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ジャズ・オンパレード1954年

東京シンデレラ娘

1954年、新東宝、赤坂長義+京中太郎脚本、井上梅次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

都会の夜、そこにある大劇場やクラブで行われているきらびやかなショーは夢に満ちている。

しかし、物語はここから始まるのではない。

場末の小劇場…

そこは、芸人たちの人生の終点、終着駅である。

とある小劇場では、今日も、だらしないラインダンスもどきの踊りが舞台で披露されていた。

その楽屋では、売れない奇術師ジョニー(伴淳三郎)は、三日間アシスタントとして舞台で使っていたよし子ちゃんと云う女の子の母親から、ギャラが払われていないと文句を言われていた。

母親は娘を連れて帰ろうとしていたのだ。

その夜の舞台の直前だった事もあり、アシスタントに去られては商売が出来ないので、何とか言葉巧みに母親を説得しようとしたジョニーだったが、これまでも何度も口車に乗せられて来た経験のある母親は、明日、首になると分かっているジョニーの元からそそくさと娘を連れて帰ってしまう。

その楽屋口に、一人の少女みどり(雪村いづみ)が、父親の手紙を携え、ジョニーを訪ねて来ていた。

今日の舞台に立つアシスタントがいなくなり、呆然としていたジョニーだったが、16、7の娘が持って来たと手紙を渡され中を読むと、かつてのライバルだったタニマンが警察病院に入院中で、自分の娘を、これまで嵩んでいたお前からの借金のカタとしてくれてやると書いてあるではないか。

さっそくみどりに面会したジョニーは、すでに三日前にタニマンが死んだ事を知らされるが、父親の形見だと云うベレー帽をかぶり、可愛い容姿のみどり本人はアシスタントとして使えると直感、渡りに船とばかり、すぐさまチャイナドレスの舞台衣装に着替えさせると、彼女を立派な芸人にしてくれと父親から頼まれたと嘘を言い、自分と一緒に舞台に登場させる。

ところが、舞台で奇術を披露し始めた途端、舞台袖に、ジョニーに金をだまし取られた土建屋や借金取りが現れ、舞台のジョニーに詰め寄り始める。

困ったジョニーは、ちょうど、箱の中に娘を入れて剣を貫く「十三本の剣」と云う奇術をやり始めていたので、その箱の中に自分自身が入ってしまう。

煙が出ると、箱の中はもぬけの殻。

借金取りらが驚いているのを見たみどりは、自分も又、箱の中に入り姿を消す。

奇術師の娘らしく、箱の底から舞台裏に出られるのを知っていたみどりは、先に脱出して、劇場の外に逃げ出していたジョニーに追いつく。

ジョニーは、追いかけて来たみどりの姿を見て驚くが、自分は人生に荷物を持つのが嫌いなのだと彼女を追い払おうとするが、他に身寄りもないみどりは離れようとしない。

やがて、みどりが空腹だと言い出したので、ジョニーは、近くにあったパン屋でパンを買って来いと言う。

しかし、みどりが無一文だと知ると、自分も無一文で、みどりの金を当てにしていたジョニーは、がっかりして近くの空き地にやって来る。

ジョニーは、3年4ヶ月住んでいたアパートに一回も家賃を入れなかったので追い出されていたのだった。

空き地には、ジョニーとも顔なじみのルンペン(ホームレス)たちが、たむろしていた。

ジョニーは、ラッパを吹いて全員を呼び集めると、馴染みのタニマンが亡くなったと知らせ、全員がその場で黙祷する。

その後、そのタニマンの娘と自分の寝る場所がないかと聞いたジョニーの為に、ルンペンの大さん(千葉信夫)が、一番端の土管を見に行くが、あいにくそこも、親子連れが寝ており満杯だった。

泊る所もないと分かったジョニーは、遠くに輝く街の明かりを見ながら、お前の親父も俺も、昔はあの光の中で毎晩飲み歩いていたものだとみどりに昔話を聞かせる。

奇術で食べ物が出せないのかと聞くみどりに、奇術にはタネと云うものが必要で、今じゃ、タボコを出そうとしても、空き箱しか出せないと愚痴ると、ジョニーはみどりの母親は誰なのか聞いてみる。

