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怪談 蛇女

1968年、東映東京、神波史男脚本、中川信夫脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

明治も、まだ浅い頃、日本海側のとある寒村では、船が近付く港もなく、村民は痩せた狭い土地にしがみついて生きるしか術はなかった。

こうした貧しい小作人たちをこき使う事により、地主大沼家は栄えていった。

ある日、その大沼家の主人、大沼長兵衛(河津清三郎)は、下男亀七(佐山俊二)の引く人力車に乗って外出する。

小さなトンネルを通り抜けた時、一人の男が、人力車にすがりついて来る。

肺病病みで、臥せっていたはずの弥助(西村晃)だった。

弥助は、しばらく畑仕事ができなかったため、畑を取り上げると聞いたため、そればかりは勘弁してくれと、長兵衛にすがりついて来たのだ。

しかし、長兵衛は相手にしない。

「畑を取り上げられては生きていけない」と懇願しながら、走る人力車に必死に追い縋ろうとする弥助だったが、途中で力つき、倒れ込んでしまう。

その様子を、畑で目撃した妻のすえ(月丘千秋)、一人娘のあさ(桑原幸子)、さらに、近所で付き合いのある青年捨松(村井国夫)の三人が、倒れた弥助の側に駆け寄り、家に連れ帰て寝かせる。

寝床の中でうなされる弥助を心配しながら帰る事にした捨松に、すえは、父親の松五郎さんによろしくと言葉をかける。

外に出た捨松は、見送りに出て来たあさに、まだ身体が本調子でもないのに、何故、父親の弥助を畑に出したんだと責める。

翌日、言い付けられた用事で町に出かける途中の亀七は、畑仕事をしていたあさに近付き、父親の事を災難だったなと同情した後、心を鎮めるため、自分が催眠術をかけてやろうかと言い出す。

亀七の言葉に何の疑いも持たないあさは、言われるがままに目をつぶるが、亀七は、そんなあさの胸に触ろうとする。

そこに、何をしている?と捨松がやって来たので、亀七は、いたずらを見つかった子供のように、慌てて逃げ出すのだった。

そこでようやく目を開けたあさは、騙された事に気付き、亀七のバカ!と叫ぶ。

その頃、家の前に出たすえは、怪我をして落ちた鳩を拾ってやる。

生来、動物に優しいすえだった。

捨吉と一緒に海辺に出ていたあさを、すえが呼びに来る。弥七の容態が悪化したと言うのだ。

急ぎ、家に戻ってみると、弱り切った弥七が、這うように外に出ようとしているではないか。

捨吉も手伝い、すえとあさとで、何とか寝床に戻すが、弥助は「オラが死んだら。お前達だけでは、到底借金を返せるものではねえ…」と呟く。

さらに「オラ、土かじってでも、借金返しますから、旦那、許して下さい…」と言いながら、息絶える。

その頃、寝床の蚊屋の中にいた長兵衛は、蚊屋の外に座り、「旦那、オラ、土かじってでも借金お返しします」と頭を下げる弥助の姿を見たような気がした。

弥助の葬儀には、捨松の父親松五郎(沢彰謙)もやって来て、「これからは、何でも手を貸してやるから、遠慮せず言ってくれ」とすえに伝えていた。

そこに、長沼長兵衛と息子の武雄(山城新伍)がやって来て、形ばかりの香典を渡すと、畑は返してもらい、この家も取り壊して桑畑にでもする。すえには、自分の家で働いてもらい、あさには習い覚えさせた機織りをしてもらうと告げる。

その際、武雄は目ざとく、あさの美貌に目を付けていた。

戸を開けて、外に出ようとした長兵衛は、目の前に弥助が立っているので、死んだはずの弥助が立っていたので驚愕するが、良く見ると、それは全く別の農民だった。

その後、捨松なども加わり、弥助たちの家を取り壊す事になる。

スエは、傷の癒えた鳩を空に放してやり、あさと共に、長兵衛と武雄に付いて行く。

その後ろ姿を見送る捨松は、「地獄へ行くより、もっとひどい事になるかも知れない」と、二人の行く末を心配するのだった。

その時、取り壊された家の藁葺き屋根の中に蛇がいると村人が騒ぎ出す。

家に到着したすえに、長兵衛は借用書を見せ、お前らがここで働いても、借金を返済するのは10年かかるだろう、その間、タダ働きだと宣言した後、すえに色目を使って来るが、その場に、妻の政江(根岸明美)がやって来たので、慌てて体裁を繕ってみせる。

