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残酷復讐拳

1978年、香港、チャン・チェ監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある日、地元でも有名な悪徳地主トー(チェン・クアンタイ)の屋敷に、義憤にかられた天南三兄弟が乗り込んで来る。

しかし、肝心のトーは執事のワンと外出中と言う事が分かり、三兄弟は、見せしめのために、トーの妻を殺し、一人息子チャンの両手を切断してしまう。

そこに、トーが帰宅して来て、天南三兄弟の残虐行為を知るや、黒虎三式の技で返り討ちにする。

妻は助からなかったが、息子は気丈にも泣かなかったと言うので、必ず、立派な技手を作ってやり、自分の持つ武術も全部教えてやると誓ったトーは、その日から、息子を一人前の武芸者にするため、徹底した詠再教育を施すのだった。

タイトル

立派な若者に成長した息子チャンのは、父親トーに、授けられた黒虎三式の秘技を披露してみせる。

その腕は、もはや父親にも負けない一人前になっていた。

トーは、そのチャンの前に、天南三兄弟の子弟達を捕まえて来させると、その場で次々と傷つけて行く。

トーとチャンのごう慢さは以前にもまして、土地の人間達を苦しめて行くようになる。

ある日、その村の宿兼食堂にトーとチャン、執事のワン達がやって来る。

客がいきなり息子達に殴られれる様子を見ていた客の旅人チェン・シェンは、ごう慢だなと、店の給仕に告げる。

同じく、店にいた鍛冶屋のウェイも、そんなチャンたちの態度を見て怒り、いつか天罰が下るぞ。他人に八つ当たりをするなと怒鳴る。

そんな二人に目をつけたトーは、チェン・シェンの目を潰せと家人達に命ずる。

チェンは、待ち伏せていたワンに目を突かれ、光を失ってしまう。

ウェイの方は、鍛冶屋の前で、村人達に、トー一族の言いなりになる必要はないと激を飛ばしていた。

そこにやって来た執事のワンは、ウェイを家に招待したいと言う。

怪んだウェイだったが、断ると男が廃るとばかり、わざと胸を張り、トーの家に出かけて行く。

屋敷のテーブルに座り待っていたトーは、やって来たウェイに酒をすすめる。

勇を震って、その酒を飲んだウェイだったが、たちまち咽を焼かれ、声が出なくなる。

さらにトーから両耳を強く叩かれたウェイは、耳も聞こえなくなってしまう。

食堂では、目が見えなくなったチェン・シェンに同情した給仕が、ウェイもトーにやられたと教え、杖を手渡してやる。

その杖を頼りに、チェン・シェンは、鍛冶屋に戻って来たウェイの元に辿り着くと、互いにトーの犠牲者と伝えあい、同情しあうのだった。

その後、やはり、一人の村人フー・ファイが店に入ろうとして断られ、押し返されたはずみに、たまたま通りかかったトーにぶつかってしまう。

怒ったトーは、その場でフー・ファイの両足を切断するよう、配下達に命じる。

両足を切断されたフー・ファイも、同じ境遇と言う事で、その後ウェイの店で働くようになるが、同情した村人達は、良く店を利用するようになる。

ところが、それを知ったトーは、執事のワンをウェイの店の前に出向かせ、集まっていた村人達に、今後、この店に仕事を頼む者は殺害すると釘を刺すのだった。

その後、そうした事情を知らずに刀を買いに来た客は、村人達から止めるように説得され、理由を聞いても、皆押し黙るだけだった。

ウェイ、チェン・シェン、フー・ファイの三人は、その後、子供達からからかわれる対象に成り下がる。

その様子を見とがめた一人の旅人は、事情を知りトーの姿勢に憤る。

トーの意見をしに行くと息巻いたその旅人は、トーの住む「天道荘」にやって来る。

執事のワンと息子が出て応対する。

旅人はワン・イーと名乗ると、村人達への圧制を批判するが、執事のワンは、鎖分銅を取り出して向かって来る。

さらに息子も加勢をし、ワン・イーを捕まえてしまう。

捕まったワン・イーは、頭に閂をはめられ、締め付ける拷問にかけられる。

その結果、知的障害を負ってしまい、そのまま屋敷の外に放り出される。

ワン・イーも、結局、ウェイの店に連れて来られる事になる。

他の三人にとって、全く素性が分からぬワン・イーだったが、フー・ファイがワンが持っていた手紙を見つける。

それは鷹荘の主人へ宛てたもので、それを読んだ結果、ワン・イーの名前と、彼の師匠リー・ホェイが住む屋敷の場所が判明したので、そこに連れ戻してやろうと三人は話し合う。

