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刑事物語 小さな目撃者

1960年、日活、大村宏原作、高橋二三脚本、小杉勇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

深夜、サングラス姿の男女と若い運転手が乗る自動車が、向島にある日新製薬工場前に到着する。

それを待っていたのは、宿直の吉岡(弘松三郎)だった。

その守衛室で両親に挟まれ寝ていた5歳児くらいの木村宏(松岡高史)は、おしっこがしたくなり起きると、一人で外にある便所に向かう。

吉岡に導かれ、倉庫に侵入したサングラスの男と運転手は、外で物音に気づき警戒する。

吉岡が確認に出てみると、それは宏が、立て付けの悪い便所の扉を何度も閉めようとしていた音だと気付き、近づくとチューインガムを5つ渡してやる。

戻って来た吉岡から、子供だから心配ないと聞かされた男たちは、ジュンマイシンと書かれた箱を外に運び出すが、家に戻っていた宏が、ガラス戸越しにその姿を見ていた事には気づいていなかった。

タイトル

布団に戻って来た宏が、ガムを食べようとしているのに気づいた母親(漆沢政子)が、それは誰にもらったのと聞くと、吉岡のおじちゃんにもらったと宏は答える。

寝ている所を起こされ、その事を聞かされた父親(野呂圭介)も、こんな時間に見回るなんて、あの人も偉いねと、夢うつつで返事するが、荷物運んでいたよと言う宏の言葉に飛び起きる。

走り去ろうとする車を追いかけていた両親は、サングラス姿の男に二人とも射殺されてしまう。

一人になった宏が、外で泣いているのを見つけたのは、近くにいた屋台の店主だった。

その後、警官が、向島署の刑事佐藤源造(益田喜頓)の自宅に連絡に訪れ、寝ていた源造は、お手伝いお信(田中筆子)に手伝ってもらいながら出かける準備をする。

それを、一緒に起きた、息子で、警視庁の刑事部長である保郎(青山恭二)が「ごくろうさんです」と見送る。

その朝、向島署の捜査会議にやって来た保郎は、父親の隣に座る。

捜査一課長(山田禅二)は、凶器に使われた銃はSM35口径で、前科のないものだと言う。

捜査主任(佐野浅夫)は、盗まれたのは「ジュンマイシン」20ダースで、時価560万、小売価格にするとその3倍はする代物で、品物にはTC31~34の通し番号が打ってあるので、薬局に手配をする必要があると報告する。

安岡は頭を殴られ気絶している状態で発見され、入院していた所を保郎が事情を聞きに行く。

一方、署では、源造が宏から何とか事件当夜の事を聞こうとしていたが、幼い宏は家に帰るとぐずるばかりで何もしゃべろうとはしない。

それを横で見ていた主任は、その子の身寄りを今捜しているが、近くにいそうもないので、保育園にでも預けるかと源造に語りかける。

賛成した源造が、宏の手を引いて廊下に出ようとすると、待ち構えていた新聞記者たちが宏を取り囲んでしまう。

これでは、ブン屋の餌食になると判断した源造が、又、部屋に戻ると、見かねた一課長が、しばらく君が面倒見てやってくれんかと源造に頼み、主任も、君にはうってつけだとからかう。

そこに帰って来た保郎が、誰に聞いても、吉岡は模範的な社員で通っているようだと報告する。

自分も捜査に戻ろうとする源造だったが、主任から、君は子供につきっきりでいろと釘を刺されてしまう。

仕方なく、宏を連れて、保郎と外に出た源造だったが、宏が紙芝居を見つけて走り出したりするので、捜査にならない。

捜査本部では、都内の薬局に配る薬の手配署が完成していた。

その頃、とある雀荘では、薬を盗み出した三人が顔を揃えていた。

事件当夜運転手を務めていた大学生の長谷川(杉幸彦)が、当夜サングラスをかけていた浜田(宮崎準)に、金がすぐにでも必要なので、早く薬をさばいて分け前をくれと要求していた。