一方、武雄は、あさを機織り場に連れて行き、そこで働いていた女工仲間達に紹介する。

ここでは、朝5時起床、仕事は5時から9時までみっちり休みなくやらされる事になる。

ある雨の日、台所へ薪を運ぼうとしていたすえは、下男の才次(室田日出男)に仕事振りが悪いと怒鳴られる。

奥座敷に戻り、ランプを磨いていると、長兵衛が又、色目を使って近付いて来るが、又、政江が出て来て、すえの方を、亭主が死んだばかりなのに、もう他の男に手を出そうと言うのか!と口汚く叱りつける。

すえは、咳き込むようになっていたが、台所仕事を率先して最後まで残ってやると良い、他の女たちを先に休ませる。

女たちの姿がいなくなると、すえは、目の前にあった玉子を二三個取り、あさに渡しに行く。

しかし、その様子は、しっかり目撃されており、台所に戻って来たすえは、待ち受けていた政江から、泥棒猫と罵られ、ぬかを口に擦り付けられると、今後は外の仕事だけをするよう命じられる。

ある日、村長の房太郎(伴淳三郎)が長沼家にやって来る。

武雄の婚礼話を持って来たのだった。

そんな長沼家の勝手口に、天上から蛇が落ちて来る。

驚いた政江が、才次に殺すよう命ずるが、それを見ていたすえが駆け込んで来て、殺さないでくれと頼む。

しかし、目出たい日を汚されたと思った政江は逆上し、やって来た長兵衛も、「この蛇女め!」と怒鳴りながら、すえを足蹴にする。

蹴られて転倒したすえは、置いてあった薪束に頭を打ち、出血しながら失神してしまう。

そんなすえを土蔵に抱えて行かせた後、長兵衛と政江は、元、薩摩の鉄砲隊だったと自慢話をする村長が持って来た見合い話に上機嫌で応対する。

その夜、医者にも見せてもらえず、土蔵の中に寝かされていただけだったすえを心配し、夜、食事を持って来てやった亀七は、その容態が思わしくない事を知ると、機織りしていたあさを呼びに行く。

駆け付けて来たあさの目の前で、すえは息絶える。

その夜、女工たちの寝所には、般若の仮面をかぶったお化けが出現し、若い女たちはおびえるが、それはいたずら好きな亀七の仕業だった。

しかし、同じ頃、寝所を出ようとした長兵衛は、廊下に立っているすえの姿に驚く。

一挙に両親を失ったあさは、海岸近くに作られた二人の墓の前で呆然としていた。

そこにやって来た捨松は、このまま自分も死んでしまいたいと嘆くあさに、あれがお前をきっとあの家から出して嫁にしてやる。今度の盆休みに、又ここで会おうと約束して、力付けるのだった。

ある日、機織りをしていたあさを外に呼び出した武雄は、町の問屋まで手紙を届けに行ってくれと頼む。

機織りの仕事を休む事については、父親の了解も得ているからと言われたあさは、渋々承知するしかなかった。

その直後、裏山に登って行く武雄の姿を、別の女中が見かけ、何をしに行くのかと首をかしげる。

山道を通り、町へ向かっていたあさは、草むらから飛び出して来た武雄に襲われる。

「若だんな、堪忍して下さい」と頼みながら、夢中で逃げるあさだったが、執拗に追って来る武雄に捕まり、とうとう身体を奪われてしまう。

その様子を、気の上にからまっていた蛇がジッと見つめていた。

やがて、夜になり、雨が降り始めると、雷があさの側の大木に落ちる。

呆然としていたあさは、避けて倒れた木の後ろに、亡き母親すえの姿を見た後、その場に昏倒してしまう。

あさが戻って来ないと、探しに来た才次らによって、倒れた朝は発見され、戸板に乗せられ屋敷に戻って来る。

そこに待っていた武雄の姿を見たあさは、物凄い目つきでにらみ返す。

あさは、使いに出された機会に、家から逃げ出したとされ、そのまま納屋に監禁される。

一人になったあさは、納屋にあった鎌で首を切り、死のうとするが、「どんな事をやっても、きっとお前を嫁にしてやる」と約束した捨松の言葉を思い出し、かろうじて思いとどまるのだった。

