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河童のクゥと夏休み

2007年、「河童のクゥと夏休み」製作委員会、木暮正夫原作(「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」より)、原恵一脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江戸時代、夜の沼岸

父ちゃん、龍って見た事ある?…と子河童(声-冨澤風斗)が聞く。

横に座っていた父親河童(声-なぎら健一)が、日照り続きの時、長老たちが呼んだ事があるが、良い神様だと答える、

その時、飛んでいる蛍を子河童が口に入れたので注意した父親は、龍も恐いが、今は人間の方がもっとおっかねえとつぶやき、自分が呼んだら、これをもって来いと、先ほど取っておいた鯉を指差す。

子河童は、今夜は何だか妙な夜だから気をつけてと言うと、父親も皿が乾くと言いながら立ち上がるのだった。

そこへ近づいて来たのは、商人風の男(声-藤本譲)と役人風(声-羽佐間道夫)の二人連れ。

二人は、必要のない農地改革をでっちあげ、その予算を帳簿操作でごまかし、多額の利益を得ているらしき会話を交わしている。

そこに「お役人様にお願いがございます」と言いながら、暗闇から現れたのが親河童だった。

龍神沼を干拓して田んぼにする話が進んでいるそうですが、輪足たちは生きて行けません。どうか考え直してもらえませんかと下手に出て申し出た親河童だったが、今までの内輪話を盗み聞かれていたと邪推した役人は刀に手をかける。

親河童は驚き、何も聞いていないと弁解し、異変を察知した子河童も、鯉を持って駆けつけるが、その姿を見た商人風の男も、もっと大勢、周囲に仲間が潜んでいるかも知れないと焚き付けたので、役人はその場で、親河童の片腕を切り落とすと、袈裟懸けに斬り捨ててしまう。

その直後、周囲に大地震が発生し、商人は「祟りだ~!」と絶叫する。

目の前で親河童を殺され、呆然としていた子河童は、地割れの中に滑り落ちてしまう。

タイトル

現在、東久留米市

雨が降る中下校する上原康一(声-横川貴大)は、友達たちとふざけ合っている時、相手を蹴ろうとして靴がすっぽ抜けてしまい、前を歩いていた菊池紗代子(声-植松夏希)の背中のランドセルに当たって、土手下の河原に落ちてしまう。

柵を越え、下に降りた康一は、靴に近づこうとした時、石につまづいてしまう。

さらに、靴を履いて戻りかけた時にも同じ石につまづいたので、しゃくに触りその石を掘り返してみると、案外大きな大きさがあった。

石垣にぶつけた所、まっ二つに割れ、その中には何か得体の知らない化石のようなものが入っていたので、好奇心を刺激された康一は、それをランドセルの中に入れて道路にに登って来る。

上で様子を見ていた菊池が、大丈夫かと声をかけるが、日頃から暗い性格と言う事もあり、クラスでも無視される存在だった彼女と口を聞くのを嫌った康一は、罵声を浴びせてさっさと帰るのだった。

自宅に帰って来た康一を待っていたのは、飼い犬のオッサン、妹の瞳(声-松元環季)、母親の友佳里(声-西田尚美)

