1957年、新東宝、志原弘原案、関沢新一脚本、並木鏡太郎監督作品。
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朝もやの中、川沿いの道を警邏中だった警官(杉山弘太郎)は、一人の朝釣りに来た中年男(築地博)に出会う。
軽く声を掛け合い、近くに止めてある自動車の中を覗き込む警官。
後部座席に「SIMASOKEI」と刻印の入った木箱が積まれていたので、運転席の男に話を聞こうと声をかけた警官だったが、相手はいきなり銃を取り出すと、警官を射殺する。
その銃声に驚いて現場に戻って来た釣り人が、道路に倒れていた警官に気づく。
警官殺しの捜査本部では、捜査課長(細川俊夫)が、とどめを刺している所からして、よほど、車の身元などを知られたくなかったんだろうと推理していた。
銃器室では、犯行に使用された銃は、米軍の憲兵が持っているコルト45口径の自動拳銃だと断定していた。
現場に残されていたタイヤ痕から、車の車種の特定を進めていた木村刑事(中山昭二)は、小型か中型の車だったとまで行き着く。
釣り人の証言では、白ナンバーで中型だったと言う。
そんなある夜、一台の56年型セダンが検問を見て逃げ出したので、司令部ではその車を追跡確保を命ずる。
白バイやパトカーが迫り、踏切でストップした車の運転手は、車を乗り捨てると、近くの倉庫に逃げ込むが、間もなく警察隊に取り囲まれ、あえなく捕まってしまう。
取調室で尋問を受けるその運転手吉川友吉(高村洋三)は、自分は何も知らない、ぬれぎぬだ、真昼の暗黒だとわめいていたが、何故、逃げたと問いつめられると、無免許だし、車も海岸倉庫から盗んだものだったので…と渋々答える。
その車の運転手はどんな男だったと聞くと、白いジャンパーを着ていたと言う。
その頃、海岸倉庫では、白いジャンパーの男が、「お前が遅れたから、警官を殺さなくてはいけなかったんだ」と一人の男を追いつめ、謝る男をその場で射殺してしまう。
事件を知り、現場に駆けつけた捜査陣は、その被害者が、以前、山谷のドヤ街で挙げられた事がある銃のブローカー森山健次(山口多賀志)だと気づく。
一方、収監されていた吉川が暴れだしたと言う連絡が捜査課長に届く。
牢に様子を見に行った捜査課長は、同行した医師から、典型的な麻薬中毒だと知らされる。
森山も麻薬中毒だった事に気づいた捜査課長は、しばらく吉川を泳がしてみる事にする。
そこに、セダンの持ち主が判明し、ブルークイーンの長谷川と言う男だったと報告が入る。
早速事情を聞きに、その長谷川(沢井三郎)に会いに行った木村刑事は、部屋に「SIMASOKEI」と刻印がうたれた木箱が大量に積まれている事に気づく。
聞けば、それは南方の漢方薬なのだと言う。
山谷のベッッドハウスを訪れた久野部長刑事(竜崎一郎)は、森山健次の事を聞き出そうとするが、宿主(信夫英一)は覚えていないと言う。
そこに帰って来たサッちゃん(森悠子)と言う女に聞くと、顔が広いトミ公に聞けば良いと言う。
「ゲンナマ軒」と言う中華料理屋に向かった久野部長刑事は、そこでラーメンをすすっていたトミ公(城実穂)と言う娘に出会う。
ケンちゃんと言う男を知らないかと尋ねると、その店の店員も福山ケン(高島稔)ちゃんだと言う。
両手の小指がないと教えると、それは「ハッちゃん」だろうと言う。
指が両方で八本しかないからだと笑う。
ホルモン丼と言う品書きをちらちら見るので、それを注文してやると、トミ公は、そのケンちゃんなら、自分の部屋の隣にいる恋人の友ちゃんに誘われて出かけたと話しだす。
久野部長刑事は、直ちにその事を捜査課長に電話連絡する。
その頃、ベッドハウスに戻って来た吉川友吉は、とある部屋に入ると、マスクと白衣の男に「先生頼む」と近づいて行く。
しかし、振り向いた男が白衣をめくると、その下には白ジャンパーが見え、取り出した銃で吉川を射殺する。
ちょうど、下にやって来ていた木村刑事は、その銃声に気づき、二階に駆け上がるが、吉川の死体が転がる部屋の窓は開いていた。
