2004年、
従来、アニメという表現は、実写では表現不可能な素材を好んで描いてきた。
いきおい、動物がしゃべったり、奇想天外なアクションシーンや突拍子もない幻想表現があったり、現実にはいそうもないような美少女や美形キャラが出てきたりする。
だから、そういう「特殊な世界」の愛好者たちは、子供を除けば、ごく限られた人たちだけであった時代もある。
さて、この作品は、一見、実写でも可能だったのでは?…と思わせるような内容だ。
東北地方の三人の高校生の男女が中心の物語。
映画全体でいっても、ワンシーンに登場する人物の数は、多くて4、5人、たいていは2人での会話シーンが多い。
何か、ものすごいスペクタクルがあるわけでもない。
一応、SF的設定の世界なのだが、表面上は普通の風景と淡々とした日常ドラマの積み重ねである。
地味といえば、地味そのものの展開で、今のデジタル技術を使えば、比較的、低予算でも、実写で可能な表現だったと思われる。
絵柄や登場するキャラクターにも、特に個性があるわけでもない。
わりと普通というか、近年のアニメの標準スタイルといって良いのではないだろうか。
しかし、この作品、観終わってみると、やっぱり、実写では不可能だったということがわかる。
技術的には可能だったかも知れないが、このリアルなようなファンタジーのような独特の透明感がある世界は、到底、実写では表現できない。
ラストの、いいようのない感動は、アニメだからこそ可能だったものと思える。
SF的な設定や展開は、ちょっとひとりよがり風というか、しろうとの観客にはわかるようでわからない、ちょっと中途半端な感じもするが、作者の狙いは、そのこむずかしい部分にあったのではなく、あくまでも、三人の男女のピュアな信頼関係を描くことにあったのだと思う。
日本映画には、過去ほとんど例がない、SF映画の秀作ではないだろうか。
