1959年、東宝、樫原一郎「トランペット刑事」原作、若尾徳平脚本、日高繁明脚本+監督作品。
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警視庁音楽隊が街を行進している。
その中でトランペットを吹いている警官進藤三郎(佐藤允)に声をかけたのは、偶然、覆面パトカーで通りかかった辺見竜四郎(池部良)、通称竜さん。
覆面パトカーを運転していた二瓶米吉(有島一郎)が、今のは?と聞くと、自分の高校の後輩であり、浅草署の進藤さんの息子三郎だと竜四郎は答える。
浅草署のベテラン進藤の名前は二瓶も良く知っていた。
その浅草署の進藤さんこと進藤吾一(三津田健)は、浅草フランス座近辺の人ごみを歩いていたが、顔なじみの店主たちから親しげに声をかけられると、自分の息子がラッパ吹きなのが面白くないんだと、つい愚痴をこぼしてしまうのだった。
二瓶、竜四郎が乗る警視08号車に、見返り橋の川下に溺死体が漂着したとの知らせが入ったので、覆面パトカーの赤色灯を出すと浅草署に急行する。
同じく浅草署に戻って来た進藤は、溺死体は事故か自殺ではないかと言う報告を知ると、こんな寒中に飛び込む奴はいないと反論する。
それを聞いていた署長(林幹)は、まあ、そう興奮しなさんなと、進藤の張り切りぶりをたしなめるのだった。
その頃、20分も待ち合わせ時間に遅れてやって来た、近所の早川千加子(野口ふみえ)と仲良く合流した三郎は、二人で作った合唱団のコンクールがもうすぐだなどと話しながら一緒に帰宅するが、その途中、千加子の祖父藤作(笈川武夫)が艀で帰って来るのを見つけたので、千加子が声をかけるが、藤作はその声にも気づかないように、なぜかうなだれていた。
帰宅した三郎は、自分の家に、千加子の弟、登志夫(小柳徹)が来ており、出迎えた母親常子(東郷晴子)も、千加子に一緒に家でご飯を食べて行くように勧める。
夕食の準備をしていた常子は、手伝いをする千加子に、刑事の妻なんかになるもんじゃないと言いながらも、三郎の嫁にならないかと話しかけていた。
千加子は満更でもなさそうだったが、はたして三郎の方がどうなのかと心配げ。
その三郎、飯はまだかと、無邪気に登志夫と遊んでいたので、その姿を見た常子は、お嫁の話はまだ早すぎたかなと千加子に笑いかけるのだった。
その夜、近所の子供たちを集めて作った合唱団の前で、三郎が今度のコンクールには、警視庁音楽隊も来ると子供たちに発表した後、千加子がピアノを弾き、三郎が指揮をして歌の練習を始める。
その頃、馴染みの飲み屋に立ち寄っていた進藤は、女将のお米婆さん(千石規子)相手に息子の事を愚痴っていたが、そこにふらりと藤作が入って来る。
ひどく元気がない様子なので、怪訝に思いながらも、進藤が酒で憂さを晴らせと勧めるが、その時、のれんを少しめくった男が、組合に呼ばれていると、藤作に声をかけて来たので、藤作は進藤に「帰って来たら、聞いてもらいたい事がある」と言い残し、外に出て行く。
その藤作の妙な態度をいぶかしんでいた進藤だったが、お米婆さんは、近頃、仕事がきついらしいと藤作の事を話す。
その時、進藤は、誰かが呼んだように感じ、窓から外をのぞいてみたりするが、その時、入り口に、血まみれの手が伸びて来た事に気づく。
頭から流血し、表に倒れていたのは、今出て行ったばかりの藤作じいさんだった。
大量の血痕が残っていた現場には刑事たち(中丸忠雄、桐野洋雄)が集まっていた。
近くをパトロール中だった覆面パトカーも到着し、竜四郎は二瓶に、被害者藤作は、進藤さんと知り合いだったと説明しながら、その場にいた進藤に挨拶するが、進藤は、あの時、もっと気をつけていれば…。俺がやったようなものだと悔やんでいた。
その直後、覆面パトカーに本庁から連絡が入り、竜四郎たちは、浅草署に協力する事になる。
藤作の乗った艀を調べていた竜四郎は、そこに落ちているマッチの燃えかすを見つけると、藤作は煙草は吸うのかと進藤に尋ねるが、酒だけだったと聞くと、それを採取する。
浅草署内には、河津班捜査本部が設置されていた。
河津刑事部長(瀬良明)は進藤に、飲み屋ののれん越しに藤作に声をかけて来た男の顔を見なかったのかねと聞いていたが、進藤に返す言葉はなかった。
