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サインはV

1970年、東宝、神保史郎+望月あきら原作、上条逸雄脚本、竹林進監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

実業団バレーの名門「立木大和」の名監督牧圭介(中山仁)を慕い、全国から優秀なバレー選手が集結して、日夜猛特訓に耐えていた。

キャプテン松原かおり(岸ユキ)、魔の変化球サーブで知られる朝丘ユミ(岡田可愛)、高校生No.1と言われた椿麻理(中山麻理)、東北出身の眼鏡っ子小山チイ子(小山いく子)、関西出身の久保田さち子(青木洋子)、岡田きみえ(和田良子)らがレギュラー陣だった。

練習を終えた牧は、食堂で選手たちを前に、「Vと言うサインは、スコアの話ではない。いかにして勝ったか、いかにして戦ったか、いかにして自分に勝ったかの印だ」と訓示をする。

しかし、それを聞いた真理は、今の演説は私たちへの当てつけかしら?と冷笑し、立木大和のヒロインは私よと、ユミに対しライバル心をむき出しにして来る。

ある日、麻理は、コートにいたユミにジャンプするよう言い、ユミのジャンプ力は、ネット上40cm以上は飛べる他のレギュラー陣より明らかに劣っていると、やって来た牧にも指摘する。

それを聞いた牧は、皆それぞれウィークポイントを持っている。これからそれを克服する練習を始めると答えるだけだった。

自室に戻った麻理は、一緒に洗濯をしてやるからユニフォームを出してと声をかけて来た同室の久保田さち子に、自分のは洗濯屋に出すからと断る。

その頃、ユミは、一人でジャンプの練習に励んでいたが、そこに来た牧は、来るべき関東選手権大会のために今日からこれを履けと、黒いシューズを手渡す。

それは鉛が入っているため重い「ブラックシューズ」だった。

ユミを特別扱いしているように見える、そうした牧の様子を盗み見していた麻理は、一人悔しがるのだった。

さっそく麻理は、自宅に帰ると、運転手の村田に、今日から毎日、自分の練習に付き合うように命ずる。

彼女は、立木製作所の親会社の社長令嬢と言う身分だったのだが、ユミへのライバル心から、人知れず努力をする根性があった。

ユミの方は、その日から、牧の個人レッスンを受けさせられるが、重いブラックシューズを履いているので、ほとんど動けず、私には出来ないと、弱音を吐いてしまう。

牧は、そんなユミに対し、お前が自分自身に勝てないのなら、バレーなんか辞めてしまえと言い放ち、その場を立ち去る。

その頃食堂では、料理係の源さん(木田三千雄)とその妻、たけ(近松麗江)が、ユミの個人レッスンが終わるまで、みんな食卓に着こうとしない他のメンバーの友情に感激していた。

その後、牧の所にやって来たユミは、私忘れていましたと言いながらVサインを差し出してみせると、一人コートに向かい、ジャンプの練習を始める。

ユミは、麻理からジャンプ力不足を指摘された時の言葉も思い出し、自分に勝つために私はやるわと、心に誓うのだった。

そして、関東女子バレー選手権大会が始まる。

試合場に入りかけたユミに、牧は、君の身体は今までとは違ったものになっているはずだと言いながら、ブラックシューズを脱ぐように命ずる。

コートに入って試合を始めたユミは、自分の身体が嘘のように軽くなった事を知る。

マルボー光学との第一回戦は楽勝だったので、試合後、ユミはうれしくて、仲間たちと一緒に有頂天になっていた。

そんな中、一人外出した椿を見ていた牧は、ユミを呼ぶと、何か忘れていないか?バレーへの執念だ!と殴りつけ、そこの林を見てみろと言う。

怪訝に思い、近くの林の中をのぞいてみたユミは、そこで行われている異様な光景を目にする。

何と、目隠しをし、木に片側を固定したエキスパンダーを、両手足と身体に付けた麻理が、村田が投げるバレーボールをレシーブしているではないか!

