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20世紀少年−最終章−ぼくらの旗

2009年、「20世紀少年」製作委員会、浦沢直樹原作+脚本、長崎尚志脚本、堤幸彦監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

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1969年、小学校の友達たちと、草むらに作った「秘密基地」で、「よげんの書」なる、たあいない「世界征服を夢見る空想話」を作って楽しんでいたケンヂこと遠藤健児(西山潤)は、28年後、コンビニを営む平凡な中年男(唐沢寿明)になっていたが、かつて自分たちが書いた「よげんの書」通りに起こる不可思議な事件に興味を持って行く。

やがて、その背後に「ともだち」なる謎の人物を中心とするカルト集団の存在がある事を突き止め、後に「血のおおみそか」と呼ばれる事になる、2000年12月31日の巨大ロボットによる新宿襲撃計画を阻止せんと、かつてのクラスメイトたちと共に立ち上がるが、事件後は「ともだち」が日本を救った事になり、ケンヂたちは「テロリスト」の汚名を着せられると言う悪夢の未来が始まる。

ともだちは、2015年の新宿視察の際、何者かによって暗殺されるが、その後、東京万博の開幕日と重なった葬儀の席で復活し、「神」と崇められる存在にまで上り詰める。

ともだちは、さらに、殺人ウィルスを世界中にばらまき、世界の三分の一の人類が死滅した後、「世界大統領」として世界に君臨するまでになっていた。

…と、第一章、第二章のダイジェストが完結に説明される。

タイトル

2017年、ともだち歴3年…

殺人ウィルス事件以降、東京を周囲から隔絶するように建てられた長大な巨大塀を、外から登っている二人の男があった。

「ショーグン」又は「オッチョ」こと落合長治(豊川悦司)と、「海ほたる刑務所」から一緒に脱出して来た漫画家の角田(森山未來)だった。

角田は、途中、弱音を吐くが、又東京に戻って、マンガを書くんだろうと言うオッチョの言葉に奮起し、何とか塀を乗り越える。

しかし、その背後には、侵入者を発見した警察が近づいて来ていた。

殺人ウィルスによって世界の大多数が死んだ事件以来、2年振りの東京帰還となるオッチョは、これからは、あなたをモデルにした本物のヒーローマンガを描くと誓った角田と、降り立った地上で別れる。

何故か、60年代を思わせる古い町並みに変貌していた東京の一角では、磯野サナエ(福田麻由子)と弟のカツオが、修理を終えたテレビを乗せたリヤカーを引いて、夕暮れの家路を急いでいた。

その時、警察から追われて物陰に隠れていたオッチョに出会い、サナエは自宅に連れて来る。

サナエは、自分の両親は、友達の悪口を言っただけで、地球防衛軍に連れて行かれたと打ち明ける。

オッチョは、塀の外では、毎日、ワクチンの奪い合いで殺し合いが起きていると、外の情報を教える。

サナエは、ともだちに抵抗する「ゲンジ一派」なるレジスタンス集団がいる事を話すが、その名前を聞いたオッチョは、「源氏=義経」の連想から、ヨシツネこと皆本剛(香川照之)がその背後にいるのではないかと推理する。

さらにサナエは、もうすぐ地球は終わるのではないかと不思議な話をする。

テレビ番組の最後に、ともだちが奇妙な事を言っていると言うのだ。

さっそく、プロレスのヒーロー雷神山(中西学)の中継がちょうど終わりかけていたテレビのスイッチを入れると、番組の最後にともだちが現れ、8月20日に宇宙人が襲来し、人類が滅びます…と不気味な予言をしているではないか。