犯人は、間一髪、窓から逃げたのだ。
捜査本部では、捜査課長が、新聞記者から質問攻めにあっていた。
捜査課長は、君たちが「白ジャンの男」などと余計な事を書いてくれるから助かると皮肉を返していた。
その夜、帰宅した久野部長刑事は、珍しく娘の純子(池内淳子)が出迎えてくれたので、今夜はガソリンスタンドに行かないのかと聞く。
純子は、今度から昼間の勤務に替わったのだと言う。
部屋に入ると、警官で純子の恋人でもある山口俊介(宇津井健)がいた。
どうやら二人でラーメンを食べていたようだ。
実は、俊介が「昭和32年度 射撃成績優秀」と言う表彰を受けた祝いをしていたのだと言う。
久野は、自分の子供には、自分のような苦労はさせたくないと漏らす。
やがて、帰る俊介を玄関まで見送った純子は、鐘をかたどったキーホルダーをプレゼントする。
前回、犯人を取り逃がすと言うミスをした木村刑事は、「10日13時 自家用車運転手求む ブルークイーン」と言う求人広告を捜査課長に見せ、自分を送り込ませてくれと志願していた。
しかし、君は顔を知られているからと答えを保留した捜査課長には、何か考えがあるようだった。
久野部長刑事は、憮然としている木村刑事にタバコを差し出し落ち着かせる。
ブルークイーンの社長室に、拳銃を手にした一人の男が侵入して来る。
秘書が固まっている所に入って来た社長の長谷川は、男から銃を突きつけられる。
外には、パトカーの音が響いているのに気づいた長谷川は、追われているのかと男に聞く。
そして、お前運転できるかと聞いて来る。
男は警戒する様子を見せながらも、サラリーは高いぜと承知するのだた。
長谷川の用心棒券運転手として雇われる事になった沼田と名乗るその男は、実は山口俊介だった。
長谷川の経営するキャバレーで飲んでいた俊介は、隆とした身なりの男(丹波哲郎)に目をつける。
ホステスから聞くと、貿易会社の社長なのだと言う。
運転の腕を試すため、長谷川と一緒のトラックに乗せられた俊介は、信号で停まった所で、タバコの箱をひねって外に捨てる。
その時、隣に停まっていた別のトラックは、信号が変わると少し走った所で停まると、運転席から降りて来た久野部長刑事が、落ちていた俊介のタバコの箱を拾い上げ、中を確認する。
そこには、大掛かりな組織があるらしいと記されていた。
警官を囮捜査で送り込んだ事を知った木村刑事は、これは冒険だと、捜査課長に抗議する。
しかし、捜査課長は、向こうも君のようなベテラン刑事のリストは作っているはずだと指摘する。
その頃、飛行場から飛び立つ太平洋航空の飛行機を、隠しカメラで撮影していた男がその写真をとある会社に持ち込んでいた。
他にも、別の会社の秘密を写した写真などがあるようで、それを長谷川を含めた男たちが値踏みしている。
そこに、あの貿易会社の社長がやって来て、長谷川に、新しい運転手を雇ったそうだが身元は確かなのか、しばらく本部に連れて来るなと釘を刺す。
その会話をドアの外から、俊介が盗み聞きしていると、そこに白ジャンパーを着た男(江見渉)が現れ、懐から銃を取り出すと、ふらつきながらも貿易会社の中に入って行く。
部屋に入ったその男は銃を突きつけながら「薬をくれ」と社長に迫る。
その時、後ろから入って来た俊介が、拳銃を発射し、白ジャンパーの男の銃をはじき飛ばす。
その銃声を聞いたビル内の他の社員たちが近づいて来るが、社長に言われた老人が外に出て、クラッカーを鳴らしてみせたので、勘違いと思いみんな帰って行く。
こんな所で銃を撃つなと、廊下の方を気にしながら注意する社長だったが、その活躍ぶりを見ていた長谷川は、自慢げに、雇うのOKやろ?と社長の承認を得るのだった。
しかし、長谷川と俊介が部屋を出ると、社長はリストを調べろと、俊介の身元チェックを部下に命じる。
その夜、すでに布団に入っていた父親に、純子は、何か隠していますね?俊介さんが出張なんて嘘なんですねと問いつめていた。
