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サマーウォーズ

2009年、「サマーウォーズ」製作委員会、奥寺佐渡子脚本、細田守監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「OZ」はインターネット上の仮想空間。

7月26日、日曜日

小惑星探査艇「あらわし」のニュースが流れる。

東京都内にある久遠寺高校物理部所属の2年生、小磯健二(声 -神木隆之介)と佐久間敬(声 - 横川貴大)は、部室の中のコンピューターを使い、「OZ」システムのメンテナンスの末端作業をバイトとしてやっていた。

そんな彼らの所に顔をのぞかせた3年生部員の篠原夏希(声 - 桜庭ななみ)は、バイトをやらないかと誘いかけるが、二人が既にバイトをやっている最中と知ると、誰か、自分と一緒に田舎に良好してくれる人探しているのだが…と続ける。

憧れの夏希先輩と一緒に旅行が出来ると聞いた二人の男子学生は、現金な事に自分が行くと名乗り出るが、定員は一人だけと聞くと、じゃんけんして勝った小磯健二が夏希のお供をすつことになる。

夏希は、田舎である長野県上田市に向かう車中、小磯健二が何の日本代表になり損なったのか聞く。

健二と佐久間が部室で雑談しているのをたまたま聞いていたからだった。

健二は恥ずかしそうに、数学オリンピックの…と答える。

彼が得意なのは数学だけだったからだ。

興味を持った夏希が、何かやってみせてとせがむと、生年月日を教えてくれと云う。

平成4年7月19日と夏希が教えると、すぐに、その日は日曜日だったと健二は答える。

モジュロ演算を使えば分かるのだと云う。

やがて、彼らは上田市に到着する。

夏希は、田舎に帰るのは、自分の祖母の90才の誕生日の為であり、その祖母は陣内家16代目の頭首なのだと健二に教えるが、その時、同じく実家に戻る途中だった親戚の則子おばさん(声 - 谷川清美)に出会う。

陣内家は、生糸商で財を成したのだと、説明を続ける夏希は、由美おばさん(声 - 仲里依紗)とも合流する。

陣内家の先祖は武田の家臣で、いまだにその血は怖いくらいに流れていると云う。

そのじっかの門の前にやって来た健二は、その屋敷のあまりの大きさに愕然とする。

陣内家は、とてつもない旧家だったのである。

玄関に入った健二は、そこに待っていた婦人に、お誕生日おめでとうございますと挨拶するが、彼女は夏希の母親篠原雪子(声 - 金沢映子)だった。

その後、本物の祖母、陣内栄(声 - 富司純子)に対面した健二は、夏希がいきなり彼の事を、「私の彼」と祖母に紹介したのを聞き凍り付く。

祖母栄は、健二に対し、夏希を命をかけて守るかと睨みつけて来たので、健二は返事に窮するが、やってみます…と言うだけが精一杯だった。

その後、詳しく問いつめると、夏希が今度来る時、婿候補を連れて来ると祖母と約束していたと云うのだ。

つまり、バイトの本当の内容は、実家にいる四日間の間だけ「夏希の恋人のふり」をしろと云うものだった。

恋人の条件は「東大卒の秀才で長期留学経験あり」と言う物だったので、全然その条件からかけ離れている健二は「無理、無理…」と怖じ気づくが、夏希から手を握られて、だましていた事を謝られたのでは、赤くなるだけで、もうどうしようもなかった。

やがて、屋敷に陣内水産の大型トラックがやって来る。

新潟漁港で水産業経営をやっている栄の次男、陣内万助(声 - 永井一郎)が到着したのだ。

家のテレビで高校野球の地区大会を観ていた子供たちは、由美おばさんの長男で上田高校野球部ピッチャーでもある陣内了平が勝った事を、台所にいるおばさんたちに報告に来る。