盆が近付き、長沼家の仏壇の支度をさせられていたあさは、壁にかけられた掛け軸に描かれた地獄絵をジッと見つめる。

やがて、一日だけの盆休みになり、各女中たちには、物見の小遣いが政江から渡され、外出許可が出されるが、ただ独り、あさだけは、又逃げ出されては困ると言う事で、蚊屋の掃除、そして奥の部屋でのランプの掃除を言い付けられる。

政江が立ち去った後、女中仲間があさを慰め、亀七も、あさを慰めようと、又催眠術をかけてやろうと言葉をかけて来るが、戻って来た政江に怒鳴り付けられる。

その日、約束通り、墓にやって来た捨松は、あさの姿がないので戸惑っていたが、そこに、女中仲間がやって来て、「今日、あさちゃんは来ない。逃げ出したと疑われ、家から出し手もらえないのだ」と伝言する。

その女中は、雷が落ちたあの日の事を思い出し、あさが使いに出された直後、裏山を登る若だんなの姿を見たし、連れ帰られて来たあさが若だんなを見る目つきがすごかったと捨松に教える。

その頃、家の者たちが、表で演芸などを見入っている間、独り戻って来た武雄は、残っていたあさを見つけると、「お前は、もう傷物だ。捨松の嫁にはなれない」などと言いながら、又襲い掛かって来る。

気になって、女中と共に長沼家にやって来た捨松は、家から出て来た武雄が、自分を見るなり、意味ありげな笑いを浮かべて去ったのを見る。

家の中で座り込んでいたあさを見た捨松は、事態を察知し、どうしてお前は、命を賭けてでも、若だんなに逆らわなかったのかとなじる。

そこへ、亀七らがなだれ込んで来て、二人の姿を見つけるとからかい、捨て松を連れて行ってしまう。

その夜、独り寝ていたあさは、自分を呼ぶ声に目を覚ます。

外に出てみると、庭先に、母親すえが立っているではないか。

思わず、剃刀を手にして、廊下に出たあさは、みんな死んだ。どうすれば良いのか?死んでしまいたいと母親に向かって呟く。

すると、すえの亡霊は、おいで、来れば楽になるよ…と答える。

その言葉に惹かれるように、あさは庭に降りると、母親のいた闇の方に向かって消えて行く。

その直後、女中部屋のランプがいきなり破裂したので、女中たちは悲鳴をあげて起きる。

そこに、亀七が飛び込んで来て、聞こえるだろう?と、女たちに問いかける。

耳をすますと、どこからともなく、ヒュー、ヒューと言うか細い笛のような音が聞こえる。

亀七が言うには、今、外の便所に言った所、何か柔らかいものを踏んだので、何かと思うと、女の身体だった。

いつか新聞に出ていただろう?咽を剃刀で斬って死にきれなかった娘の話…と続ける亀七。

斬れた咽の裂け目から空気がもれて、笛のような音がしたんだって…

女工達は、あさの姿がいなくなっている事に気付く。

その頃、寝ていた武雄は、蛇に絡まれている幻影で苦しんでいた。

その声で様子を見に来た政江は、蛇などいないと言う。

武雄は、自分自身の帯にからまっていただけだった。

同じ頃、長兵衛も又、物音で目覚めていた。

部屋の中に目をこらすと、仏壇に蛇がいるではないか!

