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風来忍法帖

1965年、宝塚映画、山田風太郎原作、関沢新一脚本、川崎徹広監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天正18年、豊臣秀吉は、北条氏の根城、小田原城へと進撃していた。

そんな中、箱根山中の一画で、三人の足軽相手にさいころ賭博をしている三人の男がいた。

口が達者な悪源太なり平(渥美清)、城穫りの夢を持つ陣虚兵衛(佐藤允)、そして、怪力だけが取り柄と云うなんぼベンケイ(佐々十郎)。

三人はいわゆる香具師だった。

三人は、足軽が持っていたさいころを使うと見せかけ、別のさいころにすり替えて身ぐるみ剥ぐと、文句を言う足軽のさいころを斬ってみせ、中に鉛が入った「いかさま賽」と暴くと、追い払ってしまう。

裸で逃げ去った足軽たちは、山中砦の女中たちを逃がす任務の途中だったのだが、まんまと奪い取った衣装に着替え小兵に化けたなり平たちは、女中たちの一向に紛れ込むと、付き添いの侍を言葉巧みに誘い出し、木に吊るし上げてしまう。

女たちを手中にした三人は、売れば170両は固いと踏み、上機嫌。

しかし、自分たちに警戒して身構える女中たちを見た虚兵衛は、女の事は悪源太に任そうと言い出す。

その言葉通り、女をたぶらかす事にかけては天賦の才能を持つ悪源太が、花を片手に女中たちに近づき甘い言葉をささやくと、不思議な事に、女たちの表情が夢見るように一変し、全員、悪源太に恋いこがれるようになってしまう。

上手く行ったと、虚兵衛もベンケイも、女たちを抱こうと近づくが、その時、霧のようなものに包まれたかと思うと、三人の香具師たちは、岩や大木を抱いている自分に気づく。

やがて、四人の僧姿のものたちが出現、悪源太たちに、口から含み針攻撃を仕掛けて来る。

虚兵衛が槍を投げ、一人の僧の身体に突き刺すが、その僧は、何事もなかったかのように、槍を引き抜くと、口から火炎を吹き攻撃して来る。

しかし、その直後、「待て!刑四郎!」と止める声がする。

僧の一人に扮した女だった。

その女は、前に進み出ると、女を弄ぶ犬畜生にも劣る行為を恥ずかしいと思わぬか!と、悪源太たちを叱責して来る。

しかし、その女の美貌を目の当たりにした悪源太は、懲りるどころか、又しても、花を取り出し、女に迫ろうとする。

すかし、その悪源太、あっという間に、足下に出現した落し穴に墜落してしまう。

必死に穴からはい出そうとした悪源太は、先ほどの女に頭を踏みつけられ、又、穴の底に落下してしまう。

「忍法モグラ落とし」…僧の一人がつぶやいた。

墜落し、気絶してしまった悪源太を救出し、介抱していた虚兵衛とベンケイは、姿を消した先ほどの僧たちが、忍法使いであった事を悟る。

小田原城に戻った前田尾張守(戸上城太郎)は、忍城の主、太田三楽斎(藤田進)の孫娘で、人質にしている麻也姫(中川ゆき)に、勝手なまねはお慎みくださいと苦言を呈していた。

先ほどの四人の僧こそ、外に出たがった麻也姫と、それを警護して付き添った風魔忍者の戸来刑四郎(千葉敏郎)、御巫燐馬(早川恭二)、黒破連斎(川路誠)らだったからである。

麻也姫は、四六時中、風魔忍者に身辺警護されている自分を、全く自由がないと不満を漏らす。

その後、風魔の頭領小太郎(平田昭彦)を呼び寄せた前田尾張守は、忍城こそ、秀吉を追撃する重要な拠点となると教えられる。

その頃、秀吉(有島一郎)に対しても、石田三成(堺駿二)が、太田道灌の末裔で、駆け引き上手として知られている忍城の主、太田三楽斎と、その孫娘の麻也姫が小田原城に人質になっている事などを進言していた。

女好きな秀吉は、麻也姫が17才と三ヶ月の若さと聞き、興味を抱くのだった。

一方、香具師の三人は、とある町中で本来の仕事をやっていた。

「陣中膏」と云う塗り薬を売るベンケイの店の前で、虚兵衛が悪源太の親指を斬り落とす芝居をし、その落ちた作り物の親指を薬で元に戻すと云う演技をし、周囲にいた他の客たちをだます「サクラ」を演じていたのだった。

