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252-生存者あり-

2008年、日テレ+讀賣テレビ放送+バップ+ワーナー・ブラザーズ+A-team+ツインズジャパン+札幌テレビ放送+宮城テレビ放送+静岡第一テレビ+中京テレビ放送+広島テレビ放送+福岡放送、小森陽一原作+脚本、小森陽一原作、斉藤ひろし脚本、水田伸生脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

地下に埋まった空間の中、鉄柱を叩く男の手には、血がにじんだ布が巻き付けられていた。

相当長く叩き続けている事がうかがわれ、その男は「どれだけ叩きゃいいんだ!本当に助けなんか来るのか?」と苛立たしそうにつぶやく。

9月16日、台風8号が東京を直撃していた。

第八消防方面本部消防救助機動部隊隊長の篠原静馬(内野聖陽)は、土砂に埋まった「渋谷行き」の地下鉄にたどり着こうとしていたが、そこに「直ちに戻れ!外で崩落が始まっている!」との無線が入る。

それでも、先ほどの男、篠原祐司(伊藤英明)は鉄柱を叩き続けていた。

タイトル

二日前の9月14日

小笠原近海で深海調査をしていた「涼風丸」に、地震発生のニュースが届く。

気がつくと、多数のイルカの死骸が周囲の海面を埋め尽くしていた。

東京に、震度5強の地震が起こったのだ。

翌15日 気象庁

海野咲(香椎由宇)は、課長の小暮秋雄(西村雅彦)に、涼風丸からの連絡によると、前日の直下型地震の影響からか、メタンハイドレートが噴出して魚の大量死を引き起こしている。これは海水温が異常に上がっている事を証明しており、それは超巨大台風が発生する危険性に繋がると解説をしていた。

しかし、小暮課長は、それはあくまでも計算上の事に過ぎないので、発表は控えるよう指示する。

中古車販売店で働いていた篠原祐司(伊藤英明)は、客の応対に慣れず、つい本音が出てしまうので、先輩社員の長坂(阿部サダヲ)から、この仕事、向いていないんじゃないかと嫌みを言われる。

祐司は、妻篠原由美(桜井幸子)と耳が聞こえない幼い娘しおり(大森絢音)と暮らしていた。

由美から誕生日プレゼントは何が良いかと手話で尋ねられたしおりは「不思議なもの」と手話で答える。

しおりの返事を知った祐司は、銀座で落ち合う約束をする。

ベランダに出てタバコを吸っている祐司の側に来た由美は、前の仕事が恋しいのかと聞く。

祐司は、かつて、兄の篠原静馬と同じ第八消防方面本部消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)で働いていた。

