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刑事物語 灰色の暴走

1960年、日活、渡辺桂司脚本、小杉勇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雨が降る深夜、東都信用金庫の前に停まる一台の車。

信用金庫の中のでは、富永(待田京介)が溶接機で金庫を開けようとしていた。

その側には、仲間が二人、太刀(弘松三郎)と黒川(上野山功一)が、そわそわしながら金庫が開くのを待っている。

外の車の中で待っていたのは見張り役の本間(武藤章生)だった。

そこに、定時見回りのパトカーが近づいて来る。

車は少し移動し様子を見ていたが、パトカーから降り立った警官二名が信用金庫の中に入ろうとしたので、思わず発砲して一人の警官を倒す。

もう一人の警官は応戦を始め、中にいた二人は逃げ出す。

しかし、富永は、何とか金庫を開けると、その中の札束をバッグに積め、遅れて逃げ出す。

先に逃げた二人を拾った車は逃走を始める。

警官は、なおもその車に発砲するが、逆に撃ち返されて倒れる。

倒れた警官は、車に乗り遅れて逃げる富永を見つけると、それに向かって発砲し、足に怪我を負わせるが、富永はそのまま闇の中に走り去って行く。

事件を知り、所轄署で打ち合わせをしていた本庁の佐藤保郎部長刑事(青山恭二)は、「星は何でも知っている〜♩」と唄いながらやって来た父親佐藤源造(益田喜頓)を見て微笑む。

源造の方も「デカ長!又一緒ですね」と、うれしそうに息子に声をかける。

捜査課長(松下達夫)は、そんな源造に、「二年前の手口と一緒と思わんかね?」と問いかける。

撃たれた安藤巡査は意識を取り戻したと言う。

保郎は、父親が二年前に挙げた銀行ギャングの名前を挙げて行く。

太刀、黒川、溶接工の富永、そして高木勉は現場の近くに住んでいた。

それを聞いた源造は、勉は、自分が鑑別所から出て来た後、面倒を見て更生させた奴だから、ここはわしに任せてくれないかと言う。

その勉は、バイクレースに興じていた。

それを見守る恋人のミキ(中川姿子)は楽しそうだった。

ゴールした勉に駆け寄って来たミキは、乗っていたバイクを欲しがる勉に、12万するけど9万にまけるから買っちゃえば?と勧める。

そこに、ガソリンスタンドの店主前山(松本染升)と共にやって来た源造は、勉に「働け」と叱る。

勉が住み込みで働いているガソリンスタンド湊商事上原出張所に前山と帰って来た源造は、勉の部屋を見せてくれないかと頼む。

そこに、交通事故でライトを壊したトラックが乗り付け、勉に急いで修理してくれと頼む。

勉は、トラックの助手席に乗り込むと、ミキが働いている近くの修理工場に出かけ、応急処置を頼む。

源造は、勉が部屋に、昔の仲間をかくまっていないと分かったので、ひとまずほっとしていた。

源造から頼まれ、勉を預っている前山は、最近、勉の奴、毎日のようにホールに出かけてロカビリーとか何とかを唄っていると困り顔。

源造は、夜は自分が見回りに来ると前山に頭を下げる。

やがて、修理を終えたトラックの運転手がガソリンスタンドに戻って来て、勉に礼を言う。

これからどこまで行くのかと勉が聞くと、千葉までだと運転手が答えたので、同じく交通事故やった奴がいるので、途中まで一緒に乗せて行ってくれないかと勉は頼む。

運転手が承知したので、工場内の奥に向かった勉は、そこに隠れていた富永に声をかけ、トラックの所まで連れて行ってやる。

富永は感謝の気持ちだと言い、バッグの中から札束を一つ取り出すと勉に渡し、何とかトラックの所までたどり着く。

富永は勉に、俺もあいつらとは手を切って、この金でまともに暮らすつもりだと言い残し、去ろうとしていたが、その時、運転手が近づいて来る源造の姿を見て慌てる。

昼間、勉が源造の事を、警察の人間だと教えていたからだった。

急発進したトラックに乗りかけていた富永は、持っていたバッグを落としてしまう。

それを拾い上げたのが源造。

慌てた勉は、そのバッグを取り戻すと、持って行くと言い残して、ちょうどやって来たミキを後ろに乗せバイクで走り去る。

富永を乗せたトラックは一斉取り締まりに引っかかる。

運転手の方は免許証を見せてすんだが、助手席に乗っていた富永にも身分証明署を見せろと警官が言って来た野江、富永はその警官を突き飛ばして、運転手にトラックを発進させる。

