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風雲急なり大阪城

真田十勇士総進軍

1957年、新東宝、仲津勝義+武部弘道脚本、中川信夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲「荒城の月」が流れる中、走る騎馬兵たちの姿に重なるようにタイトル。

ぬかるんだ地面には、折れた六文銭の旗が落ちている。

慶長5年8月関ヶ原の決戦」

豊臣に利あらず、凱歌は徳川方方に挙った。

かくて知将真田幸村は、紀州高野山の九度山に閉居す。

雪村と共に、九度山の屋敷に暮らしていた筧十蔵(御木本伸介)は、扇を的に銃の練習をしようとしていたが、側で観ていた三好清海入道(舟橋元)が、あれやこれやと口を出し、自分が撃ってみせると銃を奪い取る。

その様子を、三好清海入道の弟、三好伊三入道(国方伝)や猿飛佐助(天城竜太郎)が面白そうに見守っていたが、ちょうど的の前を通りかかったお近(日比野恵子)が持っていた急須に、清海入道が撃った弾が命中し、割れてしまう。

清海入道は、つい指先が狂ったと頭を掻くが、続いて銃を受け取った猿飛佐助は、的とは方向違いの方を撃ってしまう。

佐助が撃った木々の方向には、徳川方の間者風祭孫兵衛(芝田新)が潜んでいたのだった。

危うく弾を逃れ逃げ出した孫兵衛は、ちょうど、馬に乗り幸村に会いに来た徳川方の使者三名と遭遇する。

屋敷で真田幸村(田崎潤)に対面した使者たちは、徳川方に加担してくれるよう願い出るが、幸村は、自分は豊臣方の礎になると決意を述べ、きっぱり申し出を断る。

その頃、近くの木の上に乗り、山道を眺めていた佐助は、一人の娘が男たちに襲われ、駕篭に乗せられて連れ去られる所を目撃する。

佐助は忍術で、駕篭を後ろ向きに走らせ、さらには、駕篭の中身を地蔵に置き替えて、駕篭かきや狼藉者たちを煙に巻く。

誘拐されかけていた娘菊乃(藤木の実)は、佐助と同じく、木の上の枝に立って、その様子をおかしそうに眺めていた。

菊乃は、木村長門守からの使者であった。

幸村に対面する菊乃の会話を、部屋の外からお近が盗み聞いていた。

幸村は娘に、大阪城の様子を聞いていた。

盗み聞いたその話を文に託し、近くの森の中の木の空洞部分に差し込んだお近だったが、後を付けていた佐助が、その文を奪い、幸村に届ける。

その直後、お近からの通信文を取りに来た孫兵衛は、広げた文に「お役目ご苦労に候 猿」と書かれていたので仰天する。

幸村は、前々から、お近を徳川方の間者と怪しんでいた事もあり、文の中身を確かめると、何食わぬ顔で、そのまま火鉢の端に置いておく。

そこに、何も知らずにお茶を運んで来たお近は、自分の通信文が目の前においてあったので、茶を取り落とし狼狽する。

その頃、清海入道は、他の仲間たちと酒盛りをしていたが、一人、霧隠才蔵(小笠原竜三郎)だけは、その仲間に入るのを嫌い、自分で勝手に忍術で酒を出して飲もうとしていた所を、清海入道に見つかり、仲間たちの集まる部屋に連れ戻される。

その酒宴の席に来て「静かにしろ」と注意した猿飛佐助に、清海入道は食って掛かる。

新参者なのに、忍術が出来ると云うだけで殿に気に入られている佐助を、清海入道はかねがね快く思っていなかったからだ。

そこに、幸村の息子真田大助(湊幹)が、佐助を殿が呼んでいると伝えに来たので、のけ者にされたように感じた清海入道は、ますます怒り狂い、他のものたちと、佐助を痛めつける相談をし始める。

