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東海道非常警戒

1960年、新東宝、宮川一郎+藤島二郎脚本、山田達雄監督作品。

※この作品は、後半で意外な展開がありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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弟の結婚式に出席した後、神戸駅から特急「こだま」に乗り込もうとした警視庁一課山内部長刑事(宇津井健)は、いきなりカメラのフラッシュを焚かれ、むっとしてその方を見やると、コンパクトカメラを向けていたベレー帽をかぶった女性が、そのまま逃げてしまう。

追いかけようとした山内だったが、別の女性とぶつかって、その女性のバッグを落としてしまったので謝罪しているうちに、問題のベレーの女は姿を消してしまう。

「こだま」に乗り込み、一人食堂車でコーヒーを飲み終え、タバコを口にくわえた山内に火をつけて前の席に勝手に座って来たのは、先ほどのベレー帽の女性だった。

その女性は、「週刊トップ」の女性記者川島京子と名乗る。

食堂車の別のテーブルには、先ほど山内がぶつかった女性が座るが、その顔を見た京子は、どこかで見た顔だと言う。

その時、先輩と山内に声をかけて来たのが、鉄道公安官の高木だった。

山内は、安子さんが待っているぞと冷やかすが、京子がいきなり、思い出したと言いながら、自分が持っていた雑誌のページを広げると、そこに「社長令嬢」として紹介写真が載っていたのが、別のテーブルに座った例の女性だった。

やがて「こだま」は横浜に到着し、その女性の元に現れた男が、東山社長のご令嬢かと確認し、お父様が横浜のホテルで倒れられたので、お連れすると言い、彼女をホームに連れ出す。

その様子を山内らと共に見ていた高木は、先ほどあの女性は、東京に迎えに来てくれと言う電話をしていたのに変だなと首を傾げる。

東京駅に到着し、高木が公安官詰め所に戻って来た時、お嬢様が「こだま」から降りて来ないと不安げに相談に来た女性がいた。

何でも、友人の結婚式に出席するので、着物の用意をしてまで、東京駅に迎えに来てくれと連絡があったばかりなのだと言う。

お嬢様の名前は東山美智子(中西杏子)、自分は女中の千代(大原永子)だと名乗る。

さっき横浜駅で降りた女性だと気づいた高木は、ピンクのワンピースを着ていた事を確認すると、男について横浜駅で降りた事を話す。

すると、驚いた千代は、最近、家には脅迫が多いのだと訴えるのだった。

その時、高木の恋人の安子から電話がかかって来たので、仕事で会えなくなったと断るしかなかった。

それを聞いた安子は、もう辞めちゃったら?公安官なんてと愚痴を言い、今夜、お店に来てねと甘えるのだった。

一方、「週刊トップ」の編集部に戻って来た京子は、山内部長刑事に張っていても、大事件など起こりそうもないので、部長刑事24時間と言う密着記事にしたらどうかと編集長(岡竜弘)に提案するが、うちのような三流誌にはそんなお上品な記事は向かんと一蹴される。

それを聞いた京子は、財閥令嬢の誘拐なんてどうかと言い出す。

そんな事件があるのかと編集長は驚くが、直感で、そうなのではないかと睨んでいた京子は、今後山内をつけてみると言い出す。

その頃、東山英輔(中村虎彦)の社長室では、秘書の村井正義(高宮敬二)が、安岡組からの合併に関するクレーム電話を受けていたが、東山はそんな連中に一々金など払えんと相手にしない。

その直後、今度は、東山社長の電話が鳴ったので、本人が出ると、お嬢様は預った。1000万円出してもらう。続き番号や印のない1万円札で用意しろ、ただし、警察に知らせたら、娘の命はないぞと言う脅迫電話を受ける。

