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刑事物語 部長刑事を追え!

1961年、日活、高橋二三脚本、小杉勇監督。

※この作品には、後半、どんでん返しが用意されていますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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シャンソン歌手、イヴォンヌ・モワローの公演が行われていた。

客席には、佐藤源造(益田喜頓)、保郎(青山恭二)親子刑事も座っていたが、源造の方は、ぐっすり眠っているだけで、保郎がさりげなく起こそうとしても一向に目覚めない。

諦めた保郎は、席を立つと、小松川はいないかと女性スタッフに尋ねる。

やがて、やって来た小松川(伊藤孝雄)は、この公演のプロモーターであり、保郎と同じ大学の法科の同期生だった。

再会を喜んだ小松川の方は、保郎が、今や、警視庁の部長刑事に鳴っている事を知り驚く。

タイトル

源造は、ガス自殺の現場にやって来ていた。

聞けば、子供の先立たれた老人だと言う。

「宮脇」と言う表札を見た源造は、こんな所にいたのか…とつぶやく。

源造の古い友人だったのだ。

警視庁の保郎に電話を入れた源造は、宮脇が自殺したので、今夜は葬式で遅くなると連絡する。

捜査会議に戻った保郎は、最近相次いで立川と横浜で起こった殺人事件は、共にスペイン製のアストラ・オートマチックと言う拳銃が使用されていたと言う報告を聞く。

捜査課長(長尾敏之助)は、ハマの方に先に挙げられたら、こっちのメンツは丸つぶれだと、刑事たちに檄を飛ばす。

その夜、源造は、珍しく泥酔して帰宅して来る。

俺が年を取ったらどうする?お前にもしもの事があったらどうなる?…と繰り返しこぼす源造。

相当、子供に先立たれた友人の自殺が応えたらしい。

退職金、いくらもらえると思う?宮脇だって、金があったら死なずに住んだかも知れない。わしも、お前を刑事なんかにするんじゃなかったと、今夜くらい感じた事はなかったと愚痴を止めない源造の言葉を背中に聞きながら、保郎はただ黙ってタバコを吹かせていた。

翌日、保郎は、2階にある小松川の事務所の下の「バー ロジータ」に出向く。

やがて、小松川がやって来たので、マダムの弓子(楠侑子)は、保郎を紹介してくれと小松川にねだる。

2階の事務所に場所を変えた保郎は、夕べ、父親から、金があれば大抵の幸せが掴めると言われた時にはがっかりしたよと、小松川に苦笑しながら打ち明ける。

それを聞いた小松川は、警察止めるなら骨は拾わせてもらう。うちも官庁に顔が利く人材が欲しいので、トレードマネーは弾むと答える。

さっそく本庁に戻った保郎は退職届を提出する。

捜査課長はあえて慰留はせず、保郎と握手をして別れるのだった。

しかし、ケーキを買って帰宅した保郎から、その事を打ち明けられた源造は激怒する。

自分は、お前に警察を辞めて欲しいなどと思ったのではないと言うのだ。

しかし、保郎は、生活は僕が保証しますから、お父さんも早く警察を辞めるんですねとアドバイスするだけだった。

翌日、保郎は、さっそく小松川から仕事を言い渡される。

水田と言う金貸しに500万貸してあるので、それを取り立てに行ってくれと言うのだ。

小松川の車を降りた保郎は、小松川から教えられた通り、ガード下の易者の横の道にある水田金融事務所に入って行く。

ドル紙幣に篭手でアイロンをかけていた水田(伊藤寿章)は、突然の訪問者に驚いて、机の上野ドル紙幣を引き出しに慌てて掻き入れる。

その直後、水田の事務所にやって来た女中のトメ(福田文子)は、二階にある水田事務所の電気が消えており、小さな懐中電灯の光のようなものが動いているのに気づいたので不審に思い、階段を上がって、部屋の電気を点けようとスイッチを入れるがつかない。