その時、勝手口から入って来た万助おじさんが、大量のイカを土産として運び込む。

そのイカの刺身をはじめ、料理が並んだ大広間に集まり夕食始める家族たち。

本家の陣内万理子(声 - 信澤三惠子)、電気屋を営む万助の長男陣内太助(声 - 小林隆)、万助の長女三輪直美(声 - 山像かおり)など、夏希は集まった親戚の名前を健二に教えて行くが、とても一度には覚えられない人数だった。

健二も、ばあちゃんに認められた夏希の婿候補として全員に紹介されるが、陣内太助の長男で警察官の陣内翔太(声 - 清水優)だけは「俺は許さない!」と一人むくれる。

食後、万助は天正15年に起きた「上田合戦」での、先祖の戦い振りを披露し始める。

その後、健二は離の人気がない場所で、佐久間に携帯で電話を入れ、今の自分がとんでもない状況になった事を愚痴るが、相手はのんきに、夏希先輩と一緒に寝れば良いなどと冷やかして来る。

電話を終えた健二は、ちょっと室内で迷子になるが、とある部屋の中で、パソコンに興じている一人の少年を発見する。

池沢佳主馬(声 - 谷村美月)であった。

その後、部屋に戻りかけた健二は、風呂から出かけた夏希とばったり対面し、またもや慌てる。

その夏希から入浴を勧められたので、嫌々入った健二だったが、無人と思った湯船の中から、潜りっこしていた二人の子供が出現したので、またまた凍り付いてしまうのだった。

風呂から上がった健二は、犬のハヤテとじゃれ合っている見慣れぬ客の姿を見る。

家族全員も、その青年を見ていたが、何か気まずそうな雰囲気が漂っている。

諏訪市の消防署に勤める陣内邦彦(声 - 中村橋弥)の妻、奈々(声 - 高久ちぐさ)などは、無遠慮に「誰?」と周囲の親戚に聞くくらい馴染みがないらしかった。

栄えの夫、つまり祖父が妾に作らせた子供で、本家の養子として引き取られていたが、栄の持ち山を無断で売り払い、その金を持って長らくアメリカに行ったまま戻らなかった侘助(声 - 斎藤歩)だった。