さらにサナエは奇妙な話をする。

「氷の女王」なる謎の人物が、電波ジャックの形で、時々、全都民への武装蜂起を呼びかけていると言うのだ。

話を聞いたオッチョは、8月20日と言うのは「あいつの誕生日」ではないかと推測する。

そんなオッチョに、今度はカツオが、ラジカセに録音した歌を聴かせる。

今秘かに、東京で流行っている歌なのだと言うが、その歌声を聴いたオッチョは、それが、死んだはずのケンヂに違いないと言う事に気づく。

オッチョは、翌日、サナエとカツオが押すリヤカーの上に隠れ、新宿にやって来る。

歌舞伎町教会の近くには「ガッツボウル」と言うボウリング場があった。

その中に入ったオッチョは、そこにいた神様(中村嘉葎雄)、仁谷神父(六平直政)、小泉響子(木南晴夏)に再会する。

神様が、株で儲けた金で買ったと言うこのボウリング場は、オッチョやケンヂたちが、かつて「秘密基地」を作って遊んでいた草むら跡だった。

「氷の女王」とはカンナの事ではないかと尋ねるオッチョに対し、神様は、彼女は変わってしまったと苦しげに打ち明ける。

ヨシツネに、カンナが無謀な事をしないように頼んだと言う仁谷神父に、それは危険だ。ともだち暗殺事件の時思いついたんだが、ともだちはヨシツネかも知れないからだと、オッチョは意外な推理を聞かせる。

柔道着を着たユキジこと瀬戸口雪路(常盤貴子)は、ヨシツネにゲンジ一派を集めるよう依頼するが、ヨシツネはあまり乗り気ではない様子。

戦いに疲れたと言うばかりか、自分には、ともだちの気持ちがわかるような気がすると言う始末。

ともだちはきっと、子供の頃なりたかった自分と現実との間の、あまりにも大きなギャップに耐えられなくなったのだろうと独白するヨシツネ。

実は、ヨシツネ自身も子供時分、仮面をかぶって外を歩いていたら、誰かと間違われて、ぼこぼこにされた事があるのだと言う。

その頃、マルオこと丸尾道浩(石塚英彦)は、付き人をしている国民的人気歌手春波夫(古田新太)と共に、とある焼き鳥屋に来ていた。

そこに、マネージャーの市原節子(竹内都子)がやって来て、ケンヂの姉でキリコこと遠藤貴理子(黒木瞳)の居場所が東村山である事を突き止めたと言う。

その市原節子、店の壁に貼られた古い写真に写っている三人の男の姿に気づく。

春波夫は、昔、自分は、ケンヂとこの店の主人であるビリー(高橋幸宏)と三人でバンドをやっていたのだと告白した後、自分が演歌に路線変更した詫びを言い、あいつが帰って来たら、もう一度やらないかとビリーに誘いかける。

それに対し、ビリーは無言で奥の戸棚の引き出しを開ける。

その中には、いまだにエレキが眠っていた。

翌日、東村山に一人向かったマルオは、「カエル帝国」と書かれた旗が翻る安手の要塞のような場所にやって来る。

いきなり要塞の見張り台のような所から発砲されたマルオは、俺はマルオだと叫ぶ。

要塞を守り、撃って来たのは、ケロヨンこと福田啓太郎(宮迫博之)だった。

聞けば、「血のおおみそか」の時、ケンヂたちの戦いに参加しないで、バーの女と遊び歩いていた事に後悔したケロヨンは、その後、アメリカで蕎麦修行をしていた時に、偶然にもキリコと会ったのだと言う。

その後、自分たちと一緒に戦いへ参加するよう促したマルオを、ケロヨンは近所の屋敷に連れて行く。

そこには、殺人ウィルスのワクチンの研究を続けていたキリコがいた。

キリコは、密閉室の中で自らワクチンを投与し、人体実験を行っていた。

それを防護服を着て、部屋の外から見守るマルオとケロヨンに、ウィルスの有効期間は12時間、その間に自分が死ねばともだちの勝ち、自分が生き残れば人類の勝ちだと言うキリコ。

キリコは、自分が産婦人科のベッドで、生まれたばかりのカンナを抱いていた時、ともだちが会いに来たときの事を打ち明ける。

その後、ともだちが、サークル活動に行くのだと奇妙なことを言うので、秘かに後を付けた所、不気味なカルト集団の集会を行っているのを目撃したのだと言う。

ともだちの正体に疑念を抱いたキリコは、その直後、カンナを実家に預けた後、単身アメリカへ渡り、ミシガン州近くの研究所でワクチンの研究に没頭していたが、ともだちに気づかれ、火事になってしまった。

