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GOEMON

2009年、「GOEMON」パートナーズ、瀧田哲郎脚本、紀里谷和明原案+脚本+監督作品。

この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

1582年、蛍が飛ぶ山から、花火が撃ち上がり、祭りのようににぎわう夜の市街地にカメラは移動する。

石川五右衛門(江口洋介)は、とある屋敷の蔵にある巨大な金庫を開けようとしていた。

雑踏の中では、貧民街の子供、小平太(深澤嵐)がスリを働いていた。

そんな中、秀吉の配下、石田三成(要潤)が、紀伊国屋文左衛門(六平直政)の屋敷に来ると、応対した文左衛門に、明智光秀から受け取った貢ぎ物を押収すると告げる。

何の事か分からないと当惑する文左衛門だったが、いきなりその配下を問答無用に惨殺した三成は、倉に案内させる。

その頃、その倉の中の金庫を開けて中を物色していた五右衛門は不思議な箱のようなものを発見していた。

文左衛門に案内され、倉の前に到着した三成らは、金庫の扉に貼られた「五」の文字が記された紙片を発見する。

噂の盗賊、五右衛門の仕業と知った三成と文左衛門。

その頃、五右衛門は、盟友猿飛佐助(ゴリ)から渡されていた屋敷の地図を頼りに逃げていたが、この地図が真っ赤な偽物。

逃げられると思って開いた扉の向こうには、大勢の護衛兵が待機していた。

雑踏の中で、侍の懐に手をかけようとしていた小平太は、その手を掴まれてしまう。

侍は不気味な目をしていた。

三成の配下、又八(玉山鉄二)だったのだ。

五右衛門は、ぼやきながらも屋根に駆け上がると、眼下に見えた群衆に向かって小判をまき散らすと、持っていた小箱を投げ捨ててしまう。

その小箱は、又八から痛めつけられ地面に倒れていた小平太の側に落ちて来る。

五右衛門は、追っ手を避けるため、かぎ爪の付いた綱を投げると、それに捕まってターザンよろしく屋根から飛び降りる。

その五右衛門のシルエットが満月にかぶりタイトル。

女郎たちが華麗に踊る遊郭でくつろぐ五右衛門。

又八は、配下である霧隠才蔵(大沢たかお)に文左衛門を惨殺させた後、この家の者を全員殺すように命じ、この事は決して秀吉の耳に入れるなと厳命していた。

その頃、五右衛門は、武士の家に生まれながら、幼い頃、父親が目の前で切腹、母親も又、自分を逃がした後、殺害された悲惨な悪夢を見ていた。

朝、遊郭の中庭の井戸で身体を拭きながら、井戸の屋根の上に隠れていた佐助に、夕べの地図の事を文句を言う五右衛門。

庭先に降り立った佐助は、浪人と思い込み、以前、五右衛門を襲って、逆に痛めつけられた事をからかわれたので、頭をかきながらも、奉行の石田三成が、今、一家皆殺しにしてまで懸命になって南蛮の箱を探しているらしいと教える。