そこへ、二瓶が、土左衛門の身元が分かったと報告に来る。
金融業や女の斡旋などをしていた杉山重蔵と言う男だったが、過失ではないかと言うのだ。
しかし、それを聞いていた進藤は、藤作じいさんの事件と繋がっているのでないかと言いだすが、河津刑事部長から、勘だけではダメだと、とにかく足で探れと釘を刺される。
杉山の自宅兼事務所に向かった二瓶と竜四郎は、杉山の妻民江(音羽久米子)から、夫は土曜日の八時頃、取引先の人と夜釣りに行くと出かけたと聞かされる。
帳簿を調べていた二瓶が、帳簿が少ないようだが?と聞くと、夫が持っていた鞄に入れていたのではないかと言う。
酔って落ちたのかもしれないと事故を臭わせると、民江は、あの人は酒を飲めないと反論する。
船はいつもどこで借りていた?と聞くと、前橋の「網定」だと民江は答える。
タバコを吸おうと、ライターを出した竜四郎だったが、なかなか付かないのを見かねた民江が、近くにあったマッチを渡す。
その後、一人で地下鉄に降りた竜四郎は、日比谷での演奏から帰る途中だった三郎とばったり出会う。
一緒に電車に乗り込んだ二人だったが、すぐさま、車内で竜四郎がスリを発見し、三郎にすって電車から降りた男を追わせ、自分は被害者の方を電車から降ろす。
三郎は、慣れない尾行ですぐに相手を見失ってしまう。
竜四郎の方も被害者に話を聞いていたが、相手は、内ポケットを探り驚いたよう様子なのに何もすられていないと言う。
一応住所と名前、職業などを聞くと、失業中の田中利男と答え相手は帰って行く。
逃げられたと詫びる三郎に、ちょっと茶でも飲もうかと竜四郎は誘うが、今夜の藤作じいさんの通夜の準備があるので…と、三郎は断りながら、竜四郎がタバコを吸うために取り出したマッチを見て、粋ですねと誉める。
何のことを言っているのかと、竜四郎が改めて、手にしたマッチのラベルを見直した所、そこには「クラブ ダイアナ」と書かれてあった。
それは、先ほど、杉山の事務所で民江から渡されたマッチだった。
何事かに気づいた竜四郎は、三郎に別れを告げると、本庁の化学科に向い、マッチの鑑定依頼をする。
藤作が乗っていた艀の中から発見したマッチと、「クラブ ダイアナ」のマッチは同一のものだと言う事が判明する。
その夜、藤作の通夜にやって来た進藤は、登志夫の姿がないので、千加子に聞くと、今、三郎と一緒に外に出かけたと言う。
三郎は、近くの川縁で、三郎のためにトランペットを吹いてやっていた。
三郎は、自分も兄を戦死させたので、つらい気持ちは分かる。泣きたい時には思いっきり泣いていいから、その後は諦めるしかないと登志夫に言い聞かせる。
そこへ、進藤が迎えに来たので、その姿を見た登志夫は、猛犯人を捕まえたのと進藤に近づく。
まだだ…と進藤がすまながると、どうして?やだやだ!と進藤にしがみついて来る。
その登志夫の姿に突き動かされた進藤は、そのまま捜査に向かう。
網定にやって来て店主から話を聞いていた進藤は、いまだに、杉山が乗っていたはずの船が見つからないとぼやき、そのままお台場に向かうと立ち去る。
一方、「ナイトクラブ ダイアナ」に客として入ってみた竜四郎は、ステージで唄っていた色っぽい歌手の安積由紀(中田康子)に注目しながら、ホステスの田中きみ江(峯丘ひろみ)から、それとなく杉山の事など聞き出す。
きみ江は、杉山は金もろくに使わず嫌らしい事をする嫌な客だったけど、マネージャーの客だったから仕方なかったと言う。
その時、カウンターの方に目をやった竜四郎は、そのマネージャーらしき男と、客が何事かを話している姿を目撃する。
その客は、地下鉄内でスリをやった男(山茶花究)に違いなかった。
その相手をしているマネージャーの名前を聞くと、田中利男(藤木悠)だときみ江が言うではないか。
あの地下鉄内のスリの被害者が名乗っていた名前だと、竜四郎は気づく。
きみ江が、今、うちのバンドのしんちゃんと言うペット吹きが辞めたので、後がまを捜していると言うので、竜四郎はペット吹きを知っているので寄越すと答え、ちょうど帰る所だった、田中の話し相手の客の後を追う。
しかし、店の前ですぐに見失った竜四郎は、そこにクラクションが聞こえ、車で来た二瓶が杉本の船が見つかったと教えてくれる。
