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インスタント沼

2009年、フィルム・パートナーズ、三木聡脚本+監督作品。

※これは新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

沈丁花(じんちょうげ)ハナメ(麻生久美子)は、人生ジリ貧気味のファッション雑誌「ハテナ」編集者。

朝決まって作るのは、スプーンに山盛り10杯のミロに12.5ccのミルクを加えてかき混ぜる「シオシオミロ」、これを食べるのが日課である。

母翠(松坂慶子)は、いつも庭先に河童がいるなどと、頓狂なことを言う女で、本人に言わせると、そう言うものが見えないハナメの方が不思議らしい。

いつも、ハナメが何でも5秒遅いのは、生まれて来るときも5秒遅れた事が原因かしらなどと、朝から生々しい事を言ったりする母だった。

ハナメは、母親が良く言う幽霊とかUFOなどと言う、あり得ない事、見えないものを全く信じない女なので、母親とは話が合わない。

だから父さんに逃げられたんじゃない?などとつい言ってしまって後悔するハナメだった。

ペットのウサギ「ゴンザブロウ」を抱えると、又来るからと、実家を出るハナメ。

タイトル

自宅マンションに戻ったハナメ、朝、茶を入れると、茶柱が「凶」の字になっているので嫌な予感。

ハナメの父親は、ハナメが8歳の時に家を出て行った。

ハナメは、近所の沼に、その父親からもらった様々なものを捨ててしまった過去がある。

バースデイケーキ、オルゴール、笑い袋、そして黒い招き猫…

今思えば、あの時捨てた黒い招き猫の呪いかもしれない…と、怪しげなものは信じないはずのハナメはちょっと気にしていた。

そんな事を会社の屋上で、同じ編集部仲間の立花まどか(白石美帆)に話していた時、部長が呼んでいると男性編集者が呼びに来る。

西大立目部長(笹野高史)の用件は簡単、要するに、雑誌が全然売れていないので、廃刊の可能性が大いにあると言う通達だった。

編集部に戻ったハナメは、その日、ラーメンの取材に同行するはずのフリーライター市ノ瀬千(ふせえり)を待つが、なかなか現れない。

男子編集者が占いなどを信じているらしいので馬鹿にしたりする。

では、一体何を信じているのかと切り返されたので、思わず、片思いの雨夜慶太(松岡俊介)の事を思い出すハナメ。

ハナメは静電気に弱く、冬場は良く悩まされる。

知らない人と握手などすると、嫌いなタイプの人間ほど、この静電気ショックが大きいのだ。

ところが、かつて、写真部に在籍していた雨夜と初対面で握手した時には全く静電気を感じなかった。

タイプだったのだ。

今、彼はミラノでファッション写真を撮っている。

ハナメの今の夢は、海外で、雨夜と共にファッション誌を立ち上げる事だった。

その夢をかき消すかのように携帯が鳴り、出てみると、市ノ瀬がやっと到着したと言う知らせ。

出かけようとするが、持参する名刺が見つからないので、慌てたハナメはそのままずっこけて床に尻餅をついてしまう。

外のソファーで、徹夜明けなのか無様に寝ていた市ノ瀬を起こし、早速市ノ瀬紹介のラーメン屋に出かけてみるが、ニンニクが丸ごと一個入っているラーメンに閉口して店を後にする。

紹介した市ノ瀬本人も納得できなかった様子。

二人は、通り道で見つけた奇妙なものを指差しては「何なのなー?」などとじゃれ合いながら帰る。

そこへ、又携帯がかかって来て、編集会議をするので、すぐ社に戻って来いと言う。

このまま帰宅するつもりだった二人はブルーになる。

案の定、会議室では、二人の息が臭いと、部長を始めみんなからやり玉にあがる事に。

会議の結果、売り上げ不振を挽回するために、次号では「心霊特集」をやろうと言う安直な企画が通ってしまう。

編集者たちは、心霊スポットへ取材旅行に出かけるが、泊まった「裏山ホテル」の部屋がおかしかったなどと、次の朝めいめいが言い出す。

立花も金縛りにあったなどと言うので、ハナメは一人でバカにする。

さらに、車で山道を三時間もかけてたどり着いた池の前で、モデルの写真撮影を始めるが、やがて霊感が強いモデルの子が、ここは嫌だと言い出し、全員怯えだしたので、あほらしくなったハナメが、石を池に放り込んだりすると、余計に「祟りがある」などと他のものたちが浮き足立つ。