問題児として、親戚中で浮いていた存在だっただけに、全員、突如帰郷して来た彼への対応に躊躇するが、栄だけは、家に上げさせ、食事を与えてやる。

しかし、夏希だけは、子供の頃から憧れだった侘助の出現に大喜びで抱きつく。

食後、侘助は夏希と健二を交え、陣内家ではお馴染みの花札をする。

ようやく、寝床についた健二だったが、寝付けぬままにうとうとしている内に、誰かからかメールが入る。

携帯画面を確認すると、意味不明の数字の羅列が並んでいるだけ。

しかし、それを見た健二は、暗号だと気づき、朝までかかって解き明かすと、その答えを発信者に返信する。

すると、いたずらめいたびっくり箱の絵が送り返されて来ただけだった。

疲れ顔で広間に言ってみると、子供たちがテレビを見つめている。

そのテレビに映し出されていたのは、目線こそ隠されているが、まぎれもなく健二本人の写真だった。

TVニュースを聞くと、何者かがネット上のOZに侵入し、その世界をめちゃめちゃに壊してしまったのだと報じている。

その犯人として、健二の写真が映し出されていたのだ。

驚いた健二は、携帯からOZにアクセスしようとするが、アクセス拒否されてしまう。

佳主馬のパソコンを借り、アクセスしようとしてもダメだった。

アカウントを誰かに盗まれて「成り済まし」をされたらしい事に佳主馬と健二は気づく。

その内、家族たちも,携帯が使用出来なくなっている事に気づきだす。

そこへ、佐久間から携帯が入り、OZの管理棟へ入れなくなっている。20056桁の暗号を誰かが解いてしまったらしいと健二に告げる。

それを聞いた健二は、それ、僕がやっちゃったらしい…と、意気消沈して答える。

健二は佐久間から、何かの時の為に、臨時のアバターを送ってもらう。

それは、リスキャラのださいアバターだった。

しかし、その臨時アバターでOZの中に入り込んだ健二は、自分の元アバターを使っている相手に向かい抗議する。

すると、突然、OZ内が、ゲームエリアに化してしまい、健二のリスアバターは、成り済ましキャラにやられてしまう。

そこに現れたのが、伝説のラビット型最強アバター「キングカズマ」だった。

世間で有名な「キングカズマ」の正体は佳主馬だったのだ。

「キングカズマ」は、成り済ましアバターに飛びかかり、勝ちそうになるが、その時、パソコン上でゲームをやっているとめざとく見つけた子供たちが、佳主馬に飛びついて来たので、キーボードを操っていた佳主馬の手元が狂ってしまい、逃げ出した相手は別の姿に変身すると、キングカズマをやっつけてしまう。

携帯で、アバターを動かしていた健二が、何とか、倒されたキングカズマを救出、危うく、佳主馬までもがカウントを取られるピンチだったと冷や汗をかく。

その後、佐久間から電話が入り、どうやら、今回の犯人は、「ラブマシーン」と名付けられたAIらしいとの報告が入る。

大広間に行った健二は、OZを混乱させた犯人として自分が手配されているニュースが流れているのを女性たちが観ていた。

さらに、健二の身元を調べた一人が、単なるサラリーマンの息子で、まだ高校生であると云う事を暴きだしていた。

TVニュースでは、「あらわし」のカプセルが離脱されたと伝えている。

夏希と健二は、母親の雪子から「婿話」が嘘だった事を叱りつけられる。

女性陣たちは、夏希の理想像が全て侘助に当てはまる事に気付き、彼女が侘助に片思いであった事を知るのだった。

祖母栄は、良く分からないながら、今世間を騒がせている事件の犯人が健二なのかと聞く。

翔太はいきり立ち、その場で健二に手錠をかけると、連行しようとする。

健二は、栄に対し、自分は父親が単身赴任で、母親も仕事で忙しく、こんな大家族の中で楽しく過ごした経験がなかったので、ここへ来てうれしかったと礼を述べ、翔太の車に乗り込み、陣内家を去る。

その頃、OZの中では、「ラブマシーン」が管理棟の鍵を開けてしまう。

高校野球の地区大会、息子の了平の試合が心配でたまらず、由美はただ一人テレビの前に釘付け状態。

近所の交差点に近づいた翔太は、信号がなかなか変わらないのでイライラしていた。

「ラブマシーン」によって、交通標識や水道の水圧が勝手に変動を始め、日本中は大混乱に陥り始める。

消防署員の陣内邦彦や、万作の三男でレスキュー隊員の陣内克彦(声 - 板倉光隆)たちは、朝からひっきりなしにかかって来る誤報の連続でてんてこ舞い状態。

栄の誕生日当日に来る予定だった親戚たちからも、あれこれ障害が原因で来れなくなりそうだとの連絡が入る。

まだ動けない状態だった翔太の車に近づいたサイドカーに乗った夏希は、この先も10km渋滞しているので、一旦家に戻るように指示、結局、翔太と健二は又実家に戻って来る事になる。

佐久間から又連絡が入り、この騒動は全て「ラブマシーン」が他人のアカウントを盗み、その本人に成り済ましてあれこれの部署の操作をしているのだと説明する。

今や、OZに参加している人は何億人に上り、その職業も様々。

仮に、アメリカ大統領のアカウントを使われれば、核ミサイルのスイッチを押す事だって出来ると言うではないか。

家族たちのただならぬ様子に気づいた祖母栄は、これは天下の一大事だね?と誰に共なく聞くと、自ら、邦彦や克彦をはじめ、知りうる限りの親戚縁者たちに電話をかけまくり、今、頑張らなくてどうすると激励しまくる。

その必死の祖母の姿を、帰って来た夏希、翔太、健二はも期激する。

佐久間からの連絡では、いまだに、世界中のOZのエンジニアが、管理棟に入り込めないのだと言う。

それを知った健二は、管理棟にアクセス出来る暗号の数式を解き始める。

その計算スピードを見た夏希と翔太はびっくりするが、佐久間は、実は、夕べの携帯に来たメールの暗号を解いた者は、世界中に55人もおり、健二の送った答えは最後の人文字が間違えていたと云うではないか。