捜査本部に戻った竜四郎と二瓶は、名前が書かれた紙を渡されると、この女に会って来てくれと河津刑事部長から依頼される。
二人が向かった先は、杉山の2号山路節江(若林映子)の住む葵ヶ丘アパートだった。
杉山の仕事の事を尋ねると、売春ブローカーの事でしょう?と悪びれなく答えた節江は、自分もかつて売春婦になりかけたが、そこ後杉山の世話になるようになった。
自分は、その杉山から預かっているものが、今銀行に預けてあるので渡したいと言う。
二人は、明日又来ると言い残し、アパートを去る事にする。
その立ち去る車を見ていた男が二人いた。
「クラブ ダイアナ」の男たちだった。
その夜、お米婆さんの飲み屋にいる進藤に呼ばれた竜四郎が出向いてみると、最近、三郎がキャバレーでラッパを吹いていると言う相談だった。
訳を問いただすと、自分は、警察功労賞をもらった父さんみたいになりたくない。せめて、母さんに電気洗濯機くらい買ってやりたいので、金が欲しいのだと言い出したと言うのだ。
進藤が警察官の面汚しだと叱ると、辞めれば良いんでしょうと言い、家を出て行ってしまったと言うのだった。
その話を聞いていた竜四郎は、何も言えなかった。
三郎を「クラブ ダイアナ」に潜り込ませたのは自分だったからだ。
その夜も、五郎と言う偽名で雇われた三郎は「クラブ ダイアナ」のバンドでトランペットを吹いていた。
ステージで歌い踊っているのは由紀だった。
その時、店内で飲んでいた酔客の一人が、三郎の顔に見覚えがあると近づいて来る。
警視庁音楽隊のペット吹きだろう!と指を突きつけて怒鳴る酔客の声を、踊っていた由紀は聞き逃さなかった。
結局、その客は、別の所で会ったんだっけ?などとしどろもどろになりだしたので、ホステスになだめられながら席に戻され、その場は事なきを得るが、三郎は冷や汗ものだった。
演奏を終わり、裏口から外に出た三郎は、待っていた竜四郎と落ち合う。
一方、由紀は、先ほどの出来事をマネージャーの田中に耳打ちしていた。
三郎は、楽器専門の納入業者が客として来ていたので危なかった…と、苦笑しながら竜四郎に報告していたが、竜四郎から、親父さんにだけは潜入捜査の事を打ち明けた方が良くはないかと聞かれると、奴らを警戒させるだけだから言わないでいてくれ、ただ、彼女に誤解されるのがちょっと…と答える。
その時、近くを、若い女性を連れた男が「クラブ ダイアナ」に入って行くのを目撃する。
どうやら、行く宛てのない地方出身者を世話してやると男が言っている様子。
あの男は、店の用心棒の大沼(南道郎)ですよと三郎が教えると、あいつは地下鉄のスリの被害者だ、忘れたのか?と竜四郎に指摘される。
役者がそろったな…とつぶやいた竜四郎は、彼女たちの様子にも気をつけるように三郎に依頼する。
大沼に店の中に連れて来られた二人の娘は、由紀から、今日はゆっくり休みなさいと優しく声をかけられる。
その様子を見ていた三郎が、意外と優しいんだなと声をかけると、由紀は、あんた、おまわりさんですってねと近づいて来て、今夜つきあってくれないかと誘う。
すると、三郎はいきなり、由紀の身体を空き部屋に連れ込み抱きつこうとすると、話ってこれじゃなかったのか?がっかりしたぜと、とぼける。
由紀は、あんた、私を誰だと思っているの?気をつけないと痛い目に遭うわよと脅して来る。
廊下に出た三郎は、待ち受けていた田中に捕まり、「良い度胸をしているな」と、のど元を締め付けられる。
三郎は思わず、近くにあった包丁を手に取ると、それを相手に押し付け、「人斬り五郎と言えば、ハマじゃちょっと知られた名前だぜ」と逆襲する。
直後、すぐに謝罪した三郎は、バンドに戻って演奏を始める。
カウンターに戻った田中の所へは、以前やって来たあのスリが又やって来て、マスターがいないと聞くと、あんたには話は出来ないと帰る。
表まで追って来た田中が、どうしても俺では話が出来ないのかと食い下がると、スリは、取引先は他にもいるので言い残し帰ってしまう。
その後、進藤が待つ飲み屋に来た竜四郎は、藤作じいさんが殺されたのは、何かを見たからではないか?それは杉山重蔵が殺されたのを見たのではないか?
