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影の軍団 服部半蔵

1980年、東映、高田宏治+志村正浩+山田隆之脚本、工藤栄一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

筆頭老中松平伊豆守(成田三樹夫)は、世情は不安を理由に、江戸市中にいる浪人無宿を追放するよう下知を出す。

それは、逃亡するものは斬り捨てて構わんと云う冷酷な指示だった。

タイトル

その浪人狩りの巻き添えで、仲間が捕まったと頭の半蔵(渡瀬恒彦)の元に、部下たちが知らせに来る。

その救出に向かった半蔵たちだったが、仲間が三人殺害されてしまい、その遺体を荼毘に付す。

慶安四年二月、三代将軍家光が急死する。

仲間の一人仁平(きくち英一)が、江戸城内で何か起こったらしいと半蔵に伝える。

同じく仲間の一人一飛(蟹江敬三)は、大名屋敷に忍び込む好機到来と喜ぶ。

その夜、水道を渡り、大名屋敷に忍び込んだ半蔵一味は、寝ていた侍たちを裸にすると、贅沢な家財道具一切を盗み出し、翌日、それらの品物を市場で売っていた。

そこに、取り締まりの役人がやって来たので、袖の下を渡そうとした半蔵は、嘗めるなと、逆に殴りつけられてしまう。

江戸城に呼ばれて来た会津藩主保科正之(山村聡)は、待ち受けていた水戸光圀(金子信雄)から、三代様の実弟徳川家綱(上田孝則)を新たな将軍にするので、その補佐をするよう命ぜられる。

一方、先代死去に殉ずるように、堀田加賀守(河合絃司)をはじめとする元重鎮たちは、次々に辞職後、自宅で追い腹を斬らされていた。

松平伊豆守(成田三樹夫)も、そうした殉死者の一人のはずだった…。

そうしたある夜、一飛は、またもや、盗みに入る屋敷を外から監視していた。

内藤山城守(仲谷昇)は、天井裏に忍び込んだくせ者に気づき、槍で突くが、姿を現した半蔵は、死んで行った仲間たちの為、その首を貰い受けると口上を述べる。

相手が単なる大名荒らしではないと気づいた内藤山城守は、お主に会いたい人物がいるので、明日巳の刻、久弥両国寺の山門まで来いと言う。

興味を持った半蔵は、翌日、両国寺に出かけてみるが、そこで待ち受けていたのは、あろう事か、殉死したはずの松平伊豆守だった。

今のままでは生ける屍も同然と語り始めた伊豆守は、自分に手を貸さぬか?そうすれば、金でも地位でも、何でも思いのままくれてやると言う。

仕事を聞いた半蔵に、伊豆守が告げたのは、会津藩主暗殺だった。

即座に、半蔵は断る。

幕府の犬どもに利用されるだけ利用され、最後はボロ屑のように捨てられた先代服部半蔵の二の舞は踏みたくないと言う。

しかし、その返事を聞いた伊豆守は、このまま出て行けるのか?と不気味に聞く。

出て行ってみせるともと半蔵が答えた時、「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前…」と云う九字の呪法がどこからともなく聞こえて来る。

次の瞬間、突如、廊下に立っていた半蔵に向かって炎が飛んで来る。

見ると、廊下の外に立つ黒い怪物が、口から火を噴いている。

やがて、その黒い身体は、殻が割れるように崩れ落ち、中から精悍な男の身体と顔が現れる。

半蔵は、裏の墓場に逃走する。

半蔵が逃げ去った後、黒い殻を脱ぎ捨てた男、甲賀忍者の頭目、甲賀四郎兵衛(緒形拳)に伊豆守は、甲賀と伊賀を両輪にして、日本中を情報を集め、やがては国全体を支配したいので、お前だけが頼りだと漏らす。

一方、からくも寺から逃げ出した半蔵は、恐ろしい男に会ったと一飛に教えていた。

ある夜、寝所に忍び込んだ黒い影に気づいて目覚めた保科正之だったが、すぐ顔の近くに現れた覆面姿の男は上の才蔵(西郷輝彦)と名乗り、もう一人、屏風の後ろに隠れていた黒服面の男は、下の才蔵(渡瀬恒彦)だと教え、服部家の再興を願えないかと売り込みを始める。

屋敷の外に出た二人の才蔵は忍び装束を脱ぎ町民の格好に戻っていたが、平素は由比民部と名乗っていた上の才蔵は、会津藩の保科に実権握られれば、幕府は自分たちの思いのままになると、自らの野心を打ち明ける。