その時、助けてくれたのがケロヨンなのだと言う。

そんな打ち明け話をするキリコの身体に異変が現れていた。

このワクチンには強い副作用があるのだと、心配するマルオらに説明したキリコだったが、やがてその場に倒れ込む。

マルオらは、実験が失敗し、キリコが死んだと思ったが、その直後、そのキリコの目がゆっくり開く。

ワクチンは成功!人類は勝ったのだ。

その頃、とある地下に潜んでいた抵抗集団に緊張が走っていた。

侵入者があったのだ。

一斉に銃を向けられた侵入者はオッチョだった。

そこに「氷の女王」こと遠藤カンナ(平愛梨)が現れる。

カンナにオッチョは、何故もっと命を大切にしないと呼びかける。

カンナは、かつて歌舞伎町で知り合って仲間になった中国マフィアやタイマフィアの連中が、その後、悲惨な最期を遂げた事を打ち明ける。

中国マフィアのドン王(陳昭榮)は、手に入れたワクチンを歌舞伎町教会の中で打ち、ともだち府に総攻撃をかけたが、ワクチンは偽物で、王たちは全員、返り討ちにあって全滅したと、タイマフィアのボス、チャイポン(Samat Sangsangium)から聞かされたカンナだったが、そのチャイポンもウィルスにやられ死亡する。

その後も、カンナに味方するものたちは次々と殺され、自分だけが生き残っている事に耐えられなくなったと言うカンナ。

オッチョは、危なくなったら一目散に逃げろと言っていたケンヂの言葉を引用し、武装蜂起計画を中止するよう説得する。

その後、ラジオはないかと聞いたオッチョは、仲間の一人からさしだされた古いラジオのスイッチを入れ、そこから聞こえて来るケンヂの歌声をカンナに聴かそうとする。

電波状況が悪く、カンナはオッチョの行動を疑うが、その時かすかに、オッチョが外に向かって差し伸べた手に握られたラジオから「グ〜タラ、スーダラ〜」と言う聞き覚えのある声が流れて来る。

その歌を放送していたのは、北海道に住む一人のDJだった。

彼は、いくら放送で呼びかけても、誰一人、リクエスト電話もして来ない事に不安を覚えていた。

北海道には誰もいないのではないかと…

そんなある日、ミニバイクに乗ったサングラス姿の男が、東京を封鎖した塀の一画にある「関所」にやって来る。

警備の警官蝶野将平(藤木直人)は、その怪しげな男を止めると、この関所を抜けようとして、これまで、一人を除いた千人もの人間が殺されて来たのだと説明する。

怪しげな男は、その場でギター片手に唄を歌い始める。

その曲を聴いた蝶野は、かつて、カンナから聞かされたケンヂの歌を思い出し、あんたはカンナのおじさんじゃないのかと聞く。

男は、それには答えず、関所を通る事が出来た一人と言うのはどうやったのかと聞く。

蝶野は、ジャージ姿の二人の漫画家の元へ男を連れて行く。

「うじこうじお」と名乗った二人の漫画家金子(手塚とおる)と氏木(田鍋謙一郎)に、偽造手形をもう一度作るよう命ずる男。

不承不承描いた偽造手形を持って関所にやって来た男は、「矢吹丈」と名乗っていた。

不安な目で、その審査を後ろから、かたずを飲んで見つめていた他の通行希望者たちは、あっさり「矢吹丈」が通されたので、我先にと自分たちも偽造手形を見せて、全員、難なく関所を通過する事が出来る。

一緒に関所を通り抜けられた蝶野から、関所を管理する「砦」と呼ばれる巨大な建造物の説明を受けたケンヂは、一人でそこに乗り込んで行く。

不思議な事に、ケンヂは「砦」の中に、何の妨害も受けずに侵入する事が出来た。

そこの管理者として左遷させられていた万丈目嵐舟(石橋蓮司)が、モニターでケンヂと知り、わざと入れたのだった。

泥酔し、一人、ケンヂを待ち受けていた万丈目は、自分とともだちとの出会いから話し始める。

昔、ケンヂたちが通っていた小学校の側で、インチキ手品の玩具を売っていた万丈目は、ともだちから「締まらないロープがないか」と聞かれたのが最初だった。

それがあれば、首を吊っても締まらないので、生き返る芝居が出来、神様になれると言うのだ。

その時から付き合いが始まったともだちは、その後、1980年、再び万丈目の元を訪れると、奇跡はもっとエンターテインメントでなくちゃ…と言い出す。

最初は、ともだちの考えをバカにしていた万丈目だったが、簡単なロープトリックで空中浮遊をやってみせたともだちが、あっさり観客を欺いてしまう様を裏から観ていて唖然となる。

