1960年、日活、松村基生脚本、小杉勇監督作品。
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勝鬨橋が上がる。
道で子供らが遊んでいる下町の一軒家に一人の男が訪ねて来る。
窓から顔をのぞかせた女性に、山下由利江さんですね?警視庁のものですが、最近、偽の保険勧誘員が出没していまして…と、男は話かける。
安心して玄関を開けた由利江は、中に入って来た男がタバコを取り出して「ちょっとマッチを…」と頼んだので、快く取りに部屋に戻りかけた所を、背後から撃たれる。
その時、玄関先に外で遊んでいた子供らのボールが飛び込んで来たので、男はあわてて家を抜け出るが、それとすれ違うように、一人の少女がボールを取りに家に入って来て、室内で倒れている由利江を発見する。
タイトル
朝、家を出る佐藤源造(益田喜頓)を、息子の保郎(青山恭二)が「父さん!カイロを忘れましたよー」と追って来たので、受け取った源造は「母ちゃん、親切だ」と喜ぶ。
並んで歩き始めた保郎は、「いっぺん、人間ドックに入った方が良い」と父親の身体を気遣う。
源造の方は三原署の平刑事だったが、息子の保郎の方は、本庁の部長刑事に出世していたので、万が一、同じ現場一緒になるとやり難いと源蔵がこぼすと、まぁ、一緒に組む事はないと笑いながら、保郎は同僚が迎えに来た車に便乗すると先に出かけてしまう。
それをまぶしそうに見送る源造の方は、いつもながら電車通勤だった。
しかし、保郎が向かったのは警視庁ではなかった。
恋人の久美子(稲垣美穂子)が勤めている警察病院だった。
実は、保郎はその日非番だったのだが、久美子の誕生日と言う事で、ドライブを誘いにわざわざ会いに来たのだった。
しかし、そこに本庁から電話が入り、事件発生を知らせて来たので、久美子は、パーティもドライブもお流れねと苦笑するのだった。
被害者山下由利江の家に到着した保郎は、そこで父親の源造と再会する。
保郎が呼び出された理由は、被害者が手にしていた名刺に「警視庁 佐藤保郎」と書いてあったからだ。
軽々しく名刺なんかばらまくんじゃないと源造から注意された保郎だったが、その名刺の裏に記された「11.23」と言う数字を見ると、すぐに手帳と照合し、その日名刺を渡したのは3名しかいないと具体名をあげる。
すぐに、その3名に確認を取りに行った保郎を見ながら、捜査課長(松下達夫)は、この事件はあっさり解決しそうだなと源造に微笑みかけるのだった。
日本テレビのディレクター杉本(二木草之助)ともう一名の名刺はある事が確認されたが、最後の一人、もと出版社勤めだった熊部(花村典克)と言う男は、名刺を挟んでおいた手帳を公衆電話に忘れてしまったと言う。
500万人都民の誰が拾ったか分からない事になり、名刺の線はここで途切れてしまう。
本庁の銃器研究室では、凶器を、サイレンサー付き38口径コルトディティクティブと言う特殊な銃と割り出していた。
被害者の山下由利江は、貸金業を営んでいたらしく、流しの犯行とは思えなかった。
捜査会議では、
1-金を借りていたものを捜す。
2-痴情関係
3-拳銃の線を追う
の三方向からの捜査を課長が指示するが、それに対し、源造は、事件は急を要するので、全員、銃の線を追うべきだと進言する。
それに対し、息子の保郎は、出納簿で債権者を追う方が先決と反論する。
しかし、その意見を「手ぬるいね」と評した源造は、私の勘によると、この銃は密輸で入って来たとさらに反論する。
保郎は、捜査は科学、急がば回れですよととどめを刺す。
結局、捜査課長は両面作戦で行く事にする。
会議の後、部屋に残った源造に、さすがは三原署の主と言われるだけあって、お父さん頑張りましたねと言いながら、保郎は、そっと「ワカ末」を手渡す。
すると源造の方も、「持っとる」と言いながら「ワカ末」の大瓶を取り出してみせる。
保郎は、そんな父親に「勝負しましょう」と挑むのであった。
場所は変わり、週刊銀座の編集室。
山下由利江殺害犯黒柳丈吉、通称ジョー(深江章喜)は、その部屋にいたもう一人の男島尾(野呂圭介)に、残りの金の事に付いて確認していた。