その時、枯れ木が側に落ちて来たので、恐怖の限界に達した編集者たちは皆、我先にと逃げ出してしまう。

かくして、ファッション誌「ハテナ」は、あえなく廃刊。

中華料理屋で、ささやかな解散式を行う。

乾杯の音頭をとる部長が、「乾杯では何なので、残念と言う事で」と「ざんねーん」などとふざけた音頭を取ったので、怒ったハナメはヌンチャクを取り出して振り回してみるが、自分のおでこにぶつけただけ。

翌朝、荷物を整理して自家用車に乗せかけていたハナメは、市ノ瀬から自家製のお守りなるものを頂戴する。

別の編集者を紹介しようかと市ノ瀬の今後を心配したハナメだったが、市ノ瀬はあっさり結婚する事にしたと答える。

ちょっとむかつき、気がつくと、自家用車の窓には「駐禁」のステッカーがしっかり貼られているではないか。

ハナメは、今市ノ瀬からもらったばかりのお守りを見つめていた。

本当に、黒い招き猫の祟りではないかと考えたハナメは、実家の側の元沼があった辺りの空き地を掘り返してみようとするが、その場所から出て来たのは、黒い変な仮面だけだった。

ジリ貧気味の人生をリセットしてみたくなったハナメは、リサイクル業者をマンションに呼ぶと、家財道具一切を売ると言い出す。

しかし、やって来た奇妙な三人組(村松利史、松重豊、森下能幸)は、何となく、そんなハナメの行動をあざ笑っているようで、ハナメはむっとしてしまう。

結局、残ったのは、リサイクル業者がさすがに引き取るのを断った中国製のお面だけ。

それは、かつて、雨夜と一緒に出かけた取材先で購入したもので、その日、ちょっと恋の予感を感じていたハナメは、それを彼にかぶせて一緒に写ったプリクラも持っていた。

その面をかぶって、一人窓から外を見てみるハナメ。

その姿を、下を通りかかっていたサラリーマン(温水洋一)が偶然目撃し、ぎょっとする。

ハナエは、ウサギのゴンザブロウも一人っきりだったと言う事に気づき、恋人を見つけてやるために「USAファーム」なるウサギ園に出かける。

他のウサギと区別するために、手作りの白いシルクハットをかぶせたゴンザブロウをウサギ園に離して、気に入った相手を見つけさせてみる事にするが、途中で、そのシルクハットが脱げている事が判明、膨大なウサギの中で、どれがゴンザブロウか分からなくなる。

結局、ゴンザブロウが見つからないまま、夜になったハナメがベンチで脱力していると、携帯がかかり、母親が万年池に浮かんでいるのが発見され、今、病院に運んだと言う警察からの知らせ。

急いで、病院へ行っていると、母親は意識不明のままベッドに横たわっていた。

翌日、ハナメのマンションに、刑事が二人訪れて来て、いろいろ事情を聞く。

隈部(渡辺哲)と言う中年刑事の方は、今、自殺、他殺、事故の三方面で笹を進めていると説明し、現場近くで奇妙なものを見つけたので心当たりがないかと、竿の先の糸にキュウリを入れたビニール袋をつないだものを見せる。

ハナメは、すぐに思いついたが、恥ずかしいので知らないと返事をするが、若い方の刑事斉木(宮藤官九郎)が、冗談で「河童じゃあるまいし…」と発言した時にはどきりとする。

やがて隈部が、実は、池をあさっていたら、ポトスが発見されたと言い出し、それを斉木がポストの事だと訂正する。古いポストが見つかったと言うのだ。

鑑識係は一人で、そのポストの中に入っていた手紙を日に乾かす作業をしていたが、さすがに鑑識を辞めたくなるほどつらい作業だった。

そこにやって来た斉木が、ふと見ると、汚れた手紙の中から、沈丁花千と差出人の欄に書かれた手紙を発見したのだと言いながら、その手紙をハナメに手渡す。

中を読んだハナメは衝撃を受ける。

何と、お腹の中に自分がいた母親が、手紙の差出人である「本当の」父親と別れる決意をしたと言う内容だったからだ。

その後、親戚の池田のおばちゃんに聞いた所では、その実の父親らしき男は、ハナメが生まれる1年前に行方不明になったらしい。

その本当の父親を見つけて会わせれば、母親の意識も戻るかもしれない。あわよくば、自分は大富豪の娘になれるかもしれないなどと言う虫のいい幻想もあり、ハナメは、取りあえず、封筒に書かれた住所の沈丁花ノブロウと言う人物を訪ねてみる事にする。