1994年、新たなトリックの為、ドクターを必要としていたともだちは、キリコの恋人だった諸星ダン(津田寛治)を、駅から突き落とし殺害すると、キリコに近づく。

新宿パレードの時、射殺されたともだちは「替え玉」だった。

これまでのともだちが行って来た数々のトリックを知りすぎていた自分は、ともだちから疎まれ、今はこうした場所に左遷されてしまったが、こうした茶番もそろそろ終わりにしなくてはならない。

世界を征服し尽くした後に待っているのは「世の中を滅ぼす事」だけだからだ。

ともだちを殺せるのなら、命を助けてやっても良いと、銃口を向けながら嘯く万丈目に、ケンヂは、嘘をつくな!何もかもともだち一人のせいにするつもりか!と一喝した後、自分のこれまでの話を始める。

2000年12月31日の「血のおおみそか」の時、巨大ロボットの爆発に巻き込まれたケンヂだったが、シェルター構造になっていた操縦席の中にいた事が幸いし、大爆発の瞬間、操縦席は吹き飛ばされ、何とか命は取り留めたものの、記憶は全て失ってしまったと言う。

しかし、2015年、ニュースで、殺人ウイルスによる大惨事が起こった事を聞いたケンヂは記憶を取り戻す。

その後、北に向かって逃げたが、逃げ切れず、泣いて泣いて雪山を彷徨っている内に、とある猟師(遠藤賢司)に救助され、もう自分は逃げない。真実から目をそらさないと誓ったのだと言う。