麻理は、バレーに命を賭けている。朝丘さんにだけは負けたくないと念じながら、毎日秘かに猛特訓に明け暮れていたのだった。

それを目にしたユミは、麻理の情熱に負けたと自覚するのだった。

その日からユミは、新しい魔の変化球サーブを作り出す事に熱中し始める。

そんな立木大和の試合の会場に、テンガロンハットにウエスタンファッション、白いギターを抱えたガングロの女の子が現れる。

彼女は、いつも一人でギターをつま弾くような孤独な少女で、上空を飛び去る飛行機を見ると、アメリカ…とつぶやいていた。

対ミカサ戦では、相手の殺人サーブに押され、立木大和はピンチに陥る。

麻理は、いよいよ私の出番ねと確信する。

その確信通り、麻理は、相手のサーブを見事に撃ち返し始める。

それを見たユミは、あの麻理がやっていた不思議な猛特訓の意味を悟る。

目を隠す事によって、相手の打つボールの音だけで、そのボールの飛ぶコースを察知し、それに対応する訓練だったのだ。

会場では、そうした試合の様子をジュンも観ていた。

麻理の活躍で、立木大和はミカサを圧倒し始める。

コーチ上の麻理は、ユミに、どう?朝丘さん、大分ショックだったようねとあざ笑う。

しかし、ユミも、あれから秘かに編み出していた新しい変化球サーブを披露する。

それは、雷のように、高い位置からジグザグ状に落ちる魔の変化球だった。

それを受けた相手のエース大元は倒れて動けなくなる。

実況していたCBAのアナウンサーは、その魔サーブを「稲妻落とし」と命名する。

それを目の当たりにした麻理もショックを受けるが、私なら受けられると、いつもの負けん気も湧いていた。

ミカサ戦に勝利し、優秀選手賞は麻理に与えられるが、受け取った麻理は、何故かうれしさがなかった。

同じチームにいては、ライバルユミとの勝負をする事が出来ないと感じた麻理は、立木を辞めて、ライバル、レインボーに入る事にする。

麻理にとっての「V」は、ユミに打ち勝つ事だったのだ。

ユミと麻理を中心に、チーム作りを計画していた牧にとって、この麻理のレインボーへの移籍は誤算だった。

そんな立木大和に、道場破りがやって来たとメンバーが牧の元に駆け込んで来る。

コートに行ってみると、見慣れぬ女の子が立っており、このチームに入ってやろうかな?と大きな態度に出て来るばかりでなく、自分をテストしてみてくれと牧に挑戦する。

ジュン・サンダース(范文雀)だった。

誰かサーブしてやれと牧は指示するが、ジュンは、朝丘ユミを指名して来る。

朝丘のサーブを楽々返すジュンのプレイを観た牧は、荒削りだが、すばらしい才能の持ち主であると見抜き、チームに入ってくれと頼む。

かくして、ジュンは立木大和に入るが、相変わらず人付き合いは悪く、同室になった久保田さち子が聞いていたラジオの音楽も勝手に止めてしまう有様。

翌日からの練習にも出て来ないジュンを心配したユミは、外に捜しに出るが、一人黙々と階段をうさぎ跳びで上がっているジュンの姿を見つける。

ユミは、皆と一緒に練習をやるべきだと説得するが、ジュンは、お嬢さん芸なんかと一緒にされてはたまらないと憎まれ口を聞いて言う事を聞かない。

さらにジュンは、あなたの稲妻落しを見せてくれたら、一緒に練習しても良いと言い出す。

ユミが出来ないと言うと、怖いのね?破られるのがとあざ笑うジュン。

私たちは味方じゃない!と戸惑うユミに、何が味方よ!私は一人よ。これからもずっと一人でやって行くわと頑な態度を辞めようとしないジュン。

そうしたひねくれ者のジュンへの対応に苦慮していた他のチームメイトたちは、神奈川のジョセフ学園出身で父親がアメリカ人と言うジュンは、協調性がなさ過ぎるので、辞めてもらうべきだともめていた。