驚いて、日本刀を持って駆け付けた長兵衛だったが、もはや、蛇の姿などどこにもなかった。

仏壇の後ろにある奥の部屋に入ってみると、そこに、ランプを磨いているすえの姿があったので、怯えて斬り掛かると、すぐにその姿はかき消える。

一方、自宅で寝ていた捨松も、朝方、うなされて目覚めていた。

外から、ヒュー、ヒューと言う音が聞こえるので、戸を開けて外を見ると、縁側に血まみれの剃刀が落ちているのに気付く。

気になって、海岸べりにある墓に行ってみると、そこに、首を斬ったあさの死体が横たわっていた。

その後、白無垢姿の嫁が馬に乗せられやって来る。

その姿を、遠くから見つめる捨松。

長沼家に嫁いで来た武雄の嫁であった。

屋敷に到着した嫁きぬ(賀川雪絵)の姿を一目見ようと、部屋にやって来た武雄は、振り向いた衣の身体の半身が、ウロコにまみれた蛇のようになっているのを見て肝を潰す。

しかし、それは一瞬の幻影であった。

やがて、披露宴が始まり、上座に座った村長が上機嫌で歌っている中、短刀を握りしめた捨松が殴り込んで来て、武雄の姿を見つけると、「お前、良くもあさを…」とうめきながら、突進して来る。

才次らが、その身体を押さえ付け、外に連れ出す。

捨松は、その手を振払い、山の中に逃げ込む。

その後、父親の松五郎が呼び出され、長兵衛から叱りつけられる一方、山狩りが開始される。

追っ手から逃げていた捨松は、崖から足を滑らせ、海岸に墜落してしまう。

その頃、夕食を運んで来たきぬに、あの男は見つかったかと問いかけた政江だったが、きぬが開いたお櫃を見た途端仰け反る。

中に蛇が蠢いていたからだった。

しかし、きぬには何も見えない様子。

政江は怯え、もう食べたくないと食事を下げさせる。

その夜、寝所の中で、お母さまの様子が変だと報告するきぬを抱こうとした武雄は、又、きぬの腕にウロコが生えているのが見え、飛び退く。

さらに、「若だんな、堪忍して下さい」と懇願するあさの声が聞こえ、蚊屋の外に目をやると、そこにあさがいるではないか!

きぬは驚き、又、抱いてもらおうと、武雄に近付くが、その半身は蛇のようにウロコまみれだったので、武雄はぼう然自失の状態になる。

その時、きぬの鏡台に蛇が落ちて来る。

翌朝、長兵衛と共に、朝食の膳の前に座った武雄だったが、味噌汁を差し出すきぬの手に、又、ウロコが生えているのを見ると、恐怖にかられ、「蛇女だ!」と喚き出し、その味噌汁をはね飛ばすと、きぬの顔に浴びせかける。