しかし、そこにあったのは怪しげな骨董屋だったので、取りあえず、大富豪の夢はなくなる。

しかも、ノブロウなるそこの主人は「電球」(風間杜夫)と呼ばれる、さらに怪しげな人物だった。

自分の正体を打ち明けかねたハナメは、一応親戚だと言う事で自己紹介する。

そんな初対面であるハナメに対し、電球は「サソリの粉」とかガムなどと言い、いたずらをいきなり仕掛けて来る。

さらに、5年前まで放浪していただの、3年前までムショに入っていたなど、本当か嘘か分からないような説明をする。

そんな電球、塗れば何でも古くなると言う怪しげな塗料を石像に塗り始めたので「インチキじゃないですか!」と突っ込んだハナメだったが、そのハナメの携帯を借り受けた電球は、その塗料を目の前で携帯の表面に塗ってしまう。

呆然として帰宅して来たハナメは、母親が入院している病室に出向き、意識のない母親に今日の出来事を話しかけるが、母親は、心停止を知らせるブザーを鳴らすと言ういたずらで返すのみ。

どうしてもっとロマンチックな人との思い出を作らなかったの?と、「小梅ちゃん」のコマーシャルを思い出したりしてみるハナメ。

マンションに帰り着いたハナメは、携帯を忘れて来た事に気づき、公衆電話から電球にかけると、携帯を送ってくれと頼むが、にべもなく切られてしまう。

仕方ないので、再度、電球に会いに出かけたハナメは、ぼろぼろにされた携帯を取り戻した後、下手な油絵を売りに来た男に、10円だと追い返した電球に、本当にあれはひどい絵だったねと言うと、分かるか?お前、骨董を観る目があるかもしれないぞとおだてられ、飯でも食わないかと近くの大衆食堂に連れて行かれる。

そこで出たオムライスを、おいしそうに食べる様子を見ていた電球は、お前、おふくろさんの名前は?と聞いて来る。

同じように旨そうに食う女を昔知っていたと言うのだ。

そこに、髪の毛をおっ立てた兄ちゃんが入って来る。

電球の友達らしく、「ガス」(加瀬亮)と言うパンクロッカーだと紹介される。

ハナメの顔をまじまじと見ていたガスは、何だか、電球に似てねぇか?と指摘する。

驚いた二人は互いに顔を寄せ合い、否定するのだった。

しかし、ハナメの気持ちは非常に微妙だった。

私はあの男の娘なのか?…と。

ある日、また骨董屋に行ってみたハナメは、何やら妙な箱をいじっている電球に会う。

何かの売らない箱のようだったが、出て来る文句は「はんぺん」「しらたき」「ちくわぶ」と奇妙な言葉ばかり。

そこへガスも来たので、これは、おでんの業者が使う何かではないかとハナメが推理してみるが、次に出て来た文字は「虞美人草」「インディアンサマー」と全く関係なかった。

ガスは、電球が妙なものを食べているのに気づき、それは何だと聞くと、「はったい粉」だと言う。

このドロドロ感がたまらないと電球は言う。

そこへ突然、妙齢の若奥様風美女、飯山和歌子(相田翔子)がやって来て、「ツタンカーメンの占い」と言うものを探していると電球に聞く。

それはどういうものかと聞くと、20年くらい前にあった占いの機械で、100円を入れて、自分の生年月日をキーボードに入力すると、自分の将来の伴侶の写真が出て来るものなのだと言う。

女学生だった和歌子は、友人と二人で、それをやってみた所、友人にはひどください男の顔が出て来た。

その後、自分がやってみたら、出て来た写真を一瞬見ただけで、友達にも見せず、食べてしまったのだと言う。

その後、自分がいまだに独身なのも、出会う男性が、その記憶すらはっきりしない写真の男ではないような気がして結婚に踏み込めなかったからだと言い、それは、あの時食べてしまった、ファラオの呪いなのではないかと思うようになったと言うのだ。