公衆電話から出て来た男、加島大造(若宮隆二)は、そのまま車に乗り移動すると、とある自動車工場の前に到着する。

加島が中に入ると、待ち受けていた江川鉄治(御木本伸介)が、「あの女は、順子姉さんが薬を飲ませて、今眠らせていると男に伝える。

その江川こそ、「こだま」から美智子を連れ出した男だった。

倉庫内の二階の事務所では、加島の情夫順子(小野彰子)と、仲間の野村(渡辺高光)が、ベッドで寝ている美智子を見張っていた。

加島は、東山たちは、今回の誘拐の事で、安岡組と言うとんでもない所に目を付けるのがオチさと笑う。

その夜、山内部長刑事は、高木と、彼の恋人安子(瀬戸麗子)が働いているバーに飲みに来ていた。

山内は安子に、美智子の友達だと言って電話をしてみてくれと頼む。

そこに京子がやって来て、無遠慮にカウンターの山内の隣に座る。

そこに、電話をして来た安子が戻り、帰って来たけど、病気で会えないと言っているが、どうも電話に出た女中の様子がおかしいと言う。

それを聞いた京子は、あの娘の事でしょう?と山内に聞いて来る。

住んでいる川崎の街に帰って来た京子は、幼なじみの村井と久々に出会う。

夜学を出て、東山産業の秘書課長になった村井の事を京子は感心する。

村井は、運が良かったんだ。昔は汚かったから随分虐められた。貧乏はつくづく嫌だなと自嘲する。

それでも、京子は、この街が好きと答え、東山産業に変わった事はないか?例えば、お嬢様が誘拐されたとか…とかまをかけてみるが、村井はきっぱり否定する。

翌日、山内の依頼を受けた安子は見舞いの花束を持ち、東山家に出かけてみる。

応対に出て来た千代は、やはりお嬢様は安静にしていなければ行けないので、お会い出来ないと断るが、その目は泣いていたかのように真っ赤だった。

何かあったら電話をくれと、高木の電話番号を手渡した安子が家を出た後、千代に近づいて来た村井は、何も気づかれなかっただろうねと念を押す。

その直後、自宅にいた東山に電話がかかり、今、女が来ただろう?と言い当てた後、明日、新宿の「ニューゴールド」と言う店で金を受け取ると言う連絡が入る。

東山は、連中は、こっちの事を恐ろしいほど知っていると、村井に告げる。

そうした中、やはり、美智子の事が心配でたまらなかった千代は、こっそり勝手口から家を抜け出ると、高木に電話をする。

それは、山内も一緒にいた喫茶店の電話だったが、会って話がしたいと告げた千代は、公衆電話から自宅に戻る途中で、後ろから接近して来た自動車に轢かれてしまう。

その頃、自動車工場の倉庫内事務所で目覚めた美智子は、突然、見張り役の野村から襲われ必死に抵抗していた。

そこに入って来た江川が、野村を殴りつけ止める。

美智子は思わず、江川に礼を言う。

千代の轢き逃げ現場にやって来た山内は、担当刑事から殺し臭いと言う印象を得る。

本部に戻った山内は、この轢き逃げは、東山家令嬢の誘拐と関連していると思うと、森岡捜査課長(高松政雄)に進言する。

森岡捜査課長は、殺しとして捜査をする事にする。

東山家に乗り込んだ山内は、その事を東山に告げるが、一緒に聞いていた村井は、悪質な轢き逃げと言うだけでしょうと、殺しの線を否定する。

美智子は、15日の第一「こだま」から誘拐されたのではないかと問いかけた山内の質問に対しても、何も答えない東山だった。

山内は、東山社長を張り、新宿の「ニューゴールド」に来る。

すると、川島京子もやって来て、ちゃっかり山内のテーブルに一緒に座るではないか。

やがて、東山は、店の電話に呼び出され、短い会話をすると、すぐに出て行く。

車で立ち去った東山を追うため、タクシーを拾った山内に、二人の方が心強いわよなど言いつつ京子も同乗して来る。

東山は、とある港に到着すると、そこで相手を待ち受けていた。

山内と京子は、近くの物陰からその様子を監視する事にする。

一方、別の場所から東山社長の様子をうかがっていた江川は、尾行がいないようだと、加島さんに知らせて来いと野村に命じるが、その野村の後を尾行しようと姿を現した京子に気づき飛びかかる。