薬はたちまち売り切れ、手にした金で女たちと浮かれ騒ぐ三人。

悪源太も、いつものように遊び女とキスをしようとするが,何故かしゃっくりが出てしまう。

やはり、自分は頭を踏まれたあの時の女僧にいかれて島田と気づき、きっとあの女を「おなこまし」してみせると、仲間の二人に宣言する。

しかし、そうした三人の前に、怪しげな浪人ものが出現する。

その浪人は、先ほど三人が使っていた作り物の親指を取り出すと、お主たちの芝居をばらそうかと脅して来る。

その侍を追い、外に出た三人だったが、またもや、悪源太がしゃっくりを始め、あの時の女が近くいると言い出す。

琴の音が聞こえる屋敷の中を、塀によじ上って覗いてみた三人は、そこに、確かにあの時の女、麻也姫を発見する。

その麻也姫の元にやって来たのは、成田左馬助(加藤春哉)と云う軟弱そうな侍。

彼は、前田尾張守の尽力で、自分が麻也姫の結婚相手として選ばれたのだと云うではないか。

それを聞いた悪源太は、あの「すましうどん(=左馬助)」を片付けてくれと弁慶に頼むと、三人で塀を乗り越え、屋敷の中に侵入しようとする。

ところが、次の瞬間、三人の身体は屋敷の外に放り出されていた。

麻也姫警護の三人の風魔忍者の忍術にやられたのだった。

そんな三人に笑いながら声をかけて来たのが、先ほど彼らを脅して来た浪人もの。

彼は、麻也姫の素性を三人に教えると、彼女に近づくには、北条氏に奉公するしかなく、それには、出自進退不問の風魔忍者になれば良いのだ、そうすれば、麻也姫の守護係になれるかもしれない。実は自分もなろうと思っているのだと打ち明けて来る。

その気になった三人は、浪人と共に、風魔一族に接触すると、同行を願い出る。

秘密の洞窟の根城に連れて行かれた三人と浪人は、頭領の小太郎と対面する。

悪源太は小太郎に怖じ気づくでもなく、忍者になった場合、その行く末と待遇について質問するが、小太郎は言下に、行く末はないと斬り捨てる。

しかし、岩の扉を開け、その中に蠢く、大勢の妖し気な女たちの媚態を見せると、ただし、仕事が終われば、この女たちとは遊び放題と言うではないか。

現金なもので、三人はすぐに修行に加わる事を承知する。

小平太は、そんな三人と浪人者に「忍法かえうち」をかける。

透明なガラスのようなバリア越しに、各人が女とキスすると、その声と考えが女に乗り移ると云う術だった。

素性を聞かれた香具師の三人は、その本名を、それぞれがキスをした女が答えるが、浪人者とキスした女は「石田三成の僕、青歯助十郎」と答えたので、浪人ものの正体がバレてしまう。

小太郎は、悪源太に槍を投げ与えると、その場で青歯助十郎を殺せと命ぜられる。

しかし、悪源太は、何の恨みもない人間を殺す事などできないと抵抗する。

その隙を見て逃亡を図った青歯助十郎は、岩に姿を溶け込ませて消えるが、小太郎が投じた槍に貫かれて姿を現すと、全身炎に包まれて自害する。

その様子を見ていた香具師の三人は、「辞めた!」と言うなり、洞窟を逃げ出そうとする。

他の忍者たちに追われる中、忍者の衣装に着替え、忍者に成り済ませた三人は、降りて来た縄梯子を登ると、仲間と間違われ、そのまま小田原城の警備の支援として連れて行かれる。

小田原城内では、成田左馬助との強引な婚約話を仕組んだ前田尾張守の策略に、麻也姫が抵抗している最中だった。

しかし、すでにこの話は、太田三楽斎様もご承知と前田尾張守から聞かされた麻也姫は、その事実を確かめる為に、自ら忍城に出向くと言い出す。

その話を、床下の守護係として聞いていた香具師三人組は、床上組から次なる指令を受けたと仲間の風魔忍者たちをだますと、忍城に向かった麻也姫の後を追跡する事にする。

そんな三人は、麻也姫の駕篭を襲撃する別の忍者三人の姿がいる事を目撃する。

石田三成が放った伊賀忍者であった。

警護の風魔忍者と伊賀忍者が戦っている最中に、駕篭を奪ったベンケイと悪源太は、虚兵衛が援護をしている中、さっさと駕篭を担いで逃げ出す。

逃げる最中、駕篭の中の麻也姫に、自分の胸の内を告白する悪源太だったが、疲れて休んでいる最中、異常に気づき、駕篭の中を改めると、中に入っていたのは、縛られた虚兵衛だった。

