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喜劇 各駅停車

1965年、清水寥人「機関士ナポレオンの退職」原作、松山善三脚本、井上和男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

勤続37年、無事故を誇るベテラン機関士寺山源吉(森繁久彌)は、朝、出発前に、区長の菊岡(山茶花究)から引退を勧告され、「辞めません!」と怒鳴り返していた。

国鉄には定年はないはずだと力む寺岡に、菊岡は、定年はないが慣例はある。今日まで無事故だからといって、明日事故を起こさないとも限らない。これは勧告だと、噛んで含めるように言い聞かそうとするが、寺岡は聞く耳を持たず、そのまま機関車に向かう。

C12列車が出発する。

タイトル

動き始めた機関車の運転席の中で、寺山は、窯焚きをやっている助手の竹尾(石井伊吉)に、俺と組むのが嫌か?俺がそんなに怖いかと聞いて来る。

それに対し、竹尾は苦笑いするばかり。

寺山は、男はきちんと口をつぐんでいるもの。歯を見せるもんじゃない。ナポレオンを見習えと、いつもの口癖が始まる。

一方、貨物列車の点検作業を同僚の杉二郎(名古屋章)としていた助手の丸山咲平(三木のり平)は、駅に停まった列車の降車口で誰かに手を振る女性の姿をニコニコしながら見送っていた。

女性の名前も知らない、丸山の一方的なプラトニックラブだった。

杉から、もっと良い部署に移ったら?と勧められても、憧れの女性の姿を見られる、この貨物線が良いと聞く耳を持たないくらい。

その日の夕方、風呂から帰って来る寺山に、菊岡助役が、区長が今夜懇談をしたいと云っているがと伝えるが、用向きは分かっているし、振る舞い酒は嫌いなのでと、寺山も聞く耳を持たない。

そんな寺岡と丸山は、飲み屋「万両」で顔を合わせるが、共に酔っていた事と日頃の鬱憤が溜っていた事もあり、いつしか口喧嘩が始まる。

ウィスキー派だった丸山を、焼酎派の寺山が最近の若いものは…とバカにしたのだ。

面白くない丸山は、飲んでいたコップを、女将のきみ(岡田茉莉子)から100円で買うと、その場で床に投げつけてたたき壊すと店を出て行く。

泥酔した丸山は、千鳥足で下宿先の安村時計店に帰って来る。

仕事中の安村(左卜全)が見送る中、二階の部屋に上がっていった丸山は、好きなクラシックの「運命」のレコードをかけると、亡くなった母親の遺影を見ながら、憧れの彼女に手紙を書こうと思いつく。

そんな丸山が、あろう事か、寺山と組まされる事になる。

丸山は菊岡区長に抗議するが、助手としては一番ベテランの君に寺山君を辞めさせて欲しいんだと、逆に菊岡から頼まれてしまう。

さらに、新任の機関士大田(南利明)も紹介される。

区長命令だとまで言われた丸山は、交換条件として、貨物の線にしてくれと頼む。

そんな事は知らない寺山は、ある日帰宅すると、妻の美子から、マリ子が殺された、次郎も喉を噛み付かれて…と言われたので、慌てて庭先に出てみると、ペットとして飼っていたウサギが、無惨にもイタチの犠牲になっていた。

子供に恵まれなかった夫婦にとって、ペットは実の子供以上の愛情の対象だっただけに、激情に駆られた寺岡は猟銃を取り出すと、山に登って発砲する。

庭でウサギを埋めていた美子は、その銃声を哀し気に聞いていた。

その夜、「万両」で丸山と飲んでいた大田は、寺山の悪口を盛んに言うので、側で聞いていたきみは不機嫌になり帰れと、大田だけを追い返す。

一人だけ無理矢理残した丸山に、女将のきみは、寺山は良い人だと話し始める。

20年前、自分の亡くなった主人は、寺山の助手をしていたのだと君は続ける。

昭和20年6月、列車走行中、空襲警報で停まった車内から、怯えた子供が逃げ出したので、それを追って飛び出した主人は撃たれて死んでしまい、その時以来、寺山には親代わりとして何かと面倒を見てもらっているのだと言う。