しかし、白バイに追跡されたので、停まったトラックから、富永だけ降りて逃げ出す。

一方、トラックを見失った勉は、しばらくこのバッグを隠しておいてくれとミキに頼む。

ミキは承知し、その隠し場所の鍵は勉に預けると言う。

署に連れて来られたトラックの運転手に、銀行ギャングの写真を見せた保郎は、逃亡した男は富永だと知る。

その夜、ホール「リオグレンデ」でミキと踊っていた勉は、やって来た源造に連れて帰られる。

二人が帰って来たガソリンスタンドには、ちょうど保郎も来ていて、トラックで逃げた男は富永だったと伝えると、立木はボクがお預りしますと父親に言い、勉を署に連行するのだった。

署では、富永の写真を見せ、お前の昔の友達だろうと聞く保雄だったが、勉は何も答えようとはしない。

署に戻って来た源造が連れて来た前山は、だから、こんな前科者を預るのは嫌だったんだと言い出す。

それを聞いた源造は、それは違う。勉は前科者じゃないと否定するのだった。

「わしにちょっと調べさせてくれ」と言い。保郎や前山を部屋から出した源造は、カツ丼を勉の前に置き、食べろと優しく勧める。

勉は「親父さん!」と言うだけで、それ以上は口を開かないので、「富永や金の事を言いなさい。俺だけはお前を信じている」と諭すが、勉は涙を流すだけだった。

勉は昔、仲間から抜けようとして痛めつけられた所を、富永にかばってもらった時の事を思い出していたのだった。

結局「何も言えねえや」と勉は言うだけだった。

その頃、富永は情婦清江(楠侑子)の店に転がり込んでいた。

清江は、二階に上げ、富永の足のけがの手当をしてやる。

こんな事でもしねえと金も入らないと言う富永に、でも、よかった。帰って来てくれてと寄り添う清江。

捜査会議では、課長が、高木勉から金の場所が分からんかと質問が出ていたが、保郎は、勉は、自分と矢島刑事(長弘)が張るので、放した方が良いと提案する。

源造の方は野村(長尾敏之助)と組む事にする。

一方、本間、太刀、黒川の三人は、競輪場の駐車場で、車を盗んでいた。

富永の行方を捜していた彼らは、富永の女が世田谷に住んでいる事を突き止めていた。

野村刑事を村井ラーメン店と言う店に連れて来た源造は、そこの女将(清川虹子)に協力をあおぐ。

昔、源造から世話になった女将は、銀行ギャングの捜査と察しをつけ、快く引き受けると、近所の仲間を全員呼び寄せるのだった。

保郎は、ガソリンスタンドに戻った勉の仕事ぶりを監視していた。

そこに、別の男が運転するバイクに乗ってミキがやって来る。

勉はバイクに給油しながら、ミキに、家にいてくれ、後で電話するとこっそり伝える。

給油を終え、バイクを動かそうとした男だったが、かからない。

見かねた勉が代わってアクセルを吹かすが、やはりかからない。

そこに保郎がやって来て、アクセルを吹かすと、後ろにミキを乗せたまま走り始める。

保郎は、女に話しかけるが乗って来ないのを知ると、そのまま家まで送り届け、バイクでガソリンスタンドに戻って来る。

その頃、村井の女将は、集まった仲間たちに、富永の写真を見せると、見つけたものには一万円出してやると言っていた。

一方、富永は、清江が銭湯に行こうとするのを見ると、電話帳で調べて、勉のガソリンスタンドに電話をしてくれと頼む。

その後、近所のタバコ屋の店先で電話帳を調べていた清江に、富永を捜しに来ていた本間たちは気づく。

清江に案内させ、店の二階にやって来た本間たちは、そこにいた富永に、金はどうしたと聞く。

清江は、もう一度勉の所に電話をして来ると言い残し、男を一人引き連れ出かける。

ガソリンスタンド湊商事の電話が鳴ったので、側にいた保郎は、受話器を取ろうとする勉に、富永だったら場所を聞き出せと命じるが、受話器を取った勉は「知らない」と一言言って、すぐに切ってしまったので、保郎は焦せって、「お前は殺されるかも知れないんだぞ」と勉を殴る。