それに気づいた山内が駆けつけ、江川を撃退するが、近づいて来た東山は、君は酷い事をしてくれた。娘が生きて戻って来なかったらどうするつもりなんだと責める。

本庁に戻った山内は、口元の傷が目立った江川のモンタージュを作る事にするが、轢き逃げ犯の車は48年型ダッチと判明した事も知る。

森岡捜査課長は、二課からの電話で、安岡組が東山産業に脅迫を続けているようなので、山内に当たって来るように命じる。

安岡組の安岡(大谷友彦)は、東山を恨んでいるとは正直に話したが、安岡が見せた江川の写真には見覚えがないと言う。

その後、東山社長は電話を受け、警察に知らせたなと誘拐犯から指摘され、しばらく取引はお預けだと言い渡される。

実は、誘拐されていた美智子が熱を出し、動けなくなっていたのだった。

倉庫内の事務所では、江口が一人で看病していたが、それを戻って来た順子がからかう。

遅れて戻って来た加島も、医者に見せた方が良いのではと言う江口に従い、自分の車で医者を呼んで来る事にする。

死なれては困るからだった。

しかし、順子は、ヤバいんじゃないかと加島に耳打ちする。

野村と一緒に、加島のダッジに乗り、医者を捜しに出かけた江口は、ちょうど、出社していた京子に、水たまりの水しぶきをかけてしまう。

怒った京子は、思わず持っていたカメラで、運転席から身を乗り出して振り向いた江口の顔を写真に撮る。

自動車工場の中に連れて来られた医者は、千代子を容態を診ると、4時間おきに注射をすれば大丈夫と言い、帰ろうとするが、薬は自分たちが取りに行くから、直るまでここにいろと加島から脅される。

一方、出社した京子は、編集長から、その後の進展について聞かれるが、山内刑事との協定で、今まだ話せないと言う。

そこへ、現像係(小浜幸夫)が、先ほど頼んだ写真を持って来てくれたので確認していた京子だったが、何気なく撮ったつもりの今朝の一枚に、以前港で出会った、あの口に傷のある男が写っていたので、さっそく山内に電話して、話があるので、3時にこの前の喫茶店まで来てくれと連絡する。

その直後、珍しい事に村井が編集部にやって来る。

約束があると言う京子について「ニューゴールド」にやって来た村井は、一緒に大阪に行かないか、株で少しまとまった金が手に入ったので、事業を始めようと思うし、自分は金持ちになりたいので…と伝える。

その時、山内がやって来たので村井は帰るが、京子は山内に、彼から結婚を申し込まれたとうれしそうに教える。

山内は、東山社長の秘書である村井と京子が同じ街出身である事を、始めて知るのだった。

京子は、今朝方撮った男の写真を見せ、撮った場所は、川崎市重町の工場の中と教える。

本部に戻った山内は、ブルーのダッジの持ち主の中に、安岡もいたと聞き、さっそく安岡組に出かける。

安岡は、その車なら、以前、幹部だったエンジンの大と言う男が、問題を起こした時に焼きを入れ、辞める駄賃代わりにくれてやったと言い、エンジンの大こと加島大造の写真を見せてくれる。

