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刑事物語 東京の迷路

1960年、日活、大和田健一原作、野々晃脚色、小杉勇脚色+監督作品。

※この作品は捜査ものであり、後半で意外な真犯人が明かされますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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ドヤ街から伸びるみどり橋の上でリンゴをかじっていた売春婦(黒木広美)が、通りかかりの男に、200円と言いいながら抱きつくと、150円にまけとくと迫るが、次の瞬間、その男が倒れたので、抱き起こそうとした売春婦の手は血に染まっていた。

売春婦はあわててその場を逃げ出す。

タイトル

現場に来た佐藤源造刑事(益田喜頓)は、泣いている売春婦をなだめながら事情を聞いていた。

殺されたのは、城南署の南刑事(関口悦郎)だった。

さっそく、所轄署に捜査本部が置かれる。

所轄からは、辻川、鬼頭刑事が参加し、本庁からは、石渡警部、月岡、小林ら数人の刑事たちと共に、佐藤保郎刑事(待田京介)が参加していた。

銘々の紹介がすむと、南刑事は、みどり橋の向うのドヤ街でやられたらしいと報告がある。

南刑事は、課長と電話中、背後3mの至近距離から32口径のコルトで撃たれたらしいと言う。

銃に前歴はなし、消音装置が付けられていた模様。

捜査課長(深水吉衛)は、現場に落ちていたイヤリングの持ち主を突き止めること。関係者を洗う事、拳銃の背後関係を洗う事などを指示する。

源造はドヤ街専門なので、そこでの聞き込みを頼まれる。

保郎は、南刑事とは警察学校の同期生だったと悔しがる。

みどり橋を渡った先は、工場地帯になっていた。

翌日、保郎を連れて九電館と言う簡易宿にやって来ると、そこに泊まっていた村西五郎(土方弘)を、人身売買並びに銃器不法所持で逮捕する。

その場で、村西が持っていたバッグの中を調べてみるが、何も出て来なかった。

その時、保郎は、村西のゴム長靴の中から拳銃を見つけ出す。

その後、ドヤ街の中に、村西がパクられたと言う噂があっという間に広がり、村西を連行しようとしていた保郎は、労働者たちに取り囲まれてしまう。

味方を得た村西は、得意げに「お富さん」などを口ずさみ始める始末。

労働者たちを牽制しながら、みどり橋を渡ろうとした保郎部長刑事だったが、反対側からも男たちがやって来て挟まれてしまう。

そこへやって来たのが源造で、これは自分の息子だと説明して、労働者たちを帰させる。

公務執行妨害で逮捕しようと息巻く保郎を押さえて、世の中、規則通りに行くもんじゃない。今度のヤマは手が込んでいると諭す。

しかし、若い保郎は、父さんは情けをかけすぎると反発しながらも、古いライターでタバコに火が付けにくそうな父親に、今度、ライターをプレゼントしましょうと優しさも見せる。

城南署の取調室に村西を連れて来た保郎は、32口径の銃を知っているだろうと攻めるが、村西は頑として口を開かない。

それを観ていた源造は、明日もあるからと、保郎をなだめると、自分が尋問を変わる。

村西にタバコを勧めながら、知らなきゃ良いんだと優しく言い聞かす源造だったが、課長が呼んでいると使いが来る。

行ってみると、南刑事の手帳を調べた所、8時頃、女に呼び出されてドヤ街に行ったらしいと言う事を教えられる。

その時、源造に面会人が来ていると言うので、玄関口へ行ってみると、そこにいたのは情報屋の古淵(松本染升)だった。

焼酎をコップに一杯注いで飲ませ、金も渡してやると、古淵は、九電館に南刑事を恨んでいるものがいると言い出す。

工場に通っている君塚秀夫(青山恭二)と言う、泥沼の中から更生した男だと言う。

その情報を聞いた保郎は、調べないのかと父親に聞く。

警察署を出て、みどり橋を渡りかけた古淵を待ち構えていた君塚は、耳打ちしてくれたものがいると言いながら、ナイフを取り出し情報屋に迫るが、ふと足下を観ると、南刑事の死体があった場所に、チョークの印がまだ残っていたのに気づき、脅しを止めるのだった。

その頃、刑事部屋では、南刑事を呼び出した謎の女探しだななどと刑事たちが噂し合っていたが、そこにやって来た保郎は、源造が君塚に会いに行ったと聞かされ、そんな事は無駄じゃないか?とつぶやいていた。

君塚に会った源造は、相手が持っていたナイフを取り上げると、お前がやったんじゃない事は分かっているが、デマを飛ばしている奴がいると教える。

しかし、何故か、君塚は、源造の前から逃げ去ってしまう。

一方、九電館では、女将が古淵に分け前を要求していた。

古淵は、君塚に告げ口したのは女将はんですな?と聞くと、女将は、もっと色々な事を知っているから、もっと金を寄越せ。金さえもらえば、自分も共犯みたいなものだとうそぶく。