ウェイは、荷車にチェン・シェンとフー・ファイを乗せて、ワン・イーも連れて村を出発する。

途中、すっかり子供のようになってしまったワン・イーは、いたずら気分で、荷車をひっくり返して邪魔をする等手に負えないので、短気なウェイはワンと喧嘩になりかかったりする。

しかし、ワン・イーは、チェン・シェンとフー・ファイを荷車に乗せると、無邪気に今度は自分で押しはじめる。

やがて、一件の茶店に立ち寄ったが、近所の子供達が彼等をおもしろがり、石を投げ付けて来る。

ワン・イーは、本能的にその石を子供達に投げかえし、泣かせてしまったので、ここにいたら、親達が怒鳴り込んで来るに違いないと察し、ウェイ達は早々に立ち去る事にする。

やがて、彼等は目的地「鷹荘」に辿り着く。

ワン・イーの師匠リー・ホェイは、弟子を連れ帰ってくれた事に感謝し、さらに、ウェイ達からトーに立ち向かうため、自分達にも武芸を教えて欲しいと頼まれると、自分のすべてを伝授しようと承諾する。

ウェイは、師匠の指示により、フー・ファイのための鉄の義足を鍛えはじめる。

ワン・イーも、ふいごを吹いて、その作業を手伝う。

チェン・シェンは、落ち葉の落ちる音を聞き分けると言う、聴覚を鍛える訓練を始める。

リー・ホェイは、言葉を失ったウェイに、手のひらに文字を書いて伝達する方法を伝授する。

ウェイは、回転する車輪の奥に置いてある瓶を割る練習を重ねる。

ワン・イーは、鉄の義足をつけてぎこちなく動くフー・ファイをからかうが、それを見ていたリー・ホェイは、蹴りで復讐しろとフー・ファイに言う。

言われた通り、フー・ファイは、鉄の義足で蹴ろうとするが、俊敏なワン・イーは難無く避ける。

チェン・シェンは、他の弟子が投げる金輪を受け止める練習をしていた。

それを見ていたワン・イーはおもしろがり、自分が金輪を次々に投げ付け始める。

しかし、チェン・シェンは見事にそれを受けてみせる。

ウェイは、リー・ホェイの手の平への手話で指示を受け、吊り下げられた砂袋を相手に訓練を始める。

ワン・イーは、そんなウェイにも、悪戯心を抱き、襲い掛かったりするが、もう、ウェイの相手ではなかった。

チェン・シェンは、落ちる木の葉の音を完璧に聞き分けるようになっていた。

回る車輪の奥の壺の大きさは、さらに小さくなっていたが、ウェイは、見事に車輪の間を縫って。指先だけで割ってみせる。

木人相手の訓練も重ねるウェイ。

フー・ファイも、鉄の義足を自在に操れるまでになっていた。

チェン・シェンは、ワン・イーと、見事なコンビネーションで、金輪をあやつる術を会得していた。

身体にハンデを負った彼等が、鷹荘で武芸を学びはじめて3年の月日が経った。

師匠リー・ホェイは、4人を招き寄せると、トー親子は、その後、ますます残忍になったと伝えると、トーの黒虎三式の秘技に十分注意するよう教え諭すのだった。

そのトーは、近々45才の誕生日を盛大に行い、各地の武芸者を招待するそうだとのリー・ホェイの言葉を聞いた4人は、いよいよ復讐の旅に出かける決心をする。

チェン・シェンは、占い師に化けて先に村に戻る事にし、宿に自分がいるかどうかは、持っている旗を部屋の前に出しておいて裏返すと他の仲間達と打ち合わせをする。

その頃、トーの執事ワンは、誕生会用に酒を買いに、村の宿兼食堂に来ていた。

そこに、占い師に化けたチェン・シェンがやって来る。

店の給仕は、チェンに気付き、ワンが側にいるとこっそり耳打ちしてやる。

それを聞いたチェン・シェンは、わざとワンのテーブルに近付き、占ってみるか?と尋ねる。

ワンの仲間が、悪戯心を出して、チェンが座ろうとした椅子をそっと後ろに引くが、チュンは丸で目が見えるように椅子を引き寄せる。

チェンは、ワンから酒を振る舞われると、自分は三年前、あなたから罰を与えられた男だと明かす。

それを聞いたワンは、あの時の男か!と気付き、家人達をけしかける。

チュンは、旗がついた棒で戦いはじめる。

その技を見たワンは、取りあえず店を後にする事にする。

天道荘では、誕生日に招かれた武芸者の一人ルオが練習をしていた。

そのルオの技を誉めたワンは、明日一人の男を殺してくれと依頼する。

ルオは、ビー玉の技を披露する。

庭では、同じく招待されたリンと言う武