浜田は、今売るのは危険であり、三日後に芝浦に船が着くので、海外で売った方が金になるから、それまで待てとなだめる。

その二人のやり取りを同じ雀卓で聞いていたのが、当夜サングラスをかけていたもう一人の女、ファッションモデルをやっているアケミ(南寿美子)だった。

三人が吉岡と出会ったのも、この雀荘だった。

彼らとの賭け麻雀をやって負けが続いていた吉岡は、すでに会社の金を使い込んでいた。

そんな吉岡に、お前が宿直の夜、偶然、強盗が入ったとしたらどうだ?と、浜田が持ちかけたのだった。

アケミは、偽装工作のため殴りつけた吉岡を、あの時、ひと思いにやっておけば…とつぶやき、浜田に呆れられる。

雀卓を離れた長谷川は、店のバイト弓子(中川姿子)を呼ぶと、物陰で会話を交わす。

近頃様子が変だと心配する弓子に、長谷川は、月謝を滞納しているので大学から催促状が届いたのだが、三日以内に三万円を納めないと除籍させられてしまうと打ち明ける。

どうしても、学校だけは卒業しておかないと就職出来なくなると焦る長谷川だったが、さすがに弓子もそんな大金は持っていなかった。

弓子が、店の人に呼ばれ戻って行った後、一人になった長谷川は、ナイフを取り出すと、奥に隠してあった「ジュンマイシン」の箱に近づいて行く。

一方、幼い宏に、七色仮面の面やアイスクリームを買ってやるなど、懸命に子守りをしていた源造は、焦って保郎が質問して、かえって宏の機嫌を悪くしてしまったので、俺は、早くお前が嫁をもらって、孫の顔が見たいと思ていたが、これは考えものだなと愚痴る始末。

本部に戻った源造は、宏の田舎の親戚は、今、農繁期なので忙しく、後一週間経たないと引き取りに来れないと連絡があったと知らされる。

仕方なく家に泊めた宏は、その夜オネショをしてしまい、翌朝、布団干しをやらされたお信はお冠。

それでも、何とか宏をなだめすかしたい源造は、言うがままに玩具の機関銃を買ってやるのだった。

その日も署に出向いた源造は、主任に、子供のおもりは勘弁してくれと申し出るが、これも犯罪捜査の内なんだから辛抱してくれと言われると、返す言葉もなかった。

そこへ、蒲田2丁目の東洋薬局と言う店で、通し番号が削られたジュンマイシンが売られているとの密告電話が入る。

捜査に向かう刑事を誰にするか主任が迷っていると、源造が、宏を連れて行けば、ただの客にしか見えんでしょうと名乗りを上げる。

問題の東洋薬局に出向いた源造は、店主(小泉郁之助)が出して来た「ジュンマイシンV」を確認すると、警察手帳を出す。

その頃、入院していた隅田病院から退院した吉岡は、浜田に電話をし、警察の捜査の進み具合を調べてみると伝える。

向島署に連れて来られた東洋薬局の店主は、近くに同じような薬局があるため値引き競争をしなければやって行けない状況で、密告したのは、おそらくその店のものだろうと恐縮する。

そこへ、吉岡が、何か捜査のお手伝いでも出来ればと、退院の挨拶にやって来る。

主任から、薬局に売っていたジュンマイシンを見せられた吉岡は、確かに盗まれた品物ののようだと答え、部屋を退出するが、その時、トイレから出て来た宏を連れた源造に出会う。

吉岡の顔を見た宏の方は、急にべそをかき始め、源造にしがみつくが、吉岡は、良かったら私が引き取りましょうか?と、源造に話しかけて来る。

源造が宏の気持ちを確認してみると、「イヤン」と拒否する。

その後、吉岡は、浜田とアケミがいる団地の一室にやって来て、薬が既に出回っている事を教える。

船は明後日に着くと教えた浜田は、薬を流したのは長谷川しか考えられないと言う。

吉岡は、長谷川をばらせば、俺たちの分け前が増えるじゃないか。危うく俺もばらされかかったようだがねと嫌みを言い、三人は、長谷川の恋人の始末についても考え始める。

その後、長谷川を喫茶店に呼び出した弓子は、店のレジからごまかして来た金を渡そうとするが、長谷川は、滞納金はもう払ったから、この金はすぐに元に戻して来いと追い出す。

