1968年、大映京都、野坂昭如原作、藤本義一脚本、三隅研次監督作品。
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大阪、阿部野区役所にやって来たのは、デスマスクを作る仕事のガンめん(勝新太郎)
戸籍係りのジャッカン(藤村有弘)に、死亡届が出ていないかと聞くが、ないと言う。
そうしたやり取りをしている最中、一人の男が、死亡届けを出しに来たので、その住所を覗き込んだガンメンは、嬉しそうに後で会おうと男に告げ、区役所を飛び出す。
何ですか、今の?と戸籍係りに訪ねる男に、係りは仏画家ですわと教える。
さっそく、死んだ仏のある家に駆け付けたガンめんは、仏の顔にワセリンを塗ると、布団の傍らで石膏を溶き、やおら仏の身体にまたがると、気合い諸共、その石膏を、仏の顔に振り掛けはじめる。
威勢が良いので、石膏は飛び散り、ガンめんの身体にも、周囲のふすまにも飛び散る有り様。
石膏を浴びせながらガンめんは、良く成仏された仏様は、白く上がり、そうでない方は、やや黒ずんで仕上がるなどと遺族に話しかけ、作業を終えると、石膏が固まるまで、20分ほどお待ち下さいとその場に落ち着く。
そんな玄関先に突如訪ねて来たのは、清葬業を名乗る葬儀屋米倉(遠藤辰雄)、遺族が名刺を渡すと、一体どこで聞いて来たのかと相手がいぶかしがっている間に、勝手に上がり込んで来る。
その直後、今度は安楽社の営業課長稲垣(財津一郎)なる別の葬儀社がやって来て、同じように、葬儀一切を任せて欲しいと遺族に伝える。
区役所で聞いて来た清葬業に一歩で遅れたと分かった稲垣だったが、気にせず、自分達は医者から情報を聞いたと言いながら、こちらも勝手に上がり込んで米倉と掴み合いになる。
その一部始終を仏の横で見ていたガンめんは、ここは仏様の前や!と言いながら、米倉と稲垣に石膏を浴びせかけるのだった。
一仕事を終えたガンめんは、公衆電話から霊きゅう車の運転手ラッキョ(多賀勝)を呼び出すと、自ら、やって来た霊きゅう車の運転席に乗り込み、ドライブと洒落込む。
運転をしながらガンめんは、死は厳粛なもの、それが最近の葬儀屋は何や!金もうけばかりと、ラッキョに対し、日頃の憤まんを口にし始める。
もっと、涙を絞り出すような葬式を出さねばならぬ。
おれの子供の頃にやっていた野辺の送りなんか、しっとりしたものやった…と、子供の頃を回想すると、大きな声で子供の頃に覚えた葬儀の唄を歌いはじめる。
ガンめんの父親は隠坊(遠い昔、火葬や墓所の番人を業としていたため差別されていた人)だった。
やがて、ラッキョの心配そうな呼び掛けに現実に引き戻されたガンめんは、スピードを出し過ぎて、パトカーに停車を命じられている事に気付く。
しかし、ガンめん、少しも慌てず、道路脇に一旦停車すると、近付いて来た警官に、後ろに乗っておられる仏様が、お腐りになりますので…と、平気で嘘をつく。
そう言われてしまうと、さすがの警官も、特別に許可しようと言い、見のがすしかなかった。
その後も走行を続ける霊きゅう車の中で、ガンめんは上機嫌。
この車でグランプリレースやったらおもろいやろなとか、この車に染み付いた死人の匂いを嗅ぐと気分が良くなるんやなどと言いたい放題。
やがて、高速の料金所が見えて来ると、大型の料金を徴集しようとする係員に、後ろから来る御遺族の車からもらって下さいと言い残して、ただで抜け出てしまう。
その後から来た乗用車に乗っていた運転手(若井はんじ)から、霊きゅう車料金を徴集しようとした係員は、「我々は御遺族ではなく、御家族じゃ」と反論され、どちらも戸惑うだけだった。
ガンめんが運転する霊きゅう車は、やがて広大な敷地の工事現場の中に入り込む。
「エキスポ'70 大阪万国博覧会」の建設予定地だった。