女遊びも盛んだったタニマンは、誰にみどりを生ませたのか分からなかったからだ。

しかし、みどり本人も、母親の事は知らないと言う。

ジョニーは、そんなみどりをその場に残すと、自分はこうもりと鞄しか持たない主義なのだと言い残し立ち去って行く。

みどりは、もう付いて行こうとはしなかった。

折しも小雨が降って来て、一人ベンチに座り込んだみどりは、濡れながら歌を口ずさみ始める。

そんなみどりの頭上に、そっとこうもり傘を差し出す者があった。

歌声を聴いて立ち去りがたく、戻って来たジョニーだった。

雨が強くなる中、再び一緒に歩き始めた二人は、「山田」と表札が掲げられた屋敷の前に到着したので、ここで一杯の茶でもごちそうになろうと、門を入って玄関に向かう。

ドアノブに手をかけると、どうした事か、ノブが壊れており、あっさり中に入れてしまう。

さらに、どんなに呼びかけても、返事がない所を見ると、無人であるらしい。

遠慮がちに台所へ入り込んだジョニーとみどりは、そこにあった大きな冷蔵庫の中に、ぎっしり詰まったごちそうを目にする。

これは、篤志家のお恵みに違いないと、勝手な理屈をつけて、食べ始めようとした二人は、家の前に到着した車のクラクションを聞く。

車から降り立ったのは、山田老人の姪啓子(新倉美子)と、ジャズ仲間の三田(中山昭二)、新井(高島忠夫)、松本(和田孝)だった。

けちん坊な山田老人は別荘に言って不在だし、留守番をしている耳の遠い老夫婦も、娘の婚礼に出席するため田舎に帰っているので、今はこの屋敷には誰もいないので、練習場としてうってつけと敬子は説明する。

屋敷の中に入って来た四人は、山田老人の町子と云う一人娘が、ここで自殺したと敬子から聞かされると、ちょっと怖がりはじめる。

台所の隅で、その会話を聞いていたジョニーとみどりは、自分たちが幽霊に化けて、奴らを追い出してやろうと相談する。

やがて、四人の若者がいた部屋の電気が消えたので、ロウソクを付けた啓子と三田は、食べ物を取りに台所に入るが、そこにシーツをかぶったジョニーとみどりが出現したので、驚いた若者たちは全員屋敷を逃げ出してしまう。

誰もいなくなった屋敷内で、ジョニーとみどりは安心して食事をし、ベッドルームへ向かう。

その部屋の壁にかけてあった、死んだ町子らしき絵を触ってみたジョニーは、その裏側から一通の封筒が落ちたのに気づく。

「遺書」と書かれた中身を読んでいると、「あの人にだまされて…」と町子の署名入りの文章が綴られていた。

どうやら町子は、失恋の末、自殺したようだった。

遺書に書かれていた日付を見ると「昭和11年3月2日」、偶然にも、その日も3月2日だったので、ジョニーとみどりは、自分たちがここに立ち寄ったのも何か縁があったのだろうと感じ、そのまま一緒のベッドで寝る事にする。

翌朝、馴染みの空き地に向かったジョニーは、いつものようにラッパを吹いて、ルンペンたちを呼び集めると、今夕6時、大豪邸でパーティをやるから正装で来てくれと、みどりが手作りの招待状を配り始める。

その日の夕方、思い思いの正装で山田邸にやって来たルンペンたちは、ジョニーたちが用意していたごちそうや酒を振る舞われ、どんちゃん騒ぎが始まる。

無人のはずの山田邸に明かりが付いているのを怪しんだ警官(三木のり平)が入って来るが、今日は自分の誕生パーティをしているのだとごまかしながら、ジョニーは酒を「お茶」と称して警官に勧める。

