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刑事物語 銃声に浮かぶ顔

1960年、日活、安藤尚衛原案、高橋二三脚本、小杉勇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

森下守(岩下浩)は、三年間の刑期を終え刑務所を出所する。

シャバに出た森下は、恋人のファッションモデルみさお(丘野美子)にどうして迎えに来てくれなかったのかと電話をする。

みさおは、11時に五月橋で待っていると答える。

しかし、そのみさおは泣きながら電話に出ていた。

銃を背中に突きつけながら、言わされていたからだ。

タイトル

その夜、五月橋に向かった森下は、ネッカチーフの女が待っていたので、みさおだと思って近づいて行くが、その背後から接近して来た車に跳ね飛ばされてしまう。

女は、その車に乗り込んで走り去る。

事件を目撃した艀乗りが駆けつけて来て森下を抱き起こす。

翌日、佐藤源造(益田喜頓)は、署長から表彰状を受け取る練習を隅田署内でしていた。

そこに、新聞記者たちがやって来て、何事かと尋ねる。

25年永年勤続の表彰式を明日に控え、その予行練習をしているのだと署長は説明する。

関東管区警察局にやって来た息子の佐藤保郎(青山恭二)は、父、源造に電話を入れ、今日は非番なので、これから明日の祝賀会の準備をするが、それぞれ参加者の持ち寄りで行こうと伝える。

それをうれしそうに聞いていた源造だったが、そこへ、夕べ五月橋ではねられて入院していた男が、病院から逃げ出したとの連絡が入る。

病院へ向かった源造は、看護婦から、こんなものが残っていたと、小さなわらじのおもちゃを見せる。

それを見た源造は、それは、刑務所で手慰みに作るものだから、ひょっとしたら、逃げた男はムショ帰りか?と推測する。

枕元に置いてあったコップを指紋採取のため持って帰る事にした源造は、その後、事件の目撃者の艀の船頭光造(河上信夫)に、逃げた車の車種について詳しく聞きに行く。

その話し中、光造の息子洋一(近江大介)が帰って来て艀に乗るが、常日頃、遊び歩いているのか、光造に叱られている。

後で署に来て、カタログでも見てくれと言い残して帰りかけた源造だったが、足を滑らせ、海に落ちてしまう。

助け上げられ、服を乾かす間、源造は、警察手帳と銃を、どこかに隠しておいてくれと光造に手渡す。

艀の中の箪笥に入れている父親の様子を、飯を食いながら横目で見ていた洋一は、父親が出て行った後、その銃を取り出してしまう。

署に戻った源造は、捜査課長(高野誠二郎)に銃を盗まれた事を報告する。

捜査課長は、えらい事をしてくれた…と暗い目で答えながら、明日の表彰式までに取り戻すんだ。この事は自分一人の胸にしまっておくと源造に伝える。

そこに、ひき逃げ車両は46年型ステージワゴンだと分かったと報告が入る。

源造は、父親から借りて来た洋一の写真を署長に見せながら、浅草の「テネシー」に入り浸っているそうだと言って、一人で捜査に向かう。

その後、捜査課長は本庁の保郎に電話を入れる。

源造は、「テネシー」にやって来て、カウンターでたむろしていた若者らに洋一の事を聞くが、その中の一人の娘が、源造の事をデカだとばらす。

若者たちは気色ばみ嫌なムードになった所にサングラス姿の男が現れ、俺はムショ帰りのヤスだと名乗り、源造を外に連れ出して行く。

その様子を見た若者たちは、サングラス男に憧れる。

すぐに店に戻って来たサングラス男は、若者たちに酒を振る舞ったので、感謝されながら外に出て来る。

サングラス男は、外で待っていた源造と落ち合う。

ムショ帰りのヤスとは、保郎の変装だったのだ。

保郎は、洋一は今、村上さち子(刈屋ヒデ子)と一緒に、水上温泉に行ったと教える。

直ちに駅に向かった二人は、校内放送で「村上さち子」を呼び出す。

すると、少女が出て来たので、その娘を連れて、高崎回りの小山行き列車に乗って彼女を待っていた洋一を掴まえる事が出来た。

隅田署に連れて来られた洋一は、待っていた父、光造に「誰に売った!」と殴られる。

その頃、ひき逃げ車を追っていた刑事たちは、持ち主のトルコ風呂社長海老原(嵯峨善兵)を訪問するが、自らトルコ風呂に入っていた海老原は、あのステーションワゴンは一昨日盗まれたので、昨日盗難届を出していると答える。