調子の乗って走り回っていた霊きゅう車は、やがて、ぬかるみにタイヤを取られて立ち往生してしまう。
そこに、工事関係者が集まって来て、何ごとかと詰問して来る。
ガンめんは、またまた平然と、火葬場に行く途中、道に迷ってしまったとでまかせを言い、まんまと、工事関係者たちに車を押させて、脱出する事に成功するのだった。
膨大な数のデスマスクが飾ってある自宅アパートに戻ってきたガンめんは、自分自らモデルとなり、ラッキョにデスマスクの作り方を伝授しはじめる。
しかし、ラッキョが、見よう見まねで、横たわったガンめんの顔に石膏を浴びせかけて行くと、途中で、ガンめん苦しみだし、とうとう気絶してしまう。
鼻に刺した呼吸用ゴムホースに、石膏が詰まってしまい、窒息したのだった。
途中でそれに気付いたラッキョは、慌てて、石膏が固まり出したガンめんを揺り起こそうとするが、びくとも反応がない。
部屋を飛び出したラッキョは、同じアパートに住むトコ(西岡慶子)に、医者に連れて行ってと頼む。
ガンめんが気付いたのは、小さなベッドの上だった。
助けてくれたのは、手術に失敗して、免許停止されたと言う美容整形外科の先生(伊藤雄之助)だった。
ガンめんは、その部屋に置かれていた美容整形用の石膏マスクを見て、先生が自分と同じような仕事をしている事に気付くと、自分達と一緒に仕事をやらないかと持ちかける。
その場にいたトコも、やりたいと言い出すが、服飾科出では使いようもなく、葬式は女のやるもんやないとガンめんは断る。
さらに女狂いの癖が抜けなず、それが原因で、過去三回の離婚経験者と言う先生から、いきなり尻を触られたので、トコは逃げ出してしまう。
先生との共同作業の最初の仕事は、あまりの激務の結果、心筋梗塞で亡くなったと言う市会議員の仏だった。
まず、先生が、仏様の顔にパラフィンを注射し、その後、遺体の両腕をぐるぐる動かす。
こうすると、顔の筋肉がきれいになると言うのだ。
その後、先生が自分で持って来た抹茶を立て、ガンめんがそれを飲んで、静かに自分の出番を待つ。
これも、二人が考えた演出だった。
デスマスク取りの作業を終え、近くの公園で昼食のパンを食う事にした二人は、今後は二人で一回、2万料金を取ろうと相談しあう。
先生は、戦時中、ガダルカナル戦線に参加し、大勢の人を殺したので、今やっている死顔美容は、その時の罪滅ぼしでもあるとしみじみ語りはじめる。
その後、区役所の戸籍係りの所に、ラッキョがやって来て、死亡届の届けでが来ないかと待ち受けていた。
そこに、一人の女性が、死亡届を持って来たので、それを覗き込んだラッキョは、すぐに帰ろうとする。
しかし、柱の陰に隠れていた米倉に捕まってしまう。
人の縄張りを荒らすなと詰め寄る米倉に、さらに外にいたガンめんが飛びかかり、葬式は縄張りなどでするものではないと締め上げる。
米倉は、戸籍係りのジャッカンを指差し、あいつには月々3〜5万渡しているんだと喚く。
そうした騒ぎに気付いた警官がやって来て、ガンめんとラッキョウは交番に連れて行かれる。
ガンめんは、どうしておれたちが捕まるのだと、いつものへ理屈をコネだし、取り調べる警官を煙りに巻く。
その時、歩道橋の下で行き倒れが見つかったとの電話が入ったので、警官が見に行こうとすると、ガンめんたちももつき合うと一緒に出かける。
倒れていたのは、この辺りでは良く知られるホームレスの男だった。
ガンめんは、新聞紙がかかっていただけのその遺体に、自ら着ていた上着をかけてやり、大統領でもホームレスでも、死んでしまえば、皆、同じ仏だと警官に説明する。
すると、その様子を見ていた野次馬の中の、身なりの良い中年男が気に入ったと声をかけて来る。
事情聴取が終わったら、家に遊びに来いと言うのだ。
さっそくラッキョウと一緒に出向いてみると、そこは大関西工業社長の自宅だった。