その話を聞いた五右衛門は、その箱なら自分が一旦は盗んだが、捨ててしまったと教えながらも、話に強い関心を持つ。

その頃、秀吉(奥田瑛二)は、城に石田三成を呼び出すと、箱を探しているだろうと問いつめていた。

一方、箱の行方を探していた才蔵は、遊郭の番頭、弥七(小日向文世)から、五右衛門が出かけた事を聞き出していた。

返事に窮していた三成だったが、茶々がこちらに来ると言う知らせに助けられる。

その話を部屋の外で聞いていた徳川家康(伊武雅刀)は、部屋を出て来た三成に「助かりましたな」と声をかける。

茶々(広末涼子)の部屋にやって来た秀吉は、自分の側室になれと声をかけるが、ちょうどそこに千利休(平幹二朗)がやって来たので、秀吉は帰ってしまう。

気心の知れた利休に、茶々は、今、秀吉から申し込まれた事を忘れるように「この地でも蛍が見えますか?」と尋ねるのだった。

小平太は、貧民窟で病気をかかえ、寝たきりの母親に、何とか食べ物を食べさせようとしていた。

母と子の二人暮らしだったのだ。

咳き込んで苦しむ母親を助けたい一心で、薬を買いに出ようとした小平太の前に立ちふさがったのは、家を探し当ててやって来あの又八だった。

又八は、小平太の目の前で、あっさり母親を惨殺してしまう。

そこへ佐助を伴いやって来た五右衛門は、又八の片腕を切断すると、母親の亡骸を前に泣いている小平太に「お前が弱いからだ。強くなれ!」と言いながら、謎の箱を奪い取る。

しかし、そこに配下の忍者たちを連れた霧隠才蔵がやって来て、箱を渡せと迫る。

五右衛門は一旦、言いなりになると見せかけ箱を放り投げるが、すぐに、空中の箱を槍で突き刺して手元に戻すと、屋根に上って逃げ出す。

才蔵側の忍者は手裏剣や爆弾を投げて追ってくるが、それをかわした五右衛門は走って来た馬に飛び降り街の外に逃れる。

しかし、才蔵もその後を馬で追って来て、草原で二人は剣を交える。

戦いながら五右衛門は、この箱の正体を才蔵に聞く。

才蔵は、それは「パンドラの箱」と言うものだと教える。

五右衛門が大木に身体を押し付けられ、あわやと言う時、背後から卍手裏剣が飛んで来て、才蔵の攻撃を邪魔する。

手裏剣を投げたのは、旅の僧のようであった。

小平太を連れた佐助も駆けつけて来たので、才蔵はその場から消える。

僧の姿も消えていた。

街に戻った五右衛門は、佐助と小平太と共に飯屋に入るが、そこで佐助は、才蔵はあんたの友達かと尋ねて来る。

才蔵と五右衛門が会った時、旧知の間柄のようにしゃべっていたからだ。

しかし、それには答えず、箱をいじっていた五右衛門は、中から何やら書かれた紙片を発見する。

その地図に記された涅槃石像の場所に出向いた一行、佐助が石像の耳の中に手を入れ、何かのスイッチに触ると、巻物が転がり落ちて来る。

広げてみると、それは連判状だった。

気がつくと、あの僧が背後に立っていた。

五右衛門たちを尾行していたその僧姿の男こそ、徳川家康が抱える忍者服部半蔵(寺島進)であった。

半蔵は、その連判状を買いたいと申し出る。

すると、意外な事に、五右衛門はあっさりその申し出を受け、巻物を渡してしまう。

その頃、三成の元に戻って来た才蔵は、服部半蔵が動いていると報告していた。

小平太、佐助、五右衛門は遊郭に戻り、半蔵は家康に連判状を届けていた。

連判状に書かれていた内容とは、元々明智家と羽柴家は繋がっており、豊臣秀吉こそ、織田信長暗殺計画の張本人だったと言う驚愕の事実だった。

その夜、秀吉の寝所に忍び込んだ五右衛門は、「信長様の仇だ!」と言いながら、寝ていた秀吉を佐助から盗んで来た小刀で突き刺す。

人に気づかれたので、城内を逃げる五右衛門は、いつしか茶々の部屋に迷い込んでいた。

茶々は驚くが、声を立てなかった。

なぜなら、五右衛門の事を良く知っていたから。

五右衛門は、持っていた扇子を茶々に渡すが、人の気配がしたので、五右衛門は天井に飛び上がりしがみつく。

茶々の元にやって来たのは、あろう事か、先ほど五右衛門が殺したはずの秀吉だった。

先ほど寝所で寝ていたのは、影武者だったのだ。

秀吉の背後から入って来た巨漢の用心棒我王(チェ・ホンマン)は、隠れていた五右衛門に気づくと襲いかかり、難を逃れようとした五右衛門が、窓から墜落し、堀に落下してしまう。