今は亡き母さんの苦労が、分かるような気がすると言う純子に、警察官は社会秩序を守るために働いているんだ。その点、良く分かってくれなきゃ…と諭す久野部長刑事。
純子は、写真立てに飾られた俊介の顔を見ながら床につくのだった。
そんなある日、長谷川や部下の吉田(天知茂)を乗せ、車の運転をしていた俊介は、急にガス欠になったと言いだす。
吉田は、あのガソリンスタンドで給油しろと勧めるが、そこを見た俊介は、いや、まだ少しは動けると断ろうとする。
しかし、吉田に促されるままそのガソリンスタンドに横付けにするしかなかった。
応対したのは純子だった。
俊介は、必死に気づかれまいと顔を背けていたが、その横顔に気づいた純子は、車が走り去った後、思わず「俊介さん?」と呼びかける。
しかし、その声を聞いていたのは、一人車を降り、別行動を取ろうとしていた木村だった。
白ジャンパーの男を連れ、長谷川とやって来た本部には、床に秘密の通路があった。
俊介は、社長から呼ばれる。
社長は、部屋にやって来た俊介に酒を勧めると、ここがどんな所か知っているかと聞く。
金になりそうだなと俊介が答えると、ただし、違反者は命と引き換えだと社長は釘を刺し、スパイ業、両陣営に情報を売る商売だと明かす。
つまり二重スパイと言う訳かと俊介も理解する。
その時、壁のランプが点滅しだし、慌てたように社長が隣室に入って行く。
どうやら、隣は通信室で、社長はそこで電信を打っているようだった。
その隙に、俊介は社長の机の中を物色しだすが、そこに吉田らが入って来たので、思わず机の下に潜り込む。
そして、机の下から何かを探しているように屈みながら出て行くと、絨毯の下から見つけたと、鐘のキーホルダーを出してみせる。
それを奪い取った吉田は、臭いを嗅ぎ、ガソリン臭えなと言い出す。
しかし、それは俺の臭いが染み付いたんだろうとごまかすと、俊介はごまかしタバコを取り出す。
すると、吉田は慌てたように、ここでタバコを吸うな!と叱りつけて来る。
俊介が部屋を出ると、吉田は社長に、あいつは臭いですよと耳打ちする。
一方、横になっていた白ジャンパーの男の元に来た俊介は、水を飲ませてやる。
白ジャンパーの男は、何故こんな所に入った?と俊介に話しかけ、俺は特攻隊の生き残りで金が欲しくて入ったが、薬にやられ、今ではボスの言いなりにさせられた。今の俺は、薬のために何をしでかすか分からない自分が怖いんだと告白する。
ある日、又、トラックの運転中、調子が悪いと、ボンネットを開けて中をのぞきだした俊介の側に、近くの店員に化けた久野部長刑事が近づいて来て、今日、山谷のベッドハウスに来てくれと小声で伝える。
その夜、ベッドハウスに入った俊介を、吉田が尾行していた。
俊介が入った部屋のふすまを開けた吉田が見たものは、ちょうど服を脱ごうとしていたトミ公と、窓際でそっぽを向いている俊介の姿だった。
勘違いしたと思ったのか、そのまま吉田が引き上げると、隣の部屋から出て来た久野部長刑事が俊介の部屋にやって来て、トミ公に酒と料理を持って来てくれと外に出す。
久野部長刑事は、出て行ったトミ公の事を吉川の女だと教えた後、南隆貿易と言う会社はスパイ業を営んでおり、建物の中には大量の爆発物を集積しているらしいと言う俊介の報告を聞く。
ゲンナマ軒のケン坊に岡持を持たせ、自分は一升瓶を抱えて戻って来たトミ公は、部屋がもぬけの殻になっている事に気づくと、自分たちで飲もうとケン坊を誘う。
二人は一足先に部屋を抜け出ていたのだった。
ある日、街を歩いていた俊介は、ばったり出会った純子から声をかけられる。
慌てた俊介は近くの喫茶店に誘うと、やっぱり、秘密の仕事をしていたのねと言う純子に、与えられた仕事を成し遂げなければならない。こんな仕事の男、嫌になったかな?いつもこれと一緒だと、金のキーホルダーを取り出してみせる。
二人して店を出た所を目撃した吉田は、純子がデカの娘である事を思い出す。
久野部長刑事は捜査課長に、南隆貿易の家宅捜索をやってみましょうと進言していた。