清江と戻って来た男は、勉は知らないと言っていたぞと富永に伝えると、富永は愕然となり、直接自分が行ってみると言い出す。

本間は、俺たちが9時までに戻らなかったら、女をばらして、10時までに品川へ来いと一人を店に残し、富永を引き連れてガソリンスタンドン向かう。

村井の女将は、見つかったと証言者を源造たちの元に連れて来る。

三軒茶屋の奥で富永を見たと言うのだった。

その頃、ガソリンスタンドに到着した本間たちは、まだ刑事が張っている事に気づく。

張っていた保郎は、矢島刑事から怪しい奴がいるとの連絡を受け、持ち場を離れる。

その隙を付いて、店の中にいた勉はミキに電話を入れ、預けていたバッグを持ってホールに来てくれと頼むと、自分は屋根に上り逃げ出そうとする。

しかし、その姿は車の中に潜んでいた本間たちに見られてしまう。

清江は、見張りの男に襲われかけていたが、店の戸を叩く音に救われる。

見張りの男は、本間が戻って来たと思い込みとを開けるが、そこに待っていたのは刑事で、その場で男は捕まってしまう。

ホール「リオグレンデ」に隠れていた勉とミキは、捜しに来た本間らの姿を見つけるが、富永が目で合図して来たので、表に抜け出し、バイクで逃走を図る。

それに気づいた本間たちは車でその後を追う。

ホールに来ていた保郎もその動きに気づくと、車で後を追う。

バイクを飛ばす勉は、後ろでしがみついているミキに、一緒に逃げてくれ好きなんだよと告白し、ミキも、私も好き!と抱きつく。

刑事たちに追われている事に気づいた本間たちは、発砲し始める。

保郎の方も銃で応戦しながら追跡を続ける。

さらに、富永にも、前の勉たちを撃てと命ずる。

一瞬躊躇した富永だったが、本間たちの手前、形だけ前に向けて発砲し始める。

勉は、空き地に積んであったドラム缶の山を崩して前進する。

崩れて来たドラム缶に阻まれ、急停車した本間たちは、後ろから近づく保郎たちの車に発砲を続ける。

河原に来た勉のバイクは転倒してしまい、勉とミキは、バイクを捨て、川の方に逃げる。

本田が、追いかけて行き勉に飛びかかる。

その現場に、源造も駆けつけて来た。

それに気づいた保郎が、父さん、危ない!と叫ぶ。

富永は本間に向かって発砲し、撃たれた本間も撃ち返し、富永は倒れる。

そこに、源造が到着するが、拳銃を拾った勉が立っていた。

勉!撃つんじゃない!と言いながら近づく源造。

寄るな!と叫び、銃を構える勉。

しかし、勉は引き金を引けなかった。

その銃をそっと受け取る源造。

勉はミキの手を取ると逃げ出そうとするが、その時倒れていたバイクが爆発炎上する。

そんな二人に「大丈夫、大丈夫」と優しく声をかけながら近づいて来た源造は、「勉、お前が悪いんじゃない」と言葉をかけると、その肩に自分の上着を着せてやるのだった。

そこに保郎がやって来て、「まあ良い。君たちは、親父と一緒に来るんだ」と、二人の若い男女に言葉をかけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「刑事物語 殺人者を挙げろ」に続く刑事物語シリーズの第三話で、52分の中編作品。

昔、恩を受けた仲間への友情と、同じく恩を受けた源造との狭間で苦しみ,最後には何かを求めて逃走しようとする若者像を中心にまとめた内容になっている。

一作目で、源造の息子保郎を演じた待田京介が、今回は犯人役の一人を演じているのも興味深いし、毎回違う役で出ている松本染升が、今回も又登場している。

若者を夢中にさせる要素が、バイク、女、ロックンロールと言う辺りが時代を感じさせる。

舞台も、それまでの下町とは違い、世田谷が中心。

とは言え、今の世田谷近辺の雰囲気とは大分違う。

人情派の源造が、取調室に連れて来られた勉にカツ丼を振る舞う、刑事物では定番となっているかのような設定が、すでにこの頃からあったと言う事が分かる。