その時、コート姿の男が、彼女にぶつかって外に逃げ出す。

マッチを擦って、室内を見渡したトメは、床に倒れている水田の死体を発見する。

就寝していた源造は女中に叩き起こされたので、こんな夜中に起こされるのは殺しに決まっているとぼやきながら、女中に手伝わせて服を着替える。

トメの証言によると、9時過ぎても水田が帰らないときは、いつも食事を事務所に持って行っていたと言う。

さっそく、トメが見たと言うコート姿の男のモンタージュを作る事にする。

源造は、パチンコ屋にいたテツ(野呂圭介)を呼びつけると、夕べはどこにいたと聞く。

しかし、テツは、スケコマしをやらかして池袋署のブタ箱に入っていたと言う。

当てが外れてがっかりした源蔵の元に近づいて来たダフ屋の信公(深江章喜)は、水田殺しについては、ガード下の易者が情報を知っているらしいとたれ込んで来る。

さっそく源造も顔なじみだったその街頭易者(山田禅二)に会ってみると、夕べ、水田事務所に入って行ったのは、息子さんだよと言うではないか。

所轄署に戻り、トメの証言に基づき完成したモンタージュを観た源造は、それが息子の保郎そっくりである事を知り、愕然としてしまう。

源造は、捜査課長から、この事件から降りてくれと言い渡される。

しかし、じっとしていられない源造は小松川に会いに行くが、あれから保郎は来ていないが、来たら自首するように伝えると言う。

事務所から帰りかけた源造は、ちょうどやって来た捜査班とすれ違う。

その後、事務所から来るまで出かける小松川の様子を信公が監視していた。

その頃、保郎は、マダム弓子のマンションに潜んでいた。

そこに小松川がやって来て、水田を殺せとは言わなかったはずだ。これで500万とり損なった。バカな事をしてくれたものだ。僕に500万の損害を与えたんだから、そのためにも仕事をしてもらわなければならんと保郎に告げる。

保郎は、ただ、弾みだったんだ…と答えるばかり。

一方、源造は、一人で必死に保郎を捜し続けていた。

自宅に帰り着いた源造は、若旦那を容疑者扱いにする証拠はどこにあるんだと嘆く女中の言葉に力づけられる。

確かに、保郎が水田を殺したと言う物証はまだ何も見つかっていなかったのだ。

翌日、まだ捜査が行われていた水田事務所にやって来た源造は、息子の事が心配で来たのだと分かっている刑事たちから、親父さん、我々に任せておいて下さいと声をかけられる。

刑事たちも、仲間の不祥事に苦悩していたのだ。

その時、一人の刑事が、ドル札を一枚発見する。

その時、部屋の中をそれとなく見回っていた源造は、石油缶の中に入っていた灰の中から、「父より」と書かれたペンライトを発見し、思わず、自分のコートのポケットに入れて持ち帰ってしまう。

川縁にた佇む源造は苦しんでいた。

今手に入れたペンライトは、自分が保郎の誕生日祝いとして贈ったものだったからだ。

そんな源造に、ダフ屋の信公が、とっときの情報があると話しかけて来たので、虫の居所が悪かった源造は、てめえのような奴のツラは見るのも胸くそが悪くなると捨て台詞を残して立ち去る。

