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娘十六ジャズ祭

1954年、新東宝、赤坂長義+京中太郎脚本、井上梅次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

長い長い階段を駆け下りる金髪の少女(雪村いづみ)。

それを追いかける王子様(雪村いづみ)。

王子様は叫ぶ。「待ってくれ!シンデレラ!」

タイトル

映画「シンデレラ」の大きな看板を路上で眺めている薄汚い少年(雪村いづみ)に、通りかかった警官(内海突破)が声をかける。

「どっから来たの?」「あっち」「どこへ行くの?」「こっち」

「名前は?」「ない」

「年は?」「シックスティーン」

「お父さんは?」「いない」「お母さんは?」「いない」

どうやら天涯孤独の少年のようだったので、警官が交番に連れて行こうとすると、少年は人ごみを逃げ回り、姿を消す。

キャバレー「セントルイス」では、今、バンドが演奏をバックに、美しい女性歌手がジャズを唄っていた。

それをホールの入り口付近で楽しそうに聞いていたのは、いつの間にか入って来たらしい先ほどの少年。

ボーイが運んで来た料理の上に乗っていたリンゴを、ボーイがよそ見をしている隙にチャッカリ盗んでかじっている。

しかし、すぐに支配人に気づかれ追い出されてしまう。

外に出た少年は、紳士の鞄を斬って、財布を抜き取っているスリを発見、声を上げたので、そのスリは逃げてしまい、先ほどの警官が慌てて追いかけて行く。

しかし、その直後、少年は柄の悪い二人の男に捕まり路地に連れて行かれる。

何事かと怯える少年だったが、地元のヤクザ金沢吾郎(植村謙二郎)とユサブリの鉄(清水金一)は、少年が持っていたボストンバッグを開き、その中に入っていた財布を取り出そうとする。

どうやら、先ほどのスリが、少年のバッグに投げ込んでいたものらしい。

しかし、少年はその財布を奪われないように握りしめる。

その時、「セントルイス」の裏口が開き、演奏が終わったばかりのジャズバンドのメンバー三田啓介(片山明彦)、新井謙一(高島忠夫)、松本大助(フランキー堺)と歌手の羽根美智子(新倉美子)が出て来たのだった。

その途端、金沢吾郎は少年に絡むのを止め、美智子に言いよる。

どうやら、かねてより、美智子の美貌に目をつけていたようだった。

そんな金沢から美智子を守りながら、バンドマンたちが帰りかけると、少年が追いかけて来て、自分も歌が唄え、信州から一人で出て来たので、仲間に入れてくれないかと話しかける。

しかし、バンドマンたちは相手にしないで立ち去ろうとする。

それでも、彼らの胸の内には、少年を置き去りにする後ろめたさもあり、その足取りは重かったし、後ろ髪を引かれる思いもあった。

その時、突如、後ろから美しい歌声が聞こえて来る。

先ほどの少年が、突如、路上で「想い出のワルツ」を歌い始めたのだ。

その歌声に驚いた通行人が集まり始め、バンドマンたちも、迷わず、少年の元に戻って聞き惚れる。

唄い終わった少年に惜しみない拍手を送ったバンドマンたちは、僕たちの先生を紹介しようと言い出す。

昔、浅草のオペラの指揮者をやっていた人で、実は自分たちも、浮浪児や孤児、チンピラだった過去があるのだが、みんな、その先生に拾われ、今まで面倒を見てもらったのだと言う。