「ラブマシーン」の暴走のきっかけとなった暗号解読の犯人は健二ではなかったのだ。

それを知った健二は、ほっとするやら、がっかりするやら…

とにかく、健二が解いた管理棟へのアクセスコードのおかげで、何とか、OZは落ち着きを取り戻す事に成功する。

その日の夕食の席で、祖母栄は、今日、異常事態に立ち向かった親戚たち全員の活躍と、健二の働きを褒める。

ただ、今でもまだ、200万人分のアカウントが使用不能状態のままで、完全にOZが正常化したとは言い難かった。

アカウントを盗むAIの「ラブマシーン」を倒すしかないと、健二や佳主馬と発言するが、それを聞いていた侘助は、それは不可能。なぜなら、ハッキングAI「ラブマシーン」を作ったのは俺だからと告白する。

ばあちゃんの山を売った金でアメリカに渡り開発したもので、「知識欲」と云うものを与えただけなのだが、何百万の軍隊にも匹敵する「ラブマシーン」の能力に目をつけた軍関係者がある日訪ねて来たと云う。

その話を聞いていた栄は、いきなり侘助の頬を殴りつける。

自分の立場を挽回しようとして頑張ったんだと言い訳する侘助に、栄は長刀を突きつけ、今ここで死ね!と命じる。

そこまで責められた侘助は、帰って来るんじゃなかったと屋敷を立ち去る。

栄は、残った親戚たち全員に、身内がしでかした間違いは、身内で片をつけろと命じる。

侘助に去られた夏希はショックを受け、健二が慰めようとしても受け付けなかった。

そんな健二は、栄に呼ばれ、久々に動いたので手足が聞かないと、座らせるのを手伝わされる。

その後、栄に花札の相手をさせられる事になった健二は、この勝負に私が勝ったら、夏希をよろしく頼むよと突然言い出す。

まだ、自分に自信が持てないと戸惑う健二に、あんたならできるよと笑顔で断言した栄は、その勝負に勝った事を宣言する。

翌朝、ハヤテの異常な鳴き声で目を覚ました健二は、異変を察知し、栄の部屋の前に向かうと、そこには家族中が集結していた。

克彦が懸命の心臓マッサージを施していたが、医者の万作が、5時21分、栄の臨終を宣言する。

何時も、携帯で、狭心症の持病を抱えて、ニトロを常用していた栄の心拍データを観察し、異常時にはアラームがなる事に鳴っていたが、昨夜は鳴らなかったのだと万作は告白する。

侘助もすでに、翔太の車で出て行った今、家族全員、栄を失った喪失感に沈み込んでしまう。

縁側に並んで座った夏希は、止めて、ここを握って涙を止めてと、右手の小指を立てて健二につぶやく。

健二は黙って言う通りにしてやるが、夏希はかえって泣き出してしまったので、そっとその手のひらに自分の手を重ねてやる。

「ラブマシーン」の被害は拡大を続けており、今や、アカウントが使えない人が世界中で1000万を超えたと云う。

雪子は、すぐさま、栄の誕生祝いを葬式に切り替える手はずを始める。

そんな相談をしている最中、万助は一人異論を唱える。

そんな事よりもまず、身内が作ってしまった「ラブマシーン」を自分たちの手で倒す事が先決ではないのかと云うのだ。

その意見に、健二も賛成する。

唖然とする女性陣たちを尻目に、陸上自衛隊で働いている理一(声 - 桐本琢也)も、「人を守ってこそ己も守れる」と云う「七人の侍」のセリフを引用し、佳主馬もリベンジだよと立ち上がる。