そこに、当の君塚が戻って来たので、古淵は布団に潜り込む。

そんな九電館にやって来た源造は、電車に乗り遅れたので自分も一晩ここに泊めてくれと女将に頼む。

そして、君塚の隣の蒲団に入って寝る。

その頃、城南署では、保郎が捜査課長に、村西を仮釈放にしませんか?と提案していた。

戻って来た刑事は、イヤリングの該当者は8人もいたと報告する。

牢に入れられていた村西は、みそ汁の中にハエが入っていたと言い出し、人権蹂躙じゃないかと文句を言う。

仮釈放され町に出た村西を尾行していた保郎は、村西に近づき、イヤリングを見せながら話しかけて来た浮浪者を目撃する。

その浮浪者の後を追い事情を聞くと、事件の後、どぶにイヤリングを捨てた女がいたのだと言う。

九電館に、株キ○ガイの水田と小渕が連れ立ってやって来ると2階松の間に上がる。

その部屋でリンゴを食べていた売春婦は、ブルースカイのマリ(香月美奈子)にイヤリングをあげたと2人に教える。

その頃、工場にいた君塚の様子を見に来た源造は、南刑事が死んだのに悲しんでいない事を知る。

そこに、村西がやって来たので、源造は、お前は仮釈放中だよと注意する。

村西に会った君塚は、32口径のサイレンサー付きコルトをこの村西から譲り受けたと源造に告白する。

その頃、村岡マリに会った保郎は、イヤリングをドブ川に捨てたのを観たものがいると迫る。

マリは観念したのか、私たちの結婚…とつぶやくと、君塚秀夫ですと白状する。

源造が君塚にコルトはどうしたを聞いていると、そこに、マリを乗せたジープを保郎が運転してやって来る。

2人を城南署に連れ帰った後、尋問を始める事にする。

君塚は俺がやったと言い出し、マリは、私ですと、互いにかばい合う。

南刑事は、自分たちの結婚に反対していたのだと言うので、何故反対した?と刑事が聞くと、マリが以前、赤線で働いていたからだと言う。

そうした2人の様子を観ていた源造は、君らはかばい合っている。無実の罪を着ようとしているんだ。本当のことを言ってご覧と優しく諭す。

捜査課長も、その晩の行動を女に説明してご覧と言うと、マリは、事件当夜、電話で南刑事を呼び出した事を話し始める。南刑事にお願いして、結婚を許してもらうつもりだったのだと言う。

約束の時間に南刑事はやって来たが、自分と話している最中に突然倒れたのだと言うのだ。

それで、自分が一番疑われやすい立場だと感じ、逃げ出したらしい。

源造はさらにコルトはどうした?と聞くと、結婚資金のたしにしようとある人に頼んだと言うので、それは誰だと聞くと、情報屋の小渕だと言うではないか。

君塚は、九電館の女将に確認する。

その頃、小渕は玩具屋でハーモニカを吹いていた。

そして、その玩具屋で買ったばかりのオルゴールを聴きながら、屋台で焼き鳥を食っていた。

そんな小渕に近づいて来た源造に、小渕は、大阪の孫への土産でんがなと相好を崩す。

源造は、わしなんか、いつになったら孫が出来るのか…と嘆いてみせる。

大阪の息子が言ってくれたので、大阪に帰るのだと小渕は言う。

今夜まとまった金も入るのだが、掴んでみるまでは安心できんとも言う。

その後、公衆電話で金を受け取る相手に電話をした小渕だったが、指定された場所を聞いて、妙な場所でんな?と不思議がる。

一方、保郎の方は、九電館の女将に小渕の居所を聞いていた。

女将は、線路向うの飯場で金をもらうと言っていたと言う。

それを聞いた君塚は飛び出して行く。

源造と保郎も飯場に駆けつけるが誰もいない。

源造は1人で周辺を探しまわっていたが、その時、君塚が走っているのを観かける。

そこに、保郎が、水田の居場所が分かったと言いながら他の刑事たちとやって来る。

小渕は、小屋の中で水田と会い、2万円を受け取っていた。

その様子を、窓から、君塚が覗いていた。

水田は、サイレンサーはなかなか売れないなどと言い、小渕の方は、5年振りに大阪に帰るんだと打ち明ける。

水田が、君塚の結婚費用に渡すんじゃないのか?と聞くと、小渕は、水田はん、殺しはあかん、あかん…とつぶやく。

水田は、ペイ専門の南刑事にばれたんだと打ち明けると、金を受け取った小渕は、あんさんもお達者で…と言いながら小屋を出て行くが、その時、水田が背後から発砲する。

倒れた小渕が落としたオルゴールを蹴る水田に、隠れていた君塚が飛びかかる。

水田は振り切って線路の方へ逃げ出すと、君塚の肩を撃つ。

水田に気づいた源造は逃げたら撃つぞ!と牽制するが、水田は貨物車に飛び乗ったので、それに気づいた保郎も貨車に飛び乗る。

パトカーのサイレン音が近づいて来る中、保郎が発砲すると、貨車が停車したので、刑事たちが全員駆けつけて来る。

水田の銃はもう弾切れだった。

保郎は、父親の源造に手錠をかけるように勧めるが、源造は保郎にかけるように言う。

水田に手錠をかけ、刑事たちに連行させた後、保郎は、小渕は可哀想な事になりましたと源造に同情すると、まあ、一服しましょうか?とライターを取り出すが、あるよ、良く付くよと息子からプレゼントしてもらった新しいライターを出してみせた源造は、思わず、疲れた…と漏らすのだった。

 

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人情味溢れる所轄のベテラン刑事を演ずる益田喜頓と、本庁の刑事になった息子の保郎がコンビを組んで事件を解決する捜査もので、上映時間49分の中編映画。

第1作の本作が人気を博したのか、この後シリーズ化される事になる。

喜劇畑出身の役者が人情派の刑事を演ずると言えば、「踊る大捜査線」でいかりや長介が演じたワクさんを連想させる。

この映画は、後のテレビ捜査ものの原点になったとも言われているらしい。

短いながら意表をつく発端部分、捜査が入りにくいドヤ街と言う特殊な現場、疑わしい容疑者の登場と彼をかばおうとする恋人の存在など、飽きさせない展開が最後まで続く。

低予算らしいが、ラストの貨車の追跡劇など見せ場も用意されており、中編ながらそれなりの見応えがある。

正に、後のテレビが参考にしそうな見事なドラマ作りである。