息子が大学を卒業するまでと思って頑張って来たけど、最近、東京の大学に言っている息子も生意気になって、母さん、再婚しろよなんて言って来るのだと言うきみの話を聞いていた丸山は、自分は両親ともいないし、機関士になる夢もないと答える。

終戦直後の変則的な試験制度で、チャンスがなかったんだとも。

そうこうしているうちに、おでんのタコばかり食べていた丸山は、慢性の胃けいれんに襲われ、救急車で高崎病院に運び込まれる。

苦痛に顔を歪める丸山だったが、看護婦の一人の顔を見て驚き気絶してしまう。

あの、いつも列車から手を振っている美女だったからだ。

やがて、丸山は寺山の運転する列車に助手として乗り込む事になる。

寺山は、どうせ、当直助役から何か頼まれたのだろうとかまをかけて来る。

丸山が黙っていると、俺の方こそ、お前がいかに無能な人間か報告してやると、寺山は言い張る。

やがて、丸山が便意を催して来て、大間々駅でトイレに駆け込む。

しかし、その後も下痢は収まらないようなので、寺山は愉快がって、わざと警笛を鳴らしたり、石を二三個、バンドに挟んでおけば良いなどと無責任なまじないを教える。

しかし、それを信じ、石炭をバンドに挟んだ丸山だったが、一向に効き目がないようで、次の駅でもトイレに飛び込もうとするが、中年女性が入っていたので、外で身悶えして苦しむ。

駅長が運転席の寺山に、早く出発してもらわないと、次の客車が来ると催促していたが、ちょうどそこに、恋人を連れた高橋(佐原健二)が通りかかり、自分が助手を代わってやると言い出す。