しかし、ただ一人、ユミだけはその意見に反対する。

ジュンには、自分たちにはないものがある。それは負けじ魂だと言うのだ。

ジュンが心のシャッターを下ろしたら、私たちが開けるのよ!と主張するユミは、自ら稲妻落しでジュンに挑んでみる事にする。

コートで稲妻落しを受けたジュンは受けきれず倒れてしまうが、ユミは何度も稲妻落としを繰り返した。

ジュンがやると言う以上、ユミはやってやるつもりだったからだ。

ユミとの勝負に敗れたジュンは、ベッドで一人悔し涙にくれる。

しかし、翌日も、ジュンは一人で、階段うさぎ跳びを続けていたので、その根性に感心したユミは励ましに来るが、そこに牧が呼んでいると松原かおりが伝えに来る。

牧は、二人に、明日から特訓を始めると言い渡す。

この試練に耐え、全国選手権に勝って、堂々と海外遠征に行くのだと言う牧の言葉を聞いたジュンは、優勝すれば、本当にアメリカへも行くのかとうれしそうに聞き返すのだった。

翌日から、ユミとジュンは、一緒のスピードでグラウンドを走ると言う練習をやらされる。

一週間が経ち、昭和45年度東京地区代表戦大会を迎える。

牧はジュンとユミに、ミカサの大元やレインボーの椿も試合を観ているに違いないので、まだあの技を見せるなと釘を刺す。

しかし、大観衆の中での小野電機との初試合で、ジュンは平常心を失って行く。

立木大和がマッチポイントを迎えた所で、ジュンはユミに笑いかける。

ユミは、ジュンが禁止されている新攻撃を仕掛けるつもりだと感じるが、止めさせようにも身体の方が反応してしまう。

かくして、ジュンとユミは、ネット前で身体を交差させ、どちらがアタックを撃つか分からなくする新戦法を披露してしまう。

これを観たアナウンサーは「魔のX攻撃」と名付けるが、指示に無視した二人の行為に激怒した牧は、ジュンとユミに、当分試合に出るなと言い渡す。

しかし、ジュンは、私たち二人が抜けて勝てるつもり?と反抗的な態度に出て来たので、牧はますます怒り、思い上がるなと怒鳴りつけるのだった。

服を着替え、チームを出て行こうとしたジュンを、あなたのさっきの行動は、自分で自分の首を絞めたのよと諭しながら、必死に止めるユミは、かつて自分が履いていたブラックシューズをジュンに履くように進める。

バカにしていたジュンだったが、ブラックシューズを履いてみると、全く身体が動かない事を知る。

ジュンは、ユミが放つボールを全くレシーブ出来ないばかりでなく、バランスを崩し、近くにあった木に右肩を強打してしまい、その激痛に身をよじらせる。

驚いたユミは駆け寄って来て、ジュンが足にも傷を負って流血していると教える。

ジュンは、幼い頃、自分を捨ててアメリカに旅立った母親が、彼女を追おうとして転び、足をけがした自分に振り向きもせず去ってしまった時の事を思い出していた。

ユミは、ジュンの足の傷の手当をしてやりながら、私はあなたとお友達になりたいのでこうした事をしたのだと謝るが、ジュンは、自分がバレーをやりたいのは皆とは違うんだと答えるだけだった。

牧は、そんな二人を呼び戻し、翌日からの試合に出るよう命ずる。

試合に出られないのがどんなにつらいか、もう十分身にしみたはずだからと言うのだった。

次の、大久保工業との対戦に、14対15と立木大和は苦戦していた。

右肩を気にしながらも、ジュンはユミにX攻撃を示唆した。

しかし、ユミがアタックを失敗、それをジュンが上手くフォローして、かろうじて試合には勝つが、その場でジュンは倒れてしまう。

ジュンは即刻、城東大学付属病院に入院する事になる。

見舞いに行ったユミは、自分がブラックシューズを履かせた事が原因と考え謝るが、ジュンは、あの時、ユミが傷の手当をしてくれて、すごくうれしかったと話す。

そして、自分にはアメリカに行きたいが金がなかったのだと、バレーを始めた動機を語り始める。

自分を捨ててアメリカに行った母親の事を忘れたいけどダメ。あんな母さんでも、この世で立った一人しかいないんだもの、会いたいわと心情を始めて吐露するジュン。

それを聞いたユミは、一緒にアメリカに行って、お母さんに会い、ジュンはこんなに立派になったのよと言うのよ!と励ますのだった。

しかし、会社に戻り、牧の部屋に入りかけたユミは、医者と牧が、ジュンが後三ヶ月しか命が持たない事を話し合っているのを聞いてしまう。

驚愕したユミは部屋に飛び込むと、私が無理にブラックシューズを履かせたばかりに、ジュンは肩を木にぶつけて…と悔やむが、医者は、ジュンの病気は骨肉腫と言うもので、もうだいぶん以前から全身に転位していて、もはや手の下しようがないのだと打ち明ける。