その加島は、自動車工場にダッジで戻って来ると、東山社長に電話をかけ、明日朝7時、神宮絵画館前に来いと指令する。

電話を受けた東山は、横に控えていた村井に、自分一人で行くと告げる。

「週刊トップ」編集部にいた京子に村井から電話があり、うれしい事があったので迎えに行くと言って来る。

その頃、鉄道公安官の高木は、バーに来て、安子に、今度貿易会社に転職する事にしたと報告していた。

そこに、偶然、酔った京子を連れた村井がやって来る。

京子は、うれしそうに、この人、プロポーズしたのよと、カウンター席にいた高木に言う。

その後、旅館に京子を連れ込んだ村井は、いきなり京子に抱きつこうとするが、京子はまだプロポーズをOKしていないと拒絶する。

村井に入浴を勧めた京子は、こっそり脱ぎ捨てた村井の上着から手帳を抜き取ると、そのまま警視庁の山内の元に向かう。

酔っていたのは、山内からの依頼を受け、村井を油断させるための芝居だったのだ。

しかし、京子が持って来た手帳からは、これと言った手がかりは見つからなかった。

山内は、村井の心証はシロと見て良いと結論づけるしかなかった。

それを聞いた京子の方も、疑っていた幼なじみの潔白が証明されたようで、どこかうれしかった。

翌朝、約束通り、絵画館前で待っていた東山社長は、ダッジで現れた加島に、娘を渡さなければ金を渡さないと言い、そのまま車に乗り込むと、川崎の倉庫までついて来る。

同じ頃、出社しかけていた京子は、川に人が流されていると騒いでいるのを聞きつけ、その男が引き上げられる様子を写真に撮っていた。

「娘が誘拐…」とつぶやく救出された男は、美智子を診ていた医者だった。

倉庫内の事務所で、美智子と対面した東山は、わしたちを町まで送り届けろと要求するが、ドヤを知られて帰せるかと言う加島に閉じ込められてしまう。

東山が持って来た鞄から、100万円の束を取り出した加島は、一束づつ江川と野村に渡すと、300万は、俺と順子がもらうと言う。

残りの500万を、全部あの男に手渡すには多すぎないかと野村が不平を言うが、その時、問題の男が倉庫に入って来る。

村井だった。

加島は、みんな、分け前の金額に不満があるようだと告げるが、村井は、俺がいなければ今回の計画はなかったはずで、要は頭なのだと言い、野村や江口に、不服があるのかと睨みつける。

その時、二階の事務所の窓に、東山社長の顔を発見した村井は、驚いて、加島から部屋の鍵を受け取ると、事務所の扉を開ける。

銃を突きつけながら、こんな所でお会いしたくなかったと村井は言うが、東山社長は、こんな事をして幸せになれると思うのか?自首してくれと説得する。

しかし、村井は、金さえあれば何でも出来るのだと反論するのだった。

警視庁では、加島大造の身元を洗い、住所が川崎市重町で、最近引いた電話番号は043-1471である事を突き止めていた。

森岡捜査課長は、加島の緊急手配を命ずる。

自分の席に戻って電話をしかかった山内は、ふと机の上に置いていた村井の手帳の最後のページに「043-1471」と言う数字が記してある事に気づく。

加島の電話番号と気づいた山内は、すぐに森岡捜査課長にその事を教え、村井も手配する事にする。

川から救出された医者を追って中井病院まで来ていた京子から、電話を受け取った山内は、やっぱりあの手帳が役に立ったと教える。

京子は、村井が事件に関与していた事を知りショックを受けるが、医者が口走っていた誘拐事件の事を知らせる。

ただちに、中井病院にやって来た山内は、医者を連れ出すと、倉庫へ案内させる。

一人置いてきぼり食らった京子は、自分で車を一台調達すると、独自に近所を捜していたが、とある塀の中に停まっているダッジを発見する。

塀の入り口から中の様子をうかがっていると、村井や加島たちが倉庫から出て来て車に乗り込もうとしているではないか。

そんな中、忘れ物を思い出したと一人倉庫の中に戻った江口は、事務所の扉の鍵を開けると、中で縛られていた東山社長と美智子をほどいてやると、俺たちが出かけたら逃げろと告げて出て行く。