気絶した五右衛門を救い上げたのは霧隠才蔵だった。

五右衛門は又夢を見ていた。

両親に死に別れ、一人森を彷徨っている所に、山賊と遭遇したときの事を。

山賊は、子供だった五右衛門をからかって来たが、幼きは、その一人を持っていた小太刀で突き刺す。

色めき立った山賊が五右衛門に襲いかかろうとしたその時、馬に乗った鎧の騎士が出現し、五右衛門を救ってくれた。

その騎士は、兜を取ると、「坊主、強くなれ。そうすれば、何も奪われる事はない」と声をかけてくれた。

さらに「付いて来るか?俺が強くしてやる」と言い、馬を走らせ始めたので、地面に落ちていた兜を持って、五右衛門は馬の後を追う。

城に到着した騎士、織田信長を待っていたのは、羽柴秀吉だった。

秀吉は、馬から降りる信長のため、自ら四つん這いになり踏み台の役を買って出る。

信長は、同じく当時配下だった服部半蔵に、付いて来た五右衛門を鍛えてやれと命ずる。

その日から、信長の元で働くようになった五右衛門は、盟友霧隠才蔵と共に、半蔵の元で忍者の修行を始めるのだった。

半蔵は、才蔵と五右衛門の忍者としてのたぐいまれな才能を見抜くと、それを信長に報告していた。

遊郭で、五右衛門は目覚める。

城からここまで担いで来た才蔵は、中庭に立って待っていた。

佐助は、そんな五右衛門の得体の知れなさに怯えて来たのか、「あんた、何者?」と尋ねる。

その頃、城では、秀吉が、みすみす賊が侵入して影武者を暗殺してのけた事に対し、三成を叱責していたが、そこへ利休がやって来てその場をおさめる。

利休は、権力者の側にいると世を動かす者の声が聞こえると考えていたので、秀吉の側を離れようとしなかったのだが、その事を教えてくれたのは、亡き信長だった。

時代は遡り、その信長、青年に成長した五右衛門(田辺季正)に、自分の姪である茶々(福田麻由子)の護衛を命ずる。

ある夜、寝所で、両親を戦で失い、孤独の寂しさから泣いていた茶々の声を外で聞いていた五右衛門は、突然の賊の侵入に応戦して倒す。

左手に負傷した五右衛門だったが、茶々に気取られぬように、自分も同じ境遇だと教える。

友達はいるのかと言う茶々の問いに、五右衛門は、才蔵と言う男が一人だけいると答える。

それを聞いた茶々は、自分にもいつか友達が出来ると良いな…とつぶやくのだった。

その後、五右衛門は、茶々を、蛍が群生している滝へと案内してやる。

茶々は五右衛門に、私たち、友達になれますか?と言いながら、扇子を一本五右衛門に渡すと、感謝の言葉を残して立ち去っていく。

国元に帰る事になったのだ。

茶々が帰るその日、信長は五右衛門を呼び寄せると、茶々をこれまで警護してくれた事に対する礼として、諸刃の剣を渡す。

「強くなれたか?」との信長の問いに「まだ、分かりません」と答えた五右衛門だったが、信長は優しく「それで良い」と応ずる。

その後、本能寺の変が起こり、信長は最後を迎えたのだが、焼け落ちる本能寺を遠くの山の中から眺めていた明智光秀の背後には、羽柴秀吉が立っていた。

秀吉は、呆然と本能寺を見つめている明智光秀に対し「とうとうやったな…」とささやきかけながら、いきなり背中を突き刺して殺害する。

その秀吉は、信長の葬儀に際し、大勢の参列者の目の前で、大袈裟に泣き崩れる芝居をしてみせる。

主人を失った才蔵は五右衛門に、「俺たちもいつかは侍になれるかな?」と尋ねるが、五右衛門は「俺は自由になってみたい」と返すと、信長からもらった諸刃の剣を真ん中から叩き折り、その片方を才蔵に渡すのだった。