所轄署に戻って来た源造は泥酔していた。

そして、捜査課長にペンライトを差し出すと、最後に水田に会った奴の証拠を見つけました。お手柄でしょうが…と言いながら泣き崩れる。

その夜、源造は、自宅の周囲にも刑事が張り込んでいる事に気づく。

女中は、こんな事になったのも、旦那様が悪いんですと泣き出す始末。

源造は、そんな女中に、半紙と硯の用意をさせる。

翌日、源造は、夕べしたためた「退職届」を捜査課長に手渡すと、保郎が逮捕されるまで預っておいてくれ。捕まった時に、世間にお詫びしたいと頼んで泣く。

部屋を出ると、記者たちに取り囲まれた源造だったが、ただ、見直して欲しいと頼むだけだった。

そして、その足で小松川の事務所を尋ねた源造だったが、小松川は外務省から羽田に回っていて留守だと言う。

一週間、弓子のマンションに身を潜めていた保郎は、「水田殺し事件は迷宮入りか?」と言う新聞記事を読んでいた。

そんな保郎に、弓子は誘いをかけて来るが、友達を裏切る訳にはいかないと保郎は相手にしない。

一方、小松川は、信公からの電話を受け、あんたの一番欲しいものを持っているので、今夜9時、丸の内劇場の奈落に来いとの連絡を受ける。

その電話を終え、公衆電話から出て来る信公の姿を偶然目撃した源造は、信公の後を尾行し始める。

その頃、保郎の方も、公衆電話でどこかと電話をしていた。

信公を追って丸の内劇場にやって来た源造は、通用口から中に侵入する。

奈落には、小松川から指令を受けた保郎もやって来ていた。

そこで待ち受けていた信公は、拳銃とドル紙幣を出してみせる。

そこに降りて来た源造は、保郎の姿を発見すると、バカなまねをしおってと叱りつけるが、保郎は、あいつが水田殺しの星なんだと、信公を指差しながら告げる。

借金があったんだと笑う信公は、当夜の種明かしを話し始める。

先に、水田事務所に着たのは信公だった。

しかし、背後から人の気配が近づいて来たので、一旦便所に身を潜める。

現れたのは保郎だった。

保郎は、水田との話を終え、一旦引き上げるが、その後、便所から出た信公は、花瓶で水田を殴打し殺してしまう。

しかし、その直後、又、物音に気づいた保郎が戻って来たので、信公はあわててロッカーの中に隠れる。

部屋に戻って来た保郎は、部屋の電気が消えていたので、ペンライトで部屋を照らしていたが、そこにトメがやって来たので、あわてて逃げ出す時に、ペンライトを石油缶の中に落としてしまったのだった。

真実を知った源造は、もう小松川の方も逮捕されているはずだと信公に怒りをぶつけ、保郎と共に掴まえると、回転せりの所に信公を手錠でつなぎ、自分たちは床に落ちたドル札を拾い始める。

その時、銃を構えた小松川が「ところが、まだ逮捕されていないんだ」と言いながら現れる。

小松川は、保郎が、自分たちの核心に入り込んだ囮捜査である事を見抜いていたのだ。

ポケットの中の拳銃を捨てさせられた保郎は、勝負は俺の負けだとつぶやく。

しかし、その時始めて、保郎の行動の意味を知った源造は驚く。

保郎の退職も、全て囮捜査のためだったのだ。

保郎は、立川と横浜で起こった殺人事件に使われた銃は、お前が今持っているアストラ・オートマッチだと指摘し、横に飛ぶ。

慌てて銃を連射した小松川は、弾が尽きてしまう。

この時、父親の助言で手にした消化器液を、保郎が小松川に浴びせかけ、相手がひるんだ隙に飛びかかる。

その間、源造の方は、落ちていた拳銃を拾い上げていた。

そこに主任たちが到着する。

源蔵は保郎に、わしの30年の勘を狂わせおってと小言を言うが、囮捜査の文字を忘れたのですか?父さんが教えてくれたんですよと保郎から切り返され、思わず苦笑してしまう。

源造と一緒に外に出た保郎が、父さんもそろそろ年ですから、楽隠居でもしたら?と話しかけると、源造は、まだまだ刑事は辞めんぞと抵抗するのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

刑事物語シリーズの第十話で、上映時間55分の中編作品。

今回は、部長刑事の保郎に殺人嫌疑がかかると言う異色の内容になっている。

子を思う父親源造の苦悩が痛々しい。

ただ、観客としては、保郎が終始落ち着いているので、これは何か裏があるな?と比較的早く感づくようになっている。

囮捜査でなければ、冒頭、源造が寝ているシーンがあるので、ひょっとしたら「夢落ち」で終わるのではないかとさえ危惧させるが、最後は、意外に常識的なまとめ方になっているように感じる。

謎解き風になっているため、全体的にこじんまりとした印象で、ややサスペンスやアクション要素は弱く感じるが、今回も、奈落の回転装置を使ったクライマックスの演出など、それなりに面白い工夫が用意されている。

今回、このシリーズ全般を見ていて感じたのは、この当時は本当にタバコを吸うシーンが多いなと言う事。

逆に言えば、それだけ、近年の映画から喫煙シーンがなくなったと言う事だろう。

ちなみに、たびたび、タイアップ商品が登場するこのシリーズ。

今回も、ルピットと言う風邪薬が佐藤家の常備薬として登場し、わざとらしく保郎が源造に飲むように勧めている。