二人を出迎えた社長は、酒を振る舞いながら、自分は戦時中、軍需工場で儲けたのだが、先ほどのあんたの話に感銘を受けたと話し出す。
照れながらも、ガンめんは、自分の父親は隠坊だったが、今の葬儀は仏に対する愛情と尊敬がない。自分なりの葬儀をやってみたいと自説を展開しはじめる。
すると、聞いていた社長は、お手伝いがしたいと言い出す。
ガンめんに葬儀屋をやらせてくれると言うのだった。
その夜、焼肉屋に集合したガンめん、ラッキョウ、先生、そして、先日の乱闘騒ぎで、役所にいづらくなり、辞めてしまったジャッカンが揃う。
ジャッカンも、新しい葬儀屋の仕事に一枚乗せてくれと言うのだ。
先生は、新会社には、それに相応しい新しい名前がいるねと考え出し、国際葬儀協会、略して「国葬」ではどうかと提案する。
自分達の職業も、単なる葬儀屋ではなく、ヒューネラル・ディレクターではどうかとも。
かくして、ビルの一室を借り「国葬」が立ち上がる。
ガンめんはこの会社の電話番号は、307-4942(ミンナ ヨクシニ)に決めたと報告する。
ガンめんは先生とラッキョウを前に、葬儀屋で倒産したと言う話も聞かないが、金持ちになったと言う話も聞かない、自分は葬儀屋のナイチンゲールになりたいなど、訳の分からない演説をする。
そこに、始めて電話が鳴り、ジャッカンから初仕事の話が飛び込んで来る。
亡くなった仏は、踊りの師匠だった。
そのやつれた死に顔を見た先生は、いつもより念入りに美顔術を施し、化粧も念入りにすると、まるで、生き返ったかのような死に顔になったので、脇に控えていた弟子達は全員驚く。
その後、独自の演出で葬儀を執り行い、いよいよ出棺と言う時を迎えるが、外では、清葬業の米倉と安楽社の稲垣が待ち構えていて、葬儀の邪魔をしようと出て来るが、棺桶を抱えたガンめんは、足で二人に応戦し、何とか追い払って事なきを得る。
仕事は軌道に乗りはじめ、キャバレーで祝賀会をする4人。
しかし、そんな中、ガンめんだけは仕事の構想に夢中で、葬儀を頼む側になって考えると、結局、死んでしまったら、遺族は有名な会社の方を選ぶ。まだ生きている内に、本人の承諾を受けとかなければいけないと言い出す。
葬儀の仕方について、生前に、遺言と言うか、御墨付きをもらおうと言うのだ。
それを聞いた先生は、自分には、特殊部隊の知り合いで、今、偉くなっているものがたくさんいるので紹介しようと言い出す。
その場で、ジャッカンが、契約書の文句を考え出す。
そこにやって来たホステスは、何とトコだった。
ジャッカンは、あんたが死んだ♪と「小指の思い出」の替え歌を歌いだし、これは国葬のテーマソングになるのでは?と上機嫌になる。
ガンめんは、宣伝にも力を入れんと…と呟く。
その後、早速先生から紹介されたとある社長(藤岡琢也)を訪ねたガンめんは、自分が死んだら、戦時中の「屍衛兵型」の葬儀をやってくれと注文をつけられ、その「屍衛兵」とはどう言うものかを聞かされる。
ある日、会社にいたガンめんは、先生からの電話を受けるが、その内容は「人を殺した…」と言う衝撃的なものだった。
意味が分からず、先生の診療室に駆け付けてみると、トコの中絶手術をしたと言うのだった。
自分の子供を堕ろしたのか?とガンめんが聞くと、すっかりしょげ返った先生は、違う、トコを今日はじめてここに連れ込んだら、いきなりつわりになったと言う。
しかし、その話を聞いたガンめんは、急にアイデアを思い付く。
水子の葬儀をやると言うのだ。
水子達は天国に行けるのか?そう言えば、昔は、お地蔵さんと言うものがあったな…と、又、ガンめんは昔を思い出す。
幼い日のガンめん(斉藤信也)は、お地蔵さんのお供物を盗んだ事があったのだ。