高橋はたまたまその日が明けだったのだ。

ようやくトイレから出て来た丸山は、列車が出発し始めたので、慌てて走り、何とか後部列車に飛び乗る。

すると、貨車の中に、パラソルをさした若い女性が座っていたので驚く。

運転席では、寺山が後部異常ないか?と聞き、高橋が異常なしと答えていたが、そこに「後部に婦人一名乗車」と言いながら、丸山が乗り込んで来る。

最終駅に到着し、折り返しまで二時間の時間が開いたので、近くの崖っぷちで休憩する事にした寺山は、持っていた梅干しを丸山に勧める。

しかし、丸山は胃酸過多なので、梅干しもダメなのだと断る。

寺山が、どこに住んでいるのかと聞くと、丸山は大間々に住んでいると答える。

家族はあるのかと聞かれた丸山は、両親とも胃がんで既に亡くなっており、兄弟もなく天涯孤独なのだと言う。

すると、それを聞いた寺山は、人間、孤独じゃなければいかんと言い出す。

妥協は人間の一番浅ましい姿だとも。

俺にもお前のような時があったと、寺山は続ける。

俺は、27の時にイタリア遠征したナポレオンを見習って、16の時に家を飛び出した。

外国に出る事を夢見、昼は人力車を引き、夜は英語の勉強に励んだものだったが、兄が破傷風で死んでしまったので、家に帰る事にした。つまり妥協したんだ。

梅干しが嫌いな兄だった…と語る寺山の顔を、ハッとした表情で見つめる丸山。

その後は、機関士になりずっと続けて来たが、いまでも腕は落ちてないと語り終えた寺山は、今夜付き合わないかと丸山を誘う。

その頃、大田から、自分は何時働けるのかと迫られていた菊岡助役は、ナポレオンが、自分で衰えに気づくまで待っているのだと答えて、大田を、さらにいら立たせていた。

折り返しの運転席の中で、丸山は、どうせ自分は長生きが出来ないのだから、一生助手で良いと答えていた。

それを聞いた寺山は、仕事も恋愛も、やればできるの精神でぶつからないと成功せんぞと発破をかける。

さらに、トンネルに差し掛かった時、この出口付近は、良く自殺者を引っ掛ける一番嫌な場所だと丸山に教えるのだった。

寺山の言葉で勇気を得た丸山は、早速高崎病院に向かうと、憧れの看護婦の姿を探す。

しかし、受付の看護婦(若水ヤエ子)から、薬なら、昨日一週間分渡したはずだと云われ、すごすごと引き下がるはめに。

その頃、きみは、「万両」の二階で、手乗り文鳥と戯れていた。

一方、寺山は、ウサギの敵討ちをせんと、イタチを捕らえる罠を作っていた。

その姿を見ていた妻の美子は、でも、その罠にイタチがかかると、そのイタチが可哀想になる。もう、情が移る生き物に愛情を注ぐのは懲り懲りとため息をつく。

そんな美子は、自分を裏切らないでね。きみさんの事よと、寺山に近づく。

死んだ旦那さんの親代わりになって付き合っているだけだと云うんでしょうけど、その後の感情は、女にはちゃんと分かるのよ。もし浮気をしたらこれよと、猟銃を寺山のあごの下に差し込んで来る。

その日、下宿に戻って来た丸山は、家主の安村にビールを振る舞いながら、背広を新調したいので金を貸してもらえないかと相談する。

それを着て、彼女とデートしたいと言うのだ。

きみの夫が亡くなってから20年目の命日がやって来る。

寺山は、毎年のように、万両の二階の仏壇の前で、終日飲む事にしていた。

その時、玄関を叩く音がし、きみが出てみると、慌てた様子で高橋が入って来て、息子のしげるが盲腸で入院したと母親に電話をし始める。

その声を聞いていた寺山が降りて来て、自分が交番を代わってやろうかと話しかけるが、子供の盲腸など病気の内に入らないと云うから平気ですと笑顔で云いながら、雨の中、出かけて行く。

折しも、台風13号が接近していたのだ。

寺山ときみは、高橋の事を案じながら、そのまま二階に戻る。

きみが、息子の一郎から手紙が来た事などを話し、寺山が帰ろうと仕掛けたとき、電気が消える。

きみは、地獄に堕ちても良いと、寺山を誘うような素振りを見せるが、それを振り払うように、変な感がする。機関区に行ってみると言い残し、寺山は店を飛び出す。

想像通り、高橋が乗り込んだ列車は転覆していた。

寺山たちは、総出で被害者救出に当る。

必死に高橋の姿を探し求める寺山だったが、高橋は機関車の下敷きになって死んでいた。

負傷者や遺体は、近くの学校の講堂に運び込まれるが、丸山はそこで働く看護婦の中に、あの憧れの女性の姿を認め、喜ぶ。

その浮ついた気持ちのまま、駆けつけた母親が号泣して抱きつく高橋の遺体を前にした寺山に、交代しかけていたそうですが、運が良かったですねと慰めのつもりで声をかけてしまい、寺山から馬鹿野郎と突き飛ばされてしまう。

寺山は、俺が代わってやれば良かったんだと悔やんでいたのだ。

ある日、丸山は寺山の家に遊びに来て、庭先の置いてあった罠に足を挟まれてしまう。

美子に怪我の手当をしてもらった後、二人は近くの川に、ヤマメ穫りに出かける。

美子が、急流に気をつけてと心配しするほど、流れの速い川に、ふんどし一つになった寺山が飛び込んでみせる。

いつまで経っても、浮かび上がって来ないので、さすがに心配になった丸山が、誰か助けてくれと声を上げた時、ヤマメを口にくわえた寺山が浮き上がって来る。

岩場で穫れたヤマメを焼き、焼酎を飲んでいるうちに、丸山は勇気がわいて来た。何でも出来そうだ!とハイになる。

二人はその後、残ったヤマメを手みやげに「万両」にやって来るが、鍵が閉まっている。

中から大正琴を引く音が聞こえているので、きみはいるはずと、鍵をこじ開けて中に入ると、昼間から、きみも酔っていた。

訳を聞くと、一郎が女を連れて帰って来て、結婚するので遺産を貸してくれと云って帰ったと云う。

愛情を注いで来たつもりの息子から、そんな事を言われがっかりしたきみは、もう金なんか貯めても意味がないので、明日から全部使っちまおうと、貯金を10万降ろして来たので、一緒に温泉にでも行こうと言い出す。

