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裸の大将

1958年、東宝、水木洋子脚本、堀川弘通監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

この作品は、山下清の「日記」を基に、自由に脚本化したものである。

トンネルを抜けようとする下着に半ズボン姿でリュックを背負った山下清(小林桂樹)に、危ないと注意しながら追いかけて来る山田巡査(市村俊幸)。

その背後から、蒸気機関車が迫って来る。

その機関車がトンネルを抜けた後、顔を煤で真っ黒にした清を、山田巡査が、やはり追いかけて来る。

結局、山田巡査に捕まり、交番に連れて来られた清は、色々尋問されるが、線路を歩いていたのは、線路はまっすぐだから。自分は頭が悪いので、八幡学園と云うそう言う子供が通う学校に行っている…などと語り始める。

 

その説明を信用出来ない山田巡査は、清が背負っていたリュックの中身を見せてみろと云う。

寝間着代わりになる柔道着、箸、茶碗とお碗、針と糸、磨き砂に石鹸…

茶碗とお碗は何に使うと聞かれた清は、食べ物をもらう時に使うと答える。

物乞いなのか?一日、いくらくらいもらうのかと聞かれると、2円くらいもらうと答える清。

説明を聞き終えた山田巡査は、そう言う人物がこの町の近くをうろついたのでは困るので、どこか遠くへ行けと命ずる。

清は、今、日本はアメリカと紛争中なので、東京にいると危ない。

配給米は南京米などで、ぱらぱらして旨くないので、田舎に行くのだなどと意味不明なことを言う。

タイトル

八幡学園の壁に貼られた清の貼り絵を見ながら、清の母(三益愛子)は先生に、「あの子はどこに行ったんだろう?」と相談していた。

間もなく、徴兵検査があるので心配していたのだった。

先生は、春になると飛び出す癖があるので…と困惑するばかり。

その頃、清は、とある農家の台所に入り込み、女房相手に食い物をねだっていた。

東京市の浅草から来た自分は、母親が死ぬ時、田舎に行って使ってもらえと云われた。土方をやっていた父親は酒を飲み過ぎて3年くらいで死に、下駄の前つぼ作りの内職をしていた母親は風邪で一ヶ月くらいで死んだ。

自分は、尋常小学校の6年の時に学校を辞めてしまい、今の八幡学園に行くようになった。

年は、大体16歳…と説明する清の言葉に女房はビックリする。

どう見ても、16には見えなかったからだ。

腹が減ったので、むすびを下さいとねだる清だったが、米はないと言いながらも、女房は小さな焼き芋を渡す。

しかし、すぐに食べ終えてたらないと清が言うので、大きな芋を与える。

清は、自分は力が弱いけど、ここで使って下さい。何でもしますからと申し出るが、女房は、うちは貧しいのでいてもらっても困ると、清を追い払う。

それでも、大きな芋をもらえたので満足だった清は、母親が死んだなどと嘘を言ってしまった事を、心の中で少し反省していた。

嘘をつかないと、食べ物をもらえない事を知っていたからだった。

その後、今度は裕福そうな農家の縁側にお邪魔し、ちょうど近所の農民たち(森川信)が集まって茶を飲んでいる所に混ぜてもらった清だったが、いつもの嘘を、主人(高堂国典)が怪しんでしまう。

小学校に行ったのなら、教育勅語を言ってみろと言い出すので、清はしどろもどろになりながら答えようとしながらも、全員、それを目をつぶって聞いている事に気づくと、食っていた饅頭をほとんど懐にねじ込んで逃げ出してしまうのだった。

その後、駅の近くで出会い、清の話に同情した汲み取り屋のおばさん(沢村貞子)は、世話好きなのか、阿武田駅前にある弁当屋なら、食い物もあるし、身体も頭も悪い清でも働かせてくれるのではないかと思いつき、事情を手紙に書くと、清に持たせ、バスの車掌(団令子)に、阿武田駅まで連れて行ってくれと頼み込む。