一方、洋一が口を割った、表向き不動産屋、その実、ハジキの売人の矢野(花村典克)に会いに来た佐藤親子は、金勘定をしていた矢野に、洋一から買った拳銃は源蔵のものなので、誰に売ったか教えてくれと迫る。

それを聞いた矢野は、黙っているわけにはいかないと観念する。

病院から抜け出した男の正体は、コップについた指紋照合から森下守と分かる。

その写真を見ていた捜査課長の所に、源造らによって連れて来られた矢野は、こいつがハジキを買って行ったと叫ぶ。

頭の包帯を帽子で隠した森下は、源造の銃を持って、とあるマンションの部屋にやって来る。

その部屋には、外国人が一人いた。

銃を構えて部屋に入り込んだ森下は、お前が口を割ったので、俺は3年くらった。神崎と辻村はどこにいると迫る。

その頃、隅田署では、捜査課長が、森下はかつてドル買いと傷害罪で捕まったと、源造と保郎に教えていた。

そんな署長に、源造は、自分の気持ちが許さないと言いながら「退職願」を差し出す。

それを引き出しにしまった捜査課長は、我々の間だけで解決しなければいけないと源造に言い聞かした後、森下には内縁の妻がいると教え、当たってくれと保郎に頼む。

一緒に出かけようとする源造に、捜査課長は自分の拳銃を渡す。

ファッションモデルのみさおの事務所に出かけた二人は、みさおは昨日から無断で休んでいると聞かされる。

続いて、みさおの住いである「みどり荘」を訪れた二人は、部屋を開けてもらった管理人の女から、みさおは昨日出かけたまま戻らないと話を聞く。

部屋の中には、赤飯の準備や、尾頭付きの鯛などが置かれていた。

アパートの外で張る事にした源造、保郎の方は、夕べ森下がはねられた現場にいたと言う女を当たってみると出かける。

光造に会った保郎は、みさおの写真を見せ、森下が轢かれた後、女の行動を確認する。

光造は、女は自分から進んで車に乗り込んだと思い出す。

夜、みさおのアパートを張っていた父親の元に戻って来た保郎は、昨夜現れたのはみさおの身代わりだと報告し、それを聞いた源造は、みさお本人は、一味に捕まっているのかも知れんと推理し、自分の銃が、何かの犯罪に使われないかと考えると、いても経ってもいられないと焦燥感を表す。

その時、みさおの部屋に入る女の姿を見つけた二人は、急いで駆けつけるが、それは尾頭付きの鯛が腐るのを惜しんで、こっそり頂きに来た管理人だった。

その頃、当のみさおは、とある工場の中に閉じ込められていた。

みさおは何とか、机の上に置かれた受話器に近づこうとしていたが、そこにやって来た神崎(弘松三郎)に殴られる。

神崎は、森下は俺が消した。お前が良い囮になってくれたからとあざ笑う。

そんな神崎の懐から銃を奪ったみさおは、神崎ともみ合ううちに銃が暴発し、自分が撃たれてしまう。

翌日、ひき逃げに使われた車と一緒に、みさおの死体が発見される。

持ち主の海老原は、自分の車がこんな犯罪に使われるとはと嘆きながら帰って行く。

みさおに撃ち込まれた銃弾が自分の拳銃の物ではないかと恐れた源造は、保郎と共に、警視庁に調べに行く。

そこで、総監賞をもらって帰るベテラン同僚から挨拶をされた源造は、複雑な気持ちになる。

しかし、みさお殺しに使われた銃は、源造のものではなかった。

みさおが殺された事はすぐに新聞に載り、それを買って読んだ森下は、怒りで新聞紙を破り捨てる。

佐藤親子は、横浜で迷宮入りになった事件に関わっていた神崎英三と言う男をあぶり出し、捜査課長に知らせる。

その神崎が社長を務める神崎金融にやって来た森下は、銃を突きつけると、俺はやくざ稼業が嫌になったので、堅気になろうと思っていたのだが、それをよくも、また俺に銃を持たせるような事をしてくれたなと神崎に迫る。