もう生きているものに愛情をかけるのは止めたと云うきみは、飼っていた文鳥を丸山にやると云う。

さっそく三人は、車で近場の温泉に出かける事にする。

一緒に温泉につかり、一つ部屋で雑魚寝をしていたきみだったが、一人夜中に起きだすと、近くの川辺に立ち尽くす。

それに気づいて追って来た丸山が、風邪を引くよと丹前を着せると、抱いてときみが誘う。

主人を亡くして、20年間もこうして生きて来たのよと嘆くきみを、丸山は頷きながら抱いてやる。

きみの文鳥は、丸山からのプレゼントとして、美子に渡される。

喜んだ美子は、お礼に、寺山が昔買った鞄をやったらどうと勧める。

しかし、寺山は、ものもらいが出来たと言いながら目薬を差すのに夢中で、生返事を返す。

その後、丸山は、「万両」で悩んでいた。

責任を取りたいと云うのだが、かえってきみの方はさばさばしたもので、気にする事はない。あなたは、勉強して機関士になれば良いのだと答える。

丸山に恋人がいる事は、ちゃんと気づいている様子。

ある日、乗務中の寺山は、蜂に頬を刺されて腫れ上がってしまう。

応急処置として、丸山に小便をしてもらい、それを頬に塗ってもらうが、駅に戻って来た時には、顔半分が腫れ上がっていた。

その様子を見た菊岡助役は、休めと命ずる。

先日の事故は、若い高橋だったからこそ、あの程度ですんだのだと言う声もあるのだとまで言われた寺山は休暇を取るしかなかった。

寺山が家で布団に横たわっていると、美子が目薬でしょう?と差し出して来る。

目が悪くなったんでしょう?一回、病院で診てもらったら?と勧める。

以前からの夫の異変に妻は気づいていたのだった。

渋々、病院で検査を受ける事にした寺岡。

一方、駅では、大田が、遅れている寺山に代わって乗務する事に決まる。

しかし、丸山は、まだ寺山さんから正式に休むと云う連絡がないのにと抵抗する。

何とか、整備に手間取っている振りをして出発を遅らせていると、寺山が病院から駆けつけて来る。

大田が、そんな寺山を無視して出発させようとすると、運転席に乗り込んで来た寺山が、大田を殴って外に突き落としてしまう。

折り返し駅での休息時、寺山は今日限りで止める事を丸山に打ち明ける。

先ほど、大田を殴った事が原因ではない。他にも殴りたい奴はたくさんいる。人の屁の数を勘定しているような奴は殴られて良いのだと続ける寺山は、目の検査をした所、相当悪くなっている事が分かった。自分たちはどんなミスでも許されないからだと言う。

今日の折り返しが最後の常務だと立ち上がった寺山の後ろ姿を見た丸山は、ちくしょう!と叫びながら、飲んでいたサイダー瓶を川に投げ入れる。

帰り道、機関士を辞めたらどうするつもりだと聞く丸山に、何も考えていなかった。死ぬまで列車に乗っているつもりだったからと答える寺山は、残りの駅が少なくなって来るたびに、感極まって来るのだった。

高崎の操作場に戻って来た列車は、ターンテーブルに乗って、倉庫に入ると、長く長く汽笛が鳴った。

寺山が、万感の思いを込めて汽笛を鳴らしていたのだ。

列車を降りた寺山は、慈しむように列車の点検を始め、先端部を「うん、うん」と頷きながら叩いてやる。

そうした姿を、先に帰りかけた丸山がじっと振り向いて見ていた。

駅舎に戻り、菊岡助役に定時報告を済ませた寺山は、その場にいた乗務員たちに向かい、皆さんにちょっと話があると切り出すと、今日限りで、機関士を辞めさせていただきます。長い間ありがとうございましたと礼を言う。

それを聞いた菊岡助役は、ご苦労さんでした。本当にご苦労さんでしたと、涙ぐみながら深々と頭を下げる。

ついに、ナポレオン自身が、自分の衰えに気づいたのだった。

さようならと言い残し、駅舎を立ち去る寺山の後ろ姿を、他の乗務員たちはいつまでも見送っていた。

その後、いつも通り「万両」で飲み始めた寺山だったが、今日は徹底的に飲み明かしましょうと誘う丸山に、否、今日は、このまま家に帰って飲むと云って店を出る。

丸山は、いつしか焼酎党になっていたが、そこに、安村がやって来て、速達が来たと手渡す。

何と、あの憧れの看護婦からの返事だった。

中には、高崎駅前の「ルパン」と云う店で待っていますと書かれているではないか!