車掌は、出発後、清に運賃25銭を要求するが、清が10銭しか持っていない事を知ると困惑する。

汲み取り屋のおばさんは、車掌に話せば、ただでバスに乗せてもらえると思っていたのか、切符すら買い与えてくれなかったのだ。

たまたバスに同乗して、その様子を見ていた警官が、阿武田駅にある「柏屋食堂」に清を連れて行ってくれる。

しかし、清が持っていた手紙を読んだ主人(中村是好)は、「弁当屋」なら、うちではなく、向かいにある店だと呆れる。

その後、無事、清は弁当屋で使ってもらえる事になる。

弁当屋は、駅弁作りで毎日、てんてこ舞いの忙しさだった。

女主人(一の宮あつ子)は、毎日、暗いうちからみんなを起こすので「にわとり」と言うあだ名。

主人(有島一郎)は、隠れていて、いきなり現れるから「潜水艦」と呼ばれていた。

しかし、清は、何をやっても要領が悪く、仕事は失敗だらけ。

蠅叩きをやらされると一日中そればっかり。

飯を詰めた折りをたくさん運ばされると、バランスを失い、全て落としてしまうし、駅売りに行かされると、あちこちの車窓からの注文におろおろするばかりで、何とかコーヒー牛乳やあんぱんは渡せても、料金はもらい損ねたり。

結局、芋の皮むきをやらされる事になるが、不器用ながらも懸命に皮を剥き続けている清の様子を見ていた従業員たち(堺左千夫、大村千吉)は、もっと要領よくやれよとからかう。

清は、その言葉に対し、人が見ていない所では将棋や花合わせをやり、人が見ていると仕事をやる事が要領よくやる事なのかと聞くが、その時潜水艦が姿を現したので、将棋や花札をして遊んでいた従業員たちは慌てる。

清は、飯の中のゴミを取り出す仕事をやらされる。

当時の炊きあがった飯には、ネズミの糞やゴキブリの死骸などが大量に混入していたからだ。

そうした清を、女従業員たち(中田康子、横山道代、三好栄子)は、あれこれ話のタネにして面白がる。

清に、この中で、結婚するならどの女が好みかと聞かれた清は、40歳くらいの女が良いと答える。

若い女と結婚すると、廻りの人たちから、自分が若い女に使われているように思われ恥ずかしいが、年を取った女に使われても恥ずかしくないからだと言う。

子供の作り方など知っているのかとからかわれると、子供など作ってどうするのか?いらないものを作るのは要領が悪いと答えて、みんなを笑わせる清だった。

やがて、弁当屋の従業員の一人、中村よしろう(大塚国夫)の出征を駅前で見送る事になる。

よっちゃんことよしろうには、けえちゃん(青山京子)と云う好きあった従業員仲間がいた。

みんなが万歳をしている中、一人清は、戦争に行くと命を取られるとぶつぶつ言っていたため、他の従業員から叱られるのだった。

その夜、清はお化けに指を噛まれる夢を見てうなされる。

隣に寝ていたりっちゃん(堺左千夫)に揺り起こされた清は、自分で指をくわえていた事を不思議がるが、いつも腹を出して寝ている事をりっちゃんに注意されても答えなかった。

戦争に行くのが怖かった清は、腹を冷やして下痢になり、徴兵を免れようとしていたのだった。

清の目論みは成功し、腹を下して寝込んでしまうが、三日目ににわとりが心配してうどんを煮て枕元においてくれたりすると、食欲に負けて食べてしまうのだった。

結局、三貫(11.25kg)くらい痩せたかったが、三百匁(11.25g)くらいしか痩せる事が出来ず、潜水艦から叱咤激励された事もあり、仕方なく起き上がる清だった。

正月が近づいた12月30日に、弁当屋全員で餅つきをする。

清は、明後日になると自分は21になり、徴兵検査を受けなければならない事を知っており、それを怖がっていた。

来年いくつになるんだと聞かれた清は、22…などと口走り、本当の年を知っていた従業員に笑われる。

そこに、五味巡査(柳谷寛)がやって来て、従業員の年齢確認などし始めたので、清は生きた心地がしなかった。

その夜、にんじんの皮むきをやっていた清の元にやって来たおばさん(三好栄子)は、清の仕事は丁寧だなどと持ち上げ、洗濯と薪割りをやっておいてくれと言いつける。

清は、徹夜でその仕事をきちんとこなした明け方、弁当屋を逃げ出す事にする。

その頃、芋の買い出しから帰って来た所で空襲警報を聞き、退避していた清の母親は、やって来た八幡学園の先生から、清は、弁当屋から逃げ出した所までは分かったが、その後の消息は分からない。おそらく、また、食い物屋にいるのではないかと云う報告を受けていた。

