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特別機動捜査隊 東京駅に張り込め

1963年、東映、佐治乾+永田俊夫脚本、太田浩児監督作品。

※この作品はミステリ要素があり、後半に意外な展開が待っていますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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極東化繊主催、合原京子モード新作発表会。

その舞台裏では、人気デザイナー相原京子(故里やよい)が、モデルの着付けを手伝っていた妹の花川英子(新井茂子)を叱りつけていた。

それを、又かと言うように横で見ていたのは弟子の矢島晶子(久保菜穂子)。

挨拶が始まると言うので、合原京子は、いつも飲んでいる沈痛剤を飲んで、舞台に出る。

挨拶を始めた途端、急に苦しみだした京子は、喉を掴みながらその場に倒れる。

タイトル

警視庁から警視303立石班の捜査車に、変死事件発生と連絡が入る。

合原京子、29才、死因は青酸によるもので、自殺他殺の双方の可能性があると言う。

英子と晶子の二人に事情を聞くのは、立石主任(安部徹)、モデルたちが打ち明ける内幕話をテープに収めていたのは内藤刑事(千葉真一)。

晶子が弟子として、先生の合原京子の人柄をきれいごとで片付けようとしていたのを見かねた妹の英子は、冷酷な姉は人に恨まれる性格だったと打ち明ける。

モデルたちも口さがなく、洋裁学校に行っている妹の洋子も、弟子の晶子も、極東化繊の主任デザイナー野沢町子だって、みんな先生の事を嫌っていたはずだと言う。

発表会の主催者である極東化繊の坂口営業部長(浜田寅彦)から、主席者の名簿を受け取り、話を聞いていたのは、荒牧刑事(南廣)。

合原京子は、極東化繊の顧問をしてもらっていたと言う。

その時、会場の隅にいたカメラマンの塩田衛(高英男)の姿を見かける。

今日は、雑誌の記事にするために来ただけだと言う。

その頃、立石は、京子のバッグの中から、常用してたらしき鎮痛剤のカプセルの瓶を発見する。

立石は、そのカプセルが、飲んでどのくらいで溶けるのかと、その際、水を飲んだコップに付いた指紋を調べるため、長さんこと橘部長刑事(織本順吉)に科研に持って行かせる。

英子は、晶子も独立しようとしていたが、姉に反対されたことを恨んでいたはずで、いくら成功しても、自分は姉のやり方が大嫌いだったと公然と言うので、聞いていた立石も少し驚く。

晶子に連れられ、合原京子のマンションにやって来た立石たちは、部屋の鍵を持っている晶子にそれはどうしたのかと聞くと、店に置いてあったスペアなのだと言う。

部屋に入り、アルバムを調べていた橘部長刑事は、仲良さそうに京子と一緒に写っている塩田や坂口営業部長は、京子と2年前まで付き合いがあったと、晶子から教えられる。

立石主任は床の絨毯にこぼれていた白い粉の採取を荒牧に頼むが、その際、何か吸取った痕のように見えると気づいた荒牧は、部屋に置いてあった掃除機に目を付ける。

その読みは当たり、科研に持ち込んだ掃除機の仲からいつ買った白い粉は、今日がいつも持ち歩いていた鎮痛剤の中身と同じものだと言う事が分かる。

捜査会議の席で、立石主任は、ファッションショーが行われた14日の前日13日の8時から10時までは、鎮痛剤は自宅マンションの部屋にあった事が分かったので、その時間の各関係者のアリバイを重点的に調べるよう指示を出す。

そこに電話が入り、マンション出入りのクリーニング屋が、その夜の9時頃、マンションに出入りしていた英子の姿を見たとの長さんから報告が入る。

その長さんと内藤刑事は、極東化繊に出向くと、主任デザイナー野沢町子(筑波久子)に、ファッションショー前日の13日に、京子と言い争いをしていたそうですが?と事情を聞く。