康一はすぐに洗面所で持って来た石を洗い始めるが、瞳が好奇心で覗きに来たので、中から鍵をかけてしまう。

洗っているうちに、ミイラのようなものの毛の部分がほぐれて来る。

一方、瞳に連れられて来た友佳里は、洗面所の鍵を開けさせる。

康一は変わった石を拾ったので洗っていただけだと言うが、それを覗いた友佳里は、石から何か奇妙なものが分離して浮いて来たのを見て驚く。

その奇妙な生き物は、顔を上げると、立っていた瞳に水を吹きかけるのだった。

河童を掴まえたとの連絡を受けた父、上原保雄(声-田中直樹)は、珍しく早く帰宅して来る。

水槽に浸けられた子河童は、弱々しそうに「クゥ~」と鳴いている。

康一は、黒目川で見つけたと報告すると、「クゥ」と名付けようと提案する。

保雄は、子河童クゥに強い興味を持ったようだったが、友佳里と瞳は気味が悪いと引いている。

クゥはひどく衰弱し、殺さねぇでくれ、助けてくれと怯えている様子なので、友佳里が刺身を食べさせてみると何とか食べた。

飼いたいと言う康一に、友佳里はあんたが責任持つの?と聞くと持つと言う。

保雄は、しばらくこの事は秘密にしておこう。こんなに弱っているんだから助けてあげようよと、嫌がるひとみを説得する。

学校では、相変わらず、菊池が女の子から陰湿ないじめを受けていた。

上原家では、友佳里がクゥに、こわごわキュウリなど与えていた。

クゥは、ここは久留米川かと聞くので、その夜、帰って来た保雄がパソコンで調べてみると、黒目川は江戸時代、久留米川と言っていたらしい事が分かる。

江戸時代と聞いた康一は、クゥに侍のまねをして確認しようとするが、その様を見たクゥは怯えだす。

クゥは、地震が起こった後、地割れに落っこったと説明し、保雄たちも、侍の時代は100年も前に終わったと教えてやるのだった。

その後、少しづつリハビリを施してやり、クゥは元気に歩けるようにまでなる。

ある日、クゥは、おめえ樣方にはお世話になりやした。では、龍神沼に帰りやす。父ちゃんが、河童と人間は一緒に暮らせないと言ってたと頭を下げて来たので、驚いた保雄と康一らは、昔とは様子が変わっているので、外に出ない方が良いと説得する。

結局、その言葉に従う事にしたクゥに、本当の名前を聞いた康一だったが、人間に名前を教えると呪われると言われているなどと、クゥは躊躇する。

しかし、本当は、記憶をなくして、名前を忘れてしまっていたと言うのが本当らしい。

クゥと仲良くなった男性陣とは裏腹に、すっかり世話係にさせられるはめになった友佳里は不平を漏らしていた。

そんなある日、瞳がでんでん虫を二匹、採集箱に入れて持ち帰って来る。

「まいまいか…」と、それを見たクゥは、その一匹を食べてしまう。

それを見てショックを受けたらしい瞳に、クゥは、食べるために持って来たのじゃなかったのけ?と当惑顔。

友佳里も、人間もエスカルゴと呼んで、でんでん虫を食べる事もあると言い出したので、瞳はさらにショックを受ける。

夕食時、クゥが言うには、河童は、ゲンゴロウ、タガメ、トンボ、ミミズなども食べるらしい。

翌日、リュックの中にクゥを入れてやり、それを背負った康一は、自転車に乗って街の様子を見せに出かける。

リュックに隠れて外を覗くクゥは、出会う車や町並みの様子に目を丸くする。

龍神沼があったらしき場所は団地になっていた。

がっかりするクゥは、その後も、電車やビル群を見ながら、どこへ行っても人間だらけ、ここら辺には、もう河童はいねえみてえだな…とつぶやき、その夜ベッドの中で、ひどく落ち込むのだった。

クゥの母ちゃんも人間に殺されたのだった。

ある日の夕食時、保雄はクゥのために、瞳が小さい頃使っていた椅子をテーブルの横に置いてやるが、それを見た瞳はぶつかってクゥを跳ね飛ばす。

すると、さっと起き上がったクゥは、相撲け?と構えたので、保雄は、河童は相撲が好きだと言うのは本当だったんだと感心する。

瞳と組み合ったクゥは、あっさり瞳をソファの上に投げ飛ばす。

食事の後、今度は康一がクゥの相撲の相手をすると、これ又あっさり投げ飛ばされてしまう。

さらに、保雄が相手をしてもかなわなかった。

クゥが保雄の飲んでいた缶ビールに興味を示したので、戦勝を祝う意味もかねて、クゥのさらに少し注いでやると、すぐに顔が真っ赤になったクゥは酔って「雨降らせ ピッチャン ピッチャン ポタポタ ピッチョン…」と奇妙な踊りを始める。