ほろ酔い加減で、山田邸から帰る警官とすれ違って、やって来たのは、昨日の啓子ら4人と他のジャズ仲間(渡辺晋とシックス・ジョーズ)たち。

夕べ、幽霊に遭遇したと云う話を聞いて、半信半疑で山田邸に近づいて来た仲間たちだったが、屋敷の中のどんちゃん騒ぎを窓からのぞいて驚く。

夕べの幽霊の正体は奴らの仕業だったのかと気づいた新井が、文句を言おうと屋敷に入りかけるが、それを止めた三田は、ルンペンたちが唄っている歌に新しいインスピレーションを得る。

しばらくして、屋敷の中に入ったバンド仲間たちは、ルンペンたちが持っていた楽器を受け取ると、今度は自分たちが、たった今作曲した曲を披露し始める。

ジョニーたちは、新たな侵入者が、夕べの若者たちと知ると、その場で仲直りし、一緒にパーティを楽しみだす。

啓子が、料理を作ってやると台所に向かった時、一人の老人が屋敷にやって来る。

ジョニーは「山田老人、ばんざ〜い!」と音頭を取りながら酒を勧めていたが、新しい客であるその老人にも酒を振る舞う。

老人は、ぽかんとしながらも、つがれた酒を飲み始める。

その頃、台所で料理の準備をしていた啓子と三田は、二人でショーをやりたいねと夢を語り合っていた。

そこに、演奏の途中、水を飲みに立ち寄った新井は、啓子に今度話があると言い、啓子も話があると返す。

その新井が立ち去った後、今度は松本も水を飲みに来て、啓子に話があると言うので、啓子も同じように返事を返すのだった。

老人は、自分に酒を振る舞うジョニーに、どうしてこの会が?と、不思議そうに何度も聞くが、その度にジョニーは「山田老人と云うケチが催した慈善パーティなのだ」と同じ返事をするばかり。

そこに、又新たな客がやって来て、見知らぬ連中がやっているどんちゃん騒ぎに呆然とする。

ジョニーがその客に誰かと聞くと、自分は山田老人の遺産管理をしている甥の山田修一(有木山太)と名乗り、目の前にいる老人が、この屋敷の主の山田吾平(古川緑波)本人なのだと言うではないか。

家宅侵入罪と窃盗罪で訴えるぞとジョニーたちを脅しつける修一は、騒ぎを聞きつけてやって来た警官に事情を話すが、自分も昨日酒を飲んでしまっていた警官は、深入りをするとろくな事はないと直感し、すごすごと逃げ帰ってしまう。

修一に問いつめられたジョニーだったが、このパーティは、亡くなった町子さんの供養であり、ここにいるみどりこそ、その町子さんの遺児なのだと紹介する。

しかし、かねがね、自分に近づいて来る人間は金目当てだと知り抜いていた山田老人は、ジョニーの話も全く信じていなかった。

その話の最中、ルンペンやバンド仲間は、こっそり屋敷を抜け出すのだった。

山田老人は、自分の力で働くから財産などいらないと言う啓子に、明日、自分は又別荘に帰るので、遊びにおいでと誘う。

その後、三田は啓子に、今度の日曜日、あの山田老人を慰問に行こうと相談する。

日曜日、啓子、三田、新井、松本の四人は、山田老人の別荘に出かける。

別荘には修一もいた。

啓子たちは丘の方に向かい、仲良く唄い始める。

それを書斎の椅子に座って聞き惚れていた山田老人は、あの屋敷で出会ったみどりの事を思い出していた。

その後、別荘に戻って来た啓子は、お静婆さん(浦辺粂子)から、山田老人は、あの屋敷でのパーティの日の事が忘れられない様子で、みどりの事も夢に見ているらしい事、さらに、何の楽しみもない山田老人は、実は癌なのだと言う事も聞かされる。

その頃、みどりは、クラブなどで花を売りながら唄を歌っていた。

一方、ジョニーの方は、路上で、手品用のトランプなどを売っていたが、さっぱり売れない。

結局、みどりの稼ぎに頼るしかない毎日だった。

そんなある日、合流し、一緒に食事に出かけたジョニーとみどりは、あのパーティの日に聞いたメロディを耳にし、その店に入ってみると、そこに、啓子やバンドのメンバーたちが揃っていた。

