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0課の女 赤い手錠

1974年、篠原とおる原作、神波史男+松田寛夫脚本、野田幸男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

バーでゴーゴーを踊っていた女を気に入ったのか、彼女がカウンターに来ると、先ほどから彼女に目を付けていた外国人が酒をおごる。

その後、女を連れ、ホテルに行った外国人は、彼女を脱がせると、バッグの中から、いろいろな攻め道具を選び始める。

バッグの中には、拳銃も入っている。

その時、裸になっていた女は、外国人が脱いだ上着の中から、大使館の一等書記官 リチャード・サクソンと書かれたパスポートを取り出すと、それを破り捨てる。

驚いて女を振り返った外国人に、裸の女は、エミもこうやって殺したのかい?と尋ねる。

外国人は不敵に笑いながら、警察に訴えるのか?と迫って来るが、その時、裸の女零(杉本美樹)は、長い鎖が付いた赤い手錠の片方を投げ、外国人の首に食い込ませると、外国人のバッグに入っていた拳銃を奪い取り、その場で射殺するのだった。

警視庁に戻った零は、上司から、刑事のくせに、とんでもない事をしでかしてくれたなと怒鳴りつけられる。

タイトル

牢に入れられた零は、急に犬の臭いがして来たよと、先に入っていた女から指摘される。

彼女にパクられそこなった事がある矢野加律子(三原葉子)だった。

元女刑事だとバレた零は、牢内の女たちから、徹底的にリンチを受ける。

その頃、神奈川刑務所から、一人の男が出所していた。

仲原義秀(郷鍈治)だった。

仲原が、野呂次男(菅原直行)、サブこと関三郎(荒木一郎)、稲葉徹(遠藤征慈)ら、かつての仲間たち「ヨコスカの玉転がし」の所に戻って来ると、そこに実弟のアキこと仲原義明(小原秀明)も待っていた。

聞けば、義父が亡くなったのだと言う。

それを聞いた仲原は、そいつは良かったと、弟が仲間に入ったのを歓迎する。

南雲杏子(岸ひろみ)は、学生運動家と、すすき野の中に停めた車の中で愛を語らっていた。

杏子は、父親の政略目的のために縁談が進められている事に抵抗を覚えていた。

そこにストッキングをかぶった「玉転がし」5人が襲って来て、男を殴りつけると、杏子を車の外に引きづり出し、集団レイプする。

アキは、始めての凶行にビビるが、みんなに無理矢理勧められ、杏子に覆いかぶさる。

その時、殴られた学生が、ススキ野の中から現れたので、稲葉はナイフを投げて学生の右足に突き刺す。

さらに、仲原がアキに、ツラを見られたからには生かしておく訳にはいかないと弁解しながら、その場で学生を絞め殺してしまう。

杏子を連れた「玉転がし」グループは、隠れ家であるスナック「マンハッタン」に連れて来る。

ラーメンライスをかき込んでいたママの矢野加律子は、杏子の顔を見ると、どこかで見た顔だと記憶をたどりながら、店にあった週刊誌を開く。

そこには、次期首相の座を狙う南雲善悟(丹波哲郎)の令嬢として、父親と一緒に写った杏子の写真が載っていた。

警視庁では、杏子誘拐の知らせを受けてやって来た南雲善悟が、相手から要求された3000万円払っても、杏子は消される恐れがあると言う事を日下正志刑事(室田日出男)たちから聞かされていた。

それを聞いた南雲善悟は、方法は任す。とにかく、生きたまま娘を取り戻してくれ。誘拐が表沙汰になれば、杏子の縁談が潰れてしまう。一切を極秘裏に始末してくれと依頼して去る。