濡れタオルを皿に乗せてベッドに寝かせられたクゥだったが、深夜、クゥは何かに呼ばれて目を覚ます。

外では、先ほどのクゥの踊りが効いたのか雨が降り始めていた。

夢心地で玄関の扉を開けようとしたクゥだったが、開け方が分からない。

すると、開け方を教える言葉が頭に飛び込んで来る。

ドアを開けてみると、そこにいたのは飼い犬のオッサン(声-安原義人)だった。

テレパシーで呼びかけていたのはオッサンだったのだ。

クゥは、自分はまだ未熟で上手く出来ないけど、そう言う力を犬も持っていると知って驚く。

オッサンは、この力の事は家のものには言うなよと釘を刺す。

せっかく外に出られたので、クゥはそのまま、夜の道を歩いてみる事にする。

オッサンは、ちゃんと帰って来いよ。この家の連中は、そう悪い奴らじゃねぇ…と付け加えるのを忘れなかった。

向こうからやって来たのは、ホラービデオを借りて来たらしきカップルだったが、街灯の光の中、水たまりで遊んでいるクゥの姿を目撃して逃げ出したのは、さっきまで女の子を怖がらせて喜んでいた男の方だった。

ある日、瞳の幼稚園の友達あやなの母親(声-永島由子)が、お宅には河童のような動物を飼ってらっしゃるんですってと友佳里に聞いて来たので、友佳里は驚いて否定する。

どうやら、瞳が漏らしてしまったらしい。

噂は徐々に近所に広がり、プールに出かけた康一にも河童の事を聞いて来る連中が増え始める。

どうやらネットでも広まっているらしい。

学校からの帰り際、菊池はまたしても女の子から意地悪をされて靴を放り投げられていおり、それを見かねた同級生から怒った方が良いよと言われるが、菊池は平気と答えるだけだった。

その帰り道で康一に近づいて来た菊池は、上原君、河童を守ってあげてねと声をかけて来る。

しかし、康一は照れて、うるせえんだよ、ブスと悪態をついて帰るが、心の中では何だかうれしくなったので、自宅に帰り着くと、二階で本を読んでいたクゥと相撲と取る。

下で恋愛ドラマを観ていた友佳里には叱られてしまうが、クゥは、それまで読んでいた「河童に会いに行こう 遠野」と言うタイトルの本を康一に見せると、これは本当か?と尋ねる。

その夜、その話を聞いた友佳里は、みんなで行こうかと提案するが、保雄は、この夏、仕事が微妙で…と乗り気ではない様子。

結局、康一が一人で、クゥと一緒に遠野に旅行してみる事にする。

新幹線に乗り込んだ康一は、リュックの中に入れたクゥに、そっと降車口の窓から外の様子を見せてやる。

クゥは、風景が吹っ飛んで行くあまりの早さに驚くが、見慣れた田んぼの様子に喜ぶ。

新花巻で乗り換え、遠野駅に到着した康一は、駅前にある河童のオビジェに感激する。

さっそく友佳里から電話が入るが、家では瞳が、クゥは捨ててくれば良いのにと憎まれ口を叩いていた。

カッパ淵と言う所に来てみた康一は、そこに、川の様子を24時間監視し、ネットで流しているカメラを紹介しているガイドの説明を聞く。

何と、カッパを見つけた者は1000万円もらえるのだそうだ。

その後、食堂のおばちゃん(声-一城みゆ希)に、カッパの居場所を尋ねてみた康一だったが、ちょうど客として来ていたトシオ(声-富田耕生)と言うおじさんに教えてもらう。