希望荘と言う安アパートに戻って来たバンドマンたちだったが、めざとく、少年の姿を見つけた管理人(小倉繁)は、一人増し2000円とメンバーたちに言い渡す。

その後、階段を登っていた美智子は、少年に、何か聞こえないか?この階段を登る時はいつも何かが聞こえて来る「天国への階段」だと思っているのだと教える。

少年が耳を澄ますと、確かに、バンドマンたちが階段を上がり下りするたびに、すてきな音楽が聞こえて来るようだった。

短い階段を上がり下りしているバンドマンたちの様子を、部屋の窓から見ていた管理人は不思議がるのだった。

愉快な気分になり二階に上がると、二階の一室に住んでいる清子小母さんが窓から顔をのぞかせ、トミちゃんが寝ているとバンドマンたちに教える。

まだ幼い少女であるトミちゃんは、アパート中の天使的存在だった。

バンドマンたちは、少年にそれぞれ自分たちの部屋を教えた後、二階の奥にある先生の部屋に連れて行く。

すでに、みんなが先生と呼ぶ二宮正太郎(古川緑波)はベッドで寝ていた。

バンドマンたちは、部屋の棚に置いてある飾り時計を、浅草時代の芸人たちが贈った時計なのだと少年に教える。

その話し声で目覚めた二宮に、バンドマンたちは、連れて来た少年を預ってくれと紹介する。

仕方なく、引き受ける事にした二宮は、あまりに汚い顔をしている少年に顔を洗うように言いつける。

その時、少年が持っていたバッグの中身を調べていた美智子や二宮は、セーラー服やお人形が出て来たので不思議がる。

さらに、札束まで出て来たのでびっくり。

新井や松本も、帽子を取り、顔をきれいに洗った少年が、実は三つ編みをした少女だった事に気づく。

訳を聞くと、青木みゆきと名乗ったその少女は、村の人が、東京は怖い所だから男に化けて行けと言われたから変装していたと言うの。

札束の事を聞くと、スリが自分のバッグに勝手に入れていたもので、ここへ置いてくれるのなら今すぐ警察に持って行くが、置いてくれないのなら自分で使ってしまうと言う。

二宮は、自分は今、子供たちにヴァイオリンを教えて細々と暮らしているが、学校くらいは何とか行かしてやると約束する。

翌日、二宮がみゆきを連れて行ったのは、弟である二宮新次郎が校長を務める女学校。

性格が違う二人の兄弟は普段から仲が悪かったが、へそ曲がりである弟の性格を知り抜いている二宮は、「お前は、こんな立派な校舎は作れても、人間を作っていない!」と、言葉巧みに、新次郎が進んで、みゆきを無料で教育してみせると言い出すよう挑発し、まんまと成功する。

しかし、無事入学したみゆきが、音楽室でクラスメイトたちとジャズを唄い、それを英語の岸君子先生(大谷伶子)と二宮新次郎校長もうっとり聞き惚れている所へやって来た三宅先生(丹下キヨ子)が、日本には美しい日本の言葉があるのに嘆かわしいと怒りだす。

御宅のみゆきさんは、他の生徒たちに悪影響を与える恐れがあるので土曜日に学校に来てくれ、との呼び出し状を受け取った二宮は、帰って来たみゆきに、何かいたずらをやったのだろう。そんな子供は置いておけない。出て行きなさいと叱りつける。

自分は何もしてないと抵抗するみゆきだったが、やがて、本当に部屋を追い出され、どこかに姿を消してしまう。

しかれば反省して謝るだろうと考えていた二宮は、本当にみゆきが出て行ってしまったので、驚き慌てる。

その頃、キャバレー「セントルイス」には、金沢吾郎が子分を連れてやって来て、美智子に一緒に飲もうと誘いかける。

その様子を舞台上で見ていた三田は、いきなりステージを降りると、金沢を美智子から離そうとし、そこに、他のバンドマンや子分たちが応援に駆けつけ、店内で殴り合いの喧嘩が始まる。

店をめちゃめちゃにされた支配人は、直ちにバンドマンたちに首を言い渡す。

今月分の給料を要求した三田だったが、壊した椅子やテーブルの賠償が出来るのかと言われては諦めるしかなかった。

支配人は、美智子だけには残って欲しかったようだが、仲間と一緒に美智子もきっぱり店を辞める。

空腹のバンドマンたちは、首になってがっくりしながら帰るが、その途中で、街角でぽつんと立っていたみゆきと出会う。

アパートでは、清子おばさんに二宮が、みゆきが出て行ってしまったが、二三日でも情が移ってしまったと嘆いていたが、そこにバンドマンたちが帰って来て、首になったと聞かされる。