2017年、北海道の個人放送局「ペカンペスタジオ」の郵便受けに歌のテープを入れたケンヂは、東京目指してバイクを走らせて来たのだ。

俺のやるのは復讐ではない。愛した人をこれ以上死なせない為だと、ケンヂは万丈目に訴える。

追いつめられた万丈目は、持っていた銃を自分のこめかみに付けるが、安っぽく死ぬな!悪人より、正義の味方になる事の方がよっぽど楽だと諭す。

「砦」の外に出て来たケンヂは、外で待っていた蝶野に、カンナに会いに行くと伝える。

その頃、地下の秘密基地でカンナは、8月20日の武装蜂起は中止すると仲間に伝えていた。

その時、地球防衛軍が侵入して来る。

仲間たちを逃がした後、一人投降したカンナは、全身に手榴弾を抱いている姿を見せ、約束とは裏腹に、仲間たちを虐殺しようとした地球防衛軍の出ばなをくじく。

その後、カンナとオッチョは、ともだちタワーに連行される。

そんなカンナを出迎えた管理庁長官高須(小池栄子)は、カンナとすれ違う時、何故か拳銃を、こっそりカンナのポケットに滑り落とす。

そのともだちタワーの地下では、ユキジとヨシツネが、タワー攻撃の打ち合わせをしていた。

一方、別の場所に連行されていたオッチョを助けたのは、科学技術庁長官になっていたヤン坊マー坊(佐野史郎)だった。

カンナは、単身、ともだちと会う。

ともだちは、カンナが好物だったラーメンを差し出すが、その情報を手に入れるため、何人の仲間が拷問にかけられたかを想像したカンナは手を付けるはずもなかった。

カンナは、これまで自分を育ててくれた、ケンヂおじちゃん、オッチョおじさん、ユキジ姉さんたちの、本当の子供でいたかった。

でも自分は、人類史上最悪の人間の娘だと訴え、高須から渡された銃を、目の前にいるともだちに突きつける。

オッチョは、ヤン坊マー坊が作ったと言う空飛ぶ円盤と新型巨大ロボットを見せられていた。

敵なのか味方なのか、ヤン坊マー坊の真意は測りかねたが、そこにユキジがやって来て、今は、双子の言う事を信じるしかないとオッチョを説得する。

その時、タワー内の電気が消える。

別働隊のヨシツネの仕業だった。

カンナは、ともだちをエレベーターに連れ込み、一緒に脱出しようとしていた。

地下に降りるエレベーターの中で、ともだちは、万博会場だけは、自分にとって特別な場所なので、今度の円盤の攻撃の際、守ろうと思っているとつぶやく。

人間は増えすぎたんだ。僕は彼らの代表選手だと言うので、何の代表かとカンナか聞くと、20世紀の…、最高で最低だったあの時代の…と、ともだちは答える。

地下で、エレベーターから下りた二人を待ち受けていたのは、高須と銃を向けた地球防衛軍だった。

高須は、その銃は弾は入っていないと笑う。

しかし、ともだちが、この女は銃を私に向けた。だから絶交だ。開放しようと言い出し、それを聞いた高須も、その場からカンナを逃がす他はなかった。

立ち去りかけたカンナに、ともだちは、分かるかな?僕こそ、20世紀少年なのだと語りかける。

オッチョは、ヤン坊マー坊に連れられ、巨大ロボットの発明者敷島博士(北村総一郎)の研究所にやって来ていた。

敷島博士は、最初は、教団に拉致された娘の為にロボット製造に協力していたが、やがて、自分の好きな事をやらせてくれるので夢中になったと打ち明ける。

去年、その娘は粛正されて目が覚めたと言う敷島博士だったが、体内に中性子爆弾を抱いた新型ロボットは、「血のおおみそか」の時の未完成なロボットの50倍の威力があると嬉しそうに説明するその目は、既に常人のものではなかった。

ヤン坊マー坊の二人は、二機の空飛ぶ円盤を落とすには、高性能ロケットランチャーがあると言い出す。

それを撃つのはオッチョしかいないとも。

小学生時代、ともだちの書いた作文を読んでいた少年ケンヂは、そこに書かれていた「万博」の意味をともだちに尋ねる。

普段、クラスの中でも影が薄い存在だったともだちは、クラスの人気者ケンヂが、自分が説明する「万博」の話に夢中になる様に驚き、快感を覚えていた。

ともだちは、大阪に親戚がいるので、自分は、夏休み中、毎日万博に行けるのだと自慢する。

しかし、その後、仮面をつけ、ともだちの家に遊びに来ていたサダキヨ(藤原薫)は、急に、その仮面を寄越せと、ともだちから命じられる。

急に万博に行けなくなったので、夏休み中、自分の存在を消すためだと言う。

しかし、サダキヨの面をかぶっていたともだちは、サダキヨに間違われ、他の子から暴力を振るわれてしまう。

その後、ふと、ガラスに映った仮面を剥いだ自分の顔を見ると、ともだちの顔はのっぺらぼうになっていた。

「何もかも嫌いだ!」ともだちは、一人で泣き始める。

2017年

空を飛んでいた飛行船のモニターに映ったともだちが意外な事を言い出す。

これまでの大惨事は、全部、自分がやった事だと言うのだ。

神は一週間でこの世界を作ったと言うので、僕は一週間でこの世界を滅ぼします…とも。

地上でその言葉を聞いていた民衆たちは、あっけにとられ、信じかねていた。

ユキジは、オッチョたちに連れられ、新宿の歌舞伎町教会にやって来る。

そこにはカンナがいた。

カンナは、ともだちに銃を向けたが撃てなかった。

あんな悪魔でも、私の父親だから…。私は悪魔の子なんだ…と落ち込んでいる。

それを聞いたユキジは、あなたが引き金を引いていたら、それはともだちがやっている事と同じになる。ケンヂはそんな事は教えなかったはずだと慰め、ケンヂはきっと生きている。お互い、やる事あるでしょう?と諭すのだった。

その頃、北海道の無人工場内。

食料を探し、中に侵入していたDJは、突然、奥の閉じられた部屋から声をかけられ、肝をつぶしていた。

声の主は、今の外の様子を知りたがっていた。

自分は、ともだちにだまされていたとも…

それを聞いたDJは、自分はコンチこと今野裕一(山寺宏一)と言い、中二の時まで東京にいたが、その後、北海道に来てからは、一人のともだちもいないと打ち明ける。

やがて、鍵のかかった部屋から出て来た男は、13号と名乗ると、用意していたヘリコプターで飛び立とうとする。

コンチは、自分も乗せて行ってくれと頼む。

ユキジは、門下生たちを集め、祖父の代から受け継いで来たこの「源道館」を、今日限り閉鎖すると言い出す。

それを聞いていた大垣師範代(武蔵)は、他の門下生と一緒に号泣し始める。

その頃、かつての祖父チョーさんの盟友だった山崎元警視庁長官の家を訪問していた蝶野は、祖父を殺したのはあなたなのかと、ズバリ切り込んでいた。

山崎は、どうしても乗り越えなかったちょーさんの事を、その頃入信していた教団のともだちに相談すると、乗り越えられなければ、絶交すれば良いじゃないかと言われたのだと言う。