レンタサイクルでその川までやって来た康一は、リュックから出たがるクゥを川に放してやる。

すると、まさに水を得た魚のように泳ぎだしたクゥは、泳いでいた魚を次々に食べ満足そう。

康一にも泳ぐよう勧めるので、ブリーフ姿になった康一も川に入ってみる。

すると、クゥは屁の力で泳いでみせたり、康一を背中に乗せて川を飛ぶように泳いでくれる。

しかし、そこには、仲間のカッパはいそうになかった。

曲がり家になっている旅館に泊まった康一は、店の主人(声-岩田安生)から、ここには座敷童が出るかも知れないけど、うちには富をもたらす良い神様だからと聞かされる。

夜中、康一と一緒に寝ていたクゥは目覚めて、とある部屋のふすまを開ける。

すると、その中には、小さな女の子の姿をした座敷童が立っていた。

座敷童は、クゥを河童と知り珍しがるが、ここ100年くらい、河童は観ていねえと伝え、クゥを傷心させる。

翌日、さらに河童を捜す旅を続けようとした康一に、クゥはもう帰ろうと言い出す。

夕べの座敷童の話をして、俺たちの仲間は嘘はつかない。嘘をつくのは人間だけだからと言うのだ。

しかし、帰りの列車は夕方の新幹線だったので、それまで駅で時間をつぶしていた康一は、旅行ガイドを見てある事をひらめく。

自転車に乗って、釜石までやって来た康一は、リュックの中からクゥを出して景色をみせる。

クゥは、目の前に広がった巨大な海を観て驚く。

海を知らず、巨大な湖だと思っている様子。

泳いでみればと言われたので、さっそく飛び込んだクゥは、海の水がしょっぱいのにも驚き、こんな所には魚なんていないだろうと嘆く。

しかし,康一から、いつもお前が食べている魚は、みんなこの海の魚だと教わると、クゥは目を丸くするのだった。

東久留米市に戻った康一は、家の近くまで来たとき、待ち受けていた車から出て来た「週刊ブーム」の矢野(声-成田剣)なる人物とカメラマン(声-木村雅史)に取り囲まれる。