みゆきを見かけなかったかと心配そうに聞く二宮に、バンドマンたちは一斉に、自殺するかもしれないなどと悪い冗談を言い出す。

外に飛びだそうとした二宮だったが、階段の下に立っているみゆきを見つけるとほっとする。

清子おばさんに促され、笑顔を作った二宮の胸に、泣きながらみゆきが飛び込んで来る。

夕食の準備をした美智子は、元気のないメンバーたちに、自分たちで楽団を作ろうと言い出し、三田もそれに賛成し、バンドが出来たら結婚してくれると、突然、言い出す。

それを聞いた新井と松本は驚くが、三田と美智子がカーテンを閉め、その陰でキスをし始めたので、半分やけになって、自分たちはこげたトーストを頬張るのだった。

二宮は、自室でベッドに入る前、歌はどこで習ったのか?とみゆきに聞く。

みゆきは、お母さんが唄っているのを聞いて覚えたが、その母親は昔、有名な歌手だったと言う。

今度はみゆきが、二宮の事を何と呼んだら良いのかと言うので、何と呼んでも良い。おじさんでも、お父さんと呼んでも良いと応える。

恥ずかしげに、自分のベッドに入ったみゆきは、「お父さん、おやすみなさい…」とつぶやいたので、それを隣のベッドの中で聞いていた二宮はうれしそうに微笑むのだった。

翌朝、自室に集まった美智子たちから、自分たちで新しいバンドを作る事を聞いた二宮は、自らも張り切り始める。

新しいバンドの名前は「サンズ アンド ドーターズ」にしようと言う事になる。

そこへ、清子おばさんが駆け込んでいて、トミ子が腹が痛いと言い出したと言う。

盲腸炎だった。

すぐに入院させたものの、清子おばさんは、手術費用が心配そう。

一緒に病院について来たバンドマンは、それを知り、何とか援助してあげたいと思うが、失業中の今では、1万円もの手術代ではどうしようもない。

その話を待合室の椅子に座って聞いていたみゆきは、隣に座っていた客が読んでいた新聞に載った「大川プロ誕生」のニュースと写真に目を留める。

写真に載った大川なる人物は、みゆきがスリから財布を取り戻したあの人物だった。

大川芸能プロダクションの結成パーティを自宅で開いていた大川真平(高田稔)は、来賓客たちに挨拶をしていた。

その後、歌手の黒田美治が「星を見つめないで」を唄い始める。

そんな大川の屋敷にやって来たみゆきは、玄関で大川に会いたいと願い出るが、応対に出た大川のマネージャー吉川(有木山太)に追っ払われる。

屋敷内のパーティでは、大川の亡き妻蘭子(宮川玲子)が好きだった曲が突然演奏され始めたので、思わず大川は、妻と一緒に写った写真を眺める。

その時、庭先から、セーラー服を着た一人の少女が、その曲を歌いながら中に入って来る。

その歌声は、亡き妻を連想させる美しさだったので、思わず大川は聞き入ってしまう。

唄い終わった少女に近づいた大川は、彼女が、財布を取り戻してくれたみゆきだと知り感謝する。

みゆきは、トミちゃんの盲腸の手術に一万円が必要なので、貸してもらえないだろうかと頼み、大川はすぐに了承する。

みゆきは、お金を受け取ると、又庭から帰るが、その時、来賓客の一人だった外国人が大川に、「あなたはビジネスが下手だ。今の娘は大変歌が上手だった」と言うので、自分のうかつさに気づいた大川は、吉川にすぐに後を追わせるが、もうみゆきの姿は見えなくなっていた。

クリスマスの日、手術が無事済みんだトミちゃんは、二宮に人形が欲しいとねだる。

一方、みゆきは、学校の英語の時間、岸先生から英語を話せますかと聞かれ、詩なら言えますと、朗々と英語の詩を朗読し始める。

その発音の良さに驚いた岸先生だったが、やがて、みゆきは、その詩にメロディをつけて唄い始める。

クラス中が聞き惚れている時、又しても廊下を通りかかった三宅先生が、その歌声を聞きとがめ、みゆきを甘やかせたばかりいる岸先生を首にするよう校長に進言する。

学校を首になった岸先生を希望荘に連れて来たみゆきは、「サンズ アンド ドーターズ」のピアノ演奏者として雇ってくれないかと新井や松本に頼む。

最初は邪険にしていた二人だったが、岸先生の美貌を知ると、とたんに愛想良くなる。

そこへ、三田と美智子が戻って来て、いくら探しても、無名の自分たちを雇ってくれる所はないと言う。

それを聞いたみゆきは、有名なプロデューサーである大川に頼んでみると言い出す。

「アメリカン・ホリデイ・アイス」の水上スケートショーを客席で楽しんでいた大川は、客が来ていると案内係が伝言に来たので、入り口に向かうと、そこにみゆきがいたので、探していたのだと喜び、彼女の話を聞く事にする。

その夜、希望荘に戻って来たトミちゃんに、サンタの格好をした二宮は、約束通り、人形をプレゼントしていた。

近所の子供たちも招き、「サンズ アンド ドーターズ」のメンバーや清子おばさんらと一緒にささやかなクリスマスパーティを開いていたのだ。

そこに帰って来たみゆきに、二宮は用意していたパジャマをプレゼントする。

その様子を見ていた松本は、大切な置き時計を管理人に売って、二宮が金を作ったのだと気づくと、自分のオーバーを管理人の所に持って行き、置き時計と交換してもらいながら、今日はクリスマスなので、二宮先生は子供たちにプレゼントをやったのだと教えて立ち去る。