そこに女(南風夕子)がやって来たので、森下は、驚いて逃げかけた女の方を掴まえる。

しかし、その隙に、神崎には逃げられてしまう。

森下は女が持っていたスカーフの模様を見て、あの夜、五月橋に立っていた女が、みさおではなく、この女だった事に気づく。

辻村がやらせたのかと女に確認すると、辻村ではないけど、ボスが背後にいると女は答える。

その頃、トルコ風呂の従業員たちに身体をもませていた海老原の所に、神崎がやって来て、森下の奴、からくりに気づいたらしいと教える。

海老原は、せっかく、車は盗まれたと言う事にしたのに、全部お前が悪いと不機嫌そうにつぶやく。

神崎は、旅に出るので金をくれと迫る。

その神崎を地下室の金庫の所に連れて行った海老原は、扉を開けた後、長いたびになるだろうから、好きなだけ持って行けと神崎に勧める。

喜んだ神崎が、金庫の前にかがみ込んだ途端、背後から海老原が銃弾を撃ち込む。

3年前、森下は、外国人に380万渡し、1万ドルを受け取る、辻村らの「ドル買い」の手先にされていた。

しかし、森下だけが捕まり、みさおの奔走も空しく、刑務所送りとなったのだった。

そんな事を思い出していた海老原に、森下から、分け前を独り占めしたいかと電話がかかって来る。

これから、警察に行って、全てを打ち明ける。もう金なんか欲しくない。堅気になりたいと森下は言う。

海老原は、そんな森下をなだめすかし、何とか金で解決しようと言う。

結局、森下は、みさおの線香代として100万もらおう。受け渡しの場所は神宮球場外苑入り口と話がまとまる。

その頃、神崎金融に来て、縛られ床に転がされていた女を助け出した佐藤親子は、森下が海老原の所に行ったと女から教えられる。

さっそく、海老原のトルコ風呂「アリババ」に向かった二人は、外で張り込みを開始する。

夜の10時半、海老原は、二人の子分にそれぞれ中を手渡すと、一緒に車に乗り込み「アリババ」を出発する。

その様子を見ていた佐藤親子も車で追いかける。

やがて、海老原の車は神宮外苑に到着する。

柱の陰で、様子を見ていた森下は、海老原が約束を破り、一人で来なかった事を知る。

森下は、二手に別れた子分の一人に襲いかかる。

その時、子分が銃を発射したため、それに気づいて近づいて来た海老原が発砲する。

それに、森下も応戦する。

車に戻って来た海老原を、源造は確保し、手錠でハンドルにつなぐ。

もう一人の子分が森下に掴みかかる。

佐藤親子は、森下を捜していた。

保郎は、森下に逃げられたもう一人の子分を掴まえる。

森下は、佐藤親子から逃走しようとするが、その前にライトが照らされる。

気がつくと、周囲は警官たちに包囲されていた。

その森下に近づきながら源造は、あのコルトは5発弾が入っており、すでに森下は4発発射したと保郎に告げる。

森下は、近づいて来る源造に銃を向ける。

源造は、拳銃を返してくれ。撃つならわしを撃てと諭しながら、森下の前に立つ。

森下は、拳銃を地面に落とすと泣き出す。

その姿を見ていた捜査課長は、駆けつけて来た新聞記者たちに、佐藤刑事は、表彰をふいにしたが、ドル買い事件を解決したと説明し、意気に感じたブン屋たちも、書きましょうと言いながら源造の元にみんな駆け寄って来る。

それに気づいた源造は、照れくさそうに笑うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

刑事物語シリーズの第四話で、上映時間53分の中編作品。

今回は、ベテラン刑事の源造が警察拳銃を盗まれてしまうと言う、黒澤明の「野良犬」(1949)を彷彿とさせる展開となっている。

勤続表彰式の前日と言う事で、タイムリミットは一日だけと言う設定になっているのもミソ。

いつもはまじめイメージの保郎が、父親のピンチを救うため、アロハにサングラス姿のチンピラに扮して登場すると言うサービスもある。

「ドル買い」と言うのがどういう犯罪なのか、今では分かり難いが、更生しようとする男が、昔の仲間たちに陥れられて、又犯罪に手を染めてしまうと言う悲劇も描かれている。

全体的に通俗娯楽と言う感じで、特質すべきアイデアや映画としての見応えと言うようなものはあまり感じられないが、そつなくまとめられている印象で、シリーズが安定して来た感じはする。