一方、佐助は、井戸水をくんでいたお近の仕事を手伝ってやっていたが、その様子を、草影から孫兵衛 が監視していた。

その夜、清海入道は、佐助の寝所に忍び込む。

翌朝、廊下には、人で縛られた布団が転がっていた。

どうやら、中に誰かが包まれているらしい。

伊三入道らは、兄の清海入道が、まんまと佐助を布団に包んだと喜び近づいて来るが、そこに、当の猿飛佐助がやって来たのでびっくり。

真田幸村、大助親子まで顔を見せたので、嫌な予感がしながらも、布団の紐を解いてみると、想像通り、兄の清海入道が包まれていた。

幸村は、一同を部屋に呼び集めると、木村長門守の勧めもあり、起つ覚悟をしたと全員に伝え、穴山小助(信夫英一)、筧十蔵、海野六郎(西一樹)、望月六郎(池月正)根津甚八(小浜幸夫)ら、その場にいた配下の名前を次々に呼び上げると、彼らが情勢を探りに向かう地方を指定して行く。

猿飛佐助には、木村長門守と駿府の徳川家康の情勢を探るよう命じる。

最後まで名前が呼ばれなかったのは、たった今、ばつの悪い思いをして縮こまっていた清海入道だけだったので、幸村に抗議すると、お前はここに自分と一緒に残れと云われる。

屈辱感に苛まれた清海入道は、今後一切、喧嘩と酒を断つと、幸村に誓うのだった。

翌朝、屋敷から、佐助たちが一斉に旅立って行く。

清海入道も、佐助と菊乃のお供として同行する事を許された。

道の途中で、十勇士たちは、それぞれ自分が指定された地方へと向かう為、別れ別れになって行く。

その後を追っていたお近は、途中で待ち受けていた風祭孫兵衛と合流、真田が動き始めた事を報告する。

孫兵衛は、町人姿に変装し、佐助たち一行を追跡するが、佐助たちにすぐに怪しまれ、清海入道から強引に大阪まで同行しようと誘われてしまう。

途中立ち寄った茶屋では、清海入道が大量に飲み食いした酒やダンゴ代を、孫兵衛が支払わされたり、重い金棒を持たされる始末。

その夜、同じ宿屋に泊まらせられた孫兵衛は、夜中、たまらず、逃げ出そうとするが、それに気づいた清海入道が「泥棒!」と叫んだので、宿中が目を覚ましてしまい、逃げるに逃げられなくなった孫兵衛は、同じ宿に泊まっていたお近の部屋に逃げ込むしかなかった。

お近は、自分に任せろと言う。

佐助と菊乃は、翌早朝、まだ寝ている清海入道を宿に残して早々に旅立つ。

清海入道は、馬に乗った不気味な白頭巾に追いかけられる夢を見ていた。

悪夢から目覚めた清海入道は、いつの間に部屋に入って来たのか、布団の側にお近が座っており、御慕い申しておりましたとすがりついて来たので慌てる。

かねがね、お近には気があった清海入道だったが、時が時だけに、男女七才にして席を同じうせずと固い事を言い出すが、佐助の目的地を、お近から聞かれた際、ついうっかり、「木村長門守の所へ…」と漏らしてしまう。

その頃、その木村長門守(沼田曜一)に会い、駿府城にある、豊臣秀吉の遺言応を盗み出してくれと頼まれていた佐助は、天井裏に潜んだ間者に気づき、手裏剣を投ずるが、長門守に止められ、深追いするのは止める事にする。

天井裏から逃げ出したのは風祭孫兵衛だった。

大阪城に登場した木村長門守は、昼日中から、秀頼の前で腰元たちに踊らせている状況を観て、平野主水正(丹波哲郎)に対し、秀頼はすでに22才、秀吉の遺言状によると、彼に摂政と云う補佐役が付くのは元服した15の時までだったはずだと苦言を呈するが、平野だけではなく、同席していた淀君(真山くみ子)からも、出過ぎた発言と、反発を買ってしまう。