みゆきは二宮に、大川が呼んでいると伝えていた。

そこに、金沢吾郎がユサブリの鉄らを伴って乗り込んで来る。

美智子に、キャバレーが貸していた衣装代をすぐに払え、出来なければ今すぐ、キャバレーで唄えと言うのだった。

その時、みゆきが突然「ジングルベル」を唄い始め、子供たちも一緒に唱和し始める。

その様子を見ていたユサブリの鉄は、自分の子供時代を思い出し、取り出したナイフを床に落とすと、がっくりうなだれてしまい、金沢も、全員が唄い始めた「ジングルベル」の前にはただ立ちすくむしかなかった。

金沢は、今日は俺たちの負けだ。だが、いずれ挨拶に来ると捨て台詞を残し、希望荘から立ち去って行く。

そんな中、ユサブリの鉄だけは泣いて、その場に居残っていたので、二宮が優しく向かい入れる。

気がつくと、窓からそっと、管理人がオーバーを松本に返しに来ていた。

クリスマスのプレゼントと言う事なのだろう。

明くる日、勇んで大川に会いに行った二宮だったが、明日から四人を寄越してくれと聞くと愕然とする。

てっきり、自分も雇ってもらえると思い込んでいたからだ。

大川はさらに、みゆきを大川プロの専属にさせてくれと願い出る。

がっくりしながらも希望荘に戻って来た二宮は、三田、新井、松本、美智子らに、明日から大川プロにレッスンを受けに行くよう伝える。

寂しく一人部屋にいた二宮の元に、大川がやって来て、みゆきとの契約書を見せる。

その時、大川は、棚の上におかれていたみゆきの人形に目を留める。

二宮から、それはみゆきの母親の形見だそうで、彼女の母親と言うのは、昔歌手だったらしいと聞いた大川は、人形の背中に書かれた「R A」と云うイニシャルが、自分の妻だった「青木蘭子」のものだと知る。

大川は二宮に、これは妻の人形で、みゆきはさなえだと言い出す。

さなえが三つの時、妻は子供を連れて家を出て行った。

2、3年して戦争が激しくなったので、もう死んだと思っていたのだと言い、あの子がさなえなら、左腕にほくろがあるはずなので調べてみてくれと、大川は二宮に頼むが、それを聞いていた二宮は、突然「お帰りください!契約も出来ない!自分は、子供を捨てる人を呪う」と言い出す。

そのあまりの激情振りにたじろいだ大川は、部屋を追い出されてしまう。

その直後、みゆきが帰って来るが、その表情が暗い。

二宮は、今の話を聞かれたと悟ると、嫌がるみゆきのセーラー服の左腕をまくってみる。

想像通り、そこにはほくろがあった。

希望荘の表を立ち去りかけていた大川の自動車を窓から見つめるみゆきに、二宮は、お父さんの所にお行きと声をかけるが、みゆきは「いや、いや」と泣き出すのだった。

大晦日の日、真人間になったユサブリの鉄が希望荘にやって来た。

大川プロが催す「新春ジャズ祭り」は、元旦の午後6時からだと、「サンズ アンド ドーターズ」に伝えに来たのだ。

しかし、メンバーたちは何故か落ち込んでいた。

二宮が最近、酒浸りになり、アパートに寄り付かなくなったと言うのだ。

一方、大川の屋敷で暮らす事になったみゆきは、多忙な大川が不在の中、一緒に持って来たクロちゃんの人形や、母親蘭子が写った写真を見つめるだけの寂しい大晦日を一人で過ごしていた。