レスキューの仕事は、たえず現場でのとっさの判断に迫られ、危険とストレスの連続だった。

祐司は、その現場に耐えきれなくなったのだった。

9月16日14時30分

祐司は、銀座三越に、しおりの誕生日プレゼントを買いに出かけていた。

店には、連れの女とじゃれる客(ルー大柴)や、トイレでは、故郷韓国と携帯電話をしているキム・スミン(MINJI)などがいた。

彼女は、銀座で働くホステスだったが、前日に弟を亡くしており、それを国の母親に知らせていたのだった。

15時15分、由美としおりは、新橋駅に到着、大阪から営業のため上京していた中書企業の社長藤井圭介(木村祐一)も駅構内に入りかけていた。

15時10分、銀座四丁目

外に出た祐司は、空の様子が奇妙である事に気づく。

鴉が飛び回っていた。

その時、突如、空から巨大な雹が降り始め、ショーウィンドーは割れ、通行人たちはパニック状態になる。

頭に雹を受け、怪我をした男性を地下鉄の入り口付近に運び込んだ祐司は、新橋構内からかけてきた由美に、異常発生を知らせる。

由美の方も、雹が降る地上から地下鉄に逃げ込んで来た人間と、地下鉄から降りて来た人間でごった返す駅構内で、しおりとはぐれてしまっていた。

しおりは、護身用に身につけていた笛を必死に吹き続けるが、人ごみの中にかき消されていた。

地下鉄で新橋に向かっていた祐司は、ドアの窓越しに、ホーム内のキオスク横にかがんでいるしおりの姿を発見する。

新橋駅に着いた祐司は、ホームのしおりを探すが、人でごった返しており、容易に近づく事すら出来ない。

そこに、大量の水が構内に流入して来て、祐司も飲み込まれてしまう。

湾岸地区は、時ならぬ高潮で崩壊していた。

テレビでも、3時頃、巨大雹が降った事を報じていた。

気象庁内でそれを見ていた海野咲は、計算通り、これは巨大台風発生の前兆だと指摘し、さすがに、小暮課長も、上陸時間を至急計算するように命ずる。

新橋駅は崩落しており、ハイパーレスキュー隊が出動していた。

篠原静馬は、そこで娘の姿を探しあぐね疲れきった由美の姿を発見、彼女の口から、姪のしおりと弟祐司がこの下にいる事を知る。

その頃、祐司は、駅構内を一人彷徨っていた。周囲には水に溺れた死体が転がっていた。

臨時の避難場所になった新橋ロイヤルホテルには、けが人が次々と運び込まれていた。

レスキューの指揮本部も、そこに設置される事になる。

祐司は、地下で生き残っていた青年重村誠(山田孝之)と中年男藤井圭介に出会う。

彼と共に、出口を探すが、そこは土砂で完全に塞がれてしまっていた。

やがて、閉じた扉を見つけたので、こじ開けると、中に隠れていたらしき女が倒れて来る。

その手にはしっかりしおりが抱かれていたが、女は腕から大量の出血をして気絶していた。

指揮本部では、真柴哲司(杉本哲太)が、新橋駅からは入れないので、銀座から入るよう命じていた。

篠原静馬は、侵入口を発見したと本部に連絡する。

祐司は、気絶していた女、キム・スミンの腕の手当をしていた。

その様子を横で冷ややかに見ていた重村は、応急処置は完璧だなと誉める。

その時、気がついたしおりは、父親の姿を見て「お母さんは?」と手話で聞く。

祐司は、「上にいる」と教えてやる。

キム・スミンも気がつく。

その内、轟音が響いて来たので、異常を察知した祐司は、しおり、キム、重村、藤井と共に、鉄扉の向こう側に入る。

大量の水が又押し寄せて来たのだ。

祐司は、とっさの判断で、一つのドアの中に全員を入れると、水の方向を見やる。

そこには、逃げ遅れた数名が追いかけて来る水に飲まれようとしていたが、どうする事も出来ず、自分もドアの中に入ると、扉に近くにあった鉄棒でくさびを入れ、固定する。

二度目の鉄砲水で、銀座からの侵入口も塞がってしまう。

本部では、虎ノ門から入るよう計画を変える。

祐司たちが、入った空間は、廃駅になった古い新橋駅部分だった。

キムを、電車の中に寝かせた祐司は、しおりに、買って来たプレゼントを渡す。

しおりは、家に帰ってから開けると手話で伝える。

その頃、兄の静馬の方は、新橋構内に近づきつつあった。

廃構内では、重村が祐司の前身がレスキュー隊だったと聞くと、あれこれ文句を言い始める。

鉄骨を一人で叩き続けていた祐司は、「252」と言うのが「生存者あり」の合図なので、鉄骨を「2・5・2」のリズムで叩き続けていれば、きっと上にいる連中が気づくはずと言い、藤井は素直に、祐司と交代しながら、鉄骨部分を「2・5・2」のリズムで叩き始めるが、重村は一切参加しようとしなかった。

その頃、気象庁で事の進行をニュースを見ていた咲は、このままでは、近づく巨大台風で更なる被害が出ると察知、自分の責任も感じて、外に飛び出していた。

指揮本部に駆けつけて来た咲は、国交省から派遣されて来ていた秋山隊長に、超巨大台風8号が接近して来ており、このままでは二次災害が出てしまうので、ただちに救助活動を中止して欲しいと願い出る。

