2009年、メーテレ+デジタルハリウッド+ヘキサゴン・ピクチャーズ、西冬彦原作+脚本+監督作品。
この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。
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都内の裏道を二人の女性が通っていると、突然、男が吹っ飛んで来て、女性たちにぶつかる。
倒れた女性が起きかかろうとすると、目の前に停まった自動車の屋根に、別の男が墜落して来る。
その目の前のビルの一室では、黒い服に身を固めた男が、部屋の中にいた数人の男を叩きのめしていた。
その様子を、ドアの所で見つめている大男。
壊し屋「竜足(須藤 雅宏)」だった。
全員を倒した黒い服の男が、ビルの外に出ると、そこには、先ほど吹っ飛ばされた男が、倒れていた女の一人を人質にして、ナイフを突き出していた。
無言で、そこに近づいた黒い服の男は、ためらう事なく、ナイフ男も人質の女もまとめて蹴り飛ばしてしまう。
その後、男はビルを見上げ、窓から下を見下ろす大男と目を合わせるのだった。
タイトル
空手の師範松村義明(中達也)は、門弟たち相手に型稽古をしていた。
そんな中、門弟の一人で女子高校生の土屋圭(武田梨奈)は、クラスメイトの中間亮介(高橋龍騎)と連れ立って、とある神社にチャリでやって来る。
その神社の境内では、大学の空手部が練習をしていた。
圭は、その情報を教えてくれた亮介に、相手は本当に強いのか?と聞く。
亮介は、あのキャプテンは全国チャンピオンらしいので間違いないと太鼓判を押す。
稽古の中に単身乗り込んでいった圭は、そのキャプテンに向かうと「勝負してもらえませんか?その黒帯をかけて」と声をかける。
キャプテンは、その言葉を聞いて、目の前の女子高校生が近頃噂の「黒帯狩り」の人物と悟り流派を問う。
しかし、圭は「流派は言えない」と答え、自分は茶帯だと答える。
キャプテンは、相手を見くびり「飲み代替わりに相手になってやる」と構えてみせるが、相手が何の構えも見せないので、「何だ?構えも習っていないのか…」と言いかけたとき、圭のキックが頭に決まり、その場に崩れてしまう。
それを見て、呆然とする部員たちの後ろから、「パンツ丸見え!」と写メを撮ったと得意げな亮介の声が響いて来る。
それを聞いた部員たちは、「何だ、お前は!」と亮介の方に詰め寄っていく。
それに気づいた圭は、その部員たちに襲いかかっていく。
全員倒した圭は、起き上がりかける部員たちを、まとめて一気に蹴り倒すのだった。
事件を知った松村は、圭を呼び出し、「相手の主将は、入院されたそうだ。そんなに黒帯が欲しいのか」と問いかける。
圭は素直に「押忍!先生に自分の強さを認めて欲しいです」と答える。
それを聞いた松村は、稽古をつけてやると言い、圭に型稽古を始めさせる。
何度も何度も…繰り返し…
松村は、目で観てからでは遅い!相手の心が動いたときに反応するのだ!と、他の門下生たちにも、常日頃教えていた。
空手は、相手と強さを競い合うのもではない!自分の強さを見せつけるものでもない!ひたすら基本を重ねてくものだ…と。
圭は、何度もダメ出しを受けながら、同じ型の訓練をさせられる。
空手に先手なし。すべての型は、相手の動きを見てから動く護身の術、何千回、何万回と繰り返すうちに、自ずと身体が動く。気がつけば相手が倒れている…と、松村は説く。
しかし、圭の心の中では、型など実践では使えないと考えていた。
新聞に「新東京土地興行社長撲殺される」「壊し屋」の文字が載る。
ある日、圭は、「壊し屋」と名乗る謎の男から携帯に電話を受けていた。
側にいた亮介が、何の電話?と聞くと、壊し屋と言う組織のスカウトが、自分に特別なテストを受けてみないか、受かれば金をくれると誘って来たのだと圭は答える。
亮介が受けるのか?と聞くと、ちょっと嫌な感じはするけど、先生に自分の強さを証明するため受けてみる。金は全部あんたにやると圭は言う。
その直後、又、啓の携帯が鳴った。
壊し屋からの連絡だった。
その頃、一人のひげ面の男が壊し屋の本部になっている廃校にやって来ていた。
「壊し屋」拳牙(天野 暁兒)だった。
それを迎えた竜足は、やっと出所して来たのに、こんな所ですまんなと謝っていた。
良いんだと答えた拳牙は、松村は?と聞く。
その本部の控え室になっている給食室を、圭と亮介は、窓の外から覗いていた。
そこには既に何人かの男や女学生のような連中が集まっていた。
圭は、一人でその中に入って行くと、悪いけど、ここは私の入門テストなのと言い放つ。
その言葉にかちんと来た、くわえ煙草の男が近づいて来るが、圭は、回し蹴りで、その男がくわえていた煙草をはじき飛ばしてしまう。