ばかばかしいと口では言いながらも、ハナメも、黒い招き猫の事をいまだに引きずっている自分の事と重ね合わせてしまう。

気になるのなら、その時、もう一度やったら良かったのにとガスが言うと、翌日自分一人でその場所へ行ってみたが、もう機械はなくなっていたと和歌子は言う。

あいにくここにはそう言うものはないと電球が答えると、金はそれなりに用意できるので何とか探してみてくれと和歌子が頼むので、ひょっとして小金持?とガスが聞くと、ためらう事なく和歌子は頷くのだった。

その電球と和歌子の接近振りを見ながら、ガスとハナメは、ああいうものを信じるの?信じないの?と話し合っていた。

ハナメは、市ノ瀬に相談し、その「ツタンカーメンの占い」について調べてもらう事にした。

そば屋で会った市ノ瀬の話では、その機械、泰安貿易と言う会社が輸入していたらしいと言う事が判明、さっそく、ガスと一緒にその会社に行ってみるが、応対した西条社長(岩松了)は、あの機械は全く売れなかったので、すぐに取り扱いを辞めてしまったので、今どこにあるのかは全く分からないと言う。

途方に暮れたハナメだったが、ガスが突然、自分は電気屋だから、いっその事作ろうかと言い出す。

ハナメは、電気屋なのに、なぜガスなのかと突っ込み、絶対バレるわよ!と止めさせる。

ハナメは一本の錆びた折れ釘をガスに見せ、これが分かるかどうかで判断すると言い出す。

実はその釘、少女時代、おばあちゃんの家の納屋で見つけたものだが、学校に持って行ってみんなに見せても誰も認めてくれないし、その後、良さを認めてくれたのは母親と市ノ瀬さんだけだったのだと言う。

しかし、ガスは、そんな折れ釘の魅力など全く分からないようだった。

翌日、電球の所に来たハナメは、やっぱり見つからなかったと話していたが、そこへ、和歌子を乗せたガスがトラックでやって来る。

ガスが言うには「ゲーム機の墓場」のような場所があるのだと言う。

電球とハナメもトラックに乗り込むと、その「ゲーム機の墓場」なる場所へ出かけてみる。

そこで待っていたのは、あのリサイクル業者トリオの2人だった。

もう一人は、腹痛だと言う。

特殊車両の免許を持っているガスが、クレーン車を操り、ゴミの山を崩し始める。

やがて、洞窟三田な部分が見つかったので、手掘りで掘り進める事にする。

みんなが協力しようと息上がる中、一人手伝おうとしない和歌子は「よろしくお願い島津藩」などと、オヤジギャグで挨拶したせいか、雨が降り始める。

電球は、近くにあったパイロンを頭にかぶり、洞窟に向かう。

洞窟の中には、布がかかった大きなものが置かれており、ガスとハナメでその布を取ってみると、そこには探し求めていた「ツタンカーメンの占い」があった。

いつの間にか、腹痛だったリサイクルトリオの一人東もその場にいたが、やはり、緊張するとお腹が痛いと言う。

機械の中をチャックしてみたガスは、漏電などなく、今でも動くと言うので、さっそくコンセントにつなぎ、和歌子がその前に立つ。

いよいよ運命を受け入れる時が来たのだ。

100円を入れ、生年月日を打ち込んだ後、一枚の写真が機械から出て来る。

それを見た和歌子は固まってしまう。

見せられたハナメも驚愕する。

そこに写っていたのは、電球そのままだったからだ。

その頃から、ハナメも骨董に興味を持つようになって行く。

ある日思い切って、あの折れ釘を電球に見せてみた所、良い釘だなと誉めるではないか!

みんなの求める理想釘だとまで言い出し、お前、骨董屋をやったら?と薦めてくれ、これから一緒に鑑定に出かけようと、とある寺に連れて行かれる。

住職(海原はるか)が持って来た箱には、「河童のミイラ」が入っているのだと言う。

住職がかかって来た携帯に出るため外に出た後、バカにするハナメだったが、「大体、この手のものは、猿と亀の甲を使った偽物が多いのだが…」と言いながら電球が箱を開けると、河童のおもちゃがバネ仕掛けで飛び出して来る。