その息子の狂態を目の当たりにした長兵衛はがく然とする。

その頃、海岸に倒れていた捨松は、白無垢姿のあさが、嬉しそうに駆け寄って来る幻影を見ていた。

夢の中で、捨松は、そのあさをしっかり抱きとめる。

しかし、現実の世界で海岸に倒れていた捨松の身体は、ぴくりとも動かなかった。

その夜も、寝所で武雄を一緒に寝る事になったきぬは泣いていた。

こんな訳が分からない虐待が続くなら、実家に返してもらうと言うのだ。

酔った武雄は平気な様子だったが、やけどの後が痒いから掻いて…と甘えかかって来るきぬの身体を見ると、
又ウロコだらけに見えたので、思わず、その首に手をかける。

すると、きぬの顔があさに見えたので、その手に力が入り、苦しんだきぬは、何とか武雄の手を振り切って部屋の外に逃げ出す。

騒ぎを聞き付け、家人達が出て来るが、もはや完全に狂った武雄は、鎌を持ち出すと暴れだし、そのまま機織り部屋へと入って行く。

「若だんな、堪忍して下さい」と声が聞こえ、一人で機を織るあさの姿が見える。

思わず、その姿に斬り掛かる武雄。

しかし、その鎌は誰もいない宙を斬るばかり。

怯えきり、機織り部屋の階段を登りかけた武雄だったが、次の瞬間、足を踏み外すと、床に転げ落ちてしまう。

落ちたはずみで、武雄は、自ら持っていた鎌で自分の咽を斬って果てる。

武雄の死に不審を抱いた警察署長からの呼び出しを食らった長兵衛だったが、その使いを頭から怒鳴り付けると、いつものように、亀七の引く人力車に乗って出かける。

トンネルの中を通り抜けようとした長兵衛の耳に、どこからともなく鈴の音が聞こえて来て、トンネルの向こう側には、四人の巡礼が歩いている姿が見えた。

次の瞬間、長兵衛は隣の席に、弥助が座っているのを見たので、驚いて落とそうと手を伸ばすと、手は宙を切り、自ら人力車から落ちてしまう。

菊館の警察署長(丹波哲郎)は、病死として届けでが出た武雄は、実は自殺だったと噂が出ていると、出向いて来た長兵衛に伝える。

さらに、すえも肺病で死んだと届けが出ているが、これも疑わしいと言うので、逆上した長兵衛は、あいつらは、たんぼを這い回る虫けらに過ぎんと暴言を吐く。

そんな長兵衛は、床に這いつくばる弥助の姿が見えたので、思わず、所長室の中で暴れはじめる。

明らかに何かに祟られていると感じた長兵衛は、巫女を呼び寄せ、屋敷内で厄払いの儀式をする。

巫女が祈りを上げ終わると、誰からともなく、口よせをやってみないかと言う声が出、その役に亀七の名が上がる。

必死に断ろうとする亀七だったが、催眠術と口よせとの一騎討ちだと、居並んだ女中や女工らがまぜっ返す。

「百物語」のように、室内のランプを少しづつ消して行くと、やがてトランス状態になった巫女が気絶する。

その巫女の口から「若だんな、堪忍して下さい。おら、もう生きていけない。死んでしまいたい」と言う言葉がもれて来る。

同時に、ヒュー、ヒューと言う笛のような音も。

それを聞いた女工達は、あさちゃんの声だとおびえる。

そんな中、ゆっくり閉じていた目を開けてみた長兵衛は、部屋の中に居並ぶのが、皆、お遍路姿のものたちである事に気付く。

巫女の前に飾られていた神棚に、蛇がいるのを見た政江は驚く。

やがて、部屋が大きな地震にでも襲われたように揺れ動く中、政江は気絶する。

正気を失った長兵衛は、土蔵は釘付けしてしまえ、機織りは今日限り止めたと言い出す。

それを聞いた女工達は、必死に止めないでくれと頼む。

亀七も、みな、貧しいものたちばかりなので、何とかここで働かせて欲しいと頭を下げるが、その亀七も首だと言い渡される。

家人達を、皆部屋から追い出した長兵衛は、倒れていた政江を起こす。

その時、誰もいなくなったはずの部屋の中に、土下座する弥助の姿が現れ、「旦那、おら、土かじってでも借金お返しします」と言うので、錯乱した長兵衛は、日本刀を抜き、次に現れたすえの幻影に斬り掛かる。

すると、斬られたのは、政江だった。

もう完全に狂った長兵衛は、神棚を崩し、その奥にある仏壇に向かう。

すると、その仏壇が、休息に遠のきはじめ、その後を追うように長兵衛は闇の中に付いて行く。

奥の部屋では、仲良く並んだすえとあさがランプの中を磨いているではないか!

長兵衛は、日本刀を振り回し、その部屋に並んでいた多くのランプを破壊しはじめる。

すると、又、大きな地震のように部屋が揺れ動く。

機織り部屋にやって来た長兵衛は、そこがいつの間にか墓場になっている幻影を見る。

さらに、沼の中に変化すると、その水面を這って来た何匹もの蛇が、水に浸かった長兵衛に近付く。

狂乱した長兵衛は、日本刀を振り回すが、気が付くと、元の機織り部屋に戻っている。

しかし、長兵衛は、自ら握りしめていた日本刀が、いつの間にか、蛇になっているのに気付き、思わず、振り降ろすと、床に土下座して「旦那、土かじってでも、借金返します」と言う弥助の姿を見る。