唖然として近くの谷を見ると、麻也姫を奪還した風魔忍者たちが、紐を伝って渡っているではないか。

姫の素性を知った虚兵衛は、何とか助けたいとベンケイに言い出す。

その時、どこから連れて来たのか、女を二人伴った悪源太が、夜ばいの用意をして来たと言いながら戻って来る。

実は、二人の女は、忍城への道案内だった。

彼女らが忍城に持ち込む大根の荷車の中に紛れ込んだ三人は、無事、忍城の中に潜入する事に成功する。

その頃、忍城の主、太田三楽斎(藤田進)は、到着した麻也姫から、自分の婚約話に承諾したのかと聞かれ、「よろしく」と言っただけだと答えていた。

麻也姫は、もう小田原城には戻りたくないとだだをこねるが、三楽斎は、人生修行として戻るように説得する。

荷車から降ろされた香具師の三人組は、いつの間にか縛られている自分たちに気づく。

悪源太が自ら抱いて確認した女二人組は、実は、男の風魔忍者が変身していたものだったのだ。

なでしこと云う本当の女たちは、いつの間にか、小屋の中に吊るされていた。

香具師三人組は、風魔忍者たちにその場で殺されそうになるが、それを止めたのは三楽斎だった。

誰に変わってこの者たちを成敗するのか?こいつらが忍者と云うツラかと言うのだ。

さらに、鉄砲隊が出て来て風魔たちに銃口を向けて来たので、やむなく、風魔忍者たちは、三人の綱を斬って放してやる。

悪源太は、三楽斎の横に立つ麻也姫を見上げると、自分は、その女に頭を踏まれた者だが、いつか必ず、その女を四つに組んで「おなこまし」をしてやると叫ぶ。

それを聞いた三楽斎は、「おなこましとは何か?何か勝負を挑んでいるように聞こえるが?」と首を傾げるが、麻也姫も意味は分からない様子で、「堂々と受けて立ちます」と返事をする。

自由の身になった香具師三人組は、風魔忍者たちに近づくと、小田原城謀反の実態を知りたくないかと話を持ちかける。

実は、この忍城の中には、南蛮渡来の八寸玉があるのだと言うのだ。

興味を持った風魔忍者たちを、その証拠を見せると誘い出した三人は、小屋の中に一人づつ誘い込むと、薄暗がりの中、一人一人に石を抱かせて縛り上げてしまう。

香具師忍法「ひもづけ」と三人は笑う。

しかし、その直後、三人の前に、長刀を持った麻也姫と三楽斎が近づき、麻也姫は生き抜く為に小田原城に戻ると伝える。

次の瞬間、捕縛を解いた風魔忍者たちが、石を投げて来たので、香具師三人組は這々の体で忍城から逃げ出すのだった。

逃げながらも麻也姫に対し「俺はやるぞ!」と叫ぶ悪源太に対し、「おお!おなこまし!」と、意味も分からず叫び返す麻也姫。

その頃、石田三成は、他の家臣たちから「茶坊主上がり」と虐められていた。

秀吉はと云えば、相変わらず女好きで、ミカン畑にいた女を寝所に呼び寄せていた。

一方、逃げ延びた悪源太は、小田原城に連れ戻される麻也姫の駕篭を遠くから見つめながら、忍者と云えども、ペテンには引っかかるのではないか?自分たちはペテンが本職じゃないかと他の二人に持ちかけていた。

忍者と自分たちの実力の差を縮めるには、忍者になるしかないと結論づけた三人は、再び、風魔小太郎の元に出かけ、忍者修行に励みだす。

過酷な訓練に耐える三人だったが、なかなか成果は出ない。

最後には、水攻めに遭い、城の外に捨てられていた三人は、麻也姫に助けられる。

麻也姫は、なぜ、つまらぬまねをする。血も涙もない忍者になどなると云う事は魂を売るようなものだ。気ままに生きているその方たちが、その自由さを捨てるなんて…と泣き始める。

その姿を見た虚兵衛は、「惚れた!」とつぶやき、それを聞いたベンケイも「ほなら、わいもや!」と同調するのだった。

小田原城では、前田尾張守が成田左馬助に、かくなる上は、姫を強引に犯し、嫁にするのだと知恵を付けていた。

一方、香具師三人組は、忍者修行の免許皆伝ももらえず、戦の最中と云う事もあり、即戦力のため、一応合格と言う身分で臨時採用、後は、技改めで様子を見ると風魔小太郎から告げられる。

