1974年、東宝映画+東宝映像、五島勉原作、舛田利雄+坂野義光潤色、八住利雄脚本、舛田利雄監督作品。
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嘉永5年、1853年、長崎
ノストラダムスは、今から300年前、「諸世紀」または「百詩篇」と題する予言書を表した…と、蘭学者西山玄哲(丹波哲郎)は門下生たちに講義をしていた。
「黒い禍船がエダと言う国にやって来る。しかるによって開ける」
しかし、そこに幕府の役人たちが人心を惑わすとしてなだれ込んで来る。
嘉永7年、ペリーが浦賀にやって来た。
屋敷内からいち早く逃げ出した玄哲の妻おりん(谷口香)が持ち出した予言書は、息子玄武(田遠実)からその息子、西山玄学(丹波哲郎)に継がれる。
太平洋戦争末期、長男、次男がそろって南方で死に、三男も出征中である玄学は、読書会と称してノストラダムスを仲間の医師たちに紹介したとして、柏尾憲兵少佐(青木義朗)に尋問されていた。
玄学は、ナチスの侵攻や日本に落とされるであろう新型爆弾の事が予言されていると平然と答える。
タイトル
ナレーション(岸田今日子)「女が船に乗って空を飛び(ソ連の宇宙飛行士テレシコワの写真)」「大王がドロスで暗殺される(ケネディ暗殺の写真)」などがタイトルバックに流れる。
科学者西山良玄(丹波哲郎)は、ジベレリンを食料問題の解決に使おうとする政府の計画書に怒っていた。
日本人がジベレリンを大量接種すれば、消化器系統にガンが発生し、大量死を招きかねないと言うのだった。
空港には、取材でアフリカに行っていたカメラマン中川明(黒沢年男)が帰って来ていた。
中川は、恋人西山まり子(由美かおる)の働くバレエ教室にやって来る。
まり子の父である良玄の研究所の部屋の外には、マスクをした子供たちが何人も腰掛けていた。
経理担当の木田(浜村純)が、その子たちに飴を配っている。
部屋の中では、二人の警官(鈴木治夫、青木敏夫)が来て、良玄が公害調査のため、工場の低空にセスナを飛ばした事が航空法違反になると注意をしていた。
しかし、良玄は、部屋の外にいる子供たちを指し示し、警官を追い出した所に、中川とまり子が帰って来る。
久々に日本に帰って来た中川は、日本の空も大分きれいになりましたねと。壁にかかった工場地帯の写真を見て言うが、良玄は目には見えないものが増えていると嘆かわしそうに答える。
それを聞いた中川は、アフリカの状況もひどかったと報告する。
そこへ、夢の島に2~30cmくらいもある妙な動物が出現したと助手が報告して来る。
すぐさま、三人とも夢の島に向かう事にする。
夢の島では、自衛隊が火炎放射でゴミの山を消去していた。
そのゴミの中から、巨大ななめくじのようなものがはい出して来る。
中川はその様子を懸命に写真を撮る。
良玄は、そこ原因究明をしなければ行けないと詰め寄るが、自衛隊々長(下川辰平)は相手にしない。
その夜、良玄は中川も交え、自宅ですき焼きの鍋を囲みながら、豆腐の中に含まれている防腐剤のAF2が遺伝子に影響を与え、やがて奇形児が生まれる可能性があると説明をする。
中川は、予言に書かれた「1999年7の月、空から恐怖の大王が降って来る」とは何かと問いかける。
話の最中、電話がかかり、それに出た妻の伸枝(司葉子)の様子がおかしいので、良玄が問いつめると、脅迫電話だと言う。
それを聞いたまり子も、バレエ教室にも同じような脅迫電話がかかって来た事があると打ち明ける。
その愚劣な行為に憤った良玄は、若い中川とまり子に「子供は作るな」と命ずる。
翌日、研究所で良玄は、銀行が金も貸してくれなくなったと木田から報告を受けていた。
スポンサーである殿村の寄付も、ここの所滞っていると言う。
良玄は、金の事は自分が何とかすると言い、木田の娘にもうすぐ初孫が出来るそうだねと話を変える。
「自然と人間の未来」と題されたシンポジウムで、植物学者(平田昭彦)は、宅地造成のため自然破壊が進んでいると言う講義を行っていた。
同じシンポジウムに出席していた良玄は、開発と保護のバランスを取ってやらなければ行けないと、反論する聴衆に説得する。