船には鞄が残されていたが、中に入っていた証文は盗まれたに違いない。
藤作じいさんがサツの俺と話をしているのを見て危険だと感じた敵がやったのではないかという進藤の推理を聞いた竜四郎は、早速その線で追ってみると約束する。
その頃、三郎は人がいなくなったクラブの事務所を探っていた。
その時、誰かが入って来たので、身を隠した三郎だったが、入って来たのがきみ江だと知ると、とぼけて、送って行くと外に連れ出す。
その帰り道、きみ江は、あんた、由紀さんの事、好きなんじゃないの?と三郎に聞き、あの人はマスターの奥さんで、他に大きな仕事していると意味ありげに話した後、急に何かに怯えたように、五郎さん!私を助けてとすがりついて来る。
店を逃げても、見つかってひどい目に遭うと言うのだ。
その時、田中らと由紀が乗った車が通りかかり、きみちゃん、くだらない事をしゃべるんじゃないよと釘を刺して走り去る。
その同乗者で見慣れない男の事を聞くと、あれがマスターだと言う。
そのマスターの滝沢春也(大友伸)は、今、きみ江と一緒にいた男は誰かと田中に聞く。
ハマで暴れていた奴らしいと聞くと、ハマの事なら、島野の梅吉親分に聞いておけと命ずる。
「クラブ ダイアナ」に着いた滝沢、田中、由紀の三人は、甲冑の置物の背後にある秘密の通路から地下室に降りて行く。
そこでは、何かの実験室のような装置があり、一番奥の部屋には大勢の女たちが詰め込まれていた。
田中は、スリが持ち込んで来た話をどうするか滝沢に聞く。
滝沢は、仕方がないから50万渡そうと言い出す。
それを聞いていた由紀は、誰かさんの尻拭いのためにそんな大金を渡すなんて…と聞こえよがしの嫌みを言う。
それを聞きとがめたのが、スリにすられた大沼。
九州では「人食い虎」と言われていたかもしれないが、スリにすられるなど、所詮田舎者だと続ける由紀に、大沼は気色ばむ。
二人もの人間を殺して、杉山の仕事をマスターに渡したのは俺じゃないか。たかが紙切れを盗まれたくらいで、そんなことを言われる筋合いはないと反論する。
女がまだ足りないと言う由紀の言葉を聞いた滝沢は、手段を選ばず、もう20人ほど集めろと命じる。
いよいよコンクールの日を迎えた合唱隊では、最近姿を見せなくなった三郎さんも来てくれるよね?と、登志夫が由起子に聞いていた。
コンクールは5時からだった。
その頃、クラブにいた三郎は、由紀がクラブの中の行き慣れない場所へ向かう姿を見かけたのでその後を尾行してみる。
田中らに会った由紀は、吸取の政は大阪に経つので、今日4時に会う事になったと報告する。
落ち合う場所を言いかけた由紀は、ドアの外に人の気配を感じ、思わずドアを開けるが、そこには誰もいなかった。
子分の健(山本廉)たちがやって来たので、誰か近くにいないかと聞くが誰もいないと言う。
三郎は、その由紀が立っていた階段の下にぶら下がっていた。
足下には、高圧電線が走っている。
その頃、滝沢は、山路節江の部屋に忍び込み、シャワー室から出て来た彼女に、銀行から持ち帰ったものを拝借したいと迫っていた。
クラブの三郎の部屋に、客が来ていると使いが来る。
出てみると、千加子だった。
今日のコンクールには来て下さるわね?子供たちと約束したのと千加子は言う。
三郎は、店の子分たちの目が光っている事に気づき、宗旨替えをして、金にならない事はしなくなったんだと素っ気ない返事をする。
その頃、山路節江の部屋を訪れた竜四郎と二瓶は、彼女の姿がないので不審に思い、部屋の中を探し始める。
床に東洋銀行の封筒が落ちているのを見て、彼女が杉山から預かった品物を出して来た事は分かったが、封筒は空だった。
やがて、タンスを開けた竜四郎は、その中から転がり出た山路節江の死体を抱きとめる。
それを見た二瓶は、やっぱり大切な手がかりだったんだねと、失った封筒の中身を惜しむのだった。
三郎は、まだ千加子に詰め寄られていたが、大沼が帰って来たのを目にすると、今忙しいと言いながら、三郎の尾行を始める。
大沼はタクシーを拾ったので、三郎も車を止め、上野駅まで追跡する。
時間は4時だった。
同じ頃、登志夫は三郎を探しに「クラブ ダイアナ」に一人で来ていた。
それを知った由紀と田中は、会わせてあげると言葉巧みに店を連れ出される。
きみ江も田中に連れ出される。