しかし、その江口は、怪しんでつけて来た野村に倉庫内で襲撃される。

必死に抵抗する江口だったが、ナイフを取り出した野村に腹を刺されてしまう。

さらに、事務所から出て来て野村を止めようとした東山社長も、野村に刺されてしまうが、その背後で必死に立ち上がった江口が、物を野村の後頭部にぶつけ倒す。

江口や父親を助けようと、外に飛び出した美智子は、村井に捕まり、そのまま車に押し込められてしまう。

さらに、村井は、塀の入り口付近に立っていた京子の姿を見つけ銃を撃とうとした加島を制すると、早く逃げようと車を発車させる。

その時、山内らの車が近づいて来たのに気づいた京子は、美智子を連れて村井が車で逃走した事、倉庫内に誰かいるらしいと知らせる。

ただちに、村井の車の手配を指示した山内は、倉庫に入り、倒れていた東山社長を発見する。

付いて来た医者は、東山の容態を診て、輸血が必要と言い、さらに、あの男たちは大阪に行くと話していたと、山内に教える。

本部で連絡を受けた森岡捜査課長は、ただちに東海道全線、非常警戒を敷くと指令を出すのだった。

山内は、そのまま村井たちの車を追跡する事にするが、その後ろから、京子が運転する車も必死に追いすがっていた。

村井は、脇道にそれた場所で車から降りると、車を替えると言い出し、車を拾って来いと順子に命ずる。

順子は、一人で道に戻ると、たまたま近づいて来た輸送トラックを停める。

女一人と見て、助手席を開けた運転手だったが、銃を持った村井が乗り込んで来たので驚愕する。

他の連中は荷台の中に潜り込んで、トラックは出発する。

山内は、村井たちが乗ったダッジがなかなか見つからないのに焦っていた。

村井たちが乗ったトラックは検問に引っかかるが、助手席の村井から銃を突きつけられている運転手は、警官の質問にも何も答える事なく、そのまま通過を許可されてしまう。

その頃、公安官高木は、乗り込んでいた列車「雲仙」の中で安子に出会っていた。

浜松の友達に会いに行くと言う安子は、公安官に未練があるのではないかと高木に問いかけ、山内たちは今頃どうしているかと懐かしがるのだった。

その山内は、追跡中の車内電話で、藤沢付近で乗り捨てられたダッジを発見したと言う連絡を受け取っていた。

山内は、連中は列車に乗り込んだなと推理し、連絡を取る。

トラックに乗っていた村井は、松林の付近に車を向かわせると、運転手を降ろし、その場で殴って気絶させる。

さらに、荷台から降りて来た加島に、用意しておいた自衛隊の制服を出させると、自分と加島が着込んで変装する。

順子は、自分が着ていたコートを美智子に着せると、四人で沼津駅に向かい、12時42分発の「雲仙」に乗り込む。

一足違いで沼津駅に到着した山内は、「雲仙」が出発したと聞き、直ちに、公安官に連絡するように駅員に頼む。

順子と美智子は、偶然、安子の向いの席に腰掛けていた。

美智子の様子がおかしいと気づいた安子は、ミカンを勧めたりしてみるが、順子から断られる。

そこに、高木が近づいて来たので、浜松にはいつ着くのかと質問してみた安子だったが、高木は、この列車に誘拐犯が乗り込んでいるらしいと小声で教える。

その直後、高木は、自衛隊員に化けて座っていた村井を発見するが、逆に銃を突きつけられ、外の通路に連れ出される。

それに気づき立ち上がった安子も、加島に銃を突きつけられ、同じように外に連れ出される。

車で追跡を続けていた山内は、沼津付近でトラックと運転手が見つかったとの知らせを受け、浜松付近で非常警戒を敷くよう依頼する。

乗務員室に連れ込まれていた高木は、東山産業なら、今の俺より良い給料をもらっていたはずなのに、何故こんな事をするんだと村井に聞いていた。

そこに安子がやって来て、駅で警察が張っているらしいと知らせると、銃で高木を殴り昏倒させると、美智子を連れて浜松駅で降り、駅前に停めてあったタクシーを奪って逃走を始める。

