1983年、松竹映像+富士映画、西村望原作、西岡琢也脚本、田中登監督作品。
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駅のホームに集まった村人達は、出征していく赤木巌(ビートきよし)を見送っていた。
その群集の中に、犬丸継男(古尾谷雅人)もいた。
兵隊に憧れる彼は、泣いている赤木の母親の姿を面映そうに見つめた後、走り出した列車を夢中になって追い掛けるが、途中で転んでしまう。
駅からの帰宅途中、継男は、村の女が飼っていた鶏を、なぶり殺しにしている三人の男たちを見かける。
他所から村に移り住んで来た忠明らの仲間だった。
鶏の飼い主の女の事を口汚く罵っているその連中の態度に切れた継男が注意すると、三人の男たちは、村始まって以来の秀才と言われていた継男の事を知っているらしく、天才坊やと逆にからかわれてしまう。
三人組と分かれた後、継男は少し咳き込む。
自宅に帰り付いた継男は、近所の村人達に明るく挨拶する好青年であった。
父母を幼い頃に亡くしている継男は、産婆をやっている祖母はん(原泉)と二人暮しだった。
継男が、そんなはんに、俺が出征する時は、おばやん、泣いてくれるか?と聞くと、嬉しいので笑うて見送るわと言うので、安心したと答える。
継男が、勉強のため、隣部屋に消えると、残されたはんは、大泣きするかも知れん…と、小さく呟く。
そこへ、近所の赤木ミオコ(五月みどり)が、はんに金を借りに来る。
その際、師範学校にいけなかった継男は今、検定を受けて先生になるため勉強しているのだと言う事が話題になる。
その継男、机に向かっていたが、咳が激しくなったので、心配したはんが、本匠医院で診て来てもらえと勧める。
医者の見立ては肺浸潤で、安静にしておれば三月くらいで直ると言われる。
継ぐ男は、病院を出たところで、小学校時代の先輩中山哲夫(新井康弘)にばったり出くわす。
今では、町で何をやっているのか怪しい人物だったが、幼馴染みと言う事で、持っていた怪し気な写真を継男に見せると、そのまま手渡す。
それはエロ写真であったが、もらうのを拒否しなかった継男に対し、小学校の頃、いろいろ面倒みてやったよなと言いながら、小遣いを催促する。
久々に村に戻って来た哲夫は、狭いこの村で近親者のように血の繋がっているもの同士が、互いにまぐわっているのは気持ちが悪いと顔をしかめる。
哲夫と別れた後、山の中で、一人エロ写真を取り出し、自慰をしようとしていた継男は、いきなり幼馴染みのやすよ(田中美佐子)から「何を観ているの?」と声をかけられ、狼狽する。
やすよは、子供の頃から付き合いのある継男の事を好きらしく、できれば結婚したがっているようだったが、継男は、自分達は従兄弟くらいの近い関係だから結婚できないと突っぱねる。
ある日、子供好きな継男が、森に呼び集めた近所の子供たち相手に、いつものように兵隊の話を聞かせようとすると、同じような話に聞き飽きた子供が、意味も分からず、大人のセックスを見聞きしたまねをし始めたので、呆然としてしまう。
ある夜、いつものように勉強していた継男は、外にもやが出ているのに気付き、表に出てみる。
明かりの灯っている家があったので、つい好奇心から中を覗き見ると、座敷の中で赤木勇造(夏木勲)に組み敷かれているえり子の姿があった。
勇造が夜ばいを仕掛けていたのだ。
その後、継男は、自警団の連中とすれ違う。
聞けば、勇造の発案で、夜ばいの取締をしているのだと言う。
それを聞いた継男は、たった今観た、夜ばいの張本人の勇造がそんな提案を…と苦笑してしまう。
ある日、町に出かけていた継男が、機関車で駅に着くと、同じ列車に乗っていたらしい哲夫と再会する。