捜査課長は小山捜査主任(御木本伸介)に、本庁予備隊や消防隊を呼んでくれと指令を出す。
その頃、南隆貿易の社長は、今日爆破計画を決行すると部下たち全員に説明していた。
爆破対象は三カ所。
その目的は、人心の攪乱と、捜査陣が駆けつける時間の測定。
このビルと、世田谷のガスタンク、そして東海道の六郷鉄橋だと言う。
さらに、我々の中にスパイがいると社長は言い出す。
そこに遅れて俊介が合流する。
何故遅れたと責める吉田に、女がなかなか離してくれなくてとごまかす俊介。
しかし、そんな俊介にわざと聞かせるように、社長は、出動命令を出すと、今後本部は神戸に行くと付け加える。
その言葉に聞き耳を立てていた俊介に、吉田は銃を突きつけかけるが、その時、久野と言うデカが来たと知らせが来る。
吉田は、俊介をトラックの側に連れて行くと、忘れ物をしたと戻ろうとした俊介に銃を突きつけながら、爆薬の入った木箱を積むよう命ずる。
一方、別の部屋では、長谷川が金庫から金を持ち出そうとしていた。
そこに、白ジャンパーの男が入って来て床に倒れる。
その背後から来た社長は、仕事をするから薬をくれと言う白ジャンパーの男と、長谷川の手に握られた札束を見ると、黙って、白ジャンパーの男に前に拳銃を放り、トランジスタラジオのボリュームを上げる。
その意味を悟った白ジャンパーの男は、拳銃を拾うと、その場で長谷川を射殺する。
その銃声を聞きとがめた久野が、部屋に入ろうとすると、部下たちが羽交い締めにされてしまう。
部屋に連れて来られた久野に、社長は、警官殺しの犯人はそいつだが、渡しはしないと言いながら、差し出した薬に近づいて来る白ジャンパーの男を、その場で射殺してしまう。
白ジャンパーの男は、薬を握りしめ、うれしそうに笑ったまま死んで行く。
それを見た久野は抵抗するが、殴られる。
二階の物音に気が気ではない俊介に、お前の娘の父親だからなと笑いかけた吉田は、暴れる俊介を殴りつける。
そこへ降りて来た社長は出発を命じ、俊介は、二階の久野と一緒に転がしておけと吉田に伝える。
さらに社長は、まずこのビルの爆破だ、表を締めろと命じる。
二階に縛られ転がされた俊介は、残念です!と悔しがるが、横に倒れていた久野は、自らも血まみれになりながらも、最後の望みにかけるんだと励ます。
そんな二人に、吉田は、東京の方々で爆弾騒ぎが起こるんだと愉快そうに言い残して出て行く。
その頃、都内を走る一台の南隆貿易と書かれたトラックを警察隊が止めていた。
トラックから逃げ出した賊を警官隊が追っている最中、トラックは大爆発を起こす。
その報告を受けた捜査課長は、芝浦倉庫街の南隆貿易に集結を命ずる。
消防隊も出動した。
自宅にいた純子は、サイレンの音が騒がしくなったので、思わず、父親と俊介の写真立てを見やるのだった。
縛られた久野は、社長に命じられ、隣の部屋に連れて行かれる。
こいつも放り込んでおけと俊介を見ながら社長が言いかけた時、警察隊が表を取り囲んだとの報告が入る。
慌てて、二階の窓から外を見ると、すでに大勢の警官たちに取り囲まれているではないか。
捜査課長と木村刑事が前に進み出ようとした時、社長が発砲する。
捜査課長は、久野君、山口君と呼びかけるが、その直後、銃撃戦が始まる。
無益な抵抗は止めよ!と、捜査課長は呼びかける。
形勢不利を悟り、黒めがね(泉田洋志 )ら二名の子分らが手を挙げ、降伏しようと警官隊の前に進み出るが、その背後から二人を社長が撃つ。
社長が久野を窓際に連れて来ると、その姿を見た純子が「お父さん!」と駆け寄ろうとする、
それを木村刑事が必死に制止する。
続いて、俊介も窓際に連れて来られる。
俊介は、上には一人、下には数名しか残ってないと叫び、社長に押し倒される。
木村刑事は、裏側に窓のない部分があるのでそこから侵入しましょうと捜査課長に進言する。
はしごがないと言う捜査課長に、消防のはしご車をかけると言う木村。
理解した捜査課長は、援護のため、拡声器での呼びかけを続ける。
その間、消防のはしご車の協力をあおぎ、二階の裏側から中に侵入する木村刑事。