回想から覚めた五右衛門と才蔵は、いつしか二人きりで外の草原で座っていた。

あの時の刀はどうしたと聞く才蔵に対し、五右衛門は「捨てた」と答える。

才蔵は、五右衛門が貧民窟へ出向き、あの箱を盗みさえしなければ、小平太の母親は死なずに済んだのだと諭しながら、自分はもう少しで侍になれるとつぶやく。

才蔵は、自分には妻子がいると答え立ち上がると帰りかけるが、その商人姿を見ていた五右衛門は、似合うので転職しろと勧める。

それに対し、才蔵は、お前は派手すぎると返す。

城では、茶々が利休に、戦が始まるのかと尋ねていた。

利休は、茶々が秀吉の側室にならずに済むように、秀吉に進言してみると伝えるのだった。

その頃、秀吉は家臣たちを集め、宣教師が持ち込んだ南蛮渡来の巨大な大砲を披露しながら、朝鮮と明を攻めると宣言していた。

その秀吉の前に、蓋をかぶせた果物皿が持ち込まれる。

蓋を取ると、その中に入っていたのは、利休の生首だった。

「俺の夢にケチをつけおった」とつぶやきながら、秀吉は、その利休の唇に果物を押し付けるのだった。

一方、町中を佐助と歩いていた小平太は、目の前を歩いている又八に気づくと、佐助の小太刀を抜き取って、背後から又八を刺そうとする。

城では、家康が茶々に利休が死んだ事を教えていた。

妻のお吉(藤澤恵麻)と赤ん坊が待っている自宅に帰宅した才蔵は、そこに石田三成が待っていた事を知る。

城では、利休の死に憤った茶々が、自分が秀吉を討つと家康に決意を告げていた。

その夜、服部半蔵が、遊郭に五右衛門を迎えに来る。

半蔵が案内した場所は、あの蛍が群生する滝の側だった。

そこには茶々が待っており、先日、五右衛門から返却された扇子を又手渡す。

徳川家康も傍らに立っており、茶々様は秀吉の側室になる事を決意された。三日後には出兵の祝いと共に、茶々様との事も皆に披露されると五右衛門に教えるのだった。

聞いていた五右衛門は、何が望みなのかと尋ねていた。

秘密の住処に向かった五右衛門は、そこに隠していた信長からもらった諸刃の片方を取り出す。

その柄の部分には「天下」の二文字。

同じ頃、才蔵も又、五右衛門からもらった諸刃の片方を研いでいた。その柄の部分には「布武」と記されてあった。

二つの言葉を会わせると「天下布武(てんかふぶ)」、「天下勇飛」を願っていた信長が好んでいた言葉だった。

二人の脳裏には、「信長様の仇を討て」と言う家康の言葉が焼き付いていた。

遊郭に戻って来た五右衛門は、小平太から、母親を殺した男を自分が殺したと聞かされると、お前の母親は復讐など望んでないはずだと叱りつけるが、これから自分がよろうとしている事も復讐以外の何ものでもない事を悟り、一人悩むのだった。