勝手に、康一が背負っていたリュックのチャックを開けたカメラマンは、中にいたクゥをカメラで撮影し始める。

そのフラッシュのまぶしさに、昔、父親を斬った役人の姿を重ねてみたクゥが怯えると、突如、カメラのレンズが割れてしまう。

案じて、家の前に出ていた友佳里に、康一はクゥの写真を撮られたと打ち明ける。

保雄は、雑誌社に写真を載せないように電話をするが、聞き入れられなかった様子。

クゥは、留守番をしていた瞳に、マイマイ食ったお詫びに、海で見つけたきれいな石を土産に持って来たと手渡す。

瞳は大喜びするが、それは単なるガラスのようだった。

ある日、オッサンを連れて散歩に出た康一は、ベンチに一人座っている菊池と出会う。

彼女を意識しているような康一のそぶりを観たオッサンは、色気づいて来た事に気づき、わざと菊池に近づいて行く。

菊池は、オッサンに手をなめさせるが、康一は近寄るのを恥ずかしがって、オッサンを引っ張って遠ざかってしまう。

その時の様子を、帰って来たオッサンから聞かされたクゥは、何でその子と仲良く出来ねえんだろう?と疑問を口にする。

オッサンは、人間は時々おっかねえ事をすると二匹の意見は一致するのだった。

クゥの写真は雑誌に掲載され、その日以来、上原家の周囲にはマスコミや野次馬が殺到する事になる。

クゥは部屋の中で怯えていた。

自分のせいで、こんな大騒ぎになったと思い込んでいるのだ。

電話もひっきりなしになり続け、あげくの果て、窓からも覗き込む連中まで現れるに至り、上原家は窓を閉ざし、電話線も抜く始末。

マーケットで取材された友佳里の姿がテレビに映ると、本人は老けて見えるとお冠だったが、康一やクゥには、いつもの友佳里と変わりないようにしか見えなかった。

ワイドショーに出た水産学の権威が、現在に河童なんて信用出来ないと言っていたので、保雄は家庭用ビデオでクゥを撮影し、それをテレビ局に送る。

やがて、保雄は会社で、お得意さんからテレビ出演を頼まれたと上司たちから説得される。

自分たちもクゥと一緒にテレビに出られると分かった康一は急にはしゃぎだす。

しかし、プールに行くと、みんな有名になった康一を無視するようになる。

そんな康一に話しかけて来たのは菊池だった。

この前の犬オッサンだよね。1年か2年の時、康一君の家に行った時会ったよ。

遠野の行ったと康一が言うと、花巻には行ったかと菊池は聞いて来る。

菊池は宮沢賢治が好きなのだそうだ。

帰宅後、康一も、銀河鉄道の夜を読んでみたりする。

クゥと上原家全員がテレビ出演する日、玄関先に出て来たクゥにオッサンは、自分も連れて行くよう伝えろと頭の中に行って来る。

クゥが康一に頼み、オッサンもテレビ局に行く事になる。

その車の中で、クゥはオッサンに、康一の様子が何か変だとテレパシーで伝える。

オッサンは、浮かれてやがると答え、前の飼い主もそうだった…とテレパシーで語り始める。

子供の頃は仲良しだったのに、中学生になると、仲間からいじめられるようになり、そのはけ口を自分にぶつけて来たと言うのだ。

自分は、殴られるのも嫌だったし、そんなあいつを見るのも嫌だったので、その家を逃げ出した後、康一に見つけられたんだと。

康一は、子供の頃のあいつ(前の飼い主)に似ていた…と思う出すオッサンに、人間は何で変わるんだろう?とクゥは質問する。

しかし、オッサンも、何でだろうな…と答えるだけだった。

その日のプールは誰一人来なかった。

クゥのテレビ出演が知れ渡っていたから、みんな家を出ようとしなかったのだ。

テレビ局についたクゥを見たプロデューサー(声-納谷六朗)とディレクター(声-玄田哲章)は、下半身がモロだしなのはまずいだろうと言う事で、海水パンツをはかせる事にする。

クゥと上原家が登場したワイドショーは、全国の人が観ていた。

遠野の食堂のおばさんや客のトシオさん、曲がり家の主人と座敷童も観ていた。

クゥらの目の前に現れたのは、河童の存在を信じていたと言う清水澄夫(声ー羽佐間道夫)と言う人物だった。

その顔を見つめていたクゥは、あの時、父親を斬った役人と同じ顔である事を知る。

清水が河童の存在を信じていたのは、先祖代々伝わる「河童の手」があったからだと良い、その実物を箱から取り出してみせると、それを観たクゥは「父ちゃん!」と手に取り泣き出す。

そして、お前の先祖が父ちゃんを殺した!田んぼを埋め立てないでくれって頼んだだけなのに…と清水を指差す。

清水は、本当ですかとアナウンサーから聞かれ、江戸時代の事ですから…と困惑する。

そうしたやり取りを手持ちカメラで撮ろうと近づいて来たカメラマンを観たクゥは、思わず「止めろ!」と叫び、カメラのレンズは割れてしまう。

父ちゃんの腕を持ったクゥは逃げ出そうとスタジオの隅に走る。

その時、オッサンが走りより、乗れと言うと、スタッフたちが掴まえようと取り囲んだクゥを背中に乗せてスタジオから外へ逃げ始める。

テレビ局の外に逃げ出したオッサンとクゥだったが、辺りは人ばかりで、すぐに今テレビに出ていたクゥだと察知される。

クゥはどっか、人間のいない静かな所に行きたいと言うが、どこまでは知っても人間が追って来る。

やがて、東京タワーの所まで来たとき、オッサンは、好奇心で追って来た車にはねられてしまう。

重傷を負って倒れたオッサンは、すまねえ、へまをしちまって…。ここから一人で行ってくれ。あいつ、まだ生きているかな〜…、殴られてりゃ良かったかな?又、あの頃みたいに…と言いながら息絶える。

クゥは、オッサンを死に追いやった人間たちの好奇心に怒る。

空を舞っていた鴉たちも、死んだオッサンをついばもうと舞い降りて来たが、その瞬間、一羽の鴉の身体が爆発し、周囲でクゥを取り囲んでいた野次馬たちの上に血肉が降り注ぐ。

パニック状態になったクゥは、父親の腕を加えたまま、東京タワーをよじ上り始める。

上原一家も駆けつけ、オッサンの死体を発見していた。

騒ぎを知った各テレビ局やレスキュー隊も、東京タワーに駆けつけて来る。

東京タワーの鉄塔によじ上ったクゥは、巨大な東京の町並みを眺めながら、父ちゃん、ここらには人間のいねえ静かな所なんてどこにもねえ。まるで人間の巣だ。みんな、人間に殺されちまったんだとつぶやくのだった。

