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特別機動捜査隊

1963年、東映東京、大和久守正脚本、太田浩児監督作品。

※この作品は捜査ものであり、後半で意外な真犯人が明かされますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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線路をまたぐ陸橋の上に佇む娘一人。

彼女の下を、C58機関車が通り過ぎ、その噴煙が彼女の姿を隠した次の瞬間、彼女の姿は消えていた。

タイトル

警視庁よりから、警視303立石班に、日暮里の橋下で女性の変死体が発見されたと言う急報あり。

現場に到着した立石主任(安部徹)を待っていた警官は、自殺と思われ、バッグの中に父親宛ての遺書らしきものが入っていたと警官が報告をする。

父親が来たら、筆跡を確認してもらうようにと、立石主任が警官に指示を出した直後、縄張りの中に入って来た父親らしき男が、娘の遺体にすがりつき「絹子!絹子ー!」と悲痛な声を上げる。

自分の大学時代の親友が勤めている週刊大洋編集長細田武(河野秋武)だと、内藤刑事(千葉真一)が立石主任に耳打ちする。

その細田絹子の初七日の日、週刊大洋の編集部では、細田が編集者の中野通夫(曽根晴美)を呼び、彼が単独で取材を進めている麻薬関係の記事よりも、芸能ネタの方が庶民に受けるので、すぐさまテレビ局に行って、新人スターの滝竜二(波木井健二)を取材して来いと命じていた。

VETでは、ちょうど、滝竜二主演「飛燕若様侍」の収録が、面物客も見守る中、行われていた。

3時半に一段落し、次回再開予定の4時まで休憩になる。

控え室に戻る滝に、取り巻き連中(小林紀彦、清見淳)が、前の山辺さんは個性(アク)が強すぎたなどとおべっかを使い取り入る。

そんな滝の様子を睨んでいた一人の男がいた。

その異様な男の姿を、スタジオに取材に来ていた中野は見逃さなかった。

滝は、エレベーターに乗り込む。

そのエレベーターを五階で待っていた女優二人(谷本小代子、阿久津克子)は、四階でちょっと停まったエレベーターが上がって来て扉が開いたので中に入ろうとした時、床に血まみれの滝竜二が倒れているのに気づき悲鳴を上げる。

立石主任の乗る警視303に、VET局内で俳優が殺害されたとの無線が入る。

立石主任たちが、局内に入る様子を、玄関の所で見つめていたのは、先ほど、滝を睨んでいた男だった。

滝の死体を触ってみた立石主任は、まだ死後30分と経っておらず、殺されたのは3時40分頃だろうと推測する。

大量の出血がエレベーターの壁に飛び散っていたが、犯人は、滝の背後から心臓を一突きしており、おそらく左利き、返り血も浴びていないだろうと推理する。

死体の手を調べていた内藤は、爪の間に糸くずが挟まっていたと報告し、ただちに科研に回すように命じられる。

スタジオでは、主役が急死したため、ディレクターの石井(杉義一)らがその対応に右往左往しており、そこにやって来たマネージャーの黒木(ピエール瀬川)に、新主役には、新芸プロの下河原弘に決定すると、石井は伝えていた。