会社に戻り、電話で問い合わせてみると、年間100万人もの中絶が行われていると分かり、小さな国の総人口より多いじゃないかと驚くガンめん。
ジャッカンは、合同葬儀なのだから、特定の宗教を使わない方が良いだろうと提案し、それを聞いていたラッキョウは、ボサノバ調のお経ではどうやと歌ってみせる。
そこへ、噂を聞き込んだ「週刊ガールズ」の取材がやって来たので、ガンめんは得意になって、あれこれ「水子の葬儀」計画を語りはじめる。
葬儀には、母親、医者、心当たりのある男も出席するだろうから、相当大掛かりになると思うと説明し、記者に合同でやりませんかと勧める。
その場で、ガンめんは、坊さんを十人ばかり集めてくれと電話をする。
そうこうしている内に、全国玩具協会と言う所から、多量のおもちゃの寄付が届く。
さらに、ドライミルク、おしめカバーなども。
そんな中、一人の中年男がやって来る。
ガンめんが呼び寄せたらしいその男は、紙芝居の絵描きで、水子が地獄で苦しんでいる絵を描いてもらうのだと言う。
いよいよ、広場で、壮大な「水子葬儀」が執り行われる事になる。
死人のように三角布を額に巻いて、白装束姿のガンめんが登場し、ジャッカンから紹介してもらった厚生課長に、開会の挨拶と黙祷の音頭取りを頼む。
その後、巨大な地獄絵図の除幕式が行われ、余りにも生々しい水子の苦しむ姿に、参列していた母親達は悲鳴を上げ、気絶するものが続出する。
そこに、先生が乗ったヘリコプターが近付いて来る。
トランシーバーで下と連絡を取り合い、会場の上空に達した時、先生が五色の紐で結ばれた白い袋を投げ落とす。
それを下に用意したクッションで受け止めたガンめんたちは、壇上に持って上がり、袋から何かを出す。
それは、むくむくと大きくなり、巨大な風船式お地蔵さんになる。
ガンめんが「お祈り下さい」と参列者に呼び寄せると、皆一斉に祈りだし、やがて用意された鳩が舞い、参列者達は、我先にと、用意されていたさい銭箱に群がり、金を投じるのだった。
盛大に「水子葬儀」のセレモニーが終了し、国葬のメンバーたちはマッサージ室に集合して身体を揉んでもらっていた。
そろそろ国葬の決定打を打たんと…と呟いていたガンめんが、突然「テレビコマーシャルや!」と叫ぶ。
かくして、テレビで「第一回テレビ葬儀」が始まる。
司会を勤めるガンめんが、挨拶の後、スタジオセットに揃った遺族にインタビューを試みる。
その後、コマーシャルが入り、かしまし娘風のコマーシャルソングが披露された後、アナウンサー(曽我町子)が厳かに、国葬の宣伝を始め、予約制もございます。電話は307-4942と伝える。
ある晩、酔って久々に自宅アパートの自室に帰って来たガンめんは、壁中に飾ってあるデスマスクの一つの鼻の部分がねずみにかじられている事に気付く。
そのデスマスクを取った時、石膏に若干メリケン粉が混じっていたらしい。
ガンめんは、部屋中のデスマスクに見つめられているように感じ、何や違うな?ちょっと、調子に乗り過ぎたか?と自問自答始める。
仏さんに対する、大切な気持ちを忘れていたんではないかと気付いたのだった。
ガンめんは、今、仏さんたちが教えてくれたんやな、堪忍やと頭を下げる。
一方、ジャッカンとラッキョウは、葬儀はレジャーやないかと、霊きゅう車を運転しながら話し合っていた。
ある日、キャバレーで、「葬儀会館と言うのを作るのはどうか」とジャッカンが提案する。
結婚会館があるんだから、葬儀会館があってもおかしくないだろうと言うのだ。
しかし、独り、ガンめんだけは、その話に乗れないと言い出す。
国葬を始めた時の精神と、まるっきり反対の方向なのではないかと言うのだ。
葬儀はレジャーやと言い切るジャッカンの言葉を聞いたガンめんは、俺は降りると言い出す。
お前達がびっくりして腰を抜かすようなアイデアを考えてみせると言い、ガンめんは席を立って行く。