皿の水も乾き、クゥはすっかり力尽き、絶望していた。

父ちゃん、俺、どうしたら良い?俺も父ちゃんの所へ行きたいよ。父ちゃん、助けてくれと願っていると、頭の皿に一滴の水が落ちて来る。

驚いて空を見上げると、雲一つなかった空の太陽に、突然雲がかかり始める。

そこに、康一ら上原一家とレスキュー隊が到着する。

一天にわかにかき曇り、雨が突如降って来る。

良く見ると、雲の合間に龍が蠢いているではないか。

クゥは、分かった、父ちゃん!まだ、来るなって事だねと空に語りかける。

康一が、もうクゥが怒るような事をしないから、もう逃げないでくれと声をかけて来たので、頷いたクゥは、近づいて来たレスキュー隊員に素直に救出されるのだった。

テレビ騒動の後も、上原家の周辺には野次馬が詰めかけていた。

あの時、龍を観たと言う目撃者も多数いたが、カメラの類いには何にも映っていなかったそうだ。

上原家では、友佳里がクゥに背負い袋を作ってやっていた。

父ちゃんの腕を入れるためである。

それを見ていた瞳が欲しそうにしているので、用意しておいたもう一つの小さなポシェットを友佳里は手渡し、あの石を入れておきなさいと言う。

瞳は上機嫌になり、ソファーの中に隠していたあのガラス玉を取り出すと、ポシェットに詰め込むのだった。

友佳里は、父さんが、もうこそこそしていてもしようがないので、今度一家そろって川へでも行ってみようと言っていたと、康一らに伝える。

プールへ出かけた康一は、菊池から、今はみんなクゥを観たがっているけど、その内慣れるよと慰められる。

その帰り道でも、悪友たちが、しつこくクゥの事で康一をからかって来る。

さらに、一緒に帰っていた菊池の事まで、親父が浮気して出て行ったそうだなとからかい始める。

さすがに見かねた康一は、その男の子につかみ掛かると、クゥから教わった相撲の要領で投げ飛ばしてしまう。

さすがに、いじめていた連中は無口になりさっさと帰ってしまう。

菊池は、強いんだねと驚く。

クゥに教わったんだよ。喧嘩なんて始めてやった…と康一が言うと、しない方が良いよと菊池も諭すが、その時、その場所が、クゥが入っていた石を見つけた場所だった事を思い出す。

私、引っ越しするのと菊池は言い出す。

うちの親が別れる事になり、自分は母の実家に行くの。話してくれてありがとうと言うと、これまで耐えていたものを全部吐き出すように、急に菊池は泣き始める。

康一は返す言葉もなく、頑張れよと言いながら帰るのだった。

家に帰り着くと、友佳里が出て来て、クゥが出て行くと言い出したと告げる。

何でも、クゥにハガキが来て、それを見たら興奮しだしたと言うのだ。

クゥに来たハガキには、「こっちこい にもつおくってもらえ」とだけ記されていた。

康一はいたずらだと言うが、クゥは、それを書いたのは人間じゃねえ、さっそく明日にも行くだと言うではないか。

康一は、明日はみんなで川に行くはずだったのに!とショックを受け、瞳も、クゥのバカ、どっかに行っちまえと叫ぶ。

その夜の食事は送迎会みたいになる。

クゥは、父ちゃん言ってた。人間は、川や山や空を取り上げ、その代わり、魂をなくしてしまったと。でも、お前様たちを見て、そんな人たちばかりじゃねえと分かった。でも、河童が河童の生き方を忘れたら、その内自分が死んだ時、父ちゃんたちに申し訳ないと言う。