その想像通り、清は「魚吉(うおよし)」と言う食堂で働いていた。

その近くに、陸軍の輸送指令部隊が駐屯していたので、兵隊が始終出入りしていた。

女将さん(東郷晴子)の代わりに、勤労奉仕に行かされていた清は、店に戻って来ると、主人(加東大介)に、今、味方の飛行機を高射砲で撃ち落としたとみんなが言っていたと伝えるが、主人は店に聞こえると注意する。

ここの主人は、人が見ていない所でも神様は見ているぞと言いながら、清に面倒な事ばかり押し付ける癖があったが、自分がした屁まで、清のせいにされるのはかなわなかった。

米の飯は司令官に、麦飯は兵隊に、清たち従業員には、いつもスイトンが出されると云う事も分かる。

そんな中、先ほどの友軍機を誤射したと言う清の話を聞きとがめたみね上等兵(南道郎)が、炊事場に因縁をつけて来るが、女将がサービスとしてリンゴを渡し何とかなだめる。

上等兵と云うのは、兵隊の神様だと思い込んでいた清にとって、みね上等兵が横柄なのは不思議だった。

ある日、清が育てていた朝顔の苗を、この非常時に食えもしないものを作るなと怒鳴りながら、みね上等兵は踏みつぶしてしまう。

その後も清は、主人や女将さんの身代わりとして、竹槍や消火作業の訓練にかり出される。

ある日、「魚吉」に帰って来た清は、母親がやって来ている事に気づく。

主人と女将は、母親から清の本当の年を聞いたらしく、21なら徴兵検査を受けなければいけないだろうと文句を言われる。

とうとう、清は徴兵検査を受ける事になる。

体格や肺活量では、人並み以上だったので、何としてでも兵隊逃れをしたい清は、自分は尋常小学校の5年までしか言っていないので、字が読めないと主張する。

清が頭が悪い事を知っている検査係は、「この『は』と言う字は何と読む」と、わざと答えを明らかにして問いかけるが、清は頑として読めないと答える。

結局、清は、壇上に控えた偉そうな中佐(上田吉二郎)から「君の残念な気持ちは分かるが、不合格」と言い渡されるが、「不合格とは何かな?」と問いかけ、「バカ!」と怒鳴られてしまう。

かくして清は、徴兵を免れる。

近所の老夫婦(飯田蝶子、坂本武)は、「きよちゃんは、みんなが笑う時でも笑わないね」などと話しかけていた。

清は、笑いながら通り過ぎる女学生たちを見ながら、女はおかしくなくても一日中笑っている。自分はいつも、特に楽しくもなければ苦しくもないと答える。

自宅に帰ってゴロゴロしていると、持て余している母親は、魚吉に戻れば良いと言って来る。

さらに、これまで働いて貯めた金をくれと母親は言い出すが、清が全部置いて来たと云うので怒りだす。

そこに、妹のヤエ子(野口ふみえ)が帰って来たので、清を駅まで行かせる50銭を借り受けた母親は、弟のてっちゃんからも、電車代として2円と鉄兜を出させると、それを清に渡して家を追い出す。

ヤエ子は、出て行く兄に、自分の赤い傘も手渡す。

その赤い傘をさし、また旅を始めた清は、田舎の子供たちから「こ○き!」とからかわれたりもするが、白糸の滝、瀬戸内海、宮島、鳥取砂丘、桜島、阿蘇などを巡る。

ある日、風呂からふんどし一丁姿で駅に帰って来た清は、そこに居着いていたルンペン連中(左卜全)らから、ここに居着かないかと誘われるが、自分はこれから日光に行って仕事をもらうつもりだと断る。

