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モスラ対ゴジラ

1964年、東宝、関沢新一脚本、本多猪四郎監督作品。

封切時以来、何度となく観てきた本作であるが、改めて観返してみると、その特撮のきめ細かさが印象に残る。

ストーリーそのものは、台風で水浸しになった干拓地の水抜きをしている場所で、取材に訪れていた毎朝新聞社の記者いっちゃん事、酒井市郎(宝田明)と、新米カメラマン純子(星由里子)が、水に浮かんでいる不思議な破片を見つける所から始まる。

やがて、巨大な卵が静之浦に漂着。

その卵で一儲けしようとする、虎畑(佐原健二)と熊山(田島義文)に、卵はモスラのものなので返して欲しいと交渉に来たインファント島の小美人(ザ・ピーナッツ)だったが、強欲な人間を相手では、その願いはかなわなかった。

その後、水が引いた干拓地からゴジラ出現。

その対策に頭をひねっていた毎朝新聞のデスク(田崎潤)らは、モスラに援助をしてもらおうと思い付き、島へ三浦博士(小泉博)らを向わせるが、インファント島の島民達は、そのあまりの虫の良い日本人たちからの依頼を断固拒否するのであった。

名古屋を破壊したゴジラは、やがて、モスラの卵がある静之浦へ迫る…。

話自体もシンプルというか、かなりお子様向けになっているし、虎畑が宿泊するホテルや卵を付加するビニールハウス施設など、当時の子供の目から観てもあきらかにミニチュアそのもので、インファント島の表現なども「モスラ」(1961)などと比較するまでもなく、かなり貧弱なセットになっている。

つまり、もう、この頃になると、東宝怪獣映画は特に予算を注ぎ込んだ「超大作」というような大袈裟なものではなく、通常のプログラムピクチャーの一本として作られている事が分かる。

では、手を抜いているのかというと、そういう事もなく、明らかに少なくなったと思われる予算の中でも、円谷英二の創意工夫は随所に見られるし、ドラマの方も軽快で、撮影所全盛時代の底力をうかがわせる出来になっている。(茹で卵ばかり食べている、藤木悠のユーモラスな存在も貴重)

海岸の石油コンビナート越しに眺める遠くのゴジラを表現した空気感の確かさや動きの緩やかさ、成虫モスラの良く動く首と触手。

着ぐるみ表現だけではなく、ギニョールなどを使い、あたかも、円谷が終生の手本としていた「キング・コング」のコマ撮り表現のように見せる工夫もされている。

マニアの間で「モスゴジ」と呼ばれている、白眼に近い三白眼で、頬が揺れる、独特の造形のゴジラも、ただ怖いだけではなく、名古屋のテレビ塔を尻尾で引き倒そうとし、その尻尾が外れてつんのめり、倒れてきたテレビ塔に自分自身がぶつかってしまう、などといった愛嬌のある所も見せる。

藤田進演ずる隊長率いる自衛隊の作戦も周到で見ごたえがある。

クライマックスの展開は、ほとんどそのまま、新作の「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」などにも引用されているので、両作品を見比べてみるのも一興だろう。

ゴジラもモスラも、まだ生き生きとしていた時代の作品である。