哲夫は、勉強ひとすじだと言う継男に、女でも抱いたらすかっとするぞと勧める。
その夜、えり子の家を訪ねた継男は、寝乱れた姿のえり子の身体を見ながら声をかける。
目覚めたえり子は、目の前に立っている継男の姿を見て驚くが、夜ばいは禁止されているのでは?と、継男が、先日見かけた事を臭わせると、急にその意図を見抜き、村一番の秀才にも興味があるらしく、自ら継男のズボンを脱がせ相手をしてやるのだった。
別の日、継男が一人で家にいると、ミオコが又金を無心に来るが、はんが留守だと知ると、夜、遊びにおいでと継男を誘って帰る。
その夜、金を持ってミオコの家に行ってみると、ちょうど、赤ん坊に授乳していたらしく、胸乳を露にしたままミオコが出て来る。
そこへの視線を感じたミオコは、そのまま継男を座敷に引き入れると、抱き合うのだった。
その後、墓場でやすよと出会った継男は、自分は検査で甲種合格して兵隊に行きたいと希望を語る。
やすよは、眼下に望む村でいつものように暴れまくっている忠明ら三人組の姿を見ると、あの人たち、殺されるかも知れないと勇造さんが言っていたと教える。
村に必要のない人間は、代々殺され、この山に埋められて来たのかも知れないと、継男は呟く。
継男には、狭い村で近親相姦にも似た関係を続け、生まれた子供は川に捨てているここでの習慣を気持ち悪いと吐き捨てる。
しかし、それを聞いたやすよは、女は違う。女はみんな寂しがりなんだと反論する。
そして、自分が編んだ飾り紐を、継男にプレゼントするのだった。
昭和12年、新山地区徴兵検査会場。
張り切って検査を受けに出向いた継男は、軍医から肺結核の診断を受け、検査に落ちてしまう。
検査会場の入り口で泣き崩れる継男。
村に戻って来た継男は、いつものように、近所の連中に明るく挨拶をするが、結核の噂が早くも漏れ伝わっていたのか、皆、返事もせず、継男を避けるように逃げる。
すっかりふて腐れて、家で寝ていた継男は、心配して卵を持って来て食べさせようとするはんに当り散らす。
はんが泣き出したので、謝って卵を飲みながら、死んだ両親は何が原因だったのかと問いただす。
はんは、胸の病などではなかったときっぱり否定する。
継男は、さらに生卵を飲みながら、この身体の血を全部入れ替えんと直らんかも知れないな…と嘆息する。
その後、山に呼び出したやすこも、ごめん、おとうちゃんがうるさいんよ…と、もう、会えなくなった事を謝る。
俺は兵隊になりたかったと嘆く継男に、やすこは来月結婚するんで、もう聞いてやれんかも知れん。この前あげた紐は捨てといてと告げた後、うち、大好きやったよと打ち明けて立ち去る。
ある日、山で野犬相手に吠えかかっていた継男は、思わず咳き込み、吐血してしまう。
そこに通りかかった竹中和子は、手ぬぐいを差し出す。
汚い血で汚れるぞと継男が断ろうとすると、洗えば良いと和子は笑顔で答え、手ぬぐいを手渡すと帰って行く。
継男は、地獄に仏や…と呟く。
しかし、ミオコなど、露骨に、抱かれるのを拒否する女もいた。
金を貸してもらったお礼の気持ちで抱かれただけで、本当は前から嫌いだったなどとぬけぬけと言う。
そんなある日、山で哲夫といちゃついている和子を見かけた継男は、思わず止めに入る。
ところが、以前は優しかった和子が捨て台詞を吐いて立ち去った後、哲夫は、あんな女は止めとけ。さっき、お前の事を何と言っていたか教えてやろうかと苦笑いする。
にわかにその言葉が信じられない継男は、今、自分の相手をしてくれるのは、おばやんとあいつだけなんや、自分で本人から確かめるからと、後の言葉を聞くのを拒否する。
その夜、えり子の家に久々に出かけると、亭主が帰って来ているのでと露骨に迷惑顔。