パリでファッションショーを開く予定だったのを断られたからだと、町子は正直に打ち明け、あの人は、実力よりも政治力でのし上がって来た人だからと皮肉る。

その夜の行動を聞かれた町子は、箱根の山麓ホテルで、坂口営業部長と一晩中打ち合わせをしていたと意味ありげに告げる。

一方、荒牧、桃井(亀石征一郎)両刑事は、塩田の自宅にやって来るが、玄関先でスピッツにしつこく吠えられる。

その訪問を二階から見ていた下着姿の朱実(安城百合子)は、13日は一緒にここにいたと口裏を合わせろと言うベッドの上の塩田の言う事を承知する。

荒牧から京子との関係を聞かれた塩田は、同棲していた事を告白、13日は、この朱実と一緒にいたと打ち合わせ通り言う。

その後、銀座の合原京子の店にやって来た立石と荒牧だったが、目当ての英子はいないと言うので、晶子に、京子の母親に会わせてくれと奥の部屋に連れて行ってもらう。

物置同然のその部屋にいたのは、掃除夫として雇われていた京子の母親サダ(菅井きん)だった。

九州の炭坑にいたが、夫を事故で亡くしてしまったので、英子と一緒に上京して京子の世話になる事にしたが、実は、自分は京子が小さい時、前の夫と死に別れたため、再婚しなければならなくなり、連れ後は出来なかったので別れて暮らしていた事を打ち明ける。

つまり、英子は二度目の夫との子供であり、京子から冷たくされても仕方なかったのだとサダはしょげる。

店では、荒牧と桃井刑事が、13日に矢島晶子は店にいなかったと聞き込んでいた。

洋裁学校に通っている竹下弘と言う男の子と、6丁目の「スウィング」にいたらしいと言うのだ。

その竹下弘(小川守)は、洋裁学校で洋子と会っていた。

弘は、銀座の店が、洋子と矢島晶子との共同経営になったんだって?と聞く。

しかし、洋子は、母さんの行李(こうり)の中に青酸カリが入っていたのを見つけたと深刻な顔で打ち明ける。

洋子は、九州にいたときの方が良かった。姉さんの世話になるんじゃなかったと悲しむので、弘は抱いてやるのだった。

銀座の店に帰って来た英子は、店の前から捜査車が走り去るのを見かけ、中に入ると、立石主任が待っていた。

マンションに出入りする姿を目撃されているので、13日の夜の行動に付いて教えてもらいたいと言うのだった。

一方、荒牧と桃井両刑事は、竹下弘の住いである、兄進一(岡野耕作)の自宅を訪問するが、弘はまだ帰宅しておらず、あいつとは年も離れているし考えも全く違うと言う進一や、その妻(月村圭子)のかかわり合いになりたくないような言葉を聞かされる。

矢島晶子は、極東化繊の坂口営業部長に会いに来る。

そこには、ちょうど主任デザイナーの野沢町子もいたが、晶子が、これからは自分がこの会社の顧問と主任デザイナーを兼務すると聞かされると驚いて、目の前の坂口営業部長に、自分を次の顧問にすると言っていたではないかと詰め寄る。

しかし、その坂口営業部長の態度を見て、完全に晶子に寝取られたと気づいた町子は、あの師匠あって、この弟子か。あんた、あの女とそっくりよと蔑むのだった。

その頃、スタジオ内で朱実をモデルに写真を撮っていた塩田は、朱実から、矢島のモデルに推薦してくれないかと頼まれていた。

その時、当の矢島晶子から電話がかかって来たので、応対に出た塩田だったが、今度から極東化繊の顧問と主任デザイナーをやる事になったので当分忙しくなると、一方的に別れを告げられる。

しゃくに障った塩田は、その場で朱実を抱くと、その衣装をはぎ取るのだった。

自宅前で張っていた荒牧と桃井は、帰って来た竹下弘を見つけると、13日の行動を聞く。

矢島にはアルバイトを頼みに行ったと言うが、右手を後ろに隠しているので、何を持っているのかと手を開かせると、そこに青酸カリの袋を持っていたので、その場で署に連行する事にする。

尋問してみると、弘は日本のディオールになるのが夢で、広島から上京して来たと言う。

荒牧は立石主任に、青酸は洋子から手に入れたと言っていると報告する。

英子は署に連れてこられており、立石から再度、13日の行動を聞かれると、自分が姉さんを殺したと自供する。

その頃、銀座の店では、この店は株式会社であり、銀行や極東化繊に株を持ってもらっているので、この物置部屋も整理したいので出て行ってくれと、晶子がサダに言い渡していた。