みどりを探していた啓子は、再会を喜び、山田老人の別荘に二人を連れて行く。

屋敷に到着した啓子は、みどりとジョニーに山田老人が感田と云う事を教え、何とか人助けの為だと思って、山田老人に尽くしてくれないかと頼むと、ジョニーは、ヒュマニズムに打たれたとしおらしい事を言い、このみどりは、まぎれもなく本当の山田老人の孫娘なのだと言い出し、みどりには、自分の運命に従いなさいと言い聞かすのだった。

一方、二人の事を興信所に調べさせていた修一は、みどりが、タニマンと言う奇術師と女芸人の間に生まれた子供であると云う事を山田老人に告げていた。

だがそれを聞いた山田老人が、取りあえず、みどりを側に呼んでみようと言い出したので、修一は必死に、奴らは結託して遺産を狙っているんだと説得しようとするが聞かない。

その後、山田老人に人払いをさせてもらったジョニーは、養育費をもらおうとは思わないが、これまで何かとみどりには金を使って来たので、30万ばかり頂けないかと切り出す。

その金額を聞いた山田老人が驚いたので、慌てて5万円くらいでは?と金額を落とすジョニー。

山田老人は、素直に言いなりの金額を書いた小切手を渡すと、二度とここに出入りしないでくれとジョニーに言い聞かすのだった。

その日から、別荘で一緒に暮らす事になったみどりは、お静婆さんの言いつけを守り、胃に効く薬草を煎じたクスリを山田老人に運んでやったりする。

みどりは、自分が山田老人の孫だなんて信じていなかったし、そう言うことを正直に言うみどりの事を、お静婆さんも気に入っていた。

ある日近くの山で薬草を採っていたみどりは、久しぶりにやって来たジョニーと再会する。

ジョニーが来た目的は、金の無心だった。

しかし、みどりは、金の事を山田老人に切り出すのだけは嫌がる。

結局、みどりがジョニーに与えたのは、山田老人から自分用にもらった洋服だった。

それを知った山田老人と修一は叱りつけ、今後ジョニーとの縁を切るように命ずる。

二人が部屋から去った後、みどりは、こんな所に来たくなかったとベッドに泣き伏すが、その様子を見ていたお静婆さんは、辛抱して尽くしてやってくれと、やさしく言い聞かすのだった。

ある日、別荘にやって来た啓子、三田、新井、松本たちは、山田老人に、自分たちでショーをやりたいのだと打ち明ける。

しかし、山田老人は、金の事ならご免被ると拒絶する。

その後、みどりを誘って、近くの丘に出かけた啓子たちは、金の事を山田老人に言い出してくれないかと頼む。

又しても、金の無心を頼まれたみどりは苦悩する。

その頃、別荘に届いた手紙を読んでいた山田老人は、その内容が、又しても、ジョニーからの金の無心だったので怒りだし、帰って来たみどりに、その事を教えるのだった。

みどりは困惑し、自分は無理矢理にここへ連れて来られただけで、おじいさまが「癌」と聞いたので…と、つい口を滑らせてしまう。

それを聞いた山田老人は癇癪を起こし、帰ってしまえとみどりを怒鳴りつける。

一旦、自分の部屋に引き下がったみどりだったが、その後、山田老人の部屋の前を通りかかると、中からうめき声が聞こえたので入ってみると、山田老人は胃痛で苦しんでいた。

すぐさま台所に走り、薬草を探したみどりだったが見つからない。

みどりは、別荘を後にすると外に駆け出して行く。

その直後、帰宅したお静婆さんは、山田老人の異変に気づき、女中に薬を処方させる。

みどりは、折しも雨が降り始めた中、一人山道を下り、村の医者の家に飛び込んでいた。

薬を飲み一息ついた山田老人は、姿が見えなくなったみどりの事を案じ始める。

自分が先ほど叱りつけたので、逃げ出したんだろうと思っていたのだ。

そこに、玄関ブザーが鳴り、お静婆さんが出てみると、医者と看護婦が来ているではないか。

聞けば、みどりが呼びに来たが、あいにくその時、医者が不在だったので、今聞いて駆けつけて来たのだと言う。

しかし、肝心のみどりは同行していなかった。

外は、雷雨が激しくなっていた。

医者から話を聞いた山田老人は、みどりの事を誤解していた自分を恥じ、今頃みどりがどこにいるのかと心配し始める。

そのみどりは、雷雨の中、一人、山の中で薬草を摘んでいたが、足を滑らせ、崖から滑り落ちていた。

別荘にいた山田老人は、いても立ってもいられなくなり、自分がみどりを探しに行くと、お静婆さんや医者が止めるのを振り払い玄関に向かうが、ドアを開けた所で、ぐしょ濡れになって戻って来ていたみどりと対面する。