やがて、茶々の側室披露と出兵を兼ねた祝いの席が、何隻もの軍船を従えた秀吉の帆船上で執り行われる。

めでたい席なので誰か唄えと言う秀吉の声に応え、家康が前に進み出ると、「人生50年…」と、信長がかつて唄っていた唄を披露する。

同席していた石田三成は、「殺しなさい」と自分の耳元にささやきかけた、妻、おりん(佐田真由美)の言葉を思い出していた。

周りの船に乗船していた侍たちに、酒を振る舞っていた男は、いつしか船底に潜り込むと、持っていた酒樽の中に導火線を仕込んでいた。

才蔵の配下の忍者だった。

家康の歌声を物陰から聴いていた五右衛門は、かつて、同じ唄を歌いながら舞っていた信長の姿を思い出していた。

その時、信長は五右衛門に、「踊らされるな、踊れ!」と教えていた。

次の瞬間、秀吉の船の横に浮かんでいた軍船が大爆発を起こす。

驚く秀吉の前で、時来れり!と悟った家康は海に飛び込む。

次々と周囲で爆発する船に動揺していた秀吉の首に鎖を巻き付け、それを帆柱にからめ飛び降りる五右衛門。

秀吉は、首つりのように帆柱の上に吊り上げられてしまう。

その鎖を必死に切断しようとする我王。

石田三成は、帆を切断して船底に降りようとした才蔵の前に立ちふさがると、いきなり銃で撃つ。

帆柱周辺では、我王と五右衛門が戦っていた。

やがて、鎖を我王が切断し、秀吉の身体は船底に落下する。

すでに死亡したかに思えた秀吉だったが、何と、息を吹き返す。

立ち上がった秀吉は、同じく息がある才蔵を前にした三成に、依頼主は誰か吐かせろと命ずる。

三成は、才蔵が何か言わぬ前に殴りつけるのだった。

遊郭に戻っていた五右衛門は、才蔵が秀吉暗殺の首謀者として三成に捕まった事を知ると、佐助にその居場所を問いただす。

佐助は、余計な事をすると厄介な事になってしまうぞと忠告するが、五右衛門の気持ちは変えられそうにもなかった。

拷問を受けていた才蔵を秘かに助け出し戻って来た五右衛門に、佐助は、奴らは才蔵の家に向かうかもと教える。

その事に気付き、住処を飛び出した五右衛門、いつの間にか、寝かされていたはずの才蔵の姿も消え、馬に乗った彼は、妻子の待つ自宅に向かっていた。

お吉は、首を括られて家の中に吊るされていた。

その前で、才蔵は何も言えず立ちすくむ五右衛門に向かい、「見ろ!これがお前の言っていた自由の代償だ!」と詰め寄る。

翌朝、その家で目覚めた五右衛門は、すでに才蔵の姿がなく、「子供の命が惜しくば、城に来い」と書かれた張り紙が落ちているのを発見する。

一足先に自宅に戻っていた才蔵が見つけていたのに違いなかった。

城に戻った才蔵は、大勢の民衆が見守る中、大きな釜の中で湯が煮えたぎる前で磷付になっていた。

その側では、秀吉が赤ん坊を抱いて、名を名乗れと才蔵に問いかけていた。

才蔵は、群衆の中をかき分け、自分に近づいて来ようとあがいている五右衛門の姿を発見すると、にやりと笑い、「俺の名は、石川五右衛門、絶景!絶景!」と叫ぶ。

そして、五右衛門に向かい、「後は任せた」と、声は出さず、口だけ動かしてみせる。

それを確認した五右衛門の目の前で、秀吉は、磔台を釜の中に蹴り倒す。

その後、抱いていた赤ん坊も、釜の中に放り込み高笑いする。

その、あまりに無慈悲な行いを見せられた民衆は、怒って投石を始める。

逃げ出す秀吉たち。

唯一の友人だった才蔵を目の前に失い呆然と立ちすくむ五右衛門に近づいて来たのは猿飛佐助だった。

彼は、「何度も言ったじゃないか、厄介な事になるって」と言い、「もう、あんたには付いていけねえ」と叫ぶと、その場を立ち去ってしまう。

才蔵の家に戻って来た五右衛門は、才蔵の残した片方の剣を自分の持っていたもう片方と又つなぎ合わせると、家に火を放つのだった。

その頃、石田三成を呼んだ秀吉は、処刑した男の本当の名は霧隠才蔵で、お前の手の者だろうと問いただしていた。

秀吉の家臣たちに取り囲まれた三成だったが、その時、どこからか銃声が響いて来る。

その隙に乗じ、家臣たちを斬る三成。

秀吉は、近くにいた茶々の手を取り、部屋の奥に逃げ込む。

大勢の兵士たちが警護している門の中に五右衛門が入り込んでいた。

屋根の上に立つ彼の側に、才蔵の配下の忍者たちが近づく。

自分たちもお頭の仇を討つと言うのだった。

騒ぎが起きだした城の様子を、遠くの森から徳川家康が眺めていた。

城の中に忍び込んだ五右衛門は、秀吉を追って奥の吹き抜けの回廊に入り込む。

待ち受けていた警護の兵士たちが、頭上から南蛮渡来のガトリング銃を連射して来る。

兵士を切り倒しながら、そのガトリング銃を奪い取った五右衛門は、自らそれを発射しながら、吹き抜けの下に蹴り落とす。

しかし、そこには、我王が待ち受けていた。

その頃、さらに奥の部屋に逃げ込んでいた秀吉を、背後に付いて来ていた茶々が、短筒で撃とうとチャンスをうかがっていた。

しかし、その企みは秀吉に見抜かれていた。

「よくも、信長様を!」と言いながら短筒を発射した茶々だったが、秀吉の着物の中には鉄板が入っていて防がれる。

その頃、五右衛門は、必死に我王と戦っていた。

秀吉は「俺を殺してどうなる?又、戦乱の世に戻るか?」と、あざけりながら茶々に迫る。

五右衛門は、我王の身体を脳天からまっ二つに斬り下ろして倒す。