その言葉を聞いた蝶野は、その場で、山崎に手錠をかけ逮捕する。

ガッツボウリング場に集まったかつての仲間たちを集結させたカンナは、ともだちが円盤による攻撃をする際、万博会場だけは避けると言っていた事を打ち明けると、今自分たちがやるべき事は、一人でも多くの都民の命を救う為に、万博会場に都民を集めるため、フェスティバルを開こうと提案する。

それを聞いていた仲間たちは、春波夫に協力を依頼しようと言い出す。

その日から、カンナは、「殺人ウィルスから身を守るため、みんな万博会場の音楽祭に来てくれ。きっと、噂のあの歌の歌手も登場すると電波ジャックを通して呼びかけ始める。

一方、完成したワクチンをトラックに積み込み終えたマルオは、それを東京に運ぼうとしていたが、いつの間にか車の前に付けられた、目と手を組み合わせた不吉なマークが入った旗を見つける。

しかし、それはケロヨンが取り付けたもので、元々この旗は俺たちが考えたもの。今こそ俺たちの手に取り戻すんだ!とマルオに伝える。

かくして、キリコが見送る中、ワクチンを積んだトラックは東京に向け出発する。

8月20日、万博会場

会場には、大勢の都民が集結していた。

その中には、磯野サナエとカツオも混じっていた。

やがて、北海道からやって来たコンチが舞台に登場し、春波夫を紹介する。

12時、ともだちタワーのてっぺんに座っていたともだちは、空飛ぶ円盤のスイッチを入れる。

今日は東京、明日は日本、そして明後日は世界だ!とつぶやきながら…

二機の空飛ぶ円盤が発進する。

ともだちタワー内では、侵入したゲンジ一派と地球防衛軍が銃を向け合い対峙していた。

ユキジは、これ以上無駄な争いは止めなさいと諭しながら、地球防衛軍の隊員たちのマスクを上げてやる。

顔を隠していたマスクを取られた地球防衛軍の隊員たち(高嶋政伸、田村淳)は、泣きながら抵抗をやめる。

タワー内の他の部署も、無抵抗で投降する。

そんな中、ヨシツネの姿を探し求めていたユキジは、高須と対面する。

ユキジは、得意の柔道で、高須を投げ飛ばすのだった。

塔のてっぺんにいたともだちは、みんな、いくじなしだな…とつぶやきながら、巨大ロボットのスイッチも入れる。

目指すは新宿だった。

その頃、ビルの屋上に来ていたオッチョは、迫り来る空飛ぶ円盤に、ロケットランチャーを向けようとしていた。

なかなか照準が定まらず、焦るオッチョだったが、やがて、照準の中に、亡くなった息子の「父さん、大好きだよ!」と言う声が響き、照準がロックされる。

オッチョが発射したロケット弾は、円盤の一機に命中するが、その爆発の煙で、もう一機を見失ってしまう。

その時、ビルの狭間から、突如、ヘリコプターが出現する。

操縦席に載っていた13号は、オッチョに親指を上げてみせると、もう一機の円盤に向かって突っ込んで行く。

「俺は宇宙と一体になる!俺は13号ではない!田村マサオだ!」と叫びながら…

13号の乗ったヘリは、見事に円盤に激突すると、一緒に落下して行く。

その様子を見届けたオッチョは、巨大ロボットが間近を通過して行くのを呆然と見つめるしかなかった。

ミニバイクに乗って、かつて子供時代を過ごした懐かしい町並みに変貌していた東京にやって来ていたケンヂは、新宿に向かう巨大ロボットを見かけ、追跡を始める。

何とか、ロボットに飛び移ろうと機会をうかがっていたケンヂだったが、都合良く、ロボットが一瞬動きを止める。

すぐさま、そのロボットの機体に飛び移り、中に侵入したケンヂは、操縦席に座っていたともだちを発見する。

硬直したような動作で席を立ち上がったともだちを突き飛ばしたケンヂは、自ら操縦席に座ると、マニュアルに装置を変えると、何とかロボットを止めようとする。

そこに、ジープで接近して来るオッチョ。

ケンヂは、子供の頃、巨大な相手を倒すときは、バランスを崩せば良いと言うユキジの言葉を思い出していた。

何とか、ロボットのバランスを崩そうとするが、なかなかロボットは倒れない。

大きく傾いたロボットの足下に、オッチョはジープを突っ込ませ、自らは飛び降りる。

ジープは足に激突し大爆発を起こし、ロボットは倒れる。

奇しくも、昔、オッチョとケンヂの二人で協力して倒したヤン坊マー坊の作戦と同じだった。

倒れたロボットの入り口から、ケンヂから覆面をはぎ取られたともだちが降りて来る。

ともだちはヨシツネだった。

しかし、ヨシツネは、自分はあいつの暴走を止めようと近づいたが、逆にクスリで身体の自由を奪われ、ともだちの格好をさせられた上で、このロボットに乗せられていただけだと釈明する。