その亡霊から逃れようと、長兵衛が階段横の柱にしがみついた途端、柱が崩れ、二階の物置き棚全体が長兵衛の頭上に落ち掛かる。

長兵衛は、その下敷きになって息絶えていた。

お遍路姿の4人が、もやの中、光に向かって歩んで行く。

その4人とは、弥助、すえ、あさ、捨松なのだろうか…

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

中川信夫監督得意の怪談話である。

蛇を助けようとして無惨にも殺された動物好きなすえの恨みが、蛇に化身して、夫や娘、その恋人までも殺した憎い地主一家に襲い掛かる…と言うのが基本の筋立てらしい。

らしい…と言うのは、タイトルにもなっている蛇との因果関係がはっきりしないからである。

殺された弥助一家の幽霊が、たびたび地主一家の前に出現し、彼等を狂気に追い込んで行く…と言うのは分かる。ラストの絵柄なども、その復讐を成し遂げた家族が成仏する姿に見える。

ただ、その幽霊家族の復讐劇と、たびたび出現する蛇との関係が良く分からないのだ。

蛇と一家のかかわりを説明していると言えば、傷付いた鳩を助けるなど、動物好きとして描かれている母親すえが、殺されそうになった蛇を助けようとして殺された部分だけ。

だから、母親すえの亡霊が出現する時、蛇が現れるのは何となく理解できる。

画面上で蛇女のような特殊メイクをして現れるのは新妻きぬなのだが、それは単に、武雄が見る幻影に過ぎないので、タイトルの「蛇女」とは、すえの事を指しており、きぬが蛇に化身して見えるのも、娘をいたぶられたすえの怨念がそうさせていると言う事なのだろう。

その蛇に化身して出現するすえが起こす怪奇現象に、夫弥助とあさの亡霊が協力していると言う事なのだろう。

もう一つの解釈として、蛇の方が、自分を助けてくれようとしたすえに恩返しをしている「動物報恩怪奇もの」とも見えるが、そうすると、弥助やあさの亡霊は、その蛇が出現させていると言う事になり、若干、不自然さを感じる事になる。

蛇は、弥助やあさ、捨松などからは、別に、何の恩も受けていないように思えるからだ。

助けてくれた本人すえだけではなく、その家族の分まで、一緒に復讐してやっていると言う事なのだろうか?

それにしては、咽を斬ったあさのヒューヒューと言う音の怪奇現象などは、蛇の発想にしては趣向が凝り過ぎているようにも思えるし、捨松の家の縁側に血の付いた剃刀が落ちていて、墓で死んでいたあさの死体に誘き寄せるなどという部分も、蛇の仕業としては親切すぎる。

理屈っぽい分析のようだが、全体的に、ただやみくもに恐い要素を寄せ集めただけのような展開が、混乱を招く部分があるからだ。

おそらく、単なる亡霊による復讐譚では古めかしいので、蛇を使って新しい見せ場を作ろうと思い付いたまでは良かったが、それに加え、佐山俊二扮する亀七が何度か使いかける「催眠術」や、咽からもれる笛のような音など、あれこれ別のアイデアも使ってみたくなり、それらを全部詰め込んだあげく、何だか、怪奇現象テンコ盛りみたいな、若干ピントがぼけた話になってしまったのではないかと想像する。

蛇を使った恐怖効果は、凡庸でさほどでもないが、怪奇俳優西村晃の無気味な土下座演技と、一瞬、誰だか判別できないくらいに丸丸と肥え太り、若い頃の美少年振りのかけらもない山城新伍、若い時代の村井国夫の姿などは見物。

徹底した憎まれ演技を披露する河津清三郎と根岸明美もなかなかだが、唐突に登場する丹波哲郎はゲスト扱いだったか、あまりにも登場時間が短く、印象に残りにくいのが残念。

今の感覚で、飛び抜けて恐いと言うほどの映像でもないが、恐怖と幻想が入り乱れた、その独特の語り口を、それなりに楽しむ類いの作品だろう。