一人になったガンめんは、昔の葬式と言うのは、しっとりして、人の心にしみ入るもんやった…と、又しても、子供の頃を思い出すのだった。
その時、万博のポスターを見かけたガンめんは思い付く。
「万博は生きている人間の祭りや。死んだもんはどうなる?葬儀博覧会があっても良いではないか!」と。
さっそくガンめんは、国葬のスポンサーになってくれた社長に相談に出かけるが、意外にも、そんなもん、誰が観るんだ?自分は儲からないものには金は出さんと言うではないか。
結局、金もうけのために、国葬設立に金を出したに過ぎなかったと分かる。
ガンめんは、一人でやる決心をし、工事人を三人ばかり雇うと、金は後で必ず払うからと頭を下げ、地下に博覧会の準備を始める。
さらに、あの紙芝居の絵描きに頼み、多くの絵を描いてもらう事にする。
長らく仕事がなかった絵描きは大喜びで手伝いはじめる。
その後、ガンめんは、学校を回って葬儀博覧会の営業に回るが、相手にされない。
戦争の悲惨さや、死の恐怖を子供達に見せるなんて、子供もPTAも歓迎しないと言うのだ。
近郊の村役場などにも営業に回るガンめんだったが、村長(田部嫌三)は、今どき一発で日本中が滅びる危険性がある水爆を、本当に落とすような愚かな国家があるはずもなく、戦争の事など皆忘れたがっているんだと、全く話すら聞こうともしなかった。
仕方なく、ガンめんは、葬儀会館を作り、そこの社長におさまっていたジャッカンの元を訪ね、ここで発行している「葬儀文芸」と言う本に、葬儀博覧会の広告を出してくれと頼み込む。
驚いた事に、あのトコは社長秘書になっていた。
葬儀会館の地下には、遺体を冷蔵保存できる冷凍室があり、そこに遺体を入れておけば、何日間でも腐らない。
その間、遺族の連中には、3、4階で、存分に宴会を楽しんでもらうのやとジャッカンは自慢する。
その後、ガンめんは、先生とラッキョウが始めた「死顔様教団」と言う宗教団体の本部を訪れ、信徒たちに宣伝ちらしの配付を依頼する。
ガンめんは「葬儀博覧会」のプラカードを持ち、群集の中に入ると、大声で演説を始める。
ガンめんは、地下に作った「葬儀博覧会場」を訪れ、最後の仕上げを一人でやろうとする。
その時、地上では、閃光が走る。
「葬儀博覧会場」も倒壊し、ガンめんは地下に閉じ込められてしまう。
その後、一人で何とか土砂を取り除き、外に出てみたガンめんは呆然とする。
大阪の町が消えていたのだ。
そこには、どこまでも続く廃虚が広がっているだけ。
水爆や!水爆が落ちたんや!とガンめんは叫ぶ。
「 これこそ、正真正銘の葬儀博覧会やないか!」と呟いたガンめんは、無気味に赤く輝く太陽に向かって手をかかげ、進もうとするが、突如、瓦礫に隠れていた空洞にすっぽり落ちてしまう。
後には、ガンめんが歌う、葬儀の唄が響くばかり…
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野坂昭如、藤本義一、三隅研次、勝新太郎と、60年代を代表する表現者達が集結した社会風刺劇。
大阪万国博覧会が始まる直前の大阪を舞台に、表面的に浮かれ騒ぐ世相を強烈に皮肉っている。
劇中に写し出される、パビリオン建設前の万博予定地の姿が珍しい。
伊藤雄之助、藤村有弘、財津一郎ら個性派俳優が集結し、大阪らしい猥雑な庶民パワーを見せつける。
ラストは、かなり予想外の展開で、一挙にシュールというか、終末SF風になっている所が凄い。
勝新、三隅コンビでSFとは…と言う意外さである。
今観ると、いろいろな意味で興味深い作品だが、「死」を取り扱っているだけに、公開当時としては、一体、どう言う客層を狙っていたのだろうと疑問を感じる不思議な内容である。
勝新の名前だけで、客を呼べると信じて作ったのだろうか?