谷捜査課長(戸浦六宏)は、今、あの男に貸しを作っておけば、我々の将来は保証されたようなものだと、日下に目配せをする。

日下は、独房にいた零の元に来ると、この誘拐事件を解決すれば、外交官殺人事件をお宮入りにしてやると恩着せがましく告げる。

しかし、零は、外交官殺しが表沙汰になれば、上が大変な事になるから、今まで一ヶ月近くも事件を公表出来ないんだろうと、日下の腹を見透かしたように言い返す。

日下は、杏子を生きて連れ戻す事。そして犯人は全員射殺せよとの指令を零に出す。

犯人からの指定通り、新宿駅西口に身代金を持って立っていた南雲善悟の秘書は、突然背後から近づいて来た仲原に、ガムテームが張った眼鏡をかけられる。

秘書は、刑事たちに知らせるため、打ち合わせ通り、ハンカチで顔を拭く。

周囲で張っていた刑事たちは一斉に動き出すが、それに気づいた仲原は、秘書が持っていたバッグを奪い取ると地下街を逃げ出す。

階段付近で仲原は刑事三人に組み付かれ、手錠をかけられるが、その時、階段脇に立っていた零は、突然ナイフを取り出し、刑事たちに切り掛かると、ずらかるんだと仲原に声をかける。

仲原と共に、スナック「マンハッタン」にやって来た零は、そこにいたママの矢野加律子と顔を見合わせてしまう。

しかし、何故か、加律子は何も言わなかった。

取りあえず、零をその場に残し、隣室に「玉転がし」5人組と矢野加律子が入り、取って来たバッグを開けるが、中に入っていたのは新聞紙だった。

稲葉は、仲原が連れて来た零を罠かも知れないと言う。

しかし、それを聞いた加律子は、そいつは考え過ぎだと諌める。

手に付いていた手錠を切り取った仲原は、そこまで疑うのなら、自分で調べろと稲葉に言う。

稲葉とサブは、零を屋根裏部屋に連れて行くと、裸にして手錠で柱に繋ぐと、背後から犯す。

サブが立ち去った後、裸の零は、髪の中に仕込んでいたピンを取り出すと、それで手錠を外してしまう。

その後、アキが食事を持って来て食べさせようとするが、まだ柱に繋がれている芝居をしていた零は、受け付けようとしない。

続いて、加律子が自分がやると言い出し、屋根裏部屋に上がって来る。

自らも裸になった加律子は、どうやらイヌの臭いは消せなかったようだね…と言いながら、零の身体を触り始める。

奴らは、銭を取ったら、あの娘はばらすつもりさ…と言う加律子に、交換条件を聞く零。

加律子は、奴らが吹っかけた3000万と自分を見逃してくれる事で良いと言う。

零は、その条件を聞く振りをして、杏子の居場所を聞く。

この下の物置だと加律子が答えた瞬間、柱に繋がれた芝居をしていた手を離した零は、赤い手錠を投げ、加律子の首と風呂の蛇口を繋いで身動きを封ずると、片方で口を塞ぎ、瞬時にピンを首筋に突き立てるのだった。

驚愕した加律子が、お前は一課か、二課か?と聞くと、ゼロ課とでも呼んでもらおうかと言いながら、零は加律子が持っていたナイフを奪い、そのまま相手を突き刺す。

水の張った風呂の中に仰向きに倒れ込んだ加律子は、まさか、サツが殺しを…!と信じられないようにつぶやきながら息絶える。

零が下に降りて来たので、驚いた男たちは屋根裏部屋に上がって加律子の死体を発見する。

零は、あたいの事をデカなどと疑う奴は、皆ああなるって事さと男たちに言い放つ。

物置に縛られていた杏子を発見した零は、私なら1億吹っかけると仲原らに言う。

さっそく、南雲善悟に電話した仲原は、随分なめたまねをしてくれたなと言うと、電話の側に連れて来た杏子の声を聞かせながら、1億要求する。

指定の空き地で待ち受けていた野呂は、金を持った秘書が四人の男たちを連れて来たので警戒する。

秘書と一緒にやって来た日下刑事は、ただちに野呂を捉えると、そのつなぎのポケットに入っていた「マンハッタン」のマッチ箱の中に六本マッチが入っている事を確認した後、その場で野呂を射殺してしまう。