みどりの手には、山で採った薬草が握りしめられていた。

おじいちゃん、もうお腹は良いの?と聞くみどりの気持ちに打たれた山田老人は、この薬はもらうよ、ありがとうと言いなり、しっかりみどりの身体を抱きしめるのだった。

桜の季節が訪れ、別荘に集まった三田たちは、自分たちのショーの為の作曲に余念がなかった。

山田老人が、ついに彼らのスポンサーになる決意をしてくれたのであった。

芸人としてのキャリアを買われ招かれたジョニーも、ショーのマネージメントの手伝いを任される事になる。

予想外の待遇に感激したジョニーは、粉骨砕身頑張りますと、山田老人に頭を下げると、国際劇場を押さえる事が出来、人気スターも出演してくれる事が決まったとみんなに報告する。

そこに、修一がやって来て、みどりを養女にすると云うのは本当ですか?と山田老人に問いつめる。

山田老人は、ショーにも金を出す事に決めた。冥土に持って行っても金は使えないと気づいたからだ。ただし、お前には一文もやらんと答える。

愕然とした修一は、必ずこいつの尻尾を掴まえてみせるとジョニーを睨みつけるのだった。

三田が、ショーのプランを話して聞かせると、先に休むと二階に上がりかけた山田老人は、実は、前から自分が癌である事は知っていたし、君たちが、そんな自分を慰めようとして、みどりを連れて来てくれた事も分かっていた。今度、手術を受けてみようと思っていると、その場にいたみんなに語りかける。

いよいよ、国際劇場で「1954年 ジャズ オン パレード」が開催される日がやって来る。

舞台では、ロイド眼鏡に縞スーツ姿の三田が踊り始めていた。

ウエイトレス姿になった啓子も唄う。

楽屋では、ゲスト出演してくれる高英男などに、ジョニーが挨拶をしていた。

その高英男も、舞台に上がり唄い始める。

劇場の支配人室では、ジョニーが出演者全員分のギャラを受け取っていた。

舞台上では、多忠修とビクター・オールスターズの演奏が始まっていた。

ナンシー梅木が唄う。

その後は、ベビー服を着た新井とフランキー堺が、「ビンボー」をコミカルに唄い始める。

藤沢嵐子は「パッショナル」を歌う。

その頃、楽屋では、修一が山田老人からのカンパ30万円を持って来ていた。

それを受け取ったジョニーは、ギャラの支払明細書を出してみせる。

修一が帰った後、ジョニーが札束を鞄に詰め込んでいた楽屋に、みどりがやって来る。

切符の手配が出来たと知らせに来たスタッフを廊下に連れ出したジョニーは、部屋に戻って来ると、楽師の一人が国に帰る事になったので切符を用意しただけだから、この事は誰にも言うなとみどりに口止めをする。

それを聞いたみどりは、おじさん、お願いだから、悪い事だけは止めてねと頼むが、その時、出番の知らせが来たので、ジョニーの事は気になりながらも楽屋を後にする事になる。