未来の都会は、ずっと今よりも快適な空間になるのではないかと聞く聴衆に、動物学者(小泉博)は、ストレスがたまると動物は死ぬと、ネズミの実験を例にとりながら講義し、大都会の人間もおかしくなると説明する。
こうした学者たちの意見には、聞いていた聴衆から、いろいろ疑問や反論も出て来る。
中川がまり子を連れて帰って来た漁村では、大量の魚の死骸が打ち上がっていた。
漁師たちと一緒に、それを呆然と見つめるまり子と中川。
借金をして船を借りている漁師たちは、絶望感に打ちひしがれていた。
一人の老漁師が、海に入っていく。
中川の父で組合長の三治(平田未喜三)であった。
妻勝子(中村たつ)が止めようとするが、死を覚悟したように漁師は足を進める。
中川は必死にそれを止め「気持ちは分かる」と言うが、「分かるもんか。わしは魚や貝と一緒に死ぬんだ!」と叫ぶ。
その夜、父親を落ち着かせ自宅で寝かしつけた中川は、海辺でまり子と二人きりになる。
中川は、自然を破壊し続ける人間に絶望したと嘆くが、まり子は人間とあなたを信じると答える。
そのまま、二人は結ばれる。
まり子は「うれしい…」と、涙を流す。
「最近、北九州のある総合病院では、新生児の三分の一が奇形だった」と、病院長(志村喬)が良玄に報告していた。
「原因は、色んな要素の複合的要因としか言えない」と言う。
良玄は、そのような赤ん坊を死産として処理するのは殺人ではないかと疑問を述べるが、次の瞬間、手にしていたレントゲンに記されていた名前が、自分がこの病院に紹介した会計士木田である事に気づき、木田の娘(麻里とも恵)が入院している部屋に駆けつける。
木田は、先生の下で公害をなくす仕事をして来たが、それがこんな結果に…、先生がやって来た事は少しは役に立っているのですか!と詰め寄る。
無力感を感じた良玄は、君の言っている事はすべて正しいと答えるしかなかった。
その廊下で、家内(稲野和子)を神経科に連れて来たと言う田山(谷村昌彦)から声をかけられた良玄は、3時頃に研究所に来てくれと言い残し、異変が起こったと噂されるニューギニアへの調査団を見送るために羽田に向かう。
午後、先ほどの心配性の妻と子供を連れ、田山は研究所に来ていた。
心配する家族に、毎日楽しく過ごしなさい。田舎へ行って芋でも作ればとアドバイスする良玄の言葉に、妻は「やっぱり東京では何か?」と不安そうに尋ねる。
家族が帰ると、良玄に電話がかかって来る。
スポンサーから圧力がかかったので経済的な援助はストップをすると言う殿村からの電話だった。
そこへ助手が、尼崎に人間が縮む奇病が派生していると報告しに来る。
その頃、まり子と一緒にレビューを見ていた中川はめまいを感じていた。
浅草行き銀座線、運転手は、突如、線路に未知の雑草が生えているのに気づき急ブレーキをかける。
謎の雑草が隧道を一夜にして破壊して繁茂していたのだ。
良玄は、今回の事件は、日本中に発生している奇怪な現象の一つであり、福島の亜鉛鉱の廃坑の近くで、同じ水系の井戸の水を飲んでいた子供たちに特殊な能力が生まれていると学者のミーティングで発表していた。
異常に足の速い男の子、すごい跳躍力を持つ女の子、異常に計算能力が高い男の子の例などを話し、これら児童の何人かはその後すぐに死んでいるのから明らかなように、水系が原因と思われる突然変異は末期状態と説く。
しかし、それを聞いていた他の科学者たちは理想者過ぎる良玄の言葉に反論し、なぜあなたは「予言書」などと言う際物を吹聴しているのかと問いつめる。
良源は、その予言では、今の状況は科学の行き着いた成れの果て末期現象を表現しているのだと説明する。
クリスチャンでもある環境省長官(鈴木瑞穂)は、もしあなたが政治家だったらどうしますと問いかける。
良玄は、人間の生き方の転換、すべての面で我慢する事、向こう十年は必要最低限の産業は停止する、来るべき食料危機には政府による食料統制、人口抑制のためには、弱気もの、能力なき者は…と、どんどん過激な提案をする。
しかし、その良玄の極論に、君に言う事はナチスと同じじゃないかと猛反対が出る。
そこに、開発大臣(瀬良庄太郎)が突如おかしくなり、高い木に登って「どんぐりころころ」と口ずさみだしたとのニュースが今入ったと環境庁長官が発表する。
バスガイド(加藤小夜子)が「あなた」を唄っているバスに乗って田舎にやって来た木田と妻(音羽久米子)は、ご詠歌を唄って放浪する巡礼になっていた。