和子の家に行くと、母親常代が、兵隊にも行かんと毎日ぶらぶらしくさってと継男を罵倒して来る。
かまわず、和子に詰問しようと、上がり込んで抱きつこうとすると、常代が、殺される!誰か来て!と大声をあげたので、やむなく家を飛び出した継男は、村の自警団が走って行くのを目撃する。
その後を追い、山中の草むらで覗いてみると、勇造ら自警団が、寄ってたかって、他所者の忠明を嬲り殺ししている所だった。
翌朝、忠明は、首吊り状態で発見されたと、赤松巡査(山谷初男)が勇造らに呼ばれて現場に来ていたが、その場に出て来た継男は、あれは自殺やないと告げる。
赤松巡査は怪訝そうな顔をするが、勇造が笑いながら「天才ときちがいは紙一重。最近、こいつは変な事ばかり言うので、わしらもよう分かりませんわ」と、目でしっかり継男を見据えながら言うので、次の言葉を言い出しかねた継男は、思わずその場から逃げ出すしかなかった。
この日から、継男は、忠明の次に殺されるのは自分に違いないと確信するようになる。
産婆の注文も減り、収入源がなくなったと嘆くはんに、継男は、たんぼを売って金にすれば良いと慰める。
その金で、猟銃を手に入れた継男は、山奥に「竹中常代」と名前を記した藁人形を標的に銃の練習を始める。
藁人形が砕け散ると、愉快そうに笑う継男。
家に帰った継男は、かねて用意しておいた「犬丸継男の戦場」と書かれた、手製の村の地図を広げる。
その各家には、住んでいる人間の名前が記されてあり、継男は薬莢から火薬を手の平に落とすと、まず「竹中常代、和子」と書かれた家の上に、少量の火薬を置く。
その後、次々と、恨みを持つ家の上に火薬を置いて行き、マッチをすって、その一件づつの火薬に点火して行く。
隣の部屋で寝ているはんの顔を確認した継男は、おばやん一人残さんからな…と呟く。
そんなある日、はんを訪ねて来た世話好きな女房が、和子に見合いを勧め、その縁談に成功したと自慢話をした後、嫁に言っていたやすよが別れたと付け加える。
その理由を聞かされたはんは血相を変え、その女房を追い返すと、縁起でもないと、玄関口に塩を捲く。
やすよの離婚の原因は、継男と以前良く話をしていた間柄だった事がばれたと言うのだ。
後でその事を知った継男は、その女房の家の前に来ると、飼っていたヤギの乳を無意味に絞り出す。
驚いて家から出て来た女房に、文句を言いながらつかみかかった継男だったが、騒ぎに気付き飛び出して来た亭主に止められ、覚えとけよと捨て台詞を残して帰る。
外で子供を遊ばせていたミオコの家の前を通りかかると、何かに怯えたように、ミオコは自分の子供達を急いで家の中に連れて入る。
その場は一旦家に戻った継男だったが、猟銃を手にすると、再びミオコの家を訪れる。
すると、亭主の赤木中次(石橋蓮司)が出て来て、ごまかして帰りかけた継男に、俺が用事を聞いたると迫って来たので、両者はもみ合いの喧嘩になる。
継男は猟銃を向け、中次は撃てるものなら撃ってみろと凄む。
慌てて、ミオコが呼んで来たはんともども、必死に二人を止め、その場は何とか事なきをえたが、はんはその日以来、咳き込みながら寝込むようになる。
すっかり気が弱くなったはんは、わしが死んだら何をやっても良いが、生きとる内は悲しませんでくれと、継男に釘を指すのだった。
その翌日、継男ははんに、病気の薬だと粉薬を渡そうとするが、その色に不審を抱いたはんは、何を飲ます気や!と驚き、そのまま家を飛び出してしまう。
残された継男は、おばやん、分かってくれや…と、哀しそうに呟く。
その日の夕方、継男はやすよの家に行き、ちょうど入浴中だったやすよの身体を盗み見る。
やがて、辛抱できなくなった継男は、風呂場に飛び込むと、やすよを羽交い締めにするが、身体をまさぐっている途中で、咳き込み出し、風呂桶の中に吐血してしまう。