射殺した死体は、すぐさまその場で埋めてしまう。

六本のマッチの内、一本が使用されていると言う事は、「マンハッタン」に六人いた犯人グループの内、一人は処分したと言う零からの合図だった。

日下らは、すぐさま「マンハッタン」にやって来るが、休業の札がかかっていたので、取りあえず、近くの物陰から監視を続ける事にする。

中からの合図もなかったからだ。

その頃「マンハッタン」の中では、金を受け取りに行った野呂がなかなか戻って来ないので、焦燥感から、内輪もめが始まっていた。

零がそれとなく、野呂が一人で金を持ち逃げしたのではないかと焚き付けた事もあり、仲原は南雲善悟に電話を入れてみる。

すると、相手は、きちんと1億渡したがどうなっている?と言うので、ますます疑心暗鬼になる。

その時、酔った船員二人が、表の扉をノックして来たので、サツが探りに来たと疑った仲原は、あのスケを盾にしてずらかろうと提案し、これから妙な事をする奴は、俺がぶっ殺してやると稲葉を牽制する。

ところが、仲原が物置に入ってみると、アキが人質の杏子を逃がそうとしているではないか。

それを目撃した稲葉は、偉そうな事言うなら、てめえの弟ぶっ殺してみろと言う。

切羽詰まった仲原は、命乞いをする弟アキを、その場でビール瓶で撲殺するしかなかった。

しかし、アキが死ぬと、俺が馬鹿だったと泣き崩れる仲原。

杏子には麻薬を注射し、サブに車を持って来させる。

犯人たちと零が、杏子を盾にして、店の外に出ると、車に乗り込み逃走したのを見た日下は、表沙汰になる危険性を感じた。

車は福生にやって来る。

そして、仲原らは、とある外国人住居に侵入すると、そこに追いてあった猟銃を取り上げ荒れまくる。

稲葉に襲いかかられた零は、何をそんなにびくびくしているんだ。あんな狂った連中と一緒じゃ、あんたも死刑さとつぶやく。

部屋の中をのぞくと、仲原とサブが、外国人家族を全員裸にして縛り上げていた。

零の言う通りだと悟った稲葉は、こっそり家を抜け出すが、すぐに追って来ていた刑事たちに捕まってしまう。

稲葉が連れて来られた小屋の奥には南雲善悟も来ており、自分に気兼ねする事なく容赦なく事実を履かせてくれと日下に頼む。

すぐさま、刑事たちによって、過酷な拷問が始まる。

万力に手を挟まれた稲葉は、股間をバーナーで焼かれる。

さらに、ホースを口に差し込まれ、水攻めにされると、さすがの稲葉も口を割るしかなかった。

杏子には、ヤクを打って、やりたいだけやりまくった。

関と言うおかしな奴が好き放題やっていると言う稲葉の言葉を聞いた日下は、半分は事実だと思うと南雲善悟に報告する。

ベトナム以降残っている外国人家族はあの家だけなので、あの連中に口をつぐませるのは簡単だとも日下は進言する。

稲葉は、又戻って来た所を仲原らに捕まり尋問される。

稲葉は、ここはもうサツに取り囲まれている。この女と連絡してくれと頼まれて来たと言う。

野呂もぶっ殺されたんだと聞いた仲原は、零にナイフを突きつけ、猟銃で稲葉を射殺する。

仲原は、零のバッグを調べ、そこに隠されていた、赤い警察手帳と手錠を発見すると、逆上して、ストーブを蹴り倒して部屋に火をつけると、零を後ろ手に手錠をかけ、杏子と共に車に乗せ逃亡を図る。

仲原が猟銃を乱射しながら逃亡するのを目撃した刑事たちは、あわてて銃で応戦しようとするが、零に任せろと言う日下に制止される。

そのあげく、刑事の一人が射殺されてしまう。

車に乗って様子を見ていた南雲善悟は、近づいて来た日下に、この失敗は許す。問題ではないと冷静に告げた後、杏子はもう、わしの娘とは思えん。鳩村からの見返りは期待出来なくなったので、こうなったら、ぎりぎり、自分の政治生命を守るしかない。