先代服部半蔵(藤田まこと)が、不遇のまま自決して果てた事を、二人の兄弟は今でもはっきり覚えていた。

先代は、長男の上の半蔵に介錯を命じ、この首を半蔵門に掲げるのだと言い残して果てた。

上の半蔵は、幕府内に入り、権力を握る清算があると計画を話すが、そんな野心には全く興味がない下の半蔵は、わしの所に来んか?妹の小萩が喜ぶと誘いかけるが、上の半蔵は聞こうとしなかった。

その小萩(原田エミ)は、翌朝、仲間たちが商売に出かけた後、部屋を掃除していたが、出かけたと思っていた小六(本間優二)が、急に抱きついて来たので、驚いて抵抗する。

危うい所を、兄の下の半蔵が帰って来て、小六を殴りつけてくれたので事なきを得る。

小六が出て行った後、夕べ、上の半蔵と会った話をし、お前はあいつの所に行くのが一番良いと思うと妹に話して聞かせる。

小萩が、下の半蔵の事を好きな事は知っていたからだ。

下の半蔵は、甲賀の老いた草(町民に紛れて長く暮らしている忍者)を掴まえると、黒い忍者の正体に付いて聞こうと拷問するが、成果は得られなかった。

半蔵は、江戸城が見える今の住処が気に入らなくなったので、引っ越しを決意する。

その際、上の半蔵の元へ行けと命じられた小萩は、素直に、上の半蔵の所へ行くが、そこでも、ここは男の所帯だから帰れと言われてしまう。

小萩は、それでも、近所の軒下でじっと待ち続けるしかなかった。

松平伊豆守は、政治資金として、商人たちに30万両を三日以内にそろえてくれ、このまま会津に天下を取られていも良いのか?と依頼していたが、その密談を、忍び込んだ下の半蔵が聞いていた。

そこに、あの黒い忍者が出現したので、半蔵は慌てて逃げる。

伊豆守が話していた30万両を横取りしようと仲間たちで相談していた下の半蔵の元に、一飛が戻って来て、あの化けものは甲賀衆だろうと情報をもたらす。

下の半蔵たちは、強奪に供え、独自の忍び装束に身を固める。

一方、黒い忍者甲賀四郎兵衛(緒形拳)も、大きな壺の中に墨を入れると、その中に身体を全身沈め、黒く染まる。

副将軍の船を半蔵たち伊賀忍者が襲撃するが、その船は大爆発を起こし、襲撃した伊賀忍者たちは、逆に、待ち受けていた甲賀忍者たちに襲われる。

罠だったのだ。

近くの林に逃げ込んだ半蔵たちだったが、土の中に身を隠していた甲賀忍者たちが出現し、次々に半蔵たちに襲いかかって来る。

甲賀忍者の背後には、黒いマントを着た甲賀四郎兵衛が立っていた。

戦いは持久戦の様相を呈して来たが、途中で飛び出してしまった半蔵配下の忍者が二人、敵の罠にかかり死んでしまう。

半蔵たちは、急ぎ、二人の遺体を引き上げると、穴を掘って埋める。

両者こう着状態のまま朝を迎えるが、半蔵は、全員で総攻撃をかける決意をする。

体当たりして行く戦いの中、さらに仲間がやられてしまう。

甲賀四郎兵衛は、口から油を吹き、火炎攻撃を仕掛けて来た後、雪山に逃げ込む。

いつしか、甲賀四郎兵衛は秩父郡大滝村の寺の住職になっていた。

深山奥の院常海と名乗る僧侶として江戸城に呼ばれた甲賀四郎兵衛は、家綱様、ご病弱故と云う理由で、お楽の方(中島ゆたか)から祈祷を依頼される。

甲賀四郎兵衛は、祈祷と称して、お楽の方の身体を快楽に誘う。

下の半蔵の元には、上の半蔵が小萩を連れて来ていた。

しかし、下の半蔵は、すでにお前の嫁にやった女だから、連れて帰れと言い、引き取ろうとしない。

上の半蔵は、敵の頭目は甲賀四郎兵衛と言い、伊賀者を根絶やしにするつもりだ。甲賀四郎兵衛と伊豆守を倒すため、自分と協力しろと下の半蔵に持ちかける。

伊豆守は、必ず会津と永井信濃守(田畑猛雄)の二人を狙うと云うのだ。

その永井信濃守は、家綱に会い、挨拶をしていた後、江戸城内に居着くようになった深山奥の院常海にも挨拶をするが、その際、家綱様を日光へ御参詣するように進言するよう、常海こと甲賀四郎兵衛は相手に催眠術をかける。