その頃、スリの吸取の政は竜四郎と二瓶に確保されていた。
三郎が事務所に今日は用事があるので休ませてくれと訪ねて来ると、大沼がドアの鍵をかけ、田中に、お前は警視庁の楽隊だと詰め寄られる。
三郎は、単身、田中や他の子分たちと殴り合いを始める。
しかし、大沼から、電話の受話器で殴りつけられた三郎は気絶する。
浅草署に連行されて来た吸取の政の顔を見た進藤は、すぐに馴染みのスリだと声をかける。
取調室に一緒に入って来た進藤は、この人たちは本庁の人で、俺のような所轄とは訳が違うぞと、とぼけている政に忠告する。
それでも虚勢を張っていた政だったが、二瓶の鋭い追求で表情が変わり始める。
単なる窃盗で調べられているつもりだったが、二件の殺人事件の共犯になる可能性もあると知ったからだ。
政は、進藤にすがりつくように、すった封筒を差し出す。
その政の話にラッパを吹く警官が出て来たので、聞いていた進藤は驚く。
河津刑事部長に、その政から手に入れた書類を渡しながら、残りの半分は杉山の2号が持っていたのだと説明する竜四郎。
証拠が手に入った河津刑事部長は、滝沢一味を逮捕するよう全員に命じる。
一方、三郎は「クラブ ダイアナ」の秘密の地下室で気がつく。
大沼は、奥の部屋から大勢の女性たちを脅しながら連れ出そうとしている。
女たちは、麻薬を射たれているようだった。
登志夫が自分と同じ部屋に連れて来られたのを知った三郎は、思わず、ドアを閉めかけた男の手に飛びかかると、その手に持たれていた鍵を奪い取る。
女たちの前に、滝沢と由紀がやって来たので、大沼は見せしめとして、きみ江の服を破り取る。
それを見た三郎は、それでも貴様、人間か!と叫び、大沼に飛びかかって行くと、滝沢を見やって、案外ケチな商売しているなと言い放つ。
三郎は、一人で大勢の子分たち相手に暴れ始める。
その頃、コンクール会場にやって来た子供たちは、三郎も登志夫もいないんでは唄えないと言い出し、一人千加子が叱咤激励していた。
「クラブ ダイアナ」の秘密の地下室では、まだ三郎が孤軍奮闘続けていた。
やがて、都内各区対抗少年音楽コンクールが始まる。
その時、秘密の地下室に、警察隊がなだれ込んで来る。
進藤は三郎の姿を見つけると、何故俺に黙っていた?しかし、良くやったとうれしそうに誉める。
その進藤に、おじさんごめんよ、あんなひどい事言って…と、登志夫もしがみついて来る。
滝沢を確保した竜四郎は、手錠を三郎に渡すと、お前がかけろと言う。
コンクールでは、いよいよ千加子たち合唱隊の番になり、舞台に出て行くが、その時、脇から、竜四郎、進藤、常子らに連れて来られた登志夫が合流する。
舞台前で演奏を始めようとしていた警視庁音楽隊の席には、左手に包帯を巻いた三郎がトランペットを持って駆けつけて来る。
それを見た合唱団の子供たちは勇気づけられ、「七つの子」を唄い始める。
それを脇から見ていた進藤は、竜さん、良いもんだなぁ、楽隊って奴は…と目を細めていた。
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沈着冷静な刑事を演じる池辺良と、音楽隊のトランペット吹きと言う異色の役柄を演じる佐藤允が共演した捜査もの。
当時の東宝系の常連たちが脇を固め、手堅い娯楽作品になっている。
男性陣は大体見分けがつくのだが、女優はメイクや雰囲気が変わっているのか、見分けにくい人もおり、タイトルに名前が出ていた星由里子などは、どこにいたのか分からずじまい。
若林映子などもかなり若く、ちょっと気づきにくい。
渋い刑事を演じている有島一郎や、一癖も二癖もあるスリを演じている山茶花究の上手さには相変わらず感心させられる。
キャバレー、売春組織、下町の合唱団との絡みや父子の情愛などと、全体的に通俗的な素材で、推理ものとしても特に意外性はないし、ラストのかなり強引なまとめ方や、三郎が妙に腕っ節が強いなど、今の感覚からすると、ややご都合主義的な部分も気にならないではないが、あくまでも、当時の大衆向け娯楽としては良く出来ている方なのではないかと感じる。
歌や踊りを披露し、さらに典型的な悪女まで演じている中田康子や、息子の事が気になって仕方がない、下町の人情派ベテラン刑事を演じている三津田健が印象的。
終止、強面の悪役に徹している藤木悠も、ちょっと珍しい。