しかし、その店に張っていた浜田は、その長谷川を外に連れ出すと、ジュークボックスの音楽を流し、「これがお前の葬送曲だ」と言いながら、その場で射殺する。

事情聴取が長引き、主任からカツ丼を勧められていた東洋薬局の店主は、今、学生が射殺されたと刑事が持って来た写真を目にすると、この人が薬を売りに来た人ですと叫ぶ。

長谷川の死体から摘出された弾丸はSW35口径で、宏の両親が殺されたときのものと同じだった。

捜査会議では、長谷川の遺体から発見された手帳に書き込まれた「5.14 ○ -180」「5.15 △ +600」と言う数字が何を表しているのか議論されていた。

それを見た源造は、これは競馬の損得勘定書ではないか。14日は川崎競馬、15日には京王閣があったはずと指摘する。

その間、隣の部屋で機関銃で遊んでいた宏は、源造の後頭部に何度も弾を命中させ、叱られるのだった。

主任は、そんな源造に、明日、宏を保育園が引き取りに来るので、今晩一晩名残を惜しんでくれと告げる。

その夜、源造の隣で寝ていた宏は、夜、おしっこに起きると、一人で廊下に出て行くが、寂しくなったのか泣き出すのだった。

翌朝、訪れた保育園の保母(紅沢葉子)と共に、源造の家を後にする宏を見送っていると、さすがのお信も寂しがるのだった。

その日の会議で、今日行われる中山競馬場を張ろうと思うのだがと進言した源造だったが、犯人の顔も分からないのに、どうやって相手を見つけるんだと主任に反論されるが、私はこんな事を何十年もやって来たのですと押し通す。

保郎と共に、署を出た源造は、そこに一人待っていた宏の姿を見つけて驚く。

どうやら、保育園を抜け出して来たらしい。

仕方なく、宏を連れて中山競馬場に出向いた源造だったが、途中で宏がおしっこがしたいと言い出す。

実は、その日、吉岡、浜田、アケミの三人も、連れ立ってその競馬場に観に来ていた。

アケミが喉が渇いたと言いだしたので、ジュースを買いに行く三人を、トイレから出て来た宏が見つける。

吉岡は近づいて来た宏の姿を見て驚くが、いつののようにチューインガムを渡すと、この前の夜ももらったもん。荷物を運んでいた日…と宏が言うではないか。

それを聞いた源造の目が光ると、近くにいた浜田とアケミは、吉岡と共に逃げ始める。

見物客でごった返す中、保郎と源造は三人を追いかけ始め、宏も又、七色仮面の面とマント姿、玩具の機関銃を持って追いかけ始める。

ガードマンなどの協力もあり、三人は間もなく捕まり、手錠をかけられた浜田の所に近づいた宏は、機関銃を浜田に向けて発射するのだった。

彼らの根城である団地の一室に向かった刑事たちは、そこに縛られていた弓子を発見し保護する。

捜査の打ち上げが行われ、お手柄の宏のために大きなケーキが用意される。

そうした中、田舎から宏の祖母がやって来て、捜査陣に挨拶をするが、当の宏の姿がないと言う。

宏は夜の街を一人彷徨い、両親と住んでいた日新製薬工場の守衛室にたどり着く。

ガラス戸から中をのぞいた宏だったが、そこには、新しい守衛一家の楽しそうな夕餉の様子が見えた。

それを寂しそうに見つめる宏の背後から、源造と保郎が、祖母を連れて近づいて来る。

宏は、きれいなお月さんですねと夜空を見上げる祖母に近づく。

翌日、宏は祖母に連れられ、列車で田舎に帰る事になり、源造と保郎が見送っていると、刑事が殺しですと知らせに来る。

それを窓から聞いていた宏が、ボクも行こうか?と言うではないか。

「こいつ!」と、笑いながら睨んだ源造だったが、宏を乗せた列車が出発し遠ざかって行くと、さすがに目を潤ませていた。

しかし、すぐに保郎と共に街に出て行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「刑事物語」シリーズ第六話で、上映時間53分の中編作品。

子供が事件を目撃していた…と言う、一見ありがちな設定ながら、さすがに、後に「ガメラシリーズ」を作る事になる高橋二三の脚本だけあって、ほのぼのとしたシリーズ屈指の秀作に仕上がっている。

宏を演ずる子役も愛らしければ、そのおもりをする事になる益田喜頓の好々爺振りも微笑ましい。

タイアップしていると思われる森永のディズニーキャラメルにチューインガム、アイスクリームなどふんだんに登場する菓子類他、七色仮面や紙芝居、バヤリースオレンジなどの懐かしアイテムが時代を感じさせる。

二話目で、源造の妻、つまり保郎の母親も同居しているらしい設定になっていたはずだが、この話の佐藤家では、お手伝いさんしか登場しない。