万助は、徳川軍を城の中におびき寄せ、門を閉ざして、袋のネズミにした、第二次上田合戦の故事を男たちに教え、健児たちは、それをヒントとしていただきますと答える。

健二は早速、佐久間に電話を入れ、これから自分たちが「ラブマシーン」と合戦を始めると宣言する。

やがて、屋敷に、電気屋の太助が、大学に納入予定だと云う巨大なサーバーや巨大モニターを運び込んで来る。

さらに、新潟から戻って来た万助は、イカ釣り漁船を丸ごと運び入れ、池の中に浮かべるとその照明灯を煌煌と照らし、サーバーの冷却用に、大量の氷も提供する/

理一は、松本駐屯地から、最新鋭の通信機器を運んで来る始末。

そんな中、由美だけは、まだ祖母の死も知らず、高校野球地区大会の決勝戦のマウンドに上がっている息子了平を映し出すテレビ中継にかじりついていた。

システムの手配が済んだ事を知らされた佐久間は、地方の家に、信じられないほどハイスペックな機材がそろった事を知り唖然となる。

健二は佐久間に、キングカズマは今までのキングカズマではない事を「ラブマシーン」に伝え、挑戦に乗って来るようしむける作戦を出す。

その頃、佳主馬は、少林寺拳法を習っていたため、常々「師匠」と呼んでいた万助と二人で、戦いの前の精神を落ち着ける為に、太極拳をやっていた。

いよいよ、キングカズマが「ラブマシーン」に挑むときがやって来る。

ものすごい高性能機器のバックアップを得たキングカズマの力は、以前とは比べ物にならないほど強大になっていた。

佳主馬は、優勢な状況を見て「行ける!」と確信する。

しかし、「ラブマシーン」は、盗まれた膨大なアカウントを集積させていた。

健二は、佳主馬に動きの指示を出し、万助も又、黒頭巾を着たイカ型アバター姿で援護に現れる。

やがて、巨大「ラブマシーン」は、キングカズマを追ううちに城型の管理棟の中に誘い込まれ、抜け道を次々と塞がれて、閉じ込められてしまう。

高校野球の地区決勝大会でも、上田高校が8回、勝ち越しのホームランを打ち、勝負を優勢に進めていた。

その時、モニター上にアラートメッセージが出、城が壊れ始める。

サーバーに異変が起きたと察知した健二がふすまを開けると、隣の部屋においてあるサーバーの冷却用に置いておいたたくさんの氷がそっくりなくなっているではないか。

実は、栄の遺体をそのままにしているのに耐えられなくなった翔太が、氷を全部、栄の遺体の周囲に置くために、持って行ってしまっていたのだ。

上田高校も、9回ピンチを迎えていた。

そんな中、夏希は、侘助が忘れて行ったタッチ型携帯電話を見つめていた。

OZの中では、城が壊れ、中から巨大で黒い新たなる姿に変身した「ラブマシーン」が出現する。

4億以上にも及ぶ盗まれたアバターの集合体だった。

キングカズマは、巨大化した「ラブマシーン」に殴られ吹っ飛んでしまう。

現実世界の佳主馬は、作戦の邪魔をした翔太を殴りつける。

モニターに映し出されたワールドクロックが故障し、何やらカウントダウンを始める。

世界中に500カ所以上もある原子力発電所のどれかに「あらわし」が墜落し始めた事に健児たちは気づく。

秒速8kmのスピードで落下する探査衛星が、原発に突っ込んだら、大惨事は免れない。

墜落までの残り時間は2時間を切っていた。

高校野球の決勝戦も、12対8と、絶体絶命のピンチに立たされていた。

栄の遺品を整理していた夏希は、栄の遺書を見つける。

OZの中のゲームステージには。「キングカズマ あの怪物を倒して!」と云うメッセージが次々に表示され始める。

ゲームを観戦中の参加者が応援しているのだ。

4億ものアカウントを奪い返すため、キングカズマは「ラブマシーン」に再突入するが、相手に飲み込まれてしまう。

「ラブマシーン」の黒い頭部から、キングカズマのウサギキャラを連想させる長い耳が生える。