牧は、ジュンのためにも勝ってやろうじゃないかと、泣きじゃくるユミを慰めるのだった。

しかし、ユミは、無理よ、私はジュンと約束したばかりなのに…と言うばかり。

牧は、そんなユミを叱咤激励する。

いよいよ、立木大和は、全日本女子バレー決勝戦で、宿敵レインボーと対決する事になる。

その試合を、ジュンも病室のベッドからテレビで観ていた。

ユミは、稲妻落しで勝負を賭けるが、対する麻理は、簡単にこれを受けてしまう。

レインボーに稲妻落としは通用しないのだ!

皆を集めた牧は、最後は技ではなく気力だと励ます。

試合が再開し、麻理がキャプテン磯田と目配せをしたので、何か仕掛けて来ると感じたユミだったが、何と二人がやったのは、ユミたちが編み出したX攻撃そのものだった。

いまや、X攻撃は、敵の必殺技になってしまったのだ。

それをテレビで観たジュンも、自分のあの時の行為が、この結果を招いたのだと後悔し、何とか自分が行かなければ…とユニフォームに着替えようとするが、激痛で動けない。

ジュンはベッドの上で苦しみながら、ユミ頑張ってとつぶやいていた。

牧は、X攻撃をやっていたお前なら、破れる方法もあるはずだとユミに告げる。

ユミは、麻理が仕掛けて来たX攻撃と同時にジャンプし、空中でレシーブして着地する「空中回転レシーブ」を成功させ、レインボーの攻撃を見事に防ぎ優勝する。

それをテレビで見届けたジュンは、指でVサインを出していた。

試合後、ユミに近づいて来た麻理は、思いっきり戦ったから負けても悔いはないわと言いながら、握手を求めて来る。

最優秀選手賞は朝丘ユミが手にした。

インタビューに答えるユミは、これは私一人のものではなく、私の心の友達ジュン・サンダースのものですと言う。

それをテレビで聞いたジュンは、ユミ、ありがとう。良かった、バレーをやっていて。母さんには会えなかったけど、あなたを知っただけでも、この世に生まれて来て良かった…と言いながら息絶えるのだった。

ジュン亡き後、ユミは、アメリカに行って、あなたのお母さんに会って来ると心に誓うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

マンガ原作でTBSの人気ドラマだった作品の映画化。

映画用に、ストーリーをダイジェストのように繋げただけのような印象で、こまごまとしたエピソードは省略されているように感じる。

子供向けとは言え、展開が早いと言うか、あまりにも直線的で、映画的な膨らみには乏しい。

特に、主人公の朝丘ユミや椿麻理が、立木大和に入るまでのエピソードがカットされているため、二人の人となりが映画版だけでは分かり難くなっている。

ストーリーが簡略化されているだけに、映画として目立つのは、個々の奇抜なエピソードか、キャラクターの面白さしかない訳で、特に、主人公たるユミが、漫画的に誇張されていて目立つ存在の麻理やジュンに比べると、あまり魅力的に見えないのが弱い所。

当時としては、庶民派的親しみやすさを狙っていたのかも知れないが、今の感覚で映画を観る限り、単なるお人好しにしか見えない。

ジュン・サンダースの見せ場も乏しく、単に「お涙頂戴」のためにだけ出ているような印象になっているのも惜しい。

麻理の方も登場場面が少なく、せっかく面白いキャラクターなのに、十分生かしきれていないように感じられる。

映画として、特に出来が良いとも思えないが、この作品は大体こんな感じの話だったな〜…と、懐古趣味を多少満足させる程度にはなると思う。

稲妻落としの効果は、テレビ版では確か、ボールが光っていただけだと思うが、映画版では、マンガと同じく、ボールがジグザグと稲妻形に動いているように表現されている。

フォトアニメの技法なのか、方法は定かではないが、かなり巧く出来ていると思う。

X攻撃でボールを打つ時の麻理の表情も、何故か男心をそそるものがある。