警察が騒いでいるので、早く飛びたいと言うのだ。
捜査本部では、由利江から金を借りていた人間を一人づつ呼び出して、事件当日のアリバイの確認作業を始めていた。
バーテンの木村は、アメ横に行っていたと言う。
寺田豊会計課長(小泉郁之助)は、原社長に名義を貸して500万借りたが、三分の手数料をもらったと言う。
一方、源造の方は、拳銃ブローカーをしていたお時(若水ヤエ子)を呼び出し、銃を見せていたが、お時は、今はバーのマダムをやっており、銃のブローカーは辞めたと言う。
しかし、そのお時が、今、浅草署に挙げられている政吉なら知っているかも知れないと言い出したので、源造はすぐに浅草署に電話連絡を取ると、政吉(榎木兵衛)に事情を聞く事にする。
政吉は、その銃なら、バルカンの竜が扱った事があると言う。
芝に住んでいたと言う竜を探しまわった源造だったが、竜は昨日、ヤクを打ちまくって死亡していた事が判明する。
竜には、マリと言う妹がいたはずだった。
その頃、保郎の方は、東邦燃料の原社長(松本染升)を呼び、事件当日のアリバイを聞いていた。
原社長は、1時から3時までの間は「恋路の果て」と言う映画を観ていたと、内容も含め証言するが、そんな内容ではなかったと保郎がかまをかけると、簡単に嘘を認める。
新たに証言したアリバイはすぐに裏が取れたので、何故アリバイ工作などしたのかと尋ねると、当日、銀座マンションに行く前に、由利江の所に行き、500万を借りたが、その500万は今でも自宅にある。会社の内幕が分かったのでは、商売できないので嘘をついたのだと言う。
さっそく自宅に連絡すると噓はないようだった。
疑いが晴れた原社長は、葉巻を二本テーブルに置いて行くと、そのまま帰って行く。
源造は、死んだ竜の妹で、元オンリーのマリを捜していた。
捜査を終え本部に戻って来た保郎に、無理をするなよといたわった捜査課長だったが、保郎は、親父も足を棒にして歩き回っているでしょうから…とライバル心を見せる。
その保郎、テーブルの上に置いてあった原社長の証言テープをもう一度聞いてみる。
原社長は、建物を抵当にして金を借りたと言っているが、そんな事が個人の一存で出来るのだろうかと保郎は疑問を感じる。
一方、とあるパチンコ屋でマリ(筑波久子)らしき女を見つけた源造は、パチンコ屋の親父(衣笠一夫)から、彼女は今、球の出る台を見つけて、それを客に譲る「斡旋屋」と言う商売で稼いでいるが、亭主が服役中は、ずっと一人で待っていた感心な女で、確か、オンリーをやっていた時はマリと言っていたと聞く。
マリに近づくと、50円で席を買ってと、向こうから源造に近づいて来た。
兄貴は死んだぞ。ハジキはどうしたと聞くと、マリは知らないと突っぱねる。
東邦燃料の会社に出向いた保郎は、原社長が抵当にしたのは、銀座の「ドモンジョ」と言うバーなのだと聞かされる。
その「ドモンジョ」に向かった保郎は、隣に座ったホステス(木城ゆかり)に、外の公衆電話の中で空色の手帳をなくしたんだが知らないかと聞いてみると、原さんが警察に届けると言っていたと言うではないか。
そこに、源造も合流する。
保郎が、名刺の線で原社長が浮かんだと告げると、源造は、カウンターで一人飲んでいたマリを示し、ハジキはあの娘だと教える。
その頃、編集部にいたジョーは、「マリは金を取りに行っているんだな?何故、俺が行っちゃいけないんだ?ピンハネが出来ないからか?」と島尾を脅していた。
「ドモンジョ」では、源造が保郎に「若いんだから、思い切ってやれ。尻拭いは俺がやる」と話していた。
その言葉に後押しされるように、保郎は、マリに踊ってくれと誘う。
少し踊った所に電話がかかり、それに出たマリは、「ジョー?お客さん、そっちに行っちゃたの?すぐ帰るから」と言って電話を切る。
その頃、とある場所で、ジョーと島尾に会っていたのは原社長だった。
原は、「まだ由利江は生きている。20万は渡せるか」と言い残して車で立ち去る。
それを聞いたジョーは、手付けは確か10万で、俺は5万しかもらっていない。