その頃、エジプトのピラミッド周辺では雪が降っていた。
大気が汚染され、微粒子状のちりが大気を覆って、地球が寒冷化していたのだ。
亜熱帯の海上が氷結。
反対に、アフリカ、インド、東南アジアでは干ばつになっていた。
スイス、ジュネーブでの国際会議で、異常気象の事が検討される。
食料危機の事も問題視される。
アフリカ、アジアの人口爆発に原因があると指摘された開発途上国のメンバーが、先進国が過剰接種している動物性タンパク質、つまり家畜は餌として穀物を消費しており、それでは穀物を直接摂取する何分の一かの栄養価にしかならず、先進国の贅沢こそ問題があると反論する。
良玄は政府の相談会で、日本の世界最低レベルの食料自給率は40%だと述べていた。
それを聞いていた首相(山村聡)は、確かにかつて政府は、農産物の国際分業と言う間違いを犯したが、食料自給化への農政変換を考えていると述べる。
その時、環境省長官の口から、ニューギニア国連調査団が、全員消息不明とのニュースが伝えられる。
ニューギニアの異常現象には、成層圏にたまっていた原子の灰が、何らかの原因でジェット気流に乗り、この地域に集中的に落ちたせいではないかと推測されていたのだ。
それを聞いた良玄は、自らニューギニア、ポートモレスビーに中川を従えて飛ぶ。
ジープでジャングルの奥地に向かう一行。
防護服を着て、ガイガーカウンターを持ちながら進んでいた一行は、とまった蝶を食べる奇怪な食虫花を咲かせた樹に出会う。
放射能値が減少した場所に到達したので、防護服を脱いだメンバーたちだったが、そこへ突如、巨大吸血コウモリが襲撃して来る。
銃で撃退するが、その直後、今度はメンバーの一人フランクの首筋に巨大ヒルが吸い付く。
その時、中川が、その場に似つかわしくないライターを拾い上げる。
羽田で、調査隊員の一人だった小野が持っていたライターだった。
キャンプを設営した良玄は、フランクのために輸血の準備を命ずる。
検査の結果、ひるは汚染されたコケを食べている事が判明したからだ。
危険な状態に陥っていたフランクは、突如、ベッドから起き上がったフランクは暴れ始める。
脳が犯されていたのだ。
その後、キャンプの外で奇声が聞こえる。
様子を見にメンバーたちが外に出たちょっとの間に、不気味な原住民がテント内に侵入しており、フランクの身体をむさぼり食っているのを、戻って来た良玄が発見する。
凶暴化した原住民たちは、隊員たちに襲いかかって来る。
良玄は、彼らも人間だから撃つなと命ずるが、外国人メンバーたちは、その言葉を無視して発砲し、原住民を追い払うしかなかった。
奥に進んだ彼らは、洞窟を発見する。
その中には骸骨が多数転がっていた。
良玄は第一次隊員のユニフォームの一部を発見する。
奥の方に、まだ生き残っていた小野たちを発見するが、彼らにもう意識はなく、その身体は腐っていた。
原住民と違い、汚染への抵抗力がなかったかららしい。
外国人メンバーは、彼らを射殺しようとする。
それを必死に止める中川。
外国人メンバーは、これ以外に何が出来ると問いかける。
すると、良源自らが銃を取り、苦悩の末、小野を撃ってしまう。
洞窟の外に出た良源は、自ら仲間を殺してしまった事に苦悩するが、それを後から出て来た外国人メンバーが、神も許してくれるだろうと慰める。
これは、皆、地球の上で起こった事、やがて地球は地獄になるかもしれんと良玄はつぶやく。
翌朝、メンバーは、死んだ仲間たちの墓を作ってやる。
その頃日本では、0時43分、SSTが瀬戸内海上空で爆発し、成層圏に蓄積した酸化窒素が影響しオゾンを破壊、太陽の紫外線を直接通過させている危険性があるので、民衆には屋外に出るなとニュースで、アナウンサー太田一雄(納谷悟郎)が警告していた。
しかし、農民たちは暑さに耐えきれず外に飛び出し、農家が燃える。
工業地帯では爆発事故が起こる。
成層圏に異変が起こったのか、北極上空でもSSTが爆発したとアナウンサーが報ずる。
オゾン破壊のため、気圧配置に大きな影響を及ぼし、ヒートウェーブが日本を襲い、大雨が降り始める。
鉄砲水が都会を襲う。
ミシシッピー流域も大洪水で水没、五大湖も氾濫して小麦の穀倉地帯が全滅したので、食料自給率が低い我が国には甚大な影響があるとのニュースを伝えるテレビを見ながら、良玄の妻、伸枝が呼吸器の病気で寝込んでいた。