忍び込んだ木村刑事は、隠れていた敵に背後から発砲されるが、逆に射ち倒して、社長の待つ部屋に入り込む。
木村は社長に飛びかかり、持ていた拳銃は側に落ちる。
それを奪い合い、二人の決死の取っ組み合いが始まる。
その様子を見ていた久野部長刑事は、側に小刀が落ちているのを見つけ、それを拾うと、俊介に声をかけ、その綱を切り始める。
木村刑事と社長はまだ組み合っていたが、一瞬早く拳銃を手にした社長が木村刑事の腹を射つ。
その社長の背後から、綱を切って立ち上がった俊介がつかみ掛かる。
一方窓ににじり寄った久野は、警察隊に向かい、すぐ勾留して下さいと力を振り絞って叫ぶ。
その声を聞いた捜査課長は、突入を指令、警官隊たちが一斉にビルの中になだれ込む。
捜査課長は、倒れてい滝村刑事に駆け寄り、山口は?と久野に聞くと、二人は地下室に向かったと言う。
社長は、すがりついて殴り合っていた俊介を突き飛ばすと、一人地下室の部屋に入りむ。
そこに捜査課長が駆けつけ、何とか扉を開けようとするが、俊介が、この部屋にはダイナマイトが集積してあると止め、二人して脱出を計る。
しかし、その途中、何かを思い出したように、修介は一人戻って行く。
その時、地下室は大爆発を起こす。
崩れる建物をかき分け、倒れてい滝村の元にたどり着いた俊介は、木村の身体を肩に背負うと、炎上を始めた二階から、脱出を計る。
木村は助からなかった。
その後、入院していた父親を見舞った帰りの純子と出会った俊介は、久野部長刑事は、後一週間ほどで退院できそうだと純子から聞く。
俊介の方は、木村の形見の警笛を受け継いだと見せ、これからは、木村さんの分も働くと誓った後、それからこれもと、鐘のキーホルダーを出してみせる。
そんな俊介に弁当を渡す純子に、ボク、やっぱりサラリーマンになっていた方が良かったな?と、冗談めかして聞く俊介。
純子はそんな俊介に「立派なお仕事だわ」と言い、送り出すのだった。
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新東宝を代表する若き宇津井健、池内淳子、丹波哲郎、天知茂、江見渉( 江見俊太郎)などが集結した、いわゆる潜入捜査もの。
細川俊夫、御木本伸介、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長事中山昭二など、脇を固める顔ぶれも、後にテレビでお馴染みになる人たち。
潜入捜査と言う設定自体が、いつ正体がばれるかと観客が手に汗を握るサスペンスあふれるものなのだが、本作では、その正体を怪しむ丹波哲郎の冷徹さと、子分役の天知茂のねちっこさが合わさり、より一層緊張感を盛り上げている。
対する宇津井健の方は、まじめで正義感あふれる警官役の方は、微笑ましいくらいぴったりなのだが、ジャンパー姿で悪ぶってみせる姿の方は、かなり無理を感じないでもないが、逆にその無理矢理振りが面白いとも言える。
池内淳子の一途さ振りも見物。
倉庫街にたたずむ中山昭二の姿には、やはり「ウルトラセブン」で丸三倉庫を単身捜査する「明日を捜せ」などのエピソードが重なる。
江見俊太郎演ずる麻薬中毒者も不気味で印象的。
ストーリー展開もなかなか面白く、スパイ活動と言う隠密裏な商売をやっていたはずの会社が、ラストでいきなり都内数カ所を爆破すると言うテロリスト張りの目立つ破壊行動に打って出ると言う、派手な見せ場作りのためとしか考えられないような部分が、やや意味不明な部分を除けば、上手くまとめられていると思う。
その最大の見せ場になる最後の警察隊集合シーンには、ものすごい人数を投入しており、なかなか迫力のある大団円になっている。
トラック爆破シーンなどは、もちろんミニチュア特撮だが、最後のビル爆破では、セット壊しなどもやってもり、その中を、中山昭二を背に突き進む宇津井健の姿には、何やら「252 生存者あり」での伊藤英明の姿が重なったりする。
新東宝作品の中にあっては、なかなかの秀作の一本と言うべきだろう。