その後、坂口営業部長とゴルフ場に来ていた晶子は、偶然その場に来ていた塩田から、13日の夜の事を知られちゃ困るんだろう?と話しかけられるが、知らん振りをする。

立石の元に内藤刑事が、洋子の母親が訪ねて来たと知らせに来る。

会ってみると、サダは、毒を入れたのは自分だと言う。

洋子が洋裁学校の旅行に行くので、1万円出してやってくれと頼のんだが断られたので、その金をマンションから取って来たと言うのだ。

英子がマンションに行ったのは、その金を返しに行っただけなのだとも説明する。

そこに、科研に行っていた荒牧刑事から報告が入り、洋子から弘に手渡された青酸に疑問があると言う。

技師(片山滉)は、薬自体が古すぎ、こう言うものを嚥下しても吐くはずだと言うのだ。

安アパートに引っ越していたサダは、あの青酸は、夫が亡くなった落盤事故の後、会社への当てつけとして買ったものだと洋子に説明する。

会社の前で死んでやろうと思っていたが、同じように出向いた奥さんたちの一人が笑い出したので、死ぬのは止めたのだと言う。

英子は、矢島晶子からもらったはした金を頂戴。ぱっと使っちゃいましょうよと言いだす。

荒牧から、13日の夜、塩田の家のスピッツが吠えてたとの報告を受けた立石主任は、容疑者の欄から野沢町子と坂口の名を消す。

橘部長刑事と内藤刑事は、歌手(青山ミチ)が唄っているライブジャズ喫茶「スィング」に13日に、竹下弘と矢島晶子が来ていたかどうか、支配人に確認に来ていた。

その後、弘の自宅に向かった二人は、当日、「スィング」では何の曲をやっていたかと聞くと、弘はすらすらと答える。

すると、橘部長刑事は、あらかじめ、店のメンバー変更されると書かれたスケジュール表を見て覚えたんだろうが、当日は出演者の変更はなかったんだと言う。

荒牧と桃井両刑事は、ゴルフ場にいた塩田に任意同行を求めに行く。

竹下弘から調書を取り終えた立石主任は、つけてみようと言う。

警視庁を出た弘は、銀座の店に向かうと、女店員文枝(愛川かおる)に、引っ越した洋子の住所を聞いて帰る。

つけていた立石たちは、その直後に店に入ると、文枝に晶子の居場所を尋ねる。

晶子は、明日パリに行くと言う事で、今、セントラルホールで歓送パーティをやっている最中だと聞く。

その時、テーブルの上に置いてあった晶子の化粧バッグを取り落とした内藤刑事は、その中からこぼれ落ちた紙包みを発見する。

そのにおいを嗅いでみた内藤刑事は、それが青酸だと気づく。

セントラルホールでは、歓送パーティの真っ最中だったが、そこに酔った野沢町子が乱入し、晶子を「売女!」とののしる。

その直後、立石主任らも到着し、13日、あなたが竹下弘に会っていたと言うのは嘘だったと分かったし、あなたの所持品から青酸カリが見つかったと晶子に突きつけ、矢島晶子に任意同行を願い出る。