家族たちは食事の後、オッサンの写真も交え、みんなで記念撮影をする。

翌朝、クゥを段ボールの中に潜ませる事にする家族たち。

それを見ていた瞳は、今度いつ来るの?と問いかける。

誰も何も答えないでいると、又、今度いつ来るの〜!と瞳が泣き出す。

そんな瞳に、いつか又来るよ。河童は嘘をつかないから…とクゥが答える。

段ボールを持った保雄が玄関に出て、外に張っていたマスコミ陣に、クゥを戻しに行くので、今後はもうつきまとわないでくれと頭を下げると、車に乗り込む。

それを見送る友佳里が間違えてないよね?と問いかけると、保雄は間違ってない。今までが間違っていたんだと答え、車を出発させる。

それを見ていたマスコミ陣は、全員保雄の車を追跡して行く。

表に誰もいなくなった後、本当のクゥが入った段ボール箱を持った康一は、窓から外に出ると、そのまま家の裏側から脱出を計る。

康一は、箱の中のクゥにちょっと寄りたい所があると打ち明け、菊池のアパートにやって来る。

菊池は、突然の康一の訪問に驚くが、中に入れてくれる。

康一は、段ボール箱を開けてみせると、中のクゥを紹介する。

康一はクゥに、これまで言ってなかったけど、クゥを見つけられたのは菊池のおかげなんだと説明する。

菊池は強いんだ。一人で頑張っているんだ。菊池は俺なんかより、ずっとクゥの気持ちが分かっていたんだと…。

クゥは、オラを見つけたのがおめえたちで良かったと感謝し、この出会いは偶然ではなく、ずっと前から決まっていた事なんだと言う。

駅まで、菊池も見送ってくれ、康一は、クゥの入った箱を、念のため、清瀬のコンビニまで持って行き、配送を頼む。

それでも別れがたい康一は、集配の車が来る夕方まで、店の隣で待っていた。

やがて、集配の車が来て、クゥの入った箱が運び込まれ、車が動きだすと、康一の頭にクゥのテレパシーが響いて来る。

ずっと、おめえの声が聞こえていたけど、自分を責めるんじゃねえ。オレ、死ななくて良かったよ。おめえにもらった命大切にするからな〜…、遠ざかって行く車の中から聞こえて来るクゥの声を追いかける康一。

クゥの入った箱が届いたのは、沖縄のヤンバルの一軒家だった。

そこで暮らしていたのは一人の中年男に見えたが、実は妖怪キムジナー(声-ゴリ)が、人間に化けていた姿だったのだ。

キムジナーは、テレビでお前を見てこれは捨てておけないと思ったのだと言う。

キムジナーは、自分の事はオッサンと呼べと言い、クゥは人間にもらった名前だと自己紹介をし合う。

クゥはオッサンに勧められるまま、裏の川に行く。

そして、この土地の神様にしばらくここで生きて行く事と、食べる魚を捕る事の許しを得ると、川に入る。

父ちゃん、あのキムジナーのように、人間に化けた河童がいるかも知れない。その内捜しに行こうと思う。康一にも会いに行こう。

ごめん、父ちゃん、人間の友達で来たよ…とつぶやくと、どこからともなく風が吹いて来たので、クゥは思わず涙ぐむのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

クゥと少年との出会いと別れを描く、良くあるパターンの感動動物ものか?と思わせながら、実は、人間界の醜さ、愚かしさをあぶり出した風刺劇にもなっているアニメの秀作。

康一はじめ、登場する人間たちは、絵柄的にも性格的にも、特に漫画的な誇張をする事もなく、朴訥なタッチと言うか、ごく自然な感じに描かれている。

その自然さが、無垢な子供らしい仕草や言葉遣いのクゥと瞳を、愛着の持てるキャラクターへと変化させているのだと思う。

妖怪と言う超現実的なものを、観客にも抵抗なくに受入れさせるために…と言う面だけでなく、そうした自然さがないと、風刺が生きて来ないからだと思う。

例えば、テレビに出られる事が分かった康一が微妙に浮かれて来る。

こうした微妙な心理の変化は、アニメ的なオーバーアクションで描いてしまうと、子供に受ける笑いの要素にはなるだろうが、皮肉としては通じ難くなる。

ここでは、観ているものが表面的には気づかない変化を、クゥの言葉で気づかせて、どきりとさせると言う手法になっている。

そう言う演出はどちらかと言うと大人向けで、小さな子供には伝わり難いかも知れないが、心の片隅に引っかかるような仕掛けになっているのではないかと思う。

いじめに関する描写も、単純に「最後にいじめっ子が懲らしめられる」風な、教訓的な描き方にはなっていない。

女の子同士の陰湿ないじめなどに関しては、あえて解決策は描かれていない。

いじめをしている様を客観的に見せる事で、じわじわと観るものに不快感と羞恥心を感じさせ、自ら反省を促すようになっているのだと思う。

そういう風に全体を観て行くと、上映時間が長い割には派手なスペクタクルがある訳でもないので、小さな子供にとっては地味で、少し退屈かも知れない。

これは、大人と、大人になりかけている子供たちを対象にしたファンタジーと考えるべきだろう。