立石主任から、死んだ滝の人となりを聞かれた石井は、友人と言えば、同じ事務所の下河原くらいじゃなかったかと答える。

一方、死体を発見した二人の女優に事情を聞いていた荒牧刑事(南廣)と桃井刑事(亀石征一郎)は、登って来たエレベーターが、一旦四階で停止した事を聞き出していた。

その頃、ある男が電話を受けていた。

「俺だ。やったか?とにかく帰ってろ」

クラブ「ブルースカイ」では、歌手の松尾和子(松尾和子)が唄っていた。

そこにやって来たのは、TV局で滝を睨んでいた男だった。

その席に、別の男がやって来ると、上手く行ったか?と言いながら、札束を男に渡す。

そんな様子を、じっと歌手は見守っていた。

警視庁の科研では、大学病院から解剖所見が届き、凶器は、刃渡り15cmの短刀かナイフ、また、爪に挟まっていた糸くずはイギリス製の高級服地のものと分かる。

立石主任たちは、滝の妹、純子(中原ひとみ)のマンションに事情を聞きに来ていた。

純子は足が悪いようだった。

滝への手紙を調べていた立石主任は、双葉と言う相手から手紙が多いと気づくが、純子の説明では、「千代子」と言うバーのマダムなのだそうである。

そこに、細田編集長と中野が連れ立ってやって来る。

中野こそ、内藤刑事の友達だった。

立石主任たちが辞去した後、焼香をすませた細田編集長は、今度、うちで、滝竜二の特集をやる事にしていたが、追悼号になってしまった。ついては、純子に何か書いてくれないかと頼む。

しかし、一人の俳優の死んだ事がそんなに面白いのですかと純子は気色ばみ、申し出を拒絶するのだった。

テレビ局で滝を睨みつけていた男は、自宅のベッドでくつろいでいた。

そこに妻が帰って来るが、男は、今日、VETのスタジオで見て来たと、意味ありげな言葉を投げかける。

新芸プロの事務所にやって来た荒牧と桃井の両刑事は、滝に代わって主役に抜擢された下河原弘(室田日出男)に話を聞こうとするが、当の下河原は、刑事らの相手もそこそこにスタジオに向かってしまう。

帰りの車の中、桃井は、友人が死んだと言うのに、あいつ、うきうきしやがってと、怒りもあらわに吐き捨てる。

そんな両刑事が乗った警視208号車に、服地の出元が分かったとの連絡が入ったので、すぐさま三共物産貿易部に向かう。

しかし、対応した男は、係の者が今日はいないので、服地を卸した相手先の事は明日になるまで分からないと言う。

一方、バー「千代子」にやって来た立石主任は、滝に何度も手紙を出していたマダムに事情を聞くが、マダムは宣伝のためにしていただけと口が重い。

そこに、ディレクターの石井がやって来て、滝がせっかく抜擢されたばかりだったのに…と奇妙なことを言うので詳しく聞いてみると、実は、前の主役の山辺武彦(賀川晴男)と言う俳優が、売れた事ですっかり天狗になり、撮影日なのに右手に包帯姿で遅刻して現れ、夕べ銀座で喧嘩をしたので、立ち回りは演出でどうにか…などと言いだしたので、その場で聞いていたTV部長(菊地双三郎)から、主役交代を告げられたと言うのだった。

その石井から聞いた山辺のオオクラマンションへ向かった立石主任らは、ドアが開いており、室内が荒らされていたので緊張するが、やがて、ベッドの上で心臓を一突きされ死亡していた山辺の死体を発見する。

その似通った手口から見て、滝殺害犯と同一人物の仕業のように思えた。

その時、内藤刑事が、コールタールの付着した砂を少量室内で発見する。

橘部長刑事(織本順吉)は、ひょっすると、犯人は山辺を殺すのが本当の目的で、滝は山辺と人違いされ殺されたのではないかと言い出す。

被害者のタンスを調べていた荒牧刑事が、衣類の中から手帳を発見し、PM7:00に銀座でMFと会うと記されている事を報告する。

手帳には多数の女名前が書かれており、その中でMFと言うイニシャルに合致するのは、藤井美津子と言う女性だけだと分かる。

その藤井美津子(故里やよい)に会いに行った立石主任は、ご主人は、あなたと山辺の関係を知っていますか?と単刀直入に聞き、夫で船員の藤井健吉は、来月香港に向かう打ち合わせのため、今日は横浜にいるとの情報を得る。

さっそく横浜港に碇泊中の船にいた藤井健吉(大村文武)に会いに行った立石主任らは、昨日と一昨日のアリバイを聞いてみる。

藤井は、昨日は女房と一緒にいたが、一昨日は、女房をもてあそんだ男を見にVETに行っていたと正直に答える。

その場は一旦帰る事にした立石主任だったが、船を降りながら「藤井を召還する必要があるのでは?」と話しかけて来た内藤刑事に、あそこにいるのは、君の友達ではないかと指差す。