敗北を悟った佳主馬は泣き出してしまう。

健二は、後何か出来る事はないかと考えていた。

まだ、負けていない、何かまだ手はあるはずだと言いながら、健二はふと机の上に置かれた花札のケースに目を留める。

夏希は、タッチ型携帯で、侘助にコンタクトを取る事に成功していた。

祭りににぎわう町中で停まっていた車の中で、いきなり夏希からの電話を受けた侘助は、なぜ自分のパスコードが分かったか不思議がるが、俺はもう帰らないと返事する。

しかし、栄が亡くなったと聞かされると、驚愕する。

夏希は、侘助が祖母の栄の誕生日を知らないで戻って来た訳ではない事を見抜いていた。

なぜなら、侘助の携帯のパスコードは、栄の誕生日の日付の数字だったからだ。

戻って来て!ちゃんと、おばあちゃんにお別れして!と言う夏希の切なる訴えを聞いた侘助は、いきなり車をUターンさせる。

その頃、実家の中では、雪子が皆に、栄の遺書を呼んで聞かせていた。

「まず、落ち着く事。

葬式は、身内だけでさっさと済ます事。

今後も、古くからの親戚たちが力になってくれるはず。

これからもしっかり働きなさい。

そして、もし侘助が帰って来たら、きっとお腹をすかせているはずだから、裏の畑になっている茄子やブドウを食べさせてやりなさい。

あの子が実家に連れて来られた時、耳の形がじいさんそっくりでビックリした。

今日からうちの子だよと言い聞かせたら、何も返事はしなかったけど、あの子は握った手を離さなかった。

人間にとって一番いけないのは、お腹がすいている事と一人でいる事。

私は、あなたたちがいたので、大変幸せでした。」

その時、RX7が庭先に飛び込んで来て、侘助が降り立つ。

それを見た雪子は、挨拶をしていらっしゃいと諭す。

栄の遺体に対面した侘助は、「ばあちゃん、ただいま…」とつぶやく。

その後、侘助も含めた家族全員は夕食を一緒に取る。

食後、家族たちは、「ラブマシーン」と再度戦う計画を練り始める。

奴がゲーム好きと云う性質を利用するのだ。

侘助も、プログラムの解体作業を手伝う事を約束する。

今度の対戦相手は夏希だった。

晴れ着姿のアバターでカジノステージに登場した夏希を、家族たち全員も、ゲーム機や携帯でバックアップする事になる。

全員のアカウントを夏希にゆだねるのだ。

予想通り、ゲーム好きの「ラブマシーン」は夏希の挑む花札ゲームに乗って来た。

子供の頃から、祖母の栄に鍛えられて来た夏希の腕は一流で、どんどん「ラブマシーン」のアカウントを奪って行く。

しかし、一瞬の隙を突かれ、相手方に逆転されてしまう。

「あらわし」墜落まで30分を切る事になった。

「これ以上ゲームを続けるには掛け金不足です。ゲームを終了しますか?」と言う呼びかけが夏希に何度も迫る。

その時「74」だった夏希のアカウント数が「75」に動く。

ドイツの男の子が、自分のアカウントを使ってくれと寄付してくれたのだ。

それをきっかけに、世界中から自分のアカウントを使ってくれと云う寄付が殺到し始め、たちまち1億5000万以上のアカウントが夏希側に加算された。

「私たちの家族を守って!」と云う、世界中からの熱いメッセージと共に…

夏希のアバターは、OZの守護神からのプレゼント力も加わり、巨大化する。

世界中が「こいこい!」と声をかける中、大勝負に出た夏希は大勝ちし、「ラブマシーン」の持ちアバター数は「2」にまで減少する。

「ラブマシーン」の黒い巨体アバターは爆発し、カウントダウンはストップする。

その勝負に参加していた家族たちは全員大喜び。

夏希は健二に抱きつく始末。

しかし、また、モニター上のカウントダウンが始まる。

画面に映し出された墜落予測画面に、上空から観たハヤテの姿が映し出された。

残り時間は10分!

「あらわし」の墜落地点は、ここ!「陣内家」そのものだったのだ!