単なる「びっくり箱」だったのだが、驚いた事に、ハナメは腰を抜かしてしまい、電球におぶさって帰る事になる。

背負われながら、電球さんって結婚した事ないんですか?とハナメが聞いてみると、ないと言いながら、ハナメを振り落とす電球。

しかし、すでに直っていたハナメは、田んぼの中に見事に着地するのだった。

その後、母親の病室で、いまだ意識が戻らない母親に、手紙を電球のおじさんに見せて来てもらおうか?と一人つぶやくハナメ。

ちょっとやってみたい事があるんだと言うと、「ふーん…」と、廊下で盗み聞きしていた看護婦がつぶやく。

そば屋で市ノ瀬と会ったハナメが、結婚生活の事を聞くと、もう離婚したと言う。

実質一ヶ月の結婚生活だった事になる。

骨董屋を始めたいとの相談を受けた市ノ瀬が、連れて行ってくれたのは、今や。「骨董屋のオピニオンリーダー的存在である店」だった。

そこは、静寂な店構えで、インド風の衣装を着た店員が、ちょっとした物音でも立てると、「お静かに!」と合掌しながら注意して来るような居心地の悪い店だった。

あんまり何度も注意に来るので、とうとう切れた市ノ瀬は、怒鳴りながら店を後にする。

チャリで、市ノ瀬と一緒に帰るハナメは、何か人生失敗しているかも…と愚痴る。

宗教へでも入ろうかな?なんか違うな…などと話していたが、やがて市ノ瀬が立花って覚えているかと聞いて来る。

そうしているかな?とハナメが答えると、海外でファッション誌を立ち上げたと言うではないか。しかも雨夜と同棲しているのだと言う。

ショックを受けたハナメは、その日自宅に戻ると、貯金の100万円を元手にして、小さな骨董店を始める決心をする。

だが、問題が一つあった。

全然売れないと言う事だった。

またジリ貧か…?

それで、又電球に会いに行き、最近テンションがあがらないのだと打ち明けると、だったら、水道の千を開くのだと、電球は妙な事を言い出す。

そして、洗面台の栓を閉めると、蛇口を全開にして、水があふれないうちにジュースを買いに行こうと、ハナメを連れ外に飛び出す。

そして、近くの自動販売機でジュースを買って店に戻って来ると、洗面台の水はこぼれる寸前でセーフだった。

ハナメは、たったこれだけの行動で、すっごくテンションがあがった事に気づく。

次に、浴槽の水道を全開にした二人は、昼食を取りに、近所の中華料理店に駆け込む。

ハナメは、時間がかからない中華丼を頼んだのに、電球がエビチリ丼を頼んだので文句を言うが、電球は食いたいもん食うんだとマーペースを貫く。

結局、走って帰って来ると、またしてもセーフだった。

そんなハイテンションな二人の様子を、遊びに来たガスは「何やってるんだよ?」と呆れる。

骨董屋を始めたが巧く行っていないと言う事を打ち明けると、電球は「特長がないからだ」と喝破する。

「考えろ!」と言うので、その場で知恵を絞ったハナメは「黒いものばっかり集める!」と思いつくが、ガスから「パクリだろう!」と突っ込まれてしまう。

それでも、この作戦は成功し、黒いもの専門の骨董屋は客が来るようになった。

ある日、マンションで、儲かった札束をばらまいていると、またしても下を通りかかったサラリーマンがそれを目撃して固まるのだった。

ある日、電球から呼び出されたので、ハナメが商売が軌道に乗り、投資金100万が取り戻せたと報告すると、電球の方は、あの店を止め、又旅に出る事にしたと言い出す。

そして、お前は親戚だから、これをやると奇妙な鍵を取り出す。

自分の実家にある蔵の鍵なのだと言う。

喜んで受け取ろうとしたハナメだったが、電球は百万だと言い出す。

考えた末、銀行から100万をおろしたハナメはそれを電球に手渡す事にする。

すると、そこにやって来たガスが、電球は和歌子さんと暮らす事になったと意外な事を言い出すではないか。

聞けば、あの「ツタンカーメンの占い」の発見はすべてやらせだったのだと言う。

自分が偶然、あの機械を見つけたので、あのゴミの山の中に埋めたように仕掛け、出て来た電球の写真もあらかじめ入れておいたのだと言う。

ばつが悪そうだった電球も、和歌子には言うなよ。俺はあいつの運命の人でいたいんだと言う始末。

それを聞いたハナメは、何もかもが信じられなくなって嫌になり、鍵を放り投げると逃げ帰る。

その日、いつものように、ハナメのマンションの下を通りかかったサラリーマンは、ハナメの部屋の窓が閉じたままで何事もないのので、ちょっと物足りなさを覚えるのだった。

自分の骨董屋にいたハナメは、なにげに商品棚に置いていたあのさびた折れ釘を欲しいと言う客(石井聰亙)が現れたので、思い切って300円で売ってしまうが、その直後、あの釘を誉めてくれた電球の事を思い出す。