少し先から立ち去ろうとしていたのは、まぎれもなく、週刊太陽の編集者中野だった。

その頃、細田編集長は、純子に再び会っていた。

純子は、兄はテレビの世界に入って人間らしさを失っていた。自分を失った兄も被害者なのですと話していた。

細田は、自分も一人娘をこの前自殺で失ったばかりなので、何かあったら父代わりに相談してくれ。特ダネに追いかけられている自分が情けなくなると、心情を吐露していた。

そんな細田に純子は、自分も二年前、自動車に撥ねられて足が不自由になった時、自殺を考えた事がある…と打ち明けるのだった。

科研では、コールタールの分析を行っていた。

都内で同じものが使われているのは数カ所に絞られる事が分かる。

週刊太陽の編集室にやって来た立石主任は、何か捜査にご執心のようだが、何故、横浜に中野君を寄越したのです?と嫌みを言って帰る。

その後、事情を知らなかった細田は中野を呼び出し、説明を求める。

中野から、先日、テレビ局内で見かけた藤井と言う船員は、麻薬の運送をしているのではないかと疑い、張っていたのだと聞くと、細田編集長は、別の慣れた人間に取材をさせるから、お前は手を引けと命ずる。

服地の線を追っていた荒牧、桃井の両刑事は、何件かテーラーを回った末に、左利きらしき注文主を二名見つける。

一人は岡本修一、もう一人は茨興業の赤沼修一と言う人物だった。

コールタールの使用場所と一致していたのは、赤沼だけだった。

すぐさま、茨興業に向かった立石主任は、応対に出て来た社長の茨常五郎(浜田虎彦)と専務の長沢(春日俊二)に、赤沼の所在を聞くが、夕べから帰っていないと言う。

茨は、「やったか?」と電話を受けていた男、長沢は、クラブで藤井に金を渡した男だった。

赤沼の住み込んでいると言う共同部屋を調べていた内藤刑事は、赤沼のロッカーの中で、左の袖口が血で汚れたスーツを発見する。

すぐさま、赤沼修一(池田紀生)は指名手配になる。

その赤沼は、藤井の貨物船に隠れていた。

そんな貨物船にやって来た中野は、茨から聞いて来たのだが、ヤクを分けてくれと藤井に告げる。

何の事か分からないととぼけていた藤井だったが、赤沼からの耳打ちされた船員が知らせに来たので、そのまま何食わぬ顔で藤井を船に上げる事にする。

船倉に連れて来られた中野は、そこに赤沼が隠れていた事を知るが、服の中から名刺を見つけられ、刑事ではないと分かったので、三人からぼこぼこにされ、縛られてしまう。

気がついた中野は、クラブ「ブルースカイ」の地下室に閉じ込められていた。

クラブでは、カウンターに座っていた藤井の所にやって来た松尾和子が、地下室に閉じ込めた男は、長沢が来て始末をすると告げる。

その頃、荒牧と桃井両刑事は、ずっと茨興業の様子を車の中から見張っていた。

立石主任は、事件の動機がはっきりしない事に頭を悩ませており、茨に繋がる女でも浮かんでくれば…とつぶやいていた。

そこへ、新牧から連絡が入り、会社にツートンカラーの車がやって来たと言う。

バックナンバーから、車の持ち主はクラブ「ブルースカイ」の松尾和子と判明。

その車に乗り込んだ長沢専務が会社を出発したので、新牧らは尾行を開始する。

長沢が乗った車は横浜港にやって来ると、船の下で待ち受けていた藤井と何事かと話した後、すぐに又出発する。

荒牧は車を降り、藤井を追う事にし、車は桃井が追跡する事にする。

立石主任に桃井から連絡が入り、どうやら長沢専務の向かう先も「ブルースカイ」のようだとの事だった。

「ブルースカイ」前で、桃井と合流した立石主任は、港の荒牧と合流するように桃井に命ずると、内藤刑事には、建物の裏へ回らせる。

正面入り口から立石主任と橘部長刑事が侵入する。