さらに、明日の評議に会津を出しては行けない。魑魅魍魎を斬り殺すのだと命ずる。

その夜、会津こと保科正之の屋敷内で酒を振る舞われていた永井信濃守は、突然、狂気に取り付かれたような表情で保科正之に刃を向ける。

警護の者らによって、その場で斬り殺された永井信濃守は、病死として処理されることになる。

保科正之に呼ばれた上の半蔵は、甲賀四郎兵衛のあやかしの術にやられましたな。その背後には松平伊豆守がいると答える。

上の半蔵は「カゲ」、そこにやって来た下の半蔵は「クサ」と、自分たちの役割を答える。

望みは何かと保科正之から聞かれた上の半蔵は、将軍家に抱えられることと答えるが、下の半蔵は、分からん、四郎兵衛を倒してから考えると答える。

その後、江戸城に出向いた保科正之は、生きていた松平伊豆守と対面する。

そこに水戸光圀がやって来てうれしそうに、執政殿を呼び出したのは自分だと明かし、自分は殉死の習わしに反対であり、出仕させ、手伝わせれば良いのだと告げる。

しかし、この光圀の決定に、青山図書(三浦洋一)は「忠臣二君に仕えず」と云う武士道をないがしろにするものであると猛反対する。

その頃、四郎兵衛を呼び寄せた伊豆守は、会津は真っ向から戦いを仕掛けるつもりだと伝えていた。

いよいよ、家綱の日光御参詣が始まる。

途中の本陣に泊った家綱の寝所には、天井から鎖が降りて来て、そこから垂れて来た液体から煙が漂う。

その煙で、側に付き添っていた腰元たちは、眠気に襲われ、寝入ってしまう。

異変に気づいて駆けつけた時には、もう家綱の姿は消えていた。

会津こと保科正之は、勅使下向前に、何としても家綱公を見つけなければならないと危機感を募らせる。

早速、青山図書は、上下二人の半蔵に相談する。

上の半蔵は、大奥の中に手引きした者がいるに違いないので、小萩の力が借りたいと言い出す。

しかし、それを聞いた下の半蔵は、小萩は、自分の野望を遂げる為の道具でしかないのかと怒り、天下穫りの片棒担ぎなど俺の性分にあわないと断ろうとするが、小萩自らが行くと言い出す。

