが地下室に閉じ込められている事。その鍵は玄関の亀のしたに置いておくと知らされる。

ヤノヴィッチ神父は、警官にウォルトの家を終日見張ってくれと頼むが、無理だと断られる。

その夜、一人でスパイダーの住処にやって来たウォルトは、すぐに一味に気づかれる。

庭先に立ったウォルトは、窓からこちらを覗いているスパイダー一味に向かい、テで拳銃の形を作り撃つまねをすると、ポケットから煙草を取り出し口にくわえる。

続いて、意味ありげに胸ポケットに手を入れたウォルトに、スパイダー一味は一斉にマシンガンを浴びせかける。

蜂の巣状態になったウォルトはその場に倒れ即死する。

ウォルトが、胸ポケットから出そうとしていたのはライターだったので、スパイダー一味は即刻駆けつけた警察によって全員捕まり、長期刑を受ける事は確実だった。

救急車に運び込まれるウォルトの死体を見つめるタオの胸には、もらったばかりの勲章が飾られていた。

ヤノヴィッチ神父やスーも、その場にいた。

後日、教会で、ウォルトの葬儀が執り行われた。

ヤノヴィッチ神父は、ウォルトとのこれまでの交友を話し、息子たちはしんみりする。

息子家族たちが集められ、弁護士からウォルトの遺言状を聞かされる。

アシュリーは、グラン・トリノをもらえるのではないかと期待しうきうきしていた。

しかし、弁護士がグラン・トリノの贈り主と発表したのは、タオの名だった。

後日、恋人のデイジーを乗せ、グラン・トリノを嬉しそうに走らせるタオの姿があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

白人の住居地が様変わりし外国人だらけになった中、一人取り残された孤独な老人が人生の最後に見つけた安らぎと悲劇とは?…を描くイーストウッドの佳作。

低予算映画なので、派手な見せ場のようなものこそないが、登場する主要人物たちが、皆しっかり描かれているので、その人間ドラマに惹きつけられる。

特に、モン族の姉弟を演じる二人は、等身大で実に魅力的。

その魅力的なスーが後半受ける被害は陰惨で、イーストウッドの若い頃の活劇などを見慣れている観客にとっては息詰る展開となっており、イーストウッドは、そうした観客の「血を求める気持」を意識して作っている事が分かる。

前半、スーに絡む若者に銃を取り出して突きつける所などは、まさに「ダーティ・ハリー」の勇姿そのままだからだ。

しかし、円熟したイーストウッドは、若い頃のヒーローのような行動はとらない。

むしろ、そうした若い頃にたくさんやって来た「やられたらやり返せ」式のヒーロー像を自ら否定するような行動に出るのだ。

ある程度、伏線が敷かれているだけに、それはある程度予想出来き、思った程衝撃感はないが、分かっていても、撃たれて倒れるイーストウッドの姿にはある意味ショックを受ける。

「憎しみは新たな憎しみを生むだけ。復讐では何も解決しない」と云う強いメッセージが伝わって来る。

毎度ながら、安心して観られる名人芸の域に達したイーストウッドの手腕が楽しめる一品である。