深夜帰宅した大川は、みゆきの部屋に向かうが、そのみゆきの姿が見えない事に気づく。

みゆきは希望荘にやって来ていた。

そんなみゆきを、清子おばさんと「サンズ アンド ドーターズ」の面々が優しく出迎える。

しかし、みゆきが一番会いたかった二宮は、ここ2、3日帰っていないと聞かされる。

清子おばさんは、二宮の部屋に入ったみゆきに、先生の気持ちがわかる。一人だけ取り残されたような気分になっているのだと伝える。

そこに、大川がやって来たので、みゆきと「サンズ アンド ドーターズ」の面々は、明日のショーに、二宮も司会役かなにかで雇ってくれと必死に頼むのだった。

開けて正月元旦。

「新春ジャズ祭り」の会場の楽屋では、せっかく大川が、司会として雇ってくれる事になったのに、その肝心の二宮の居場所が分からないと、みんなやきもきしていた。

そこに、ユサブリの鉄が駆け込んで来て、ガード下の飲み屋にいるのを見つけたと報告する。

へそ曲がりの二宮の性格を知り抜いているみゆきは、上手くやらないと、先生はうんと言わないに違いないとみんなに念を押す。

飲み屋で飲んでいた二宮の元に、浅草時代のファンと称する男(中村是好)がやって来て、酔っていた二宮をおだて始める。

ベアトリ姉ちゃんが懐かしいなど言うので、うれしくなった二宮はその場で唄い始める。

そんな二宮に気づかれないように店の中に潜り込んでいた「サンズ アンド ドーターズ」の面々は、他の客たちに、拍手をするように頼む。

周囲からの喝采を受け、すっかり上機嫌になった二宮は、そこにやって来た大川から司会を依頼されると、そのまま、メンバーたちと一緒に店を後にする。

ファンと自称してい男は、メンバーたちが雇った「サクラ」だったのだ。

「新春ジャズ祭り」の会場前に来た金沢吾郎は、子分たちにもチケットを渡し、野次り倒してショーをめちゃくちゃにしろと命じる。

やがて、ショーが始まり、酔った二宮が司会として中央に進み出るが、さっそくやくざたちの野次が飛び始める。

金沢吾郎は、偶然にも、二宮新次郎校長と三宅先生の隣の席に座る。

ろれつの怪しかった二宮だったが、会場がざわつきだした事に気づくと真顔になり、どうか話を聞いてくれと、必死に訴える。

その甲斐あってか、会場内は、話を聞いてやろうと言う雰囲気が出来上がり、野次っていたやくざたちは黙り込むしかなかった。

二宮は、舞台に並んだ「サンズ アンド ドーターズ」の面々は、かつて、戦災孤児や不良だったのだが、流しをやっていた自分が一人一人拾い上げ、今日まで音楽を与え育てて来たのだ。音楽の力は偉大です…と打ち明ける。

それを聞いていた、弟新次郎は、思わず「兄さん、偉いぞ!」と、客席から声をかける。

舞台上の二宮は、今日、自分がこうして司会が出来たのも、みんなこの子たちのおかげだと続けていた。

みゆきたちの心遣いはとっくに気づいていたのだ。

「心に太陽を、唇に唄を…」二宮の挨拶の後、「サンズ アンド ドーターズ」の演奏が始まる。

ピアノを弾いているのは、もちろん、岸先生だった。

美智子が「ヴァイヤ コン ディオス」を唄う。

そんな中、金沢吾郎は、一人黙って会場を後にしていた。

追いかけて来た子分たちが戸惑っ、呼び止めても、金沢は二度と振り返ろうとはしなかった。

育て子たちの演奏を、二宮は控え室で黙って聞いていた。

そこに、新次郎がやって来て、今後は、うちの学校の音楽教師として働いてくれと頼むが、兄同様、へそ曲がりな新次郎は頭を下げようとしない。

側でそれを見ていた松本が、机に何かあると指差すと、つい新次郎は何かと覗き込み、それがちょうど、頭を下げたように見えたので、二宮は機嫌良くなるのだった。

舞台では、みゆきが「遥かな山の呼び声」を唄っていた。

客席には、クラスメイトたちも応援に駆けつけていた。

舞台袖で見つめる二宮の肩に、大川がそっと手を添える。

やがて、みゆきは唄い終わり、緞帳が降りるが、客たちの盛大な拍手で、再びあがる。

舞台には、「サンズ アンド ドーターズ」の面々らに囲まれた、みゆきと二宮がおり、二人は「THE END」と書かれた紙を広げるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

良くあるシンデレラ物語パターンの「スター誕生」音楽映画。

若き雪村いづみのすばらしい歌唱力を楽しめるだけでなく、若きフランキー堺や高島忠夫のドラムやウッドベースの演奏を目にする事が出来る。

昔人気があった芸人を演ずる古川緑波との「新旧交代」のドラマにもなっている所がミソ。

アイドル映画らしく、冒頭から、シンデレラや王子様、男の子やセーラー服姿を披露する雪村いづみのサービス振りも見所。

「与田輝雄とシックス・レモンズ」や「多忠修とビクター・オールスターズ 」と云った当時の人気バンドや、シミキン(清水金一)、柳家金語楼と云った人気コメディアンの登場も楽しいが、何と言ってもこの映画、羽根美智子を演じている新倉美子や岸先生役の大谷伶子、そして回想シーンのみゆきの母親蘭子を演じている宮川玲子たちの上品で清楚な美貌振りを観るにつけ、当時の新東宝には、こんな美人がそろっていたのかと驚かされる。

今となっては、かなり古めかしい展開だと思うが、正月公開映画らしく、分かりやすい娯楽映画になっている。