今になって思えば、なぜ、お父さんと言わなかったのかが悔やまれた。

言わなかったのは、自分の意地だった事に気づく。

その意地が、自分をじくじくと沼に沈めていたのだと言う事も…

改めて、電球の店に出かけたハナメだったが、そこはもうもぬけの殻だった。

ガスが来て、ハナメを見ると、謝っといてくれと電球のおっさんが行っていたと伝える。

ハナエは持参して来た母の手紙をガスに読ませる。

読んだガスも衝撃を受け、随分とアナーキーな話じゃないかと驚愕し、あの鍵をハナメに渡す。

ハナメは、その鍵を持って、ガスと田舎に向かう。

そして、蔵に到着してみると、鍵に封印がしてあるではないか。

何かあるのか?とためらうガスを他所に、あっさりそのお札をはがしたハナメは、鍵を開けてみる。

扉を開き、中に入ろうとしたハナメは、そこにあったしきりのようなものが自分の方に押して来るように見えた。

気がつくと、ハナメは砂の下に埋まっていた。

一旦は、電球の事を信じかけたハナメだったが、結局だまされたと嘆く。

ただの砂を倉に入れてあるはずないと息巻くハナメが、蔵の中の砂を外に運び出し積んでみたが、蔵の中にはそれ以外に何も入っていなかった。

ガスはすっかりやる気をなくしていた。

その夜、近くの宿に泊まった二人だったが、諦めきらないハナエが、あれは重要な資源ではないか?プルトニウムとか…と問いかけると、隣の部屋で寝ていたガスが即座に「ない!」と否定する。

巨大生物が出来る土では…?「ない!」

翌日、朝食の席で、いつものように「シオシオミロ」を作っていたハナメを、おかしそうに見る女中。

しかし、その瞬間、ハナメは「分かった!」と叫ぶ。

すぐに、蔵の前にやって来たハナメは、その前に積まれた砂を指して、「これはインスタント沼だ」とガスに説明する。

沼を乾かして砂状にしたものだと言うのだ。

早速、近くの神社を訪ね、宮司(伊吹吾郎)に、その近辺の古地図を調べてもらうと、確かに、宝永年間にはあった沼が天保年間になると消えていると、長い巻物をひもどきながら教えてくれた。