裏口から中に入った内藤刑事は、廊下に落ちていた「週刊太陽」の刻印が入った鉛筆を発見する。

地下室では、長沢が中野に、サツに何をしゃべったと言いながら、なぶりものにしていた。

そこに飛び込んだ内藤刑事は、長沢を緊急逮捕する。

救い出された中野は、赤沼は船にいる所を見たと証言する。

それを聞いた立石主任は、藤井は麻薬密売の疑いがあると、荒牧に連絡。

荒牧は、すぐさま藤井を逮捕する。

船内に潜んでいた赤沼も追跡の末、駆けつけて来た立石主任たちにとの間に挟まれ、あえなく逮捕される。

その頃、茨社長は「山辺を殺してくれと頼んだのだはあんただ」と、社長室で電話を受けていた。

中野を助けてやってくれと頼んでいた電話の相手は、細田編集長だった。

その社長室にも内藤刑事らが駆けつけ、嘱託殺人罪で逮捕される。

その社長室の騒ぎを公衆電話で聞いていた細田は、ふらふらと外に出る。

週刊太陽の編集室にやって来た立石主任らは、細田編集長なら、滝竜二の妹の所に行ったと編集者たちから聞かされる。

細田は、純子の前で詫びていた。

純子は、私に許せとおっしゃるのですかと固くなるが、細田は、山辺に娘を接近させたのは自分だったと打ち明け始める。

取材のため、山辺と付き合いを深めたかった自分だったが、売れ始め、遠ざかろうとした山辺を止める手だてとして、娘を利用したと言うのだ。

私は、山辺と少しも変わりはしない。私は罪人ですと告げて、部屋を出る細田。

その時、サイレンの音が近づいて来たかと思うと、通路に出た細田の足音が階段を上って屋上に向かったのを聞き分けた純子は、悪い足を引きづりながら、自分も屋上へ向かう。

屋上から下を見下ろした細田は、近づく記者の煙と、「お父さん!」と自分を呼ぶ娘絹子の姿を見たような気がした。

「おじさん!」と呼びかけて近づいて来たのは純子だった。

下では、駆けつけて来た秋山警部補が、止めろ!と叫んでいた。

足の悪い純子が屋上で転んだのを見た細田は、彼女に駆け寄ると、私は又間違えた。人を殺すのも、自殺も罪だった…と謝る。

そこに、立石主任と橘部長刑事が近づいて来る。

パトカーの後部座席に乗せられた細田は、いつまでも、見送るように道に立ち尽くす純子の姿を振り向いて見つめていた。

哀しい表情で見送る純子の前から、パトカーが遠ざかって行く。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「相棒」などでいまだに続く、テレビ朝日の東映捜査もの番組の走りで、波島進が班長を演じた立石班の活躍を描くテレビ人気番組の映画化であるが、映画版は、テレビ版のキャストとは全く別になっている。

悪役としてのイメージが強い安倍徹が主役と言うのも珍しい。

「新七色仮面」や「アラーの使者」の千葉真一、「マイティジャック」の南廣、映画版「月光仮面」の大村文武、「キカイダー01」の池田紀生(池田駿介)など、テレビヒーロー役者が何人も出ているのも見所。

室田日出男も、舞い上がって浮かれる俳優と言う役所で、ちょっと、後年の強面イメージとは印象が違うのも面白い。

歌手役で登場しているこの頃の松尾和子は、若くてきれい。

捜査もののブームを作った同時期のライバル作品「七人の刑事」とは異なり、警視庁内での捜査会議などはほとんど登場しない。

ほとんどが、パトカーによる外勤の様子が描かれている。

上映時間も1時間と、テレビ版と大差がなく、展開もテレビドラマのように速い。

そのためもあってか、意外性は用意されているものの、全体的に人間ドラマなどの掘り下げは弱く、類型的で、映画としての見応え感はやや薄い。

あくまでも、プログラムピクチャー(二本立て映画)の添え物と言った感じの作品である。