17時58分

台風8号が東京直撃、静馬たちに、崩落の危険があるのでただちに戻れとの命令が発せられる。

静馬は、目の前に弟と姪がいる事を知りながら、どうしようもない状況に半狂乱になるが、やがて、本部に戻って来て、そこで由美と再会する。

藤井は、「どうしても助からあかんのです」と言いながら、必死に鉄骨を叩き続けていた。

聞けば、子供が9人もおり、さらに今もなお、妻は妊娠中だと言うではないか。

何か食料を持っているのではないかと、その藤井が大切そうに抱えていたバッグの中身を調べていた重村は、その中に奇妙な装置を見つける。

慌ててそれを隠そうとした藤井は、一発逆転を狙って開発費3000万を費やして発明した「泡えもん」と言う水槽の汚れ除去装置なのだと言う。

しかし、重村は、バッグの中にお茶のペットボトルが入っていた事を指摘、隠していただろうと責める。

忘れていただけで、隠していた訳ではないと言う藤井から、そのペットボトルを受け取った祐司は、みんなで飲みましょうとと説得する。

重村はそんな祐司に、なぜ、レスキューを辞めたのかと聞いて来る。

かつて、レスキュー現場で、崩落した鉄骨に足を挟まれ動けなくなった仲間の風野を、兄の静馬を助ける事を優先したため、死亡させた経験を思い出していた。

何とか静馬が救出したものの、風間は助からなかった。

祐司は、余震の進藤で現実に引き戻される。

しおりが、護身用の笛を吹いていたのだ。

祐司は、キムの容態が悪化しているのを見て、重村に、あんたは研修医だろう?診てくれと頼む。

嫌々キムの身体を診察した重村は、腹腔内にも出血していると言うが、死んだら自分の責任になるので、輸血はしたくないと言い出す。

しかし、しおりは、重村の手を握って「助けて」と手話で頼む。

ここには、凝固剤など医療器具は一切ないと言う言葉を聞いた藤井は、バッグの中に入っている「あわえもん」用のEDTAと言う薬剤は凝固剤だとと言う。

ただし、キムと血液型が合致する人間はその場にいないように思えたが、重村は、ボールペンの芯を取り出すと、それを針替わりに削り始める。

自分だけが血液型が合うと言うのだ。

作業をしながら重村は、「俺の父も医者だった。開業医だった」と、研修医を辞めた話をし始める。

ある急患に、大きな病院へ行くように進めたにもかかわらず、手術を迫られ、そのあげく患者が死亡したので訴えられてしまった事が原因で、重度の鬱になってしまったのだと言う。

それを見ていたので、もう医者になるなんて良いや…と諦めたらしい。

その話を聞いていたキムは、私は死なないと伝える。

軍隊に入っていた結婚前の弟が、交通事故で亡くなった事をキムは打ち明ける。

そんな話を聞いていた藤井は、助かりたいな…、いや絶対に助かる!みんな…と力づける。

その頃、ホテルの外に出てみた咲は、静馬に、どうして助けてくれないの!と詰め寄る由美の半狂乱姿を目撃する。

「あの人が、前の仕事を辞めて安心していた…」と、由美は続ける。

一方、本部で待機を命じられていたレスキュー隊員たちの間でも、不満が充満していた。

「俺たちの安全が要救助者の命より優先されるのは納得がいきません」と、隊員の一人青木一平(松田悟志)はいら立つ。

しかし、副隊長の宮内達也(山本太郎)は、待機も仕事のうちだ!と一喝し、祐司がレスキューを辞めたときの事を思い出していた。

いかに人の命を救うためとは言え、隊員の命を失ったのでは、その隊員の家族を悲しませるだけである。

レスキューとは、救出する方の安全も確保しながら成功させなければ、本当の「成功」とは言えない。

これまでも、現場で何度も究極の行動選択を迫られて、結局、撤退を選択せざるを得なかったケースも多々あったのだ。

その頃、鉄骨を叩き続けていた藤井がみんなの所に戻って来て、あちこちから水が噴き出して来ていると報告していた。

それを聞いた祐司は、危険を感じ、全員を電車の中に入るよう命ずる。

みんな電車に入る中、プレゼントを置き忘れた事に気づいたしおりは、一人元の場所に取りに帰る。

その瞬間、崩落が始まり、しおりは土砂に埋まってしまう。

それを目撃した祐司は「俺は人殺しだ!」と半狂乱になる。

「兄貴だけ助けて、仲間を殺した!兄貴なんか助けなければ良かった!俺は兄貴に憧れていたが、レスキューなんかにならなけりゃ良かった!」と祐司は叫びながら、土砂を取り除こうとするが、どうにもならない。

