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いそぎんちゃく

1969年、大映東京、石松愛弘脚本、弓削太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

川合クリーニングで働き始めた石田浜子(渥美マリ)は、あまりに客に対して無愛想なので、女将の房代(目黒幸子)から事ある事に文句を言われるが、いつも無視している。

主人の健造(高原駿雄)も、今時、クリーニング屋などで働く若い娘などいないんだからと、女将の愚痴をなだめようとする。

浜子自身は、田舎から上野へ出て来た直後、この店の求人ビラを見て、働き始めただけだから…と、どこか開き直った様子。

そんなある日、銀座のホステスらしき客が、預けた洗濯物を取りに来た時、ビキニ型のパンティが一枚ないと言い出す。

預かり票を確認すると、確かに受け取ったはずのパンティが一枚ない。

女将は必死に探しまわり、ぼーっとしているだけの浜子にも二階の干場に探しに行くように叱りつける。

浜子は干場に登るが、別にパンティを探すでもなく、ぼーっとしていた。

タイトル

後日、婦人会の会合で女将が出かけて不在の日、浜子と二人でラーメンをすすっていた
健造は、たまには遊びにでも言ったら?と声をかけるが、浜子は興味がないと素っ気ない返事。

その後、自室に戻った浜子は、今まで貯めている金を勘定すると、天井裏に隠した後、着替えを始める。

干場で洗濯物を干していた健造は、二階の窓から見えた浜子の裸身に釘付けになる。

さらに、その浜子が、ビキニ型のパンティーをはく様子が見えたので、部屋に入り込み、それは、この前の客のパンティではないかと注意する。

浜子は、特に悪びれる風もなく、脱いだワンピースで前を隠しただけで、黙ってパンティを脱いで寄越す。

その大胆な行為にさすがに驚いて、もう良いんだと口にした健造だったが、目の前で裸でしゃがんでいる浜子の姿を見ているうちに、ついムラムラとして襲いかかってしまう。

仕事場に戻った浜子は、一人で唄を歌い始め、女将は呆れて文句を言うが、健造の方は引け目があるので何も言い出せない。

その夜、寝苦しい女将は、隣で寝ていた健造に誘いかけるが、健造は全く気づかぬように寝入っているので、いら立った女将は自分の布団に戻って寝る。

その後、今度は、目を開け、隣の女将が寝入っている様子を確認した健造は、二階にこっそり上がると、寝ていた浜子を起こし抱きつく。

しかし、その直後、怪しんで後から登って来た女将がその現場を目撃していた事に気づく。

激情した女将は、浜子につかみ掛かり、出て行けと怒鳴りつけるが、浜子は無表情に、行く所などないと拒絶する。

怒りが収まらない女将は、健造に向かって、浜子を追い出さないのなら自分が出て行きますよと脅しつけるが、健造は、すまん!良いよ…と言う始末。

女将はその日から寝込んでしまう。

ある日、健造と一緒に店屋物を食べていた浜子に、起きて来た女将が封筒を差し出し、10万円出すから出て行ってくれませんか?と低姿勢で頼んで来る。

すると、封筒の中身を確認した後、浜子は長い間、いろいろお世話になりましたと言い残し、翌日、店を出て行く。

浜子は、次に「関西割烹 福助」と言う店で、女中募集の張り紙を見つけたので働き始める事にする。

女将の福子(関千恵子)は、常連のご隠居こと、柏木(加藤嘉)が新しい女中に興味を示したので、浜子の出身地を聞くと、山形だと浜子は答える。

後日、浜子と一緒に銭湯に出かけた福子は、隣の男湯から聞こえて来るご隠居の歌声に聞き惚れる。

駅前買い物センターの社長で、今や、金にも女にも厭きたと言う枯れたご隠居だと浜子に教える福子。

ご隠居は、銭湯の前で挨拶をする為に待っていた福子と浜子に気づくと、浜子をちょっと貸してくれと福子に頼む。

その後、新しい服を買ってやったご隠居は、料亭に連れて行き、ごちそうを振る舞う。

なかなか料理に手をつけようとしない浜子だったが、生まれてこのかた、こんなごちそうなど見た事も食べた事もないと漏らす。

浜子は、極貧だった実家の生活を思い出していた。

父親を早く失い、病気がちの母親は、屑拾いをしてその日暮らしをしていたのだった。