頭に来た男2、3人が圭に飛びかかるが、難なく倒してしまう。
そんな圭を、今度はスケバン風の女学生軍団5、6人が取り囲む。
圭は落ち着いて、一人一人、女学生たちを倒していく。
ヌンチャクを取り出した相手から、それを奪い取った圭は、自らヌンチャクを回して、相手の顔に打ち付ける。
すべてを倒したと思っていると、火のついた棒を持った男が殴り掛かって来る。
それをへし折った圭は、その男の首筋に手刀を撃ち込んで倒す。
外に出た圭を待っていたのは、「押忍!」と可愛い声で挨拶して来る愛らしい女学生リン(小林由佳)だった。
その外見を見た圭は、止めておけばと忠告するが、リンは返事もせず、蹴りを入れて来る。
その蹴りはなかなかのもので、油断していた圭は倒れてしまうが、起き上がると、なるほどね…とうれしそうに相手を見つめ返す。
二人は、蹴りの応酬を始める。
相手の蹴りを受けた圭は「ぜんぜん効かないんだけど…」と言いながら、さらに相手を蹴り付ける。
すると、突如、相手が崩れたので、だから止めろって言ったんだよと言いながら、後ろ蹴りで、リンの顔を蹴ってとどめを刺す。
すると、背後から、ゆっくり手を打ち鳴らす拍手の男が聞こえて来る。
黒い服を着た大男竜足だった。
確かに強い。こいつらも、うちの二軍だったのでそれなりの力はあったのだが…と大男は愉快そうに言いながら、松村の戦いっぷりとそっくりだと言う。
それを聞いた圭は、先生を知っているの?と聞き返すが、大男は、黒帯狩りなんてやっているんだって?と言い、俺たちはずっと松村を探していたんだ、15年間も…と続ける。
すると、いきなり電話して来た子供が、めちゃくちゃ強い奴がいると言うではないか。何と、それが松村の弟子だったとは…
そう言う竜足の目線の後を追うと、そこにはぼこぼこにされて倒れていた亮介がいた。
竜足は、亮介を担ぎ上げると、これが欲しかったんだろう?と言いながら、札束を亮介の尻ポケットにねじ込み、こいつが餌で、松村が魚、釣るのはお前だ!と圭に言い放つ。
圭は、自分が罠に引っかかった事に気づく。
松村の道場に、高校生風の男女二人が訪ねて来て「松村先生は?」と聞く。
跳華(ちょうか 杉山 綾)と跳猿(ちょうえん 武田 一馬)の二人だった。
師範代が出て来て、今、先生は出張中だと答えるが、その返事を効いた跳華と跳猿は、「やっちゃおうか?」と頷き合い、突如、門下生たちに襲いかかる。
その唐突な攻撃と予想外の強さに、師範代を始め、門下生全員があっという間に叩きのめされてしまう。
跳華は「あんた、師範代だったんだ?あんまり弱いんで、びっくりしちゃった」と倒れた師範代に笑いかける。
師範代は「道場破りか?」と苦しげに問いかけるが、跳華は「もう破っちゃった」とあっけなく答える。
そこに、竜足が入って来て師範代の背中を踏みつぶす。同行して来た拳牙には、仲間から写真が渡される。
その写真には、大浪の滝の下で練習する松村の姿が映っていた。
その頃、松村は、山奥の大浪の滝の下で、一人練習していた。
そこに、危険を知らせようとやって来る圭。
しかし、その後ろには、天羽(てんは 鈴木 信二)と天倒(てんとう 山根 和馬)が、しっかり尾行を続けていた。
松村の姿が確認できた二人は、「確かにいたね。案内ご苦労」と圭に声をかける。
尾行されていた事に気づいた圭は「先生!逃げて!」と叫ぶが、その声を聞いた松村の前に、天羽と天倒が襲いかかる。
しかし、そこは冷静な松村、二人を水の中で倒す。
すると「相変わらず、強いね」と言いながら、当たらな敵空拳(くうけん 八木 明人)が間近に立っていた。
「何者?土屋圭に何をした?」と聞く松村に、「覚えているよな、15年前SPだったお前…、土屋は俺たちの仲間になった」と空拳はあざける。
無言の松村にいら立ったように、空拳は「どうしたやれよ!あの時のように…。早く行かないとやばいんじゃないか?」とからかうように言い放つ。
松村は、冷静に空拳を倒すのだった。
その頃、圭は、本部に連れ戻されていた。
竜足は、そんな圭に、「来たんだよ、松村が、お前の案内でな」と立たせる。
本部に入り込んだ松村は、廊下の奥から下駄の音が近づいて来るのに気づく。
着物を着た美女飛燕(ひえん 蒲生 麻由)だった。
さらに、その背後から、木刀を持った虎突(ことつ 横山 一敏)が突進して来る。
それに立ち向かう松村に、飛燕の投げた鎖分銅が襲いかかる。
松村は、二人をあっという間に撃退してしまう。
続いて、天衝(てんしょう 杉澤 一郎)が登場する。
松村は、後ろ回し蹴りで倒す。
体育館に入って来た松村は、そこに圭と亮介が倒されており、その周囲に、大勢の黒服の男たちが待ち受けているのを見る。
みんな「壊し屋」たちだった。
松村の姿を見た拳牙は、久しぶりだな、松村と声をかける。