小学生時代、自分も仮面をかぶっていたばかりに、他人と間違われ、ぼこぼこにされたヨシツネは、同じように痛めつけられたともだちに出会ったのだった。

その時、ケンヂもロボットから降りて来て、ヨシツネはともだちではないと言う。

その直後、「ケ〜ンヂくん、遊びましょう」と言う声が響く。

近くの草原に、操縦装置を手にしたともだちが立っていた。

「懐かしいだろう?ボクらの街だ。ボクらの秘密基地だ…」とともだちはケンヂたちに話しかけて来る。

「でも、君が僕を嫌いになっても良いんだ。ずっと遊びたかった…。約束したじゃないか…。僕は悪者でも良いんだ。君が正義の味方になるのなら…。だから、今も助けてよ!」と言いながら、ともだちは覆面を脱ぐ。

ともだちの顔は、同窓会の時に会って、その後、「血のおおみそか」の時、ビルから落ちて死んだはずのフクベエこと服部哲也(佐々木蔵之介)だった。

しかし、ケンヂは「もういい!」と、ともだちの言葉を拒絶する。

「もう、フクベエの振りなんかするのをはやめろ、俺が悪かった」と言い、ケンヂはその場で土下座をする。

しかし、「止めろ!あやまるな!」、今度は、そのケンヂの行為をともだちが拒絶する。

ともだちは操縦装置のスイッチを必死に押し、巨大ロボットが再び立ち上がろうとする。

オッチョが、ともだちに飛びかかろうとするが、次の瞬間、ともだちの身体から血がほとばしる。

撃ったのは、いつの間にか近くにいた万丈目だった。

「これで、俺は、正義の味方になれたか?」と、ケンヂに問いかける万丈目に、立ち上がりかけた巨大ロボットが倒れかかる。

倒れたともだちは、近づいて来たケンヂに、「まだ、終わりじゃないよね?」と問いかけるが、ケンヂは「いや、もう、終わりだ」と諭す。

息を引き取ったともだちの胸のポケットから、地球防衛軍のバッジが覗いていた。

これが誰だか知っているかと聞くオッチョに、ケンヂは知らんと答える。

万博会場では、まだ、延々と春波夫のショーが続いており、伝説の歌手を目当てにやって来ていた観客たちは呆れて帰りかけていた。

たまりかねたカンナは壇上に登場すると、自分が「氷の女王」であり、だますつもりはなかったと観客たちに詫びる。

その時、バイクの音が近づいて来て、群集をかき分け、ケンヂがやって来る。

ケンヂは、壇上に登ると伝説の唄を歌い始める。

そして、ともだちは死んだ。もう人類は滅びないと、群衆たちに告げるのだった。

もちろん、バックのギターはビリーが弾き、ドラムは、いつの間にかタンクトップに着替えていた春波夫が叩いていた。

演奏後、舞台袖でカンナと抱き合って再会を喜び合ったケンヂだったが、後日、ヨシツネや小泉響子たちと共にともだちランドにやって来る。

ケンヂ自身の決着がついてなかったからだ。

危険なヴァーチャル装置にあえて挑もうとするケンヂは、ともだちを作ったのは俺たちだったかもしれないとヨシツネは言ったが、ともだちを作ったのは俺だと告白する。

あいつはフクベエじゃない。

服部くんは、5年生の時に亡くなっていたんだと告白したケンヂは、ヴァーチャル装置をかぶる。

ジジババの駄菓子屋の前で、地球防衛軍のバッジを盗んだと誤解され、フクベエに虐められていた覆面をかぶっていた子供は別人だった。

そのイジメの様子を近くで見つめていた少年時代のケンヂに、大人のケンヂが「今じゃないと、一生後悔するぞ」と声をかけてやる。

少年ケンヂは迷った末、駄菓子屋に戻ると、ジジババ(研ナオコ)に、地球防衛軍のバッジを万引きしたのは僕です、ごめんなさいと謝罪する。

僕は必要?…、この世の中は必要?…

後日、そう心の中でつぶやき続けて、学校の屋上から飛び降りようとしていた中学生は、今でもハットリくんの仮面をかぶっていた。

中学生が、飛び降りようとした瞬間、突然校内放送から強烈な音楽が響いて来る。

放送室にいた係の女子を縛り、中学生になったケンヂ(田辺修斗)が勝手にロックのレコードをかけていたのだった。