みじめになった継男は、その血まみれの湯を汲んで、自分の頭からかぶると、同じようにやすよも、その湯をかぶってみせる。
継男は、悪かったと言い残し、逃げ去る。
山に登った継男は村を見下ろし、殺せるもんなら殺してみろ!と叫ぶのだった。
翌日、継男の所に、赤松巡査と町の刑事達がやって来る。
昨日、はんが毒を飲まされかけたと、中次の家に助けを求めに来たらしいがと言うのだった。
その場にいたはんは、そんな事は言った覚えがないととぼけるが、猟銃を持って、中次と揉めた事は隠しようもなく、家の中を調べさせてもらうと上がり込まれても何も抵抗できなかった。
継男の部屋の押し入れの中からは、大量の猟銃や弾丸、刀剣などがすぐに発見される。
継男は、身体の鍛練のために銃の練習を始めたなど、苦しい言い訳をするが、さすがに、その武器の量の多さはごまかしようもなく、猟銃の許可証ごと全部没収されてしまう。
赤松巡査は、中次の所には謝っておけと忠告して帰る。
継男は、和子の婚礼を遠くから見送っていた。
そこに、哲夫も近付いて来て一緒に見る。
ある日、電車で梅田に出かけた継男は、又、哲夫に出くわしたので、何の商売をやっているのか聞いてみるが、人には言えんし、どうせ、その内兵隊やとごまかされてしまう。
継男が町に出た目的は、又、猟銃の購入だった。
5連発以上の銃や日本刀も買いそろえる。
ある日、山で座っていた継男の元にやすよが近付いて来て、その内、継やんが何かしでかすって、村中で噂していると心配する。
継男が否定すると、自分は又、別の家に嫁ぐ事になった。うちは寂しがりやからあかん…と報告するやすよを、継男は抱き締め、女だけと違う、男かて寂しいんやとその身体にむさぼりつく。
次々と、継男と関係があった女が村を出ると言うので、勇造ら村の若衆たちの間に不穏な空気が流れ出すし、継男の姿を見かけると八つ当たりして来る。
しかし、継男の方も開き直り、殺せるもんなら早く殺してくれと、勇造らを挑発する。
それに対し、勇造の方も落ち着いたもので、その内相談して、殺す事になったらおばやんに報告に行くと返す。
継男は、殺すべき対象が、村から抜け出しはじめた事に焦りを感じはじめる。
その夜、継男は、頭につける懐中電灯を試しにかぶってみた。
二本の懐中電灯を頭に付けたその姿は、正しく鬼の姿だった。
翌朝、山に登った継男は、村を見下ろしながら、皆様方よ、今に見ておれでございますよと呟くと、やすよからもらった飾り紐で、自分の首を締めるまねをする。
自宅に戻った継男は、やすよに手紙を書きはじめる。
10月20日、自分は戦場に行くので、絶対、その日は村に戻って来てはいけない。
自分は鬼になります、本当にさよならですと記す。
10月20日、昼寝した後、夕方起きた継男は、一人、村はずれの電柱に登り、電線を切断する。
停電だと思い込み、早めの夕食を勧めるはんは、和子が今、村に戻って来ていると継男に告げる。
それを聞いた継男は、今日は良い日や、大安や!と喜ぶ。
深夜1時、時計の音で目覚めた継男は、その場で全裸になり、ふんどしから下着、学生服まで、真新しい服に着替えると、かねてより用意していた懐中電灯を頭と胸に装着し、短刀を腰に差すと、猟銃を構える。
そして、隣の部屋で寝ていたはんの枕元に立つと、入り口付近から斧を持って来て、「おばやん、約束や。笑って見送ってくれ」と言いざま、斧を振り降ろす。
はんの返り血を浴びた継男は、そのまま外に飛び出すと、目標としていた近所の家に押し込み、夫婦もろとも短刀と銃で殺す。
えり子の家に入るが、肝心のえり子の姿がない。