下の半蔵は、どうせ小萩はお前の嫁にやったのだから勝手にせいと諦める。

大奥では、祈祷と称して宝珠院に近づいた四郎兵衛が、女の身体を快楽に誘っていた。

その様子を盗み見していた小萩は、腰元の一人として大奥に入り込んでいた甲賀ものに斬られてしまう。

一方、伊豆守の口から家綱神隠しの話を聞いた水戸光圀は、会津を呼び寄せ、この度の失態の責、いずれその方に問うぞと釘を刺す。

下の半蔵の仲間たちは、林の中に捨てられていた小萩の死体を発見する。

それを引き取ろうとした時、甲賀忍者たちが襲撃して来る。

林には、甲賀忍者が撒いた霧が立ちこめる中、どこからともなく、不気味な呪文が聞こえて来る。

見ると、小六がやられていた。

下の半蔵は、甲賀忍者の見張り役を追いかけて行くうちに、山寺に行き着く。

その中には、忍者が待ち受けていたが、戦っているうちにくノ一と知る。

織江として大奥に入り込み、小萩を殺した四郎兵衛の娘千里(森下愛子)だった。

下の半蔵は、千里をその場で抱いて犯す。

半蔵が帰った後、千里は一人で水をかぶり、禊ぎをする。

その頃、上の半蔵の方は、小萩と小六の二人の墓の前で手を合わせていた。

その夜、山寺に帰って来た四郎兵衛は、娘の千里が、半蔵に犯されたことに気づき,自らの腹を裂き、死ね!伊賀者の種を断て!と命ずる。

後日、伊豆守に呼び出された青山図書は、奥女中の証言として、逆徒と一方的に言いがかりをつけられると、その場で斬られてしまう。

無念やるかたない青山図書は、自ら刃を腹に突き立て、果てる。

会津こと保科正之も、お役御免で謹慎となる。

四郎兵衛は伊豆守に、家綱は城中鬼門櫓に移したと伝える。

その後、上下二人の半蔵の住処にやって来た四郎兵衛は、お互い生き延びる為に取引をせんかと言い出す。

この件から手を引けば、7分を伊賀に分け与えようと言うのだ。

上の半蔵が、世継ぎはどこか、奪ってみせると言うと、四郎兵衛は平然と城中鬼門櫓だ、奪ってみろと受けて立つ。

四郎兵衛が帰った後、下の半蔵は、鬼門櫓には、二重三重の罠が仕掛けられているはずだと呟くが、いざとなれば、鬼門櫓をぶっつぶすと言い切る。

勅使の下向まで、後五日しか残っていなかったが、下の半蔵は、九十九(鳥巣哲生)、一飛ら三人を鬼門櫓を崩す細工の準備の為出向かせる。

三月十八日、三人は秘かに鬼門櫓の中に忍び込む。

櫓の中には、想像通り、甲賀の忍者たちが厳重な見張りを続けていた。

その目をかいくぐり、一飛たちは、崩しの細工を慎重に進めて行く。

三月十九日、上下二人の半蔵の元に、半刻後、明神が森で落ち合おうと云う連絡が入る。

小萩の上を壺の中に入れた下の半蔵は、住処を出ようとするが、入り口の所に千里が一人出来ていることに気づく。

千里と残った下の半蔵は、なぜ自分を助けたのかと千里から問いつめられ、お前は俺の子を宿した。子供に伊賀も甲賀もないと答える。

千里は、もう自分は甲賀の元へは返れない。あなたも鬼門櫓へ行くのは止めて。決して生きては帰れない。私一人で死にたくないとすがりついて来る。

下の半蔵は、俺が死に、お前も死ねば、クサは絶える。生き残ってくれ。運があったら又会おうと言い残し、住処を出る。

その夜、千里は、自らの腹に、石を打ち付け、子供を堕ろそうとしていた。

霧の中、上下二人の半蔵と仲間たちは、鬼門櫓の中に侵入すると、迎え撃つ甲賀衆たちと対戦しながら、階段を上って行く。

仲間たちは次々に倒されていき、もはやこれまでと、崩せ!と下に向かって叫ぶ。

しかし、半蔵は、まだ早いと制止しようとするが、下で待ち受けていた一飛たちは、土台部分の大黒柱を次々に崩し始める。

最上段には甲賀四郎兵衛が待ち受けていた。

見ると、天井から吊るされた駕篭の中に幼い家綱が入っていると云う。

甲賀四郎兵衛は、俺を殺しても、世の中は変わらんぞと不敵に笑う。

二人の半蔵は、甲賀四郎兵衛に立ち向かい、何とか倒すが、上の半蔵は、四郎兵衛の刃に傷ついていた。

それを助けようとした下の半蔵だったが、上の半蔵が構うなと云うので、駕篭の中にいた家綱を救い出すと、櫓を駆け下りる。

鬼門櫓は、その直後、崩壊してしまう。

半蔵は、住処に戻って来ると、死んでいった仲間たちの遺髪を眺める。

そして、鍋底の墨を顔に塗り付けていく。

水戸光圀と松平伊豆守は、江戸城に到着した勅使を出迎えていた。

新将軍家綱御宣下の儀が始まっていたのだ。

そこに、無事に戻った家綱が、何事もなかったかのように登場する。

そうした中、城に忍び込んでいた下の半蔵は、天井を開け、平伏して居並ぶ大名たちの中に飛び込むと、伊豆守に斬り掛かる。

唖然とした伊豆守は、その場で息絶えてしまう。

その後、川に、仲間たちの遺髪を流す、下の半蔵の姿があった。

その後、橋の上で、むしろをかぶって寝ていた半蔵は、起き上がって雄叫びを挙げるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

服部半蔵が二人いたと云う奇想で組み立てられた忍者映画。

アメフトのユニフォームにヒントを得た忍び装束やアクションなど、斬新なアイデアが目立つが、世継ぎ問題に端を発する江戸城内の権力闘争などの部分はありふれた印象で、全体的に長過ぎることもあり、やや冗漫な印象になってしまっている所が惜しい。

緒形拳演ずる甲賀四郎兵衛の存在感は圧巻で、これだけでも十分、面白いクライマックスが期待出来るのだが、いかんせん、ラストの見せ場が、櫓崩しと云う、特撮スペクタクルを用意してしまったが為に、肉弾相打つ壮絶なチャンバラの醍醐味がやや失われてしまったような気がする。

二人半蔵と云う設定ながら、西郷輝彦演ずる上の半蔵の方の印象が弱いのも惜しまれる。

二人の半蔵は兄弟だと思うのだが、妹の小萩が、なぜ、兄である上の半蔵を慕っているのかが良く分からない。

下の半蔵も、小萩を上の半蔵の所に嫁にやったなどと云っている。

小萩は、二人の半蔵と血が繋がっていないと云うことなのか?

色々、細部に納得がいかない部分があると云うことは、ひょっとすると、今回観た作品は完全版ではなかったのかも知れない。

部分部分に見所はあるものの、全体としては散漫な印象で、今ひとつ強烈なインパクトが残らないのは、やはり、最大の見せ場ともなるべきクライマックスの演出が弱かったと云うことなのかも知れない。


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