その後、屋上に上って来たケンヂは、そこにいたともだちに、今の音楽を聴いたかと愉快そうに尋ねる。

屋上に寝転がり、コロッケパンを食い始めたケンヂに、ともだちは、「ねえ、ともだちになってくれる?」と話しかけて来る。

ケンヂは良いよと答えるが、いつの間にか、ともだちの姿は消えていた。

階段を一人下りて来るともだちに、大人のケンヂが声をかける。

「お面を取れ!そして、もう一度、あいつの所へ戻れ」…と。

ケンヂの身代わりとして万引き少年の汚名を着せられた少年は、その後もずっと、クラスメイトからバカにされ続け、いつの間にか死んだ事になってしまっていた。

「本当にご免!勝俣くん」と頭を下げる大人ケンヂ。

恐る恐る仮面を取った中学生の勝俣(神木隆之介)は、又、屋上のケンヂの側に戻っていた。

中学生ケンヂは、曲を思いついたんだけど、詩が思いつかないんだと勝俣に打ち明ける。

すると、勝俣の口から「グータラ、スーダラ…ってのはどう?」と返事が返る。

それを聞いた中学生ケンヂは、大いに気に入るのだった。

その日、二人は本当のともだちに会えた日だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

謎めいた展開で注目された「20世紀少年」三部作の最終章に当る。

前二章が、どちらかと言えば、レトロ趣味で組み立てた、重い雰囲気のディストピア物語だったのに対し、本作は、試写会では封印されていた最後の10分間を加える事で、どこか釈然としない部分は残るものの、なかなかの感動作になったように感じる。

最後の10分間がなければ、今作も、劇中でケンヂが言う「リアリティゼロ!」の荒唐無稽なだけの通俗活劇の域を出なかったように感じる。

この物語における一番すっきりする(同時にがっかりする)終わり方は「夢オチ」だと思う。

ある朝目覚めた中年のケンヂが、「妙な夢を見たな~…」とつぶやくと言うオチである。

しかし、さすがに今、そう言うオチではしらけるので、観る人によっては「夢オチ」を連想させるような終わらせ方にした…と言う事ではないかと、個人的には解釈した。

映画を観る限り、ともだちと言うのは、あくまでも「ケンヂの個人的な懺悔の象徴」なので、それが、具体的に誰かと言う謎解き興味はあまり意味がないと感じる。

推理をしようにも、小学生時代の子供たちの情報を、観客は知らなすぎるからだ。

おおむね人気作家による大長編物語とは、本格ミステリのように、最後の一行までかっちり構成を決めて書くと言うより、何となく漠然と書き始めて空想の風呂敷を広げ、途中辺りでまとめ方を構想すると言うケースが多いようなので、最後に「伏線の説明が不完全…と言うような釈然としない部分」が残るのは、ある程度致し方がない事かも知れない。

個人的には、「サザエさん」「鉄腕アトム」「トキワ荘」「藤子不二雄」「鉄人28号」「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「万博の日本政府館」「専売公社館(虹の塔)」「富士グループ・パビリオン」、1980年の万丈目が読んでいる「GORO」と言う雑誌など、細部にわたり、60年代~70年代懐古パロディとしてそれなりに楽しめた。

堤監督特有の、随所に挿入されているとぼけたギャグなども、一見、暗い物語を救っている。

とは言え、大阪万博とかオーム事件など自体が、ピンと来なくなっている世代にとっては、どこまで理解出来ているのだろうか?との疑念も起きる。

劇中、あまり意味もなく、色んなゲストが出て来るが、左右田一平が出ていたのにはビックリ!

そもそも、左右田一平さんなんて知っている人がどれだけいるのか?

駆け足気味のストーリーを楽しむと言うより、随所に仕掛けられた様々な「遊び」のディテールを楽しむべき作品なのかもしれない。

後、この物語、ヴァーチャル技術など最先端テクノロジーがある未来のはずなのに、「ネット」だけはないらしいのがミソ。

ネットがあれば「独裁」は難しい…と言う事なのだろう。