みどりが舞台で、南国の唄を歌い始めた頃、鞄を持って裏口から出ようとしたジョニーは、そこに待ち構えていた修一と刑事たちに捕まってしまう。

そこには、山田邸で会った警官も来ていたが、この人は悪い事をするような人ではないと、ジョニーを弁護してくれる。

しかし、その場でジョニーの鞄を開けた刑事は、中に新聞紙しか入っていない事に気づく。

金の持ち逃げをすると思い込んでいた修一も、鞄の中身を知っているはずのジョニーも、中身を知って驚いていた。

舞台では、ますますショーが盛り上がっていた。

きつねにバカされたような表情で楽屋裏に戻って来たジョニーは、出演者から、確かにギャラはもらったと礼を言われ、ますます面食らう。

自分が払った覚えはなかったからだ。

そこにやって来た三田が、大金をロッカーの中に入れておいたらダメですよと、みどりちゃんが見つけてくれたから無事だったけど…と言いながら、札束をジョニーに手渡す。

そこへ、山田老人もやって来て、今まで君の事を疑っていたが、自分の思い過ごしだったらしい。ショーが終わったら、十分礼はすると言いながら、客席に戻って行く。

ジョニーは、その直後、楽屋裏に佇んでいたみどりを発見し近づいて行く。

一体どうやって鞄の中身をすり替えたのかと聞くジョニーに、みどりは、ごめんなさいと謝りながら、奇術師ジョニーの相棒ですもの、おじさんが廊下に出ている間に、鞄から金を取り出したのだと打ち明ける。

それを聞いたジョニーは、良いんだと慰める。

みどりは又舞台に戻る時間になる。

しっかりやるんだよと見送ったジョニーだったが、自分の愚かさへの反省とみどりの優しさへの感謝から、滂沱と涙を流していた。

その頃、啓子が一人で戻っていた楽屋に現れたのは新井だった。

さらに、松本もやって来て、自分たちのどちらが好きかと聞く。

啓子は二人とも好きだと答えるが、そこに三田が現れると、彼と婚約をしたのだと教え、新井と松本をがっかりさせるのだった。

三田は、ジョニーから渡されたと、受け取りや精算表と札束が入った鞄をみんなに見せる。

そのジョニーは、国際劇場を後にし、一人街角を去りかけていた。

みどりは、ジョニーが残した別れの手紙を読んでいた。

再び、舞台に戻ったみどりは、涙を流しながら唄い始める。

客席では、山田老人とお静婆さんも見守っていた。

舞台上では、美しい踊り子(安西郷子)が踊り始めていた。

雨が降り始めた街角では、ジョニーが、「奇術師ジョニー」と書かれたこうもり傘をさして遠ざかって行く。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「娘十六ジャズ祭」と同じスタッフ、ほぼ似通ったキャストで作られた音楽映画。

「貧しい娘がスターになる」と云うサクセスストーリーと、「落ちぶれた芸人の末路」の物語が交差する趣向も「娘十六ジャズ祭」と同じである。

頑固さ故に、雪村いづみ演ずる娘を叱りつけ追い出すが、すぐに後悔して、娘の身を案ずる老人を演じている古川緑波の役所も、ほとんど「娘十六ジャズ祭」と同じと言って良いが、嵐の中、山で一人薬草を摘む雪村いづみのシーンなどは、セットも作られ手間がかかっており、その分、古川緑波との再会のシーンの感動は、前作より大きくなっている。

この映画の3年後に出演したアメリカ映画「サヨナラ」(1957)で、アカデミー賞助演女優賞を受賞する事になるナンシー梅木や、ナベプロの創始者渡辺晋とシックス・ジョーズなど、珍しい顔ぶれを発見する楽しみもあるが、何と言っても、この作品の見所は、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長で有名な中山昭二が、役者として登場しているだけではなく、ダンサーとしても踊って見せている所だろう。

今観ると、驚くほど踊りが上手いと云う感じではなく、俳優が芝居の一部として踊っているような感じに見えなくもないが、元々はダンサー出身だったらしい。

他にも、高島忠夫(「キングコング対ゴジラ」)、高英男(「吸血鬼ゴケミドロ」)、フランキー堺(「モスラ」)、安西郷子(「宇宙大戦争」)など、後の特撮映画で有名になる人が大勢出演しているのもうれしい所である。

ただし、前作「娘十六ジャズ祭」では出番が多かったフランキー堺は、中山昭二に入れ替わる形になった為か、この作品では、高島忠夫と一緒に唄うワンシーンに登場するだけである。

奇術師が登場するので、簡単なトリック撮影もふんだんに使用されており、一種の特撮ファンタジーとしても楽しめる作品になっている。