そんな生活に愛想を尽かした浜子は、きっと自分がどうにかしてみせると、寝込んでいる母親(村田扶実子)に告げると家を飛び出す。

追憶から覚めた浜子は、無茶ぶり付くように料理を食べ始め、それを見ていたご隠居も目を細めるのだった。

その後、隣の部屋に敷かれた布団に誘われた浜子は、抵抗する事もなくご隠居に抱かれる。

「福助」に戻って来た浜子の様子を見た福子は、あれほど女には厭きたと言っていたご隠居が、早くも手を出した事を悟り、呆れる。

その事を福子から冷やかされたご隠居は、あんな絶品観た事がない。今まで生きて来て良かった…と嘆息する。

やがて、ご隠居は、浜子の為に新築アパートを買ってやる。

その部屋を観に来た福子は、浜子に感謝しなくちゃいけないよと言い聞かす。

浜子は「福助」の店でもマメに働くようになり、ご隠居も毎日、若い浜子との生活を享受する事になる。

風呂で浜子の身体を洗ってやったご隠居は、一緒に布団に入った後、突如、意識不明になり昏睡する。

脳溢血であった。

すぐさま、息子夫婦が、寝かしつけたご隠居がいる浜子のアパートにやって来る。

嫁の静江(田中三津子)は、若い妾の部屋にいる事に耐えきれず、すぐに病院に連れて行こうとするが、脳溢血は動かせないとの浜子や福子の言葉を聞くとどうしようもできず、夫に促されるまま先に帰る事にする。

気を効かせた福子も帰り、部屋には、ご隠居の息子の貞吉(大辻伺郎)と浜子の二人きりになる。

浜子は、貞吉から促されるまま、隣の部屋で仮眠を取る事にするが、その後、欲情した貞吉が浜子に襲いかかって来る。

その途端、隣の部屋でうめき声が聞こえ、二人は、ご隠居が他界した事を知る。

ご隠居の葬儀の席に、浜子がやって来た事を知った静江は、今後、この家に彼女が出入り出来ないように、金を渡して話をつけようと貞吉に相談する。

貞吉と静江は、無遠慮に寿司を頬張りはじめた浜子を別室に呼び出すと、今住んでいるアパートと手切れ金をやるから二度とこの家には来ないでくれと、浜子に言い聞かせるのだった。

浜子は、手渡された、200万と書かれた小切手を確認する。

その後、浜子は、もらったアパートや家財道具一切を売り払い、「福助」も辞めると言い出す。

福子は何とか引き止めようとするが、浜子はもう働き口も決めていると言う。

新しい浜子の働き口は、下着姿で男に酒を勧めるピンクサロンであった。

浜子を気に入った新しい男は、制作会社の田村(早川雄三)の接待として店に招待されて来たテレビの宣伝マン岡崎(牟田悌三)であった。

田村は、浜子に三万円手渡すと、岡崎と寝てくれと頼む。

ホテルで事が終わった浜子は、岡崎が帰って行った後、岡崎が前払いしたと言う泊り金をホテルから返却してもらい、自宅の安アパートに帰る事にする。

その浜子に声をかけて来たのは、サロンのバンドでトランペットを吹いていた室井(平泉征)だった。

室井は、自分の車に浜子を乗せると、君のようなたくましい生き方見ていると励みになるなどと話しかけて来る。

その後、トランペットの練習に行くと言う室井と一緒に、夜の海にやってきた浜子は、室井に進められるまま一緒に裸になり泳ぐ事にする。

その後、浜辺に戻って来た室井は、浜子に愛を打ち明け、かくしてその場で抱き合った二人は、浜子の安アパートで同棲生活を始める事にする。

室井の頼みもあり、サロンで働くのを辞めて安アパート「みどり荘」にいた浜子を訪ねて来たのは、貞吉だった。

しかし、すぐに室井が帰って来て、二人が同棲している事を知った貞吉は、土産として店から持って来た食料を手渡すと、すぐに帰ってしまう。

その後、又、田村と岡崎に誘われ、寿司屋に連れて行かれた浜子だったが、高いネタばかりを食べたあげく、自分はもうまじめになったのでSEXを売る事はしないと言い、岡崎と寝る事を断る。

その頃、アパートでは、室井が悪友二人と家捜しをしていた。

浜子が貯め込んでいるはずの金を探していたのだった。

室井が浜子に近づいた本当の目的は金だった。

しかし、どうしても金は見つからず、三人はいつもの芝居をするしかないと相談し合う。

そこへ浜子が帰って来る。

二人の悪友は、借金を踏み倒した室井を脅しに来た芝居を始め、室井も、病気の母親の為高利に手を出していたのだと嘘をつくが、浜子は顔色一つ変えず、自分に金などないと突っぱねる。