すぐに気づいた高木は、安子に支えられながら列車から降りた所で、ちょうどやって来た山内たちの車に気づく。

その高木の言葉から、村井たちが車で逃げた事を知った山内は、直ちに緊急手配を依頼、白バイ隊が出動する。

村井たちは、道路が封鎖されている事に気づくと、左折し、浜辺の方に向かって逃げようとするが、砂に車輪を取られてしまい身動き出来なくなる。

やむなく、車を捨て、4人は走って逃げ続ける。

それを追う山内と警官隊、そして京子も続いていた。

追いつめられた村井は発砲し、銃撃戦が始まる。

順子はさすがに怯え、銃を捨てると手を挙げ、警官隊に近づいて行くが、それに気づいた村井が背後から射殺する。

それを見て驚いた加島も、村井に撃たれてしまう。

しかし、その時、一瞬の隙を突いて、美智子が警官隊の方に逃げる。

一人になった村井は、テトラポッドの中に逃げ込むが、それを見た京子が名を呼びかける。

波打ち際を逃亡しようとした村井だったが、持っていた金の入ったバッグを海に落としてしまう。

愕然と立ち尽くす村井に、近づいて来た山内が、世の中には金で買えないものも一杯あるぞ、銃を捨てろと呼びかける。

かくして村井は銃を捨て、その場で逮捕される。

気持ちを察し、京子の肩に、優しく手を添える山内だったが、京子はその手を振り払い立ち去ってしまう。

後日、山内と共に駅に見送りに来ていた安子に、特急「こだま」に乗り込む高木は、自分はこれからも鉄道公安官を続けて行くと打ち明けていた。

その時、フラッシュが焚かれ、こっそり近づいていた京子が三人の姿を写真に収めた事が分かる。

すっかり元気を取り戻していた京子は、山内に近づいて来ると、山内刑事のいる所いつも事件あり。そして私も…と話しかける。

それを聞いた山内は、迷惑な事だと苦笑いするが、やがて走り出した特急「こだま」を京子、安子と共に見送るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

宇津井健が演じる生真面目な部長刑事と、後輩の鉄道公安官とその恋人、さらに小畑絹子演ずる勝ち気な女性記者らが、偶然遭遇した誘拐に協力して挑むと言う捜査もの。

ベレー帽を頭の横にちょこんと乗せ、コンパクトカメラを持った川島京子の姿は、どう見ても、往年の人気アニメ「スーパージェッター」(1965)のヒロイン水島かおるそのものだが、演じている小畑絹子は、清楚な社長令嬢を演じている中西杏子共々、なかなか見た目はチャーミングである。

通俗娯楽捜査ものと言ってしまえばそれまでだが、ずさんな犯人たちの行動、ただまじめなだけで、それ以上の魅力が感じられない主人公、あまり役に立たない鉄道公安官の存在、間抜けに見える女性記者など、全体的に登場人物たちの行動が素人過ぎ、捜査ものとしては詰めが甘いのが気にならないでもないが、まあ、普通に楽しめる程度の出来ではある。

一番分からないのは、自分たちの顔を見られた医者や、東山社長、美智子らを、犯人たちが殺さないまま放置して逃亡しようとしている点。

医者を川に放り込んだと言う事は、顔を見られた相手は殺すと言うくらいの知恵は働いていたはずなのに、とどめは刺していないと言う中途半端さや、完全に自分の正体を知られた東山社長を生かしたまま事務所に残し、逃亡しようとしている黒幕の行動が分からない。

情をかけたと言う事なのかも知れないが、そうした甘さが、事件から緊迫感をそいでいるように感じる。

そもそも、黒幕自らが、犯罪遂行中であるにもかかわらず、堂々と記者に接近すると言うへまを演じ、その記者である京子に、自分が逃げる所を見られた上に、その口封じすらできないと言うようなお人好しなので、知能犯と言うよりは、単なる金目的だけの哀れな小者にしか見えず、その辺に同情させようとする演出意図が、通俗ものとしての真骨頂であると同時に、サスペンスものとしては限界だったのかも知れない。

勢い、その後の逃走劇も、車を乗り換えたり、自衛隊員に化けたりと言う工夫はあるものの、顔がバレている以上、逃げ切れるはずもなく、所詮は小者のやけっぱちの暴走にしか見えない。

こうした誘拐ものの場合、一番緊張感が盛り上がるのは、現金受け渡しのシーンのはずなのだが、この作品の場合、警察が誘拐に察知していないと言う設定なので、その手のサスペンスがない上に、主人公たちが事件に気づいたり、手がかりをつかむきっかけなども、どれもが偶然と言うのも弱い所だろう。