それをまり子が、一人で看病ていたのだ。
良玄は多忙を極め、この所自宅には帰って来ないのだ。
起き上がった伸枝は、まり子が妊娠しているのねと問いかける。
明はまだ知らないとまり子は言う。
伊勢のおじさんに家の離れを借りたから、あなたたち二人は、そこに行きなさいと伸枝は勧める。
生むのをためらっているような様子のまり子に、女はあたらしい命を生んで育てて行くのが勤めですよ、私の次の命ですもの…と伸枝はつぶやき、まり子を驚かせる。
その頃、良玄は、研究所で記者たちのインタビューに答えていた。
そこにまり子から電話が入ったので、伸枝と同じような呼吸器の異常は各地で多数報告されているので、くれぐれもよろしく頼むと良玄は伝えしかなかった。
春が訪れ、若者たちは桜の下で浮かれ騒いでいた。
花見をする家族たちは、おにぎりを頬張りながら、備蓄食料があるので心配いらないとの政府の緊急声明をラジオで聞いていた。
政府内では、首相がすぐ備蓄食料を放出しようと決意していた。
それでも街では、食料を求め、一部暴動が起こっていた。
道路では、首都圏脱出の車で大渋滞に陥っていた。
そんな中、一人の男が車を暴走させ、転倒して大爆発の連鎖が起きる。
燃え盛る車の中から転がり出る、身体に火がついたドライバーたち。
高速道路は火の海と化していた。
ヒッピーたちは、退廃の極地に陥っていた。
ヨットで海外脱出を計るものたち。
不思議な衣装を着て手を広げた若者たちが、食料を海上に放擲し、死出の旅路を続ける。
別の若者たちは、ヘルメットを脱ぎ捨て、男女二人乗りしたオートバイを走らせ、そのまま崖から海に飛び込んで行く。
「これ以上、だまされ続ける事は出来ない!」と民衆を煽る男の言葉に、暴動が始まる。
その様子を必死にカメラに収める中川。
東京、大阪、北九州で米騒動。
閣僚たちは、現体制を破壊しようとする過激派の台頭を防ぐために、首相に自衛隊の出動を要請するが、首相は、彼らは生存への危機感から来る防衛本能でやっている衝動的な行動で、暴徒ではないと反対。
政府は信用されていないのだ、沈静化を待ちましょうと首相は言うが、暴徒たちはマーケットや米倉庫に乱入していた。
中川は、その暴徒を撮りまくる。
良玄は妻伸枝の側に座って、まり子が田舎に行った事に不満そうだった。
伸枝は、さらに弱っていたが、「輪廻があると言うが、私は今度生まれた時もあなたの奥さんになる」とつぶやく。
「今度眠ったら、私はもう帰って来れない」とも。
伸枝が差し出す手を良源は握りしめ涙する。
「伸枝!」と声をかける良源、しかし、その目の前で伸枝は息を引き取る。
「逝ってしまった…」とつぶやいた良玄は、伸枝の身体を抱きかかえると、そこに中川が駆けつけて来る。
「死んでしまった」と良源。
ビルの屋上「いよいよ破滅に近づくんですか?」と中川、「伸枝が死んだ事を、まり子に伝えにいってくれないか。愛し合うものは一緒にいるべきだ」と頼む良玄。
「わしは、最後までココで見届ける」と良玄が言った次の瞬間、都会の空に巨大な蜃気楼が現れる。
地獄が太陽の光のスペクトルを、空全体を反射鏡にして都会を逆さに写しだしているのだと良玄は説明する。
伊勢では、中川から母の死を伝え聞いたまり子が、海辺で涙を洗い流していた。
それを見つめる中川に、「私、赤ちゃんが出来たの」と告白するまり子。
「どんな異変が、私の身体に起こっているか不安だ」と言うまり子に、「生むのか?」と問いかける中川自身も「うれしいが怖い」と正直に伝える。。
でも「私の意思で…、私を信じて」と答えるまり子に寄り添うとする中川。
まり子は「嫌よ」と走り出し、砂浜の上で一人バレエを踊り出すのだった。
国会では良玄が、食料パニックに端を発した人身が不安紊乱の極に達している今、天変地異が起こったらどうすると演説していた。
火山が突如爆発し、大地震が起き、原子力発電所が爆発事故を起こす。
ガスタンクは暴発し、こうなったら大公害だと…良玄は力説する。
民族問題、食料不足から来る決定的な危機、エネルギー資源の争奪戦などに端を発し、例え局地戦であっても、ひとたび核兵器が用いられたら?さらにこれが拡大し、世界戦争になったら?