お前は30万で請け負って、俺には15万しか渡さないつもりだったのかと、島尾を痛めつけると、近くにあったトラックの運転台のガラスを割り、それに乗り込む。
そこに、「ジョー!」と呼びながら走って来たマリも、走りかけたトラックの運転席に飛びつき、二人は逃走を始める。
マリを追って来た保郎と源造は拳銃を取り出し、トラックを制止しようとするが、運転席のジョーに撃たれ、源造は左腕を負傷してしまう。
保郎は、すぐさま本部にトラックのバックナンバーを伝え、緊急指令が飛ぶ。
源造の方は、倒れていた島尾を発見していた。
原社長も緊急逮捕される。
本部には、本願寺派出所から、手配のトラックが見つかったとの連絡が入る。
それを聞いた源造は、本願寺と言えば、由利江が入院している聖佳病院の近くだ。犯人はとどめを刺しに行ったんだと保郎に告げる。
聖佳病院に車で乗り付けていたマリは、病院の受付(久木登紀子)から言葉巧みに、由利江の病室を警護している刑事、吉田(長尾敏之助)と久保(水谷謙之)の事を聞き出す。
ジョーは本部を装い、公衆電話から、二人の刑事にすぐに本部に戻って来るように指示をする。
しかし、疑問を感じた刑事二人は、一人が残り、一人だけ本部に戻る事にする。
一人しか出て来ない刑事を、外の暗闇から確認したジョーは、受付に刑事の名刺を見せると、病院内に潜入する。
その時、病院の前には、佐藤親子が駆けつけていた。
やがて、由利江が入院している503号室の前に近づくジョー。
必死に、503号室に登る佐藤親子。
ジョーは、503号室の前に残っていた刑事を襲撃して、中に入り込むと、ベッドに寝ていた由利江に銃弾を撃ち込む。
そこに保郎がやって来て応戦し、部屋を飛び出したジョーは足に負傷するが、そのまま逃走を図る。
車で待っていたマリは、源造に確保される。
佐藤親子は、病院近くの工場に逃げ込んだジョーを追う。
途中、地面に落ちた血の跡を見つける。
ジョーは、マンホールを開けると下水道に入り込む。
佐藤親子も、その中に入り込むが、源造は、ジョーの銃で足を撃たれてしまう。
しかし、保郎は、なおもジョーを追いつめ、鉄格子の所で進退窮まったジョーを確保する。
一瞬、ジョーを殴りつけようとした保郎だったが、自分の名を呼ぶ源造の声を聞くと思いとどまるのだった。
後日、車いすに乗った源造は、久美子に押され、屋上に上がって来ていた。
そこに保郎が見舞いにやって来る。
保郎がトランジスタラジオを取り出したので、感謝して受け取ろうとした源造だったが、それは久美子への誕生日プレゼントで、源造への土産はカイロだった。
その時、下でパトカーのサイレン音が鳴り響いたので、保郎も降りて行く。
屋上から見下ろした源造は、下で手を振る息子に向かって、「デカ長、頼りにしてまっせー!」と声をかけるのだった。
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「刑事物語 東京の迷路」に続く刑事物語シリーズの第二話で、53分の中編。
息子の保郎役が、待田京介から青山恭二にバトンタッチされており、父親源造の所轄も、城南署から三原署へ変わっている。
保郎は部長刑事に出世しており、さらに、警察病院勤務の久美子と言う恋人も出来ているなど、話が進展している。
とは言え、仲が良い親子刑事と言う基本設定はそのまま。
劇中で、露骨に「ワカ末」が登場するなど、明らかにタイアップ宣伝だと思われるシーンがあったりするのがご愛嬌。
今回は、最初から犯罪者の面が割れていると言う事もあり、観客にとって意外性はなく、ひたすら凶悪な犯人を、親子刑事が別の方面から地道に追いつめて行く捜査過程を楽しむスタイルになっている。
後半から登場するマリ役の筑波久子は、後年、ハリウッドに渡り、ジェームズ・キャメロンを見いだしたプロデューサーとしても知られるが、この頃は、茶髪の可愛らしい娘である。
証言者としてちらり登場する若水ヤエ子や榎木兵衛、はたまた、意外と出番が多い野呂圭介などの顔ぶれも懐かしい。
今回もそれなりにまとまっているが、若干、前作より単調になったような気もする。