喜んで蔵の前に戻って来たハナメは、これは私の沼だと喜ぶが、ガスは宅配便ででも送るのか?と嫌みを言う。

特殊車両の免許持っているんだったら、運ぶの手伝ってくれとハナメは頼むが、ガスは断って一人で立ち去る。

一人、バスに乗って帰りかけていたガスは、その近くで山砂を掘っている採掘現場を見る。

一方、一人で、砂を箱詰めしていたハナメは、上手く行かないので腹を立てていたが、そこに一台のトラックが近づいて来る。

ガスだった。

そのトラックの荷台に積んで、砂はハナメの実家の近くの元沼の所までたどり着く。

途中、何のためにこんな事するのだと聞くガスに、私の気がすむとハナメが答えると、あんた電球のおっさんに似てるよ、変な所がと…と、ガスに言われてしまう。

そこに、砂を引きつめ、沼の大きさにしたハナメは、今度は水を入れようと言い出す。

さすがにもう、ガスも動こうとはしない。

諦めかけたハナメだったが、「そうだ!蛇口を開こう!」と思い出すと、自宅から長いホースを沼の所まで引くと、水道の蛇口を開く。

すると、水は延々とホースを伝って沼の方に走り出す。

それを追って走るハナメ。

水がホースの先から飛び出しているのを見たハナメは、手伝ってくれそうにもないガスを横目に、自分でホースを持つと、その辺一体に水を撒き始める。

ガスが呆れてうたた寝をしていると、「ガス、沼が出来たよー!」と言うハナメの声がした。

起きてみると、確かに目の前に、沼が出来ているではないか。

ガスは感心して、石などその中に放ってみる。

やはり後片付けしないとまずいかな…とハナメが反省していると、その内、勝手に乾くだろうとガスは帰りたさそう。

何か特別な事あるかな?と思ったけど…と、少しハナメが落胆している様子を見たガスは。これを作った事自体が特別だったんじゃない?と助け舟を出してくれる。

上手い事言うね、ありがとうございました!とガスに礼を言ったついでにハナメが「私、あなたが…」と言いかけた所で、沼の中心部が泡立っている事にガスが気づく。

ハナメも何事かと沼の方を見ていると、次の瞬間、沼の中から何か巨大なものが空に向かって登り始める。

それは、どう見ても「竜」だった。

慌てて、携帯を取り出したハナメは、すでに雲の中に消え去ろうとする竜を写メで写す。

呆然としたまま、「え?今の何?」と聞くハナメに、「沼の主じゃねえか?」と答えるガス。

「もしかして、竜?私は見たわよ。竜!」と興奮して来たハナメに、「俺も!やったー!」と喜ぶガス。

すると、そんなハナメの顔に、何やらドロドロしたものが落ちて来る。

龍の糞だった。

その後、あの黒い招き猫も近くに落ちて来たので、ハナメが感激する。

同じ頃、雷鳴が鳴る中、病院では、母親が目覚めていた。

和歌子と一緒に、軽トラで移動中だった電球も、空を飛ぶ竜の姿を見て車を降りていた。

しかs、そんな事に興味がない和歌子は、少しは稼ぎなさいよ!とヒステリーを起こすが、その顔に、またしても竜の糞が落ちて来るのだった。

無事退院して来た母の実家に行ったハナエは、いつものように「シオシオミロ」をかき混ぜながら、「どうして、あんな万年池などに行ったのか」と聞くと、「あなたが、河童を信じないからでしょう?」と母は答える。

その母が「私は竜に助けてもらったのよ」と言い出すので、ハナエが驚くと、「暗闇の中に落ちそうだった私が、何かに捕まると気がつき、そこはビニールの中だったので、わたしゃハウスメロンかと思った」と冗談まじりに言うではないか。

その時、ハナエは、庭先においてある箱に気づく。

何だと言うと、母は「河童を捕まえておいた」と言う。

確かに、生き物が入っているように箱は動いている。

こわごわそれを開けてみたハナメは、中に、あのゴンザブロウが入っていたので驚く。

母が言うには、あのウサギ園の担当者が、足の裏の手がかりで判別できたので送ってくれたのだと言う。

そのゴンザブロウの足の裏を見てみると、そこには、あの中国の面をかぶせた雨夜と一緒に撮ったプリクラが張り付いていた。

ゴンザブロウ!と、喜んでウサギを抱きしめるハナメだったが、「だよね?」と一抹の疑問を感じないではなかった。

その後、ハナメは、ガスの仕事を手伝うようになる。

ガスの本名は「賀須」だったのだ。

電線の修理に出かけたハナメは、クレーンの上のゴンドラに乗っていた。

その時、道を歩いて来る立花と雨夜の姿を上から見下ろす。

屈んで、二人をやり過ごしたハナメだったが、通り過ぎて行く雨夜の頭のてっぺんを良く見ると、そこは見事にはげていた。

「あ。河童だ!」とつぶやくハナメ。

改めて、携帯を取り出してそこに保存しておいた竜の小さな姿を見たハナメは「やっぱ竜だよなー」と喜ぶのだった。

やがて、ガスがクレーンをさらに上昇させたので、そのゴンドラの中で伸びをしたハナメは「人間、泣いている時間より笑っている時間の方が長いのだ!蛇口を開こう!」と自分に言い聞かせるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

独特な語り口で進行して行くファンタジー作品。

最初の方は、ファンタジーと言うより、コミカルな独白調で綴られた女性の心情映画なのかな?と感じるが、最後にどんでん返しが起きる。

とぼけた口調で語られているが、「楽しく生きるのも落ち込むのも心持ち次第」とか「親子のつながりの深さ」とか、いろいろ考えさせられるテーマを含んでいるので、単なるおばか映画ではない。

また、ハナメとガスの関係なども、ありがちな恋愛に落ち着くのではなく、大人同士の友情関係のように見えるのも好ましい。

「蒲田行進曲」(1982)を知っている人だと、銀ちゃん(風間杜夫)と小夏(松坂慶子)が久々に共演(シーン的に一緒にいる所はないが)しているのだと、ちょっと感慨深かったりする。

なかなか楽しく、清々しい作品になっている。