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キル・ビル

2003年 アメリカ映画 クエンティン・タランティーノ脚本+監督作品

確信犯的な60〜70年代B級アクション映画へのオマージュ&お遊び作品である。

大体「怨み」「復讐」…といえば、もう完全に70年代である。(ちょっと、強引か?)

冒頭のアクションシーンからして完璧に70年代カラー、これは、当時の映画を観ていた人にはピンとくるはず。

日本のシーンは、全て、監督が昔、熱心に観ていた香港映画や日本映画のイメージのコラージュであり、夢の世界のアクションシーンなのであり、そこに理屈や整合性やリアリズムなどを求めるのは愚の骨頂。

つまり、元ネタを知っている人が観ると、「やってる、やってる」と苦笑まじりに共感を覚えるような所がめじろ押しなのだが、知らない人からすれば、ただ残酷で、嘘臭いだけのチープなアクション映画にしか映らない…そういう事を、全て監督は最初から承知した上で仕掛けている「映像遊戯」なのである。

だから、そういう監督の趣味性や意図を理解できるか、できないかで、本作の評価は大きく別れると思う。

「吸血鬼ゴケミドロ」(1968 松竹)の夕焼け空の中を飛ぶ旅客機、「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966 東宝)の東京のミニチュアビル群、「修羅雪姫」(1973 東京映画)の主人公、鹿島雪(梶芽衣子)のキャラクターイメージ、「子連れ狼」シリーズ(1972〜1974 勝プロ)の奇想アクションとスプラッター表現の数々、「影の軍団」シリーズの忍者のイメージ、千葉ちゃんの一連の空手映画の粗暴さ、残酷さのイメージ等々…。
劇中挿入されるアニメの絵柄までが、70年代の劇画風…と細かい。

そこにさらに、「死亡遊戯」(1978)やTV「グリーン・ホーネット」のカトー役を演じたブルース・リーのイメージが重なる。

はたして、今の日本人に、このタランティーノほど、自国の映画を愛している人がいるだろうか?

ただ、この作品が、単なる「オタク」の自己満足映画なのか、そうでないのかという、作品の評価に関してはは、後編を観てからの判断としたい。