喜び勇んだ丸山は、すぐに買い立てのスーツに着替えると、売店で仁丹を購入し、口に含むと、「ルパン」に乗り込んで行く。

憧れの彼女は待っていてくれた。

彼女は、お手紙をもらってうれしかったけれど、実は近々、自分は結婚するのだと言い、側の席に座っていた「こうちゃん」なる青年を呼び寄せる。

愕然とした丸山だったが、その場は青年と握手をして、二人の前途を祝福する。

しかし、その後、丸山はウィスキーをがぶ飲みし泥酔すると、町を彷徨っていた。

その頃、一人留守を守っていた美子の元へ、きよが訪ねて来て、寺山さんは帰っているかと聞く。

美子がまだだと答えると、寺山さんは今日、店で一升も焼酎を飲んだ。実は辞表を出したんですと教える。

それを聞いた美子は、安堵したように、やっと辞めましたかと答え、あの人には、機関士を辞めても生き甲斐がある。きみさんの店で飲むと云う…と冗談で返すと、あの人とは30年連れ添っているのですから、自殺するような人じゃない事は良く分かっていますと答える。

それを聞いたきみは、かなわないと云う風に、うつむいてしまう。

その頃、寺山は、酔って線路の上を歩いて帰っていた。

やがて、自殺者が多い一番嫌な場所に近づくが、トンネルの中に人の気配がする。

誰かと助け起こしてみると、泥酔した丸山ではないか。

間もなく、最終列車が来ると気づいた寺山は、嫌がる丸山の身体をトンネルの外に連れ出すと、てめえ、それでも国鉄マンか?そんなふぬけを轢いてしまったら、線路の赤錆になる。死にたかったら、ここから飛び降りてみろと叱りつける。

やけになった丸山は、死ねないと思っているんだなと捨て台詞を残し、後方のトンネンルの中に飛び込んで行く。

列車が近づく音が響いて来たので、慌てて寺山もトンネルの中に飛び込む。

やがて、最終列車がトンネルを通過し、寺山は丸山の姿を探すが、その丸山は、壁にへばりついていた。

二人は、互いの名前を呼び合いながら抱き合う。

その後、丸山は、寺山の家に下宿する事になる。

美子は、大きな子供ふが出来たけど、あれならイタチに穫られないで済むと喜んでいた。

丸山は、寺山について、又、ヤマメ穫りに来ていた。

今度は、丸山がふんどし一丁になり、川に飛び込む。

しかし、なかなか浮き上がって来ないので、さすがの寺山も心配して呼びかけるが、その時、丸山が顔を水面に出す。

安心した寺山が早く上がって来いと呼ぶが、なぜか丸山はもじもじして出て来ない。

その素振りから、ふんどしが流されてしまった事に気づいた寺山は苦笑いするのだった。

丸山のふんどしが、ひとすじ、川に流されて行く。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「喜劇」とタイトルについているが、中身は「ペーソス」である。

森繁、三木のり平、森光子、岡田茉莉子、山茶花究などの芸達者たちが集まり、地味ながら、哀愁漂う人情話を見せてくれる。

国鉄が全面協力しているだけあって、転覆事故の現場は迫力満点。

本物の列車を倒して再現しているのだ。

脱線そのものの再現シーンはないが、雨の中、横たわっている本物の機関車の様子は凄惨そのもの。

いつもは癖の強い役が多い山茶花究だが、今回は、人情肌の素直な好人物を演じていたり、シリアスに嫌な男を演じている南利明などの芝居が珍しい。

冒頭、森繁の相手をする助手役で石井伊吉(毒蝮三太夫)が出ているのも貴重。

「ウルトラマン」(1966)のレギュラーになる前の年の作品だと云う事になる。

佐原健二も、「ウルトラQ」(1966)で主役万丈目を演ずる前年だった事になる。

この頃の岡田茉莉子は、少し顎が二重になっており、もう少女と云う印象ではないが、まだまだ美しさが輝いていた頃である。

舞台となっている鉄道は、わたらせ渓谷鉄道の全身、足尾線だと言う。

山間の美しい風景や、登場する本物の機関車の勇姿も見物である。