その時、252の響きを藤井は聞く。

あの重村が、あれほど嫌がっていた鉄骨叩きをやっていたのだった。

その頃、レスキューの前線では、音響探査機を使った捜査が始まっていた。

それを土砂の反対側から聞いた静馬は「祐司だ!」と気づく。

「生存者あり!」との静馬の連絡を受けた指揮本部は、にわかに動き始める。

その時、又余震が発生する。

その直後、虎ノ門で一人探索を続けていた青木から「側道の入り口も今の揺れで崩壊した」との知らせが入る。

さらに「一時間以内に、この周辺一帯も崩落の危険もある」と…

その頃祐司は、土砂の中から「252」の音を聞きつける。

しおりが、祐司からのプレゼントである「プリズム」を使って音を発していたのだった。

生きている事が分かった祐司や藤井は、必死になって土砂を掘り始め、しおりを助け出していた。

本部の静馬は、上から穴をあけて救出するしか手がないと言い出す。

しかし、それを聞いた真柴本部長は、全員戻って来てこそ成功なんであって、隊員の危険性がある事を命ずるわけにはいかないと反対する。

静馬は「助けたいんです弟を!弟から今、助けを求められているんです!」と泣き出す。

その会話を横で聞いていた咲は、ヘリが使えませんか?と助言する。

納得するまでやってもらいたい。もうすぐ台風の目に入ると言うのだ。

宮内も「やらせて下さい!」と本部長に願い出ると、他の隊員たちも一斉に「やらせて下さい」と声を揃える。

それを聞いた真柴部隊長は「わかった。責任は俺が取る」と救出活動再開を命ずる。

ノートパソコンで計算し出す咲、小暮部長は、気象衛星が動き出して、気象映像を送って来たと喜ぶ。

構内にいた祐司は、かすかなドリル音に気づき思わず叫ぶ。「届いた!」と。

台風の目で風が収まる時間は18分間だけと咲は、通達する。

祐司は、しおりの手を取り、みんなに電車の中に入るよう命ずる。

やがて、爆発音と共に、構内の天井部分に穴があく。

ヘリからロープを使い、降りて来た静馬は、次々に、電車の中にいた被害者たちを上に運び上げる。

しおりと感激の対面をした由美に、しおりは「パパからもらったの」とプリズムを見せる。

台風の目が通過し、吹き返しが始まったので、上空でホバリングしていたヘリの制御が難しくなる。

電車の中には、まだ祐司と静馬、そして宮内が残っていた。

そんな中、構内の崩落が始まり、電車がさらに沈没し始める。

「退避ー!」

崩落に気づいた由美は「イヤー!」と叫んでいた。

崩落現場を、探知機「シリウス」を使って調べていたレスキューたちは反応を察知、静馬が救出される。

担架で運ばれる静馬に駆け寄ったしおりは「パパは?」と手話で問いかける。

気まずそうに担架を降りた静馬に、覚悟を決めた由美が近づき「ありがとうございました」と礼を述べる。

子供ながら、事情を察知したしおりは「パパー!」と泣き出す。

そのいたいけな姿を見て、救助隊全員も言いようのない哀しみに包まれる。

しかし、その時、救助犬が騒ぎだす。

レスキュー隊員たちがその場所に駆け寄り、人命探査装置「シリウス」を覗いていた隊員が叫ぶ。

「252!生存者あり!」

次の瞬間、宮内を肩に担いだ祐司が、悠然と地上に現れる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

パニック(ディザスター)映画のパターン満載と言ってしまえばそれまでだが、ご都合主義の嵐に、思わず失笑させられるようなオーバーな演技、リアルなレスキューの姿を描くと言うより、「劇画」と割り切って観た方が無難な作品。

原作者自身、「ウルトラシリーズ」の熱心なファンと言う事なので、そうした「幼児向けヒーローもの」のパターンで組み立てた「熱血救出マンガ」と言う事だろう。

実はこの作品、エキストラとして何度も参加した作品であり、個人的に思い出深い映画なのだが、その時点で、大体の説明を受けた段階から、いろいろ設定に疑問を感じていたのも事実。

季節は9月、新橋駅に、雹が降って来た地上から逃げ込んで来た人と、事情を知らず、電車から降りて来た人が入り交じって大混乱に陥る。

その直後に、津波に襲われ、駅構内は水浸しになる…

一体、どういう状況なのか、にわかに理解できなかったのである。

津波の原因は何なのか?

巨大台風による豪雨が原因なのなら、駅構内に入り込んで来た人が誰も傘を持っていないのがおかしい。

つまり、天気予報も間に合わないくらい、急に天候が急変したと言う事である。

巨大津波が、数日前に起こった地震と関係があったのだとすると、発生時間が遅すぎないか?

これ又、予想が出来ない自然現象が急激に起こったと言う事なのか?

劇場で本編を観終わった後も、この最初に感じた疑問は解決しないままだった。

やはり、「あくまでもマンガ」と割り切って観る映画なのだろう。

エキストラには、本物のハイパーレスキュー隊の隊員たちも参加していたが、さすがに下手すぎて本編ではカットされていた。

あくまでも、出演は、本物の特殊車や機材を借りたお礼の意味としてだけであり、映画としては「使えない」との配慮だったのだろう。