やがて、信長愛用だった赤い鎧が飾られた部屋にやって来た五右衛門は、一人で待ち受けていた秀吉に対面すると、「待たせて悪かったな。地獄からの迎えだ」と告げる。

秀吉は騒がず、五右衛門に酒を勧める。

杯を受け取った五右衛門は、城の外に広がる町並みを眺めながら、天下を取った気分はどうだったと尋ねる。

秀吉はなかなかのものだったと静かに答える。

どうして信長様を殺した?と問いかける五右衛門に、百姓の生まれだった俺は、子供の頃からいつも腹を空かせていた。だから、一度、腹一杯食ってみたかったと告白し始める。

しかし…と秀吉は続ける。

食っても食っても満足しなかった。終いには、天下を食ってみたくなったと。

何か言い残す事はないかと詰め寄る五右衛門に、今度は秀吉が、どんな気分だった、自由と言う奴はと聞いて来る。

自分の運命から逃げ出したお前には、自由と言うものが見つかったか?自由になれたか?と問いつめる秀吉。

もう逃げられんぞ、自分の運命からは…とつぶやいた秀吉を斬る五右衛門。

隣の部屋に入ってみると、そこには茶々が倒れていた。

抱き起こすと、まだ息はかすかにあった。

その頃、兵士を集結させた家康の元にやって来たおりんに、家康は、もう三成は兵を挙げたか?と聞いていた。

五右衛門は、茶々と共に馬に乗り、城を抜け出していた。

あの連判状を居並ぶ兵士たちに差し出しながら、服部半蔵は、信長様の後を継ぐのは家康様だと断言していた。

家康軍が待機する場所に、石田三成軍が接近して来る。

五右衛門は、信長愛用の赤い甲冑を、茶々に手伝ってもらいながら自ら着込んでいた。

しかし、茶々は、「友への敵討ちですか、恩人への忠義ですか?」と問いかけていた。

五右衛門はそれには答えず、茶々が手渡す扇子を受け取る。

茶々は、必ず戻って来て下さいと、出かける五右衛門の背中に投げかけていた。

馬にまたがり走り始めた五右衛門の前に、小平太が現れる。

五右衛門は小平太に、「ある女が、好奇心から開けてはならない箱を開けてしまった話を知っているか?」と話しかける。

ただ一つ、その女が箱から取り出さなかったものがある…と続けた五右衛門は、「俺に欠けていたものさ」と言いながら、パンドラの箱を手渡すと、信長からもらった諸刃の剣を手にする。

「強くなれ、小平太!俺よりも」と言い残し、馬にむちを当てた五右衛門は、三成軍と家康軍が戦っていた戦場の中に割りいって、兵士たちを斬りまくり始める。

その姿を見た兵士たちは、信長様だ!と口々に叫んでいた。

その言葉を聞き愕然とする三成の前に走り寄って来た五右衛門は、あっさり斬り殺してしまう。

その様子を見た三成軍は、皆逃げ出してしまう。

そんな五右衛門の前に、服部半蔵が立ちふさがる。

五右衛門は、世の中を平和にするためだと言いながら、戦に次ぐ戦で、みんなが幸せになったか?と問いつめながら、家康の元に近づいて来る。

家康を今まさに刀を振りかぶろうと近づいた五右衛門は、いつの間にか、自分の腹に刀が突き刺さっているのに気づく。

刀を握って震えていたのは、家康の護衛になっていた猿飛佐助だった。

五右衛門は振りかぶっていたのは、刀ではなく扇子だった。

五右衛門は立ち止まると、家康に向かい、これで終わりだと誓え、みんなが幸せに暮らせるようにすると誓えと言い放つと、その場をヨロヨロと立ち去っていく。

そんな中、佐助は、家康様を襲った賊をやったのは俺だ!と、一人舞い上がっていた。

雨が降り始めた中、五右衛門の背中を見つめながら、家康は、これで終わりにしなければならぬなとつぶやいていた。

茶々は、一人残された家の中で泣いていた。

大勢の兵士をかき分け、戦の場から森の中に入り込んだ五右衛門は、いつしか、蛍の舞う場所に横たわっていた。

満天の星がきらめく夜空を見上げながら、死を迎えようとしていた五右衛門は「絶景、絶景…」と口にする。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「CASSHERN」に次ぐ紀里谷監督の第二回作品。

相変わらず、CG背景の中に、役者がはめ込まれたような独自の世界観で描かれている。

話は、簡単に言ってしまえば、昔の「少年忍者マンガ」の実写版と言った趣。

ファッションも和洋混合の独特なもので、時代劇と言うよりも、日本の戦国時代に似た「パラレルワールド」を舞台にした、荒唐無稽なヒーローファンタジーと言った方が分かりやすいと思う。

大泥棒として知られる石川五右衛門が、実は忍者だったという着想自体は、市川雷蔵主演でヒットした大映作品「忍びの者」の頃から有名な説であり、新鮮みはないのだが、若い世代には奇抜に写るかもしれない。

当然、そのビジュアル面も設定も、リアリティとは無縁の世界なので、それを許容できるかどうかで、観る人の作品に対する評価、印象は違って来るはず。

とは言え、冗漫で観念的だった前作に比べれば、はるかに分かりやすい娯楽になっているためか、さほど上映時間は長く感じない。

ただ、肝心要の主役五右衛門が、とても魅力的なキャラクターに描かれているかと言うと微妙な所で、むしろ、大沢たかお演じるニヒルな霧隠才蔵や、奥田瑛二が演じている濃い秀吉像など、主役以上に印象に残ってしまうキャラが多いため、やや主役が脇役に食われている印象がないではない。

その東洋趣味をファンタジー化したような独特な世界観は、日本よりも海外での方が、より強い関心を持たれるかもしれない。