小田原城で行われた「下忍」の技改め。

雑魚中の雑魚と、幕の中に入る事も禁じられたベンケイを除く、悪源太と虚兵衛は、幕の中に入る事を許され、上忍二人と素手で戦うよう命じられる。

一計を高じた二人は自ら目隠しをし、相手の忍者も、プライドから目隠しをするようしむける事に成功する。

かくして、目隠しをした上忍の二人と悪源太と虚兵衛の勝負が始まるが、中途半端な忍術で、途中、姿を腰元や小兵に変えた二人は、見学していた麻也姫の近くまで接近する。

しかし、気づかれた二人は相手の上忍の忍法にかかってしまい、布に絡まれてしまう。

その頃、別室に案内された麻也姫は、尾張守から仮祝言だと聞き、そこに布団が用意されている事に気づくと、今日の「技改め」が、自分をだます策略の儀式だった事を悟るのだった。

その時、付き添っていた腰元たちが、尾張守や左馬助に襲いかかり、麻也姫を奪って逃亡する。

腰元に化けて潜入していた伊賀の忍者たちだった。

異変を知らせるホラの音を聞いた風魔忍者たちは、「技改め」の会場からも一斉に飛び出して行く。

伊賀忍者二人は、姫を馬に乗せ逃亡する。

それを風魔ケ谷で待ち受ける風魔小太郎と配下たち。

一方、同じく馬で追跡して来た香具師三人は、伊賀忍者に襲いかかると、麻也姫を奪還すると山に登る。

底に迫り来る小太郎ら風魔忍者たち。

山の上からそれに応戦する香具師三人組に、麻也姫も加勢し始める。

迫り来る風魔一党から逃れんと、麻也姫の手を引いて逃げ出したベンケイだったが、途中、相手に奪い返され、小太郎と麻也姫は吊り橋にさしかかる。

その橋の両端に立ったベンケイと虚兵衛は、剣とたいまつを見せると、橋を落とすぞと脅し、彼らの動きを封ずる。

その時、側に張った一本の綱を伝って来たのが悪源太、麻也姫を肩に背負うと、そのまま連れ去ってしまう。

なおも追いかけて来る風魔忍者をかわすため、洞窟の中に入った三人の香具師たち。

それを見た小太郎は、これで奴らも袋のネズミだとあざ笑う。

中に入ろうとした風魔忍者たちは、香具師たちが放つ声の忍術で、外にはじき出されてしまう。

さらに、風魔忍者たちが全員中に入り込んだ隙を見て、いつの間にか外で待機していた三人は、ベンケイの怪力にモノを言わせ、入り口を巨大な岩で塞いでしまうと、「香具師忍法 雪隠固め」と叫ぶのだった。

虚兵衛は、もう忍者は嫌だと言い出す。

そこに、駆けつけて来た麻也姫は、うれしそうに「ご苦労であった」と花を手向けると、「姫は腹が減ったぞ」と下品な物言いをするので、それを聞いた三人は顔を見合わせるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

山田風太郎原作の忍者ものだが、この作品は、キャスティングでも明らかなように、ユーモラスさを強調したコメディ仕立ての時代劇になっている。

そもそも、渥美清が「なり平」を名乗る、女にモテモテの魅力を持つキャラクターを演じていると云う所からして人を食っている。

ベンケイを演じている佐々十郎は、映画では珍しいが、テレビ初期の人気番組「やりくりアパート」や「番頭はんと丁稚どん」などで人気を博した人。

怪力自慢のベンケイと云う役所にしては、ちょっと迫力不足の体型だし、特にキャラクターとして目立っていると云う印象もない。

佐藤允も、渥美清と一緒に出ているこの作品では、ちょっと印象が弱い。

では、渥美清が光っているのかと云えば、それほどでもなく、あくまでもトリオで一人前と云った印象でしかない。

平田昭彦の風魔小太郎と云うのは、ちょっと意外な感じもするが、これが結構に合っている。

頭が良くて冷酷そうな忍者に見えるのだ。

いかにも頼りない成田左馬助を演じている加藤春哉も面白い。

麻也姫を演じている中川ゆきに関しては、かなり好みが別れそうなキャラクターだと思う。

全体としては平坦で、だらだらとドラマが続いている感じで、メリハリ感が薄いように感じる。

一旦、風魔の忍者学校に入りながら逃げ出した香具師三人組が、又のこのこと、何のおとがめもなく学校に戻って来れた所なども奇妙だし、人質として小田原城に幽閉されているはずの麻也姫が、あっさり僧の姿に化けて外出し、香具師たちに出会うなどと云った導入部も、おかしいと云えばおかしいが、戦国時代を背景にした「ホラ話」くらいの感覚で観ていれば気にならないのかもしれない。

特撮と云うほどではないが、それなりにトリック撮影は使われており、おそらくクレーンを使ったと思われる、忍者のふわっとした移動シーンなどの動きは、ちょっと珍しいし面白かった。