旅籠では、お近が、酒を断ったはずの清海入道に、無理矢理色仕掛けで酒を飲ませようとしていた。

最初は、必死に断っていた清海入道だったが、「酒飲むな、酒飲むなとご意見なれど~」などと、歌謡曲のような会話を交わしているうちに、とうとう酒を飲んでしまう。

一旦、飲み始めると、もはや止める事が出来ず、気がついた時には、大八車の上に縛り付けられ、どこへともなく運ばれていた。

その夜、一人外出していた菊乃 は賊に襲われる。

その様子を見ていた町人が、生臭坊主が荷車で連れて行かれたと、面白おかしく会話しているのを聞いたのが、ちょうど近くを通りかかった弟の伊三入道と霧隠才蔵。

清海入道は、住吉にあるとある屋敷の大木から吊るされていた。

だまされた事を悟り悔しがる清海入道の元に近づいて来たのは、佐助が投げた手裏剣で傷ついた左手を吊った孫兵衛とお近だった。

孫兵衛は、清海入道を何度もむち打ち、気絶させた後、お近に言いよろうとするが、その時、平野主水正を屋敷に案内して来た大脇軍太夫(国創典)に呼ばれる。

軍太夫は平野に、蔵の中に隠しておいた大量の火薬を見せる。

その頃、屋敷の奥の部屋で縛られていた菊乃を、お近が助け出そうとしていたが、そこに平野がやって来て、裏切り行為を発見する。

お近は孫兵衛に連れ出され、平野は菊乃に、幸村が本当に起つのか問いただす。

一方、庭に連れて来たお近に襲いかかっていた孫兵衛だったが、屋根の上に出現した猿飛佐助の忍術で、追い払われてしまう。

屋敷に忍び込んで来た伊三入道は兄清海入道の元へ、霧隠才蔵は猫に化けて、平野が菊乃に迫っていた部屋に出現する。

平野は怪しんで、猫を屏風に投げつけるが、猫の怪異で逆回転運動をさせられ、疲れ果てて部屋を出て行ってしまう。

そこに才蔵が出現する。

清海入道を木から降ろしていた伊三入道は、どこからか矢を射られ、驚いてひっくり返った拍子に井戸に落ちてしまう。

屋敷の警護の侍たちが、井戸の綱を斬ろうとするが、刀が動かなくなってしまう。

その隙に、伊三入道は綱を登って地上に戻り、清海入道も何とか地上に降り立ち、大暴れし始める。

屋根の上にいた佐助の忍術で、庭での戦いは、ものすごいスピードになる。

猛烈な勢いで暴れまくっていた清海入道は、勢い余って、蔵の扉を破壊してしまい、入り口に下げてあった行灯が蔵の中に転がり込んでしまう。

それに気づいた佐助や清海入道たちは、一目散に屋敷を逃げ出し、その直後、大爆発を起こした蔵は屋敷諸共木っ端みじんとなる。

翌朝、大阪城に出仕した木村長門守は、豊臣家の重大事が出来したと、居並ぶ家臣たちを前に報告する。

大阪城を粉砕せんとする悪計が判明したと云うのだ。

それを聞いていた平野は気色ばむが、その腕に包帯が巻かれていたのを見た長門守は、住吉の館を知らぬとは云わせぬし、この火傷が何よりの証拠と、その場で突き詰め、逃げ出そうとした平野をその場で斬って捨てると、「徳川と内通せし平野、長門が討ちましたぞ!」と高らかに言い放つ。

平野が斬られた事を知った徳川家康は、秀吉の遺言状を取り出すと、「前田利家に、秀頼15才までの摂政を任す」と書かれていた文章を、その場で墨で塗りつぶすと、破り捨ててしまう。