スキャンダルを防ぐため、娘は事故死、または病死にするんだ。今後は一切の証拠隠滅をするのが仕事だ。もちろん、あの女もだと命じて去る。

日下は、すぐに他の刑事らと共に、車で仲原らの車を追跡する。

途中、同乗していた三島刑事(藤山浩二)が撃たれ、運転手も撃たれた日下の乗った自動車は崖から落ちかけるが、何とか日下だけが車の外にはい出す。

一方、仲原の乗った車も、ぬかるみにタイヤを取られ立ち往生していた。

仲原たちは、近くの廃墟に逃げ込む。

サブは一人、櫓の上に登る。

仲原は、零に、俺のおふくろはここでパンスケをやっていて、俺はここで生まれたんだと教える。

一人になった日下が廃墟の街にやって来る。

日下は便所の中に登るが、その中に隠れていた仲原に気づかれ、下から肩を撃ち抜かれ。地上に落下する。

その日下を、櫓の上から、ナイフを持ったサブが狙っていた。

しかし、車の横に立っていた日下は、車の表面に写った櫓の上のサブに気づき、振り向き様銃を発砲する。

サブは撃たれ櫓から転落する。

仲原は、日下の側に積んであったドラム缶を撃ち、大爆発を起こした火炎で、日下は上半身火だるまになる。

その時、零は、靴の中に仕込んでいた赤い銃を取り出すと、すぐさま仲原を撃つ。

仲原は顔面を撃たれるが、まだ死んでおらず、そのまま火の付いた櫓の下で、零の首を絞めて来る。

零は、赤い手錠の片方を仲原の首に巻き付けると、長い鎖の先に付いたもう片方の手錠を、高い櫓の梁に投げ、引っかかって落ちて来た所を引っ張る。

仲原は、縛り首のように吊るし上げられ絶命する。

零は、麻薬で眠っていた杏子を叩き起こすと、もうヤクは切れているのよと言いながら、ビンタをしたり、水たまりに顔を浸けたりして覚醒させる。

顔が焼けただれた日下は、助けてくれと零に命乞いをするかに見せて、発砲して来たので、零は、赤い手錠を日下ののど笛に投げつけ、突き刺す。

警視庁の前に杏子をタクシーで連れて来た零は、死にたいと言う杏子に、生きたまま出てもらうよと、車の外に押し出す。

警視庁の前には、事件を嗅ぎ付けた新聞記者が集まっており、突然現れた杏子を取り囲む。

杏子は、警視庁の前に停まっていた乗用車の中にいる南雲善悟を睨みつける。

その南雲善悟の車の横を通り過ぎた零は、赤い警察手帳を引き裂くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

篠原とおる原作の青年コミックの映画化。

捜査のためには、赤い手錠と言う特殊装備だけでなく、身体を使うのもいとわない、タフでクールな女性刑事零が主人公と言う、いかにもマンガ独特の突飛な設定で、70年代の作品らしく、全編、セックスとバイオレンス描写にあふれた内容なのだが、それを杉本美樹が見事に演じきっている。

凄まじい狂気を孕んだ悪役を演じる郷鍈治や、得意のナイフで木彫りの人形を作っているひげ面のサブを演じる荒木一郎、さらに、食欲旺盛で、太った肉体とレズ演技を惜しげもなく披露する三原葉子など、悪役が個性派ぞろい。

それを追う日下を演じている室田日出男の粘りっこさも印象的。

そのしつこさは、どことなく「太陽を盗んだ男」(1979)の菅原文太演ずる刑事を思いださせたりする。

ラストの、風が吹き抜ける福生の廃墟での戦いは、まるで西部劇を連想させるような演出になっている。

当時流行の性描写や暴力表現、さらに低予算映画独特の安っぽい部分などは、今見て抵抗を感じる人も少なくないかも知れないが、終止ポーカーフェイスで、強面の郷鍈治や室田日出男に対峙しても、一歩も引かない杉本美樹の目力と存在感は圧巻である。