松村は、弟子を返してくれと頼み込む。
その様子を見た拳牙は、15年前とは別人だな。一体何があった?と問いかける。
松村は、「何もない。ただ分かったんだ。空手はお前たちを倒すためのものじゃないと…」と答える。
拳牙は、床に倒されている圭を見て「こいつはもう、テストを受けて、壊し屋の仲間になったんだ。さてどうするよ?」と挑発して来る。
その圭を、鉄棒で押さえつけていた飛翔(ひしょう 永嶋 美佐子)も「土下座しなよ、先生」とさらに煽って来る。
その言葉を聞いた松村は、逆らわず、その場に星座をする。
その姿を見た圭は、思わず「止めて!」と叫ぶが、松村はためらう事なく土下座をする。
それを見た蹴麗(しゅうれい 渡辺 久江)は、松村に走りよると、蹴り付ける。
しかし、それでも松村は、弟子を返してくれと頭を下げる。
圭は、思わず飛翔を跳ね飛ばして起き上がる。
その隙を付き、松村も立ち上がると蹴麗に突きを入れ倒し、「理由のない戦いは止めよう。私はただ、弟子を連れて帰りたいだけだ」と壊し屋たちに告げる。
空手は戦うためのものではなく、身を守るため、あくまでも生き残るための術だ。私の弟子もそれは知っていると松村は続ける。
その言葉をじっと聞く圭。
松村は、それでも襲いかかって来た飛翔の鉄棒を奪い、逆に倒すと、赤城健(あかぎけん 西 冬彦)が圭に襲いかかり、さらに倒れていた亮介にも襲いかかろうとする。
「土屋!」と松村から声をかけられた圭は、私には空手しかないとようやく気づき、赤城に向かっていく。
しかし、赤城は野性的な強さを誇った。
それでも、圭は最後に逆転し赤城を倒す。
それを見て逆上した竜足は、「15年間の恨み、今日こそはらしてやるぞ!俺は何でもアリだからな」と叫びながらナイフを取り出すと、松村に立ち向かうが、あっさり片腕をへし折られ倒されてしまう。
竜足も倒されたのを知った拳牙は、全員に「かかれ!」と命ずる。
次々と立ち向かって来る壊し屋たちを、松村は一人一人撃破していく。
その無駄のない動きを見ていた圭は、「全部型の動きだ!」と気づく。
さすがに、拳牙はたじろぐ。「これが…空手…」
松村は言う。「生き残るための武術だ」と。
とうとう一人になった拳牙は、「まつむら〜!」と叫ぶと、「残念だったな。お前は生き残れねえよ」と言いながら、ベルトの後ろに隠していた拳銃を取り出そうとするが、その動きを感じた松村は、一瞬早く身体を接近させ、拳牙の拳銃を持った手を掴むと倒す。
圭は松村に感謝するが、次の瞬間、気絶していたはずの拳牙が起き上がり、銃を松村に向ける。
それを見た圭は思わず走り込み、拳牙を蹴り倒す。
道場に戻って来た圭に、松村は、又、白帯から始めろと、宮本武蔵の言葉を引用しながら命じる。
今、圭は素直にその指導に従う事にする。
その素直さを感じた松村は、「土屋、強くなったな…」と誉めるのだった。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
娯楽映画風に作られた「空手の教則ビデオ」とでも言えば良いだろうか…
タイトルや冒頭部分の展開を見ていると、強いヒロインが最初から最後まで敵と戦いまくる痛快娯楽アクションなのか?…と感じるが、途中からがらりと様相が変わる。
少女の成長物語と言うか…、「ベストキッド4」で例えれば、途中から主人公がミヤギに替わっていくような展開になっていく。
この後半の主役が強いんだけどけれん味がなくてまじめ一方…、ヒーローとしては、やや魅力不足であるのに対し、次から次と登場する敵の方はけれん味はあるが弱すぎで、後半の展開的には若干「死亡遊戯」的要素も感じられるだけに、クライマックスになるにつれ娯楽映画としてのハラハラ感が減少していくのが残念。
「型をきちんと見せるためか」、やたらとノーマルスピードとスローモーションを交互に並べて見せるやり方を多用しているため、テンポがやや悪くなっているのも気にならないでもない。
とは言え、見所もない訳ではなく、女学生同士の戦いなどはちょっと新鮮に感じた。
女性同士のつかみ合い、いわゆる「キャットファイト」とは違った、きちんとアクションや型が出来る女性同士が武術として戦うと言う発想は、これまであまり観た事がなかったように思う。
アクロバチックなアクションを見せる女性なども登場し、低予算ながら、部分部分にはっとするようなアクションが登場するので、途中まではそれなりに楽しめる。
あくまでも、クライマックスにかぶる松村の言葉、つまり「真の空手とは何か」と言う神髄を観客に伝える、つまりは正しい空手を啓蒙する作品として観るべきだろう。
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