駿府城に向かっていた猿飛佐助と清海入道は、近くから聞こえて来る女の悲鳴に気づき駆けつけると、それは、又しても、しつこく孫兵衛に絡まれていたお近だった。

孫兵衛は、助けに現れた清海入道の姿を見ると、一目散に逃げ出してしまう。

再三、危機を救ってもらったお近は、九度山での事を佐助に詫びる、自分は、徳川の側室、阿茶の局の僕なのだと正体を明かす。

佐助は、前から分かっていたと、お近を許し、清海入道と共に駿府城に向かうのだった。

その頃、駿府城では、真田幸村が大阪城への入城を決意した事、間者が徳川家康の命を狙っているとの情報がもたらされ、城のあちこちに「忍び返し」の細工を施していた。

そんな中、家康は、大阪城攻略の作戦を練っていたが、その絵地図に矢が突き刺さる。

その頃、家康の寝所に忍び込んでいたお近は、秀吉の遺言状を盗み出し、逃げようとしていたが、孫兵衛に見つかり捉えられてしまう。

それを知った家康は、斬り捨ていと命ずる。

その途端、にわかに嵐が起こり、城内は地震に襲われる。

ふすまは倒れる。天井は抜け落ちる。庭の石灯籠は炎上する…

驚愕する家康の面前の庭先に、突如出現した猿飛佐助は、二刀流で戦い始める。

やがて、佐助の姿は清海入道に変身、30貫の重さの金棒を振り回し始める。

そんな中、孫兵衛はお近を襲おうとするが、佐助の忍術に操られ身動き出来なくなる。

しばらくして天変地異は収まるが、佐助は、地下の抜け道に逃げ込んだ家康を追いかけていく。

ついに、家康を追いつめるが、そこに鉄砲隊が出現する。

佐助は、掴まえた家康を盾にすると、「この白髪首、合戦まで預けておく」と言い放つ。

鉄砲隊が発砲すると、いつの間にか、佐助の姿は石灯籠に変わっていた。

九度山にいた真田幸村は、鎧甲冑に身を固め、馬にまたがると、同じく合戦姿になっていた十勇士たちに向かい、「いざ、行かん!いざ、大阪城へ、我行かん!」と檄を飛ばすと、馬を走らせる。

十勇士たちも、「エイエイオー!」と鬨の声を上げて応ずると、幸村の後を馬で追い、一番後ろからは、金棒を担いだ清海入道が、必死の形相で追いかけていた。

遠ざかって行く彼らの姿を、道ばたで見つめるお近の姿があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

昔はお馴染みだった(?)「真田十勇士」の活躍を描く、どちらかと言うと「子供向け」忍術映画。

冒頭からいきなり、「荒城の月」とか「桜(さくら、さくら、弥生の空は見渡すかぎり…)」などと云った有名な曲が、物語の随所に挿入されているのが、ちょっと不思議な感覚になる。

十勇士とは云っても、本作で活躍するのは猿飛佐助と清海入道がメインで、その他のメンバーはほとんど活躍しない。

昔から、子供に人気があったのは、忍術使いの猿飛佐助と、鬼が持つような金棒で知られる三好清海入道だったからかもしれない。

三好清海入道を演じているのは、はげヅラをかぶった舟橋元で、この作品では珍しく、ユーモラスな入道を懸命に演じている。

佐助を演じているのは、良く肥えた時代の長谷川一夫みたいな風貌の天城竜太郎。

当時はこうした若干デブキャラでも、目鼻立ちがはっきりしていれば、それなりに二枚目として人気があったのだろうか?

その鈍重そうな体型はともかく、この作品での佐助のあまりにも類型的なヒーロー像は、さすがに今観て憧れるようなものではない。

田崎潤演ずる真田幸村の活躍場面がないのも寂しいが、若き沼田曜一や丹波哲郎の姿は、いかにも初々しい。

特に、白塗り二枚目風のメイクをした沼田曜一は見物。

丹波の方は、まだ時代劇に慣れていない感じで、やや芝居や表情が固い。

忍術シーンは、いかにも昔のスタイルで、フィルムの逆回転や早回しを使った初歩的なトリック撮影。

猫が登場するシーンなどは、まるで「化け猫映画」を観ているような雰囲気。

すでに、東宝が「ゴジラ」(1954)をはじめ、色々な特撮大作を作っていた時代にしては、この作品、かなり遅れている印象がある。

子供向けなので、この程度のトリックでも当時は喜ばれたのだろうが、それにしては、風祭孫兵衛が、しつこくお近に言い寄ったり、お近が色仕掛けで清海入道に迫るシーンなどが何度も登場するのが、今の感覚ではちょっと解せない。

当時の子供時代劇では、こうした「悪女」とか「女を手篭めにしようとする悪者」の描写は普通だったのかもしれない。

本作で興味深いのは、猿飛佐助が、徳川家康の首を取る直前までを描いている事。

後に「忍びの者」で、秀吉の首を石川五衛門が狙ったりと、忍者によって有名な武将の暗殺が描かれる架空譚のような映画が増えるが、これは、そうした趣向の走りだったのかもしれない。

佐助が家康の首を取ってしまったのでは、歴史が変わってしまうので、合戦まで預けておく…と云う中途半端な終わり方にせざるを得なかったのだろう。

子供向けだけに、特に時代劇として重厚な見せ場と云う程のものはないが、大阪城内での、ずらりと家臣たちが居並ぶシーンなどは、子供向けとは思えぬ迫力である。