室井がこのままでは、自分はムショに入れられると泣くと、浜子は我慢して待っていると言うだけ。

後に引けなくなった悪友二人は、指でも詰めてやろうかとさらに脅すと、人殺しと浜子が大声を上げ始めたので、二人は這々の体で窓から逃げ出すしかなかった。

その後、ピンクサロンに戻ることにした浜子は、あの悪友二人と室井が、この前の計画が失敗した事を話し合っている現場を盗み聞きしてしまう。

室井にだまされていた事を悟った浜子は、その夜、屋台で、一番安い「シロ」の焼き鳥を腹一杯食べると、「みどり荘」に戻り、室井に挑みかかる。

その日から昼となく夜となく、浜子に身体を求められた室井はさすがによれよれになって行く。

前に浜子が世話になっていたご隠居が、床の中で死んだと知った室井は、自分もこのままでは殺されると怯え、ある日、こっそりアパートから逃げ出すのだった。

それに気づいた浜子は、冷蔵庫の製氷皿の中に隠していた貯金を取り出すと、三日ごとに隠し場所を変えていたのだから、見つかるはずがないと笑うのだった。

ある日、新番組の試写に満足して、TV局のロビーに制作会社の連中と一緒にやって来た岡崎は、そこに浜子がいる事に気づく。

浜子は、久しぶりに店に遊びに来てくれと誘う。

その夜、早速店に来て浜子を指名してくれた岡崎は、誰か貢いでくれる人がいないかと言う浜子の甘えに自ら乗ってやる。

その言葉通り、岡崎は、浜子の為にマンションを購入して、生活費も渡してくれるようになる。

ある日、岡崎とベッドを共にしていた浜子の部屋に、田村が乗り込んで来る。

自分の会社が新番組から外された事を抗議しに来たのだった。

これまで、さんざん貢いで来て、このマンションの購入金も手助けしたのに…と恨み言を言う田村だったが、岡崎は軽く受け流すだけ。

ある日、サロンで指名を受けた浜子がその席に向かうと、そこには意外な事に女が一人で待っていた。

女は、岡崎の妻だと名乗る。

岡崎と別れてくれと迫る妻に、話がしたいのだったら、自分をどんどん指名してくれと浜子は応対する。

妻は、その言葉に従い、次々と浜子がつぐ酒を飲み干して行く。

やがて、泥酔して来た妻に対し、浜子は、自分は岡崎の子供をはらんでいると伝える。

いまだに子供に恵まれていなかった妻にはこの言葉は響いたらしく、その後、妻は実家に帰ったと言う。

一方、岡崎は、会社で部長から製作予算の説明を求められていた。

岡崎が金を使い込んでいたのが見つかったのだ。

その夜、マンションにやって来た岡崎は、金がいるので貸して欲しいと浜子に頼む。

しかし、浜子は、もらったものは私のものだから、このマンションも渡さないと答える。

これからは、お腹の中の子供と三人で新しい生活を始めようとすがって来る岡崎に対し、浜子は、妊娠なんて嘘だったと告白する。

あまりの浜子の冷たい態度に怒った岡崎は果物ナイフを取り上げると浜子に襲いかかるが、もみ合っているうちに転んで自分の腹にナイフを突き刺してしまう。

ホステスがテレビ担当宣伝マンを刺すというニュースは新聞にも載り、やがて裁判が始まる。

担当検事(仲村隆)は、被害者として岡崎からの説明を聞くが、浜子が言い出した、屑拾いをしている田舎のおっかあを引き取って幸せになりたいと言う感傷的な言葉を聞いた弁護士(中条静夫)は、にやりと笑う。

弁護士の予想通り、裁判長(花布辰男)が下した判決は、「正当防衛で無罪」と言うものだった。

アパートに戻った浜子の元に、ある日ひょっこり、クリーニング屋の川合健造が訪ねて来て、よりを戻したそうな素振りを見せるが、浜子は「あなたなんか覚えていません。私の身体に何か印でも付いているんですか?」とにべもなく追い出す。

その後、白いスーツに着替えた浜子は、颯爽とアパートを出かける。

それを見送る近所の女将さん連中は、浜子の傲慢な態度に呆れながらも、裁判の事が新聞に載った事から、銀座のホステスとして引っこ抜かれたらしいと噂し合うのだった。

浜子は、悠々と夜の銀座のネオンの中を歩くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大映軟体動物シリーズ第一弾。

貧乏生活を憎み、身体一つで成り上がろうとする女のたくましい生き様を描いた、言わば「女版銭ゲバ」のような内容。

甘い蜜にたかるアリのように、若い浜子の肉体を求め、次から次へと分別盛りの男たちが近づいて来る様がユーモアも交え描かれている。

中でも、実は純愛と見せかけ、金が目的で近づく男を演じているのが平泉成(征)

浜子に感づかれ、身体で復讐され、よれよれになって逃げ出す様が滑稽である。

高原駿雄、加藤嘉、大辻伺郎、牟田悌三…、各人各様、どこかもの悲しい芝居が見所。

金の為と割り切り、無表情に毎日を生きている浜子を演じる渥美マリの存在も印象的。

特に美人とかグラマーと言うタイプではないが、男心をくすぐるフェロモンを出しているのかもしれない。

白黒画面と言う事もあり、どこかしら、文芸ものを見ているような格調すらあるから不思議である。