しかし、ルンペンの婆さんが、清の赤い傘をくれと勝手に手を取りふざけだしたので、仕方なく、清も踊り始める。

すると、ふんどしが取れて全裸になってしまったので、やって来た警官に手錠をかけられ、そのまま署に連行されてしまう。

清の様子を見た署長は、こいつは頭がおかしいのだから山田病院に入れろと命ずる。

山田病院と云うのは精神病院だった。

清は、精神病者たちと同じ部屋に入れられ、一ヶ月もの間、過ごす事になる。

その病院には、加藤清正と名付けられている患者や、上杉と云う同室の患者(藤木悠)と電話ごっこをする太った患者(千葉信夫)、けたたましく物音を立てる女(賀原夏子)などがいた。

そこの医者(沢村いき雄)は、回診の時、ただ、患者の腕を握るだけだったので、あれで病気が治るのだろうかと清は不思議がる。

ある日、医者の五郎が、これから髪を刈るので、全員丸裸になって庭に出ろと伝えに来る。

それを聞いた清は、なぜ、頭を刈るのに、丸裸になるかと云うと、逃げられないようにする為だろうと図星を言い当てたので、五郎は不機嫌になる。

丸坊主にされた清が、一人のんびり入浴していると、空襲警報が鳴りだす。

医者たちが全員退避した隙を見計らい、清は、手ぬぐい一丁の姿で病院から逃亡する。

街角に逃げて来た清は、そこに置かれたラジオを聞いている民衆に出会う。

何事かと聞くと、天皇陛下が泣いておられると云う。

聞いていた民衆たちも、戦争に負けた。東条が悪いと泣き始める。

無条件降伏を伝える玉音放送だった。

一人、子供だけが、裸の清に気づき、「裸だ、裸だ!」とはやし立てるのだった。

終戦後、清は、身体に藁を巻いただけの物乞いになるが、戦争に負けると、急にアメリカのトラックに愛想良くなった日本人を不思議がる。

ある焼け跡に座って、物乞いを始めようとした清は、「所場代を払わんとそこには座れんぞ」と脅す声を聞く。

ふと横を見た清は、そこに座っているのが、「魚吉」に出入りしていた司令官だと気づく。

さらに、同じように因縁を付けて来たチンピラが、みね上等兵である事も知る。

そこに、MPがやって来たので、元司令官は慌てて、売っていた闇タバコの箱を、清の藁の中に押し込んでごまかすのだった。

清の家では、米を買いに出かけたてっちゃんが、途中で盗まれたとしょげて帰って来る。

母親とヤエ子は、トウモロコシの雑炊を食べていた。

いつの間にか帰っていた清も、その食卓に加わる。

共同便所の跡に母親たちが住んでいると云う話を聞いて、ここを探り当てて来たのだった。

母親は、清が旅先の駅で全裸になり、精神病院に入れられていたと知り恥ずかしがっていた。

清は、精神病院では、一ヶ月に一度しか風呂に入れてもらえないし、食事も、おかずは福神漬けか御香香(漬物)だけだったので、足がふらふらになったと教える。

また、女が裸になると金をもらえるのに、男が裸になると手錠をかけられるのは何故かなどと理屈を述べ始める。

貧しく、清に家にいられると困る母親は、ぼろ切れや下駄、歯磨き粉に楊枝などを手渡すと、また八幡学園に戻るように言い聞かせ、清を追い出す。

冬に帰って来ると布団がないからと常日頃聞かされていた清は、9月の今も布団がない事を不思議がるが、母親は、焼けてしまったのだから仕方ないとつれない返事。

八幡学園に戻って来た清は、今まで見て来た風景などを題材に、また貼り絵を作り始める。

先生は、ここで毎日、貼り絵や油絵を描くのと、外でルンペンをやるのはどっちが良い?と清に尋ねるが、清は五分五分と答える。

僕の絵は、兵隊の位で言うとどのくらいかな?と清が聞くので、中尉か中佐くらいじゃないかと答えた先生は、その内、展覧会を開いてやると約束する。

しかし、ある日、清は又学園から姿を消していた。

とある温泉につかっていた清は、同じ湯船の中にいた客(柳家金語楼)に、「色気」とは何かとしつこく問いかけ、困らせる。

客は「人に笑われないようにかっこうよく生きる事だと思うが、人それぞれ…」と答えるが、清は「国旗にはいろいろあり、人は皆日本の旗が良いと云うが、俺だけ英米の国旗が好きなのも人それぞれなので、色気があると云う事か…」などと延々とへ理屈を並べ立て、客に悲鳴を上げさせる。