それを側で見ていた町子は、急に笑い出し、矢島晶子歓送パーティの看板文字に水をかける。

警視庁に出向いた晶子は、13日午後、「ファション・アムール」と言う雑誌に時々作品を載せてもらっていた塩田から夜の8時に来るように言われたので会った。

その後は?と聞かれた晶子は、一瞬躊躇した後、塩田と新橋のブリッジホテルに行ったと告白する。

何故嘘をついてたと立石が問うと、坂口に知られたくなかったのだと言う。

しかし、塩田は会わなかったと言っていると聞かされた晶子は、別の部屋に連れて来られていた塩田に会いに行き、何故嘘を言うのかと迫る。

だが、塩田はそんなに俺が必要なのかととぼけている。

その態度を見かねた桃井刑事は、お前は嫌な奴だ。世間がお前を捨てておかないぞと締め上げる。

科研では、晶子の化粧バッグの中から見つかった青酸カリを包んだ紙の表面に、文字の後がかすかに残っているのに気づき、慎重に再現してみると、それは住所のようだった。

その住所「広島市原田町30番地」を電話で聞いた橘部長刑事は、容疑者たちの住所をその場で確認し、竹下弘の本籍だと言う事を知る。

ただちに竹下の家に向かう立石主任、橘部長刑事、荒牧、桃井だったが、まだ戻らないと言うので、荒舞、桃井両刑事をその場に残すと、立石たちは洋子のアパートへ向かう。

その頃、「スィング」にいた弘は、女客が「今、矢島晶子は犯人じゃなかったってテレビで言っていた」と話している声を聞き、あわてて店を飛び出す。

英子と出会った弘は、いじめられていた君のために姉さんを殺した。これからはどこまでもボクと行くんだと告白すると、覚悟を決めたように英子も頷く。

アパート「南風荘」に来た立石は、サダから、まだ英子も帰ってないと聞かされたので、花川英子を緊急手配する事にする。

その時、管理人がサダに電話だと言いに来る。

すぐに、内藤刑事は電話にテープを取り付け、立石たちも側で聞く事にするが、電話の相手は予想通り洋子だった。

竹下さんは、自分のために人を殺してしまったので、自分はもう帰れないと言う。

それを聞いたサダは、それは間違っている、自分は一人になったらどうやって生きて行けば良いのかと思いとどまらせようとするが、洋子は、私の事は忘れてと電話を切る。

洋子は竹下と一緒に公衆電話の中からかけていたのだが、最後の方で救急車が通り過ぎる。

そのサイレン音を救急車だと気づいた立石は、すぐに本庁に照会を依頼する。

アパートを出ようとする立石に、サダは英子を助けくれとすがりつく。

直後、本庁の司令室から、9時40分頃、出動した救急車は丸の内消防署のものしかなく、目的地は東京駅だったと連絡が入ったので、立石班は全員東京駅に急行する事にする。

立石、内藤、橘部長刑事らは中央口から、荒牧、桃井両刑事は、南口から侵入する事にする。

22時20分発の広島行き急行だろうと推測した全員が、出発間際の寝台車に乗り込み、必死に弘と洋子を捜す。

一緒に付いて来たサダも、必死に洋子の姿を捜すが見つからない。

その時、先に出発する普通列車の方に何気なく目をやったサダは、そこに弘と一緒に乗っている洋子の姿を見つけ、駆け寄ると、必死に降りろと呼びかける。

しかし、弘の方は洋子!と叫び、洋子は固まったまま。

やがて、発射ベルが鳴り、列車が動き出すと、サダは洋子にしがみつき、ホームに引きづり落とす。

橘部長刑事も駆けつけて来て、一人動き出した列車に乗っている竹下に呼びかけると、竹下もホームに飛び降りる。

洋子とサダが抱き合っている横で、内藤刑事が竹下に手錠をかける。

立石班は、竹下を連れて警視庁に向かうのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

NET(現:テレビ朝日)の人気番組だったテレビドラマの映画化だが、キャスティングは、テレビ版とは全く異なる。

今回は、野望渦巻くファッションデザイン界を舞台にした物語になっているが、かなり内容も通俗なら、犯行動機が薄弱な犯人像もかなり無理矢理感が強く、意外と言うよりもあっけにとられると言った印象。

「機動捜査」と言うタイトルにもあるように、もともと外での初動捜査を重点に描かれていたらしいこのシリーズの作品にしては、今回は、警視庁内でのセット撮影も多く、割と平凡な刑事ドラマに近くなっている。

悪女を演じる久保菜穂子がちょっと珍しいが、何と言っても「吸血鬼ゴケミドロ」で有名な高英男の一種独特のねちねちしたキャラクターが見所。

老け顔の菅井きんは、この当時から各社で重宝がられていた事が分かるが、同じ作品に出ている可愛い千葉真一のその後の変貌振りなどと比較すると、老け役女優は何十年も印象が変わらないものだと感心させられる。

今はいなくなった犬のスピッツがちらり登場したり、千葉真一が、やたらと、当時出回り始めたオープンリール型の小型テープレコーダーを使用している所などが懐かしかったりする。