「1999年7の月、空から恐怖の大王が降って来る」
軍事基地で軍人たちが死に絶えた後も、次々と発射する別陣営の核ミサイル。
こうして人類は滅亡しても地球は残るでしょう…と良玄は続ける。
壊滅し荒廃しきった我が国でも何十年か過ぎ、房総半島、九十九里浜、関東平野、東京湾、東京があった所…
「美しい乙女の輝き、それはもう輝く事はない…怪物が地球を覆う事になる」
荒野には軟体人間たち(杉井勇、中野宣之)が出現、回虫のような生き物を争い合って食べる。
これはあくまでも空想です…、そう言った良玄は、神仏の心による大決断を総理にお願いします…と、話を終える。
それに応え、首相は冷厳な事実を告げると話し始める。
日本は今、まっしぐらへ破局への道を進んでいる…と。
それは同時に全人類の終末にも繋がる。
人類は本当に滅び去っていかねばならないのか?かつて滅びていった動物と同じ運命をたどるのか?否、断じてそうなってはならない。
これまで政府は、我々を信頼してくれ。より良い生活を国民に約束すると言い続けて来た。
しかし、その結果、この狭い国土に未曾有の高度成長を獲得した上で得たものは何であったか?
今日の欲望のために、自然を破壊して参りました。
自然を破壊する前に、人間が破滅すると言う明白な事実を今日にしてようやく学んだ。
それを忘れていた政治家の傲慢さをここにお詫びします。
今からでも決して遅くないと思う。
今こそ、我々は勇気を持ち、欲望を抑えなければならない。
窮乏生活に耐えてみせる決意をしなければならない。
我々は真の勇気を持って、今までの価値観を根底から覆し、人間生存の新しい戦いに立ち向かい、戦い抜こうではありませんか!
それを聞いた良源は感動する。
国会議事堂の前を歩く良玄、中川、まり子らの姿。
「これは虚構の物語りである。だがたんなる想像の世界ではない。こうあってはならない-それが我々の願いである」…と言うメッセージが浮かび上がる。
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終末ブーム真っ盛りの頃、「日本沈没」(1973)年の大ヒットを受けて作られた終末映画第二弾。
とは言え、「日本沈没」が小説だったのに対し、こちらの原作となっている「ノストラダムスの大予言」と言うのは、あくまでも予言解釈本。
ストーリーはないので、映画では、原作本の記述を元に再構成し、独自の世界観を作り上げている。
分かりやすく言えば「丹波哲郎が、現代文明を大説教しまくる」映画とでも良いだろうか。
朗々たる丹波の大演説と、それを実証するかのように次から次へと脈絡もなく起こる異常現象の数々。
それが、時にドキュメンタリーのように、時にチープな怪奇モンスター映画のように描かれていく。
最後には、それが現実なのか、妄想なのか区別がつかないような大災害、最終戦争の地獄図で終わる。
全編に流れる岸田今日子の暗い予言の言葉と、対照的に富田勲の伸びやかなシンセサイザー音も相まって、モンタージュされた各種映像は奇妙な迫力を生み出しており、一種の宗教画を連想させるようなトンデモ映画になっている。
21世紀になった今観ると、ピンと来ない部分もあるだろうが、当時はこの「ノストラダムスの大予言」の原作本が元になった「1999年7の月、恐怖の大王が降りて来る」と言う不気味な記述は、当時の日本人たちを潜在的な不安に陥れた事は事実だと思う。
最終戦争の映像は「世界大戦争」(1961)を連想させるし(一部流用?)、丹波哲郎演じる良玄の熱演振りは、「日本沈没」(1973)の田所博士や、未見だが噂に聞く「人間革命」(1973)の戸田城聖から、そのまま頂いたキャラクターだろう。
一応、公害研究科学者と言う肩書きとは言え、「予言書」などと言う怪しげなものを流布しているような人物の言葉を、政府がおとなしく聞くと言う事自体奇妙だが、そのあり得なさをごまかすために、次々と天変地異が一挙に起こると言うハチャメチャ振りを展開するしかなかった…と言う事だろう。
冷静に観るとハチャメチャなのだが、観ているうちに、何となく、丹波哲郎の言葉に洗脳されていくような気になるから怖い。
普通、封印された作品は、実際に観ると、期待ほどではない凡作である場合が多いが、本作は、凡作と言うにはインパクトがありすぎる。
力作珍品と言うべきか。