雪子は慌てず、全員直ちに避難し、近所の住民たちにも知らせるよう命ずる。

健二は、「あらわし」がGPS機能で誘導されている事を理一に確認すると、偽の情報を入力して、墜落位置を少しでも移動させるのが可能なのではないかと思いつく。

避難していた家族たちに、夏希は、まだ負けてない!と叫ぶ。

健二は、OZの管理棟にアクセスしようとするが、パスワードが変更される。

健二は、負けじと、暗号解読の計算を始める。

やがて、新たなパスワードが判明し、少し侵入すると、またパスワードが変更される。

何度かそんな事を繰り返しているうちに、残り時間が刻刻と迫る。

侘助は、奴を叩け!と声を上げる。

万助のアバターに押し出される形で、再びキングカズマが動き出す。

邪魔をしていた「ラブマシーン」アバターを見つけたキングカズマは、邪魔をするな〜!と叫びながら、相手を殴り飛ばす。

健二はとうとう、紙の上で計算するのでは間に合わなくなり、暗算で解読し始める。

運を天に任せ、キーボードを押す健二。

GPSの数値を変える事に成功し、「あらわし」は陣内家の近くの山の中に墜落する。

ものすごい爆風が陣内家を揺るがす。

「あらわし」の落下地点からは、大きな水柱が立ち上がる。

温泉が吹き出したのだ。

上田高校も、延長15回の熱戦の末、決勝戦に勝利していた。

いよいよ、念願だった栄の誕生日を向かえる。

朝顔の鉢に囲まれた栄の遺影を前に、夏希はウクレレを弾きながら、「ハッピーバースディ トゥ ユゥー」をみんなと唄う。

全国から、陣内家の親戚が集結していた。

「ラブマシーン」の開発者として自ら名乗り出た侘助だったが、今回の騒動の背後には、国防省が関与している事が判明していた。

健二は、夏希とこの場でキスしてみろと、みんなから囃されていた。

照れながらも、何とか、その声に応じようとする健二だったが、鼻血を出してしまい、その頬に夏希がやさしくキスをしてやるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

アニメ版「時をかける少女」で一躍注目される事になった細田守監督の劇場用アニメ第二弾だが、前作以上の傑作になっている。

一見、小難しそうな数学、ネット上の仮想空間などの素材を取り入れながらも、決して難解ではなく、それと対比するように、今は失われつつ、地方に集結した大家族の姿をリアルに描く事で、郷愁を誘いながらも、サスペンスフルかつ痛快な作品に仕上がっている。

個人的には、生まれてこの方観て来た数多くのアニメ作品の中でも、最上位に位置する面白さだと感じた。

従来のSFファンタジーアニメと云えば、ロボットや宇宙人と云ったありきたりなSF要素を組み合わせただけ…と言うような作品も少なくなかったが、この作品は、そう云う「手あかのついたファッション」を使わなくても、これだけ面白いSFファンタジー系作品が出来るのだと云う事を証明してみせた作品だとも思う。

これだけ大人数のキャラクターが登場しながら、主立った人物はしっかり描き分けてある手腕は見事だし、嫌な人物が一人も登場しない辺りの心配りも心地よい。

内向的で屈折した所がある侘助と佳主馬、そして、数学以外、まだ自分に自信が持てない健二などが、皆それぞれ、大家族の力を借り、自信を持つに至る過程が清々しい。

実写で同じようなテーマを扱おうとすると、もっとべたべたした臭い演出になる危険性が大きいが、アニメ特有の、細部を省略したさらっとした質感と心理描写が、嫌みのない後味に誘ってくれる。

ストーリー展開自体は、娯楽物の見本のような出来映えで、伏線もしっかり描かれているし、構成も堅牢。

人物一人一人に思いやりをこめて造型した跡がうかがわれ、観る者が自然に、陣内家の一人一人に、自分が知る親戚の姿を当てはめ、感情移入しやすくなっている所がすごい。

良く考え抜かれた脚本だと思う。


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