続いて、竹中和子の家に押し入ると、常代の頭を猟銃で吹き飛ばす。
物音で隣の部屋から出て来た和子を見た継男は、猟銃を彼女の口に押し込み、短刀で突き刺して殺す。
その後、やすよを追い出した文昭の家に押し入る継男。
文昭は、継男が狂ったと叫びながら外に逃げ出す。
家族も起きだし、銃を向ける継男に怯えるが、自分達はお前の悪口など言った覚えはないと父親が叫ぶと、継男は、黙っとれよと言い残し、その場を立ち去って行く。
次に、弥一を撃殺す。
弾が切れたので、一旦山に登り、弾を込め直す継男の元に、あろう事か、やすよが泣きながら近付いて来る。
手紙をもらって帰って来たのだと言う。
継男は、お前の所はやらんと言うが、やすよは、今のあんたは鬼や!と泣叫ぶ。
しかし、継男は、鬼で何が悪いと言い残し、その場から、再び村に戻って行く。
和子の見合いを世話した女房夫婦も、銃と短刀で殺害する。
その後、咽の乾きを癒すため、庭に飼われていたヤギの腹の下に頭を突っ込むと、その場で乳を絞り飲み干す。
その後、勇造の家に向かうと、出て来い!と叫び、二階の窓にその姿を見つけると、猟銃をぶッぱなす。
しかし、勇造も必死で、窓に次々と畳を重ねて弾を防ごうとする。
継男の猟銃の弾は、その畳を次々に貫通するが、その様子を勇造は愉快そうに見つめる。
継男の撃つ弾は尽き、短刀を二階の窓に投げ付けるが、むなしく跳ね返されただけ。
勇造は、諦め、再び、えり子の家に行ってみると、今度は夫婦揃っていたので、猟銃を突き付けると、夫の方がえり子をかばったので、その頭を吹き飛ばす。
その後、逃げ回るえり子も射殺する。
山に登った継男は、待っていたやすよに、肝心の奴、あかんかった…と、残念そうに成果を報告する。
やすよは止めてと止めるが、俺はこれで終わりやと言いながら、継男はやすよの腹に耳を押し付けて来る。
妊娠している事を知っている様子。
鬼が鬼退治をしたまでの事や、おばやん一人では寂しがっている。ここの女は寂しがりややからな…と言いながら、一人、さらに山を登って行く。
「♪お〜れ〜は、河原の 枯れすすき〜♪」と歌いながら、山奥に座った継男は装備を解いて行く。
そして、やすよからもらった紐を取り出すと、遠くに投げ捨てる。
草を扱き、そこから指にたまった朝露を口に含んだ継男は、猟銃を自らの口にくわえると、引き金に足の指をかける。
「皆様方よ、さよならでございますよ…」と心に呟いた後、微笑みながら、引き金にかけた足の指に力を込める。
エンドロール
山に響く銃声…
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横溝正史の金田一ものミステリ「八つ墓村」のヒントにもなったと言われる現実の猟奇事件「津山三十人殺し」を描いた作品。
とは言っても、主人公が殺人にいたる経緯や、村の背景など、実際の事件をかなり簡略化しているため、見た目、ややあっさりした印象になっている。
もっとグロテスクで強烈な内容を想像していたが、意外にも、ごく普通の青春映画に近いものに写った。
主人公を演じている古尾谷雅人が、かなり健康そうに見える事もあり、それまで勉強一筋だった秀才が性に目覚め、それに耽溺して行く様や、自分が村人達から抹殺されてしまうのではないかと言う強迫観念に迫られ、徐々に精神の均衡を崩して行く辺りの描写が弱いため、今一つ、クライマックスの事件での高揚感、恐怖感が伝わって来ないのだ。
背景となっている、閉鎖的な村の陰湿さの表現なども、台詞だけで説明しているようで物足りない。
全体的な出来としては、松竹版「八つ墓村」(1977)と同じくらいで、まずまず…と言った所だが、殺害シーンの衝撃感だけで言えば「八つ墓村」の方に軍配があがるかも。