その頃、東京のデパートでは「放浪の天才画家 山下清展」が開かれ、超満員の盛況を呈していた。

そんな事になっているとは知らない清は、花火大会を観に来ていた。

リュックから取り出した食い物を次々と平らげながら花火を見ている清の様子を隣に座って見ていた客(三木のり平)は、なかばうらやましそうに呆然と見つめる。

清は、近隣で開かれる花火大会の情報をたくさん知っていた。

一方、清の家では、てっちゃんが担ぎ屋を辞めると言い出して母親を困らせていた。

兄の清が、にわかに「日本のゴッホ」として有名になってしまったので、世間体が悪いので、運転でも習って別の仕事を探したいと云うのだ。

母親は、実入りの良い仕事を嫌がるてっちゃんや、同じように迷惑がる妹のヤエ子を見て、どこまで自分たちを困らせれば良いんだろう、災難だよと、清の事を恨むのだった。

そんな事は知るはずもない清は、真岡の花火大会にやって来るが、そこに「歓迎自衛隊」と云う立て看板が出ているのに気づくと、係員(小杉義男)に何の事かと聞く。

自衛隊が来るのだと聞かされた清だったが、その自衛隊と云うのが分からない。

やがて、軍楽隊を先頭に自衛隊が町にやって来て、町民たちが道の両脇に連なって歓迎を始めたので、清は次々に近くの人に聞いて行く。

たまたま外国人がいたので「これは軍隊か?」と聞くと、「そうじゃない」と言う。

「戦争をやらないのに、なぜ鉄砲を持っているのか?」と聞くと、やがて答えに窮した町民は怒りだす始末。

仕方がないので、行進して来た自衛隊員たちに同じ事を問いかけてみるが、誰も答えようとしない。(そこに、戦争の音が重なる)

そんな清に気づいた新聞記者たち(クレージーキャッツ)が取材を始める。

女学生たちも、清が有名人だと知って駆け寄ると、みんな一斉にサインをねだり始める。

大混乱になった群衆の中からはい出した清は、追って来る新聞記者や民衆から逃れる為、必死に走り、やがて、砂浜を逃げ去って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

放浪の画家山下清の若い頃を描いた映画。

知的ハンデがありながらも、結構知恵が働く山下清の目から見た、当時の民衆たちのずるさや愚かさを風刺風に描いている。

何より、小林桂樹の演技がすばらしい。

その人物像が、どこまで実在した山下画伯に近いのかは知りようがないが、いかにも愛すべきキャラクターになっている。

その家族が、実は清の存在を疎ましく思っていたと云う描写なども、どこまで本当かはさておき、リアルに感じられる。

三益愛子演ずる清の母親やその弟妹は、一見、清を疎まし気に扱っているように見えながらも、決して冷酷とも見えず、家族の一員として淡々と付き合っていると云う感じで悪印象はない。

全編、当時の東宝映画のお馴染みたちが次々に登場して来るのが楽しい。

最後にちらり登場するクレージーキャッツ(ハナ肇、犬塚弘、谷啓は、画面上確認出来た)の扱いが、新人として少ないのは分かるとしても、中田康子がちょい役扱いなのはちょっと不思議。

あくまでも、ゲスト出演扱いと云う事だったのだろう。

八幡学園の先生役が誰なのか分からないのが残念。

登場シーンが結構ある割に、顔に見覚えもなく、キネ旬などのキャスト表にも書かれていない。

キャスト表には出ていない賀原夏子などもちらり出ているし、結構、脇役オールスター的な印象すらある。

一見意地悪そうに見えて、実は人情味に厚い弁当屋の夫婦を演じている有島一郎や一の宮あつ子などの、やや地味な演技も悪くない。

劇中、差別用語や精神病院の描写があるため、今では、テレビ放映やソフト化は難しいと思うが、なかなかほのぼのとしており、心温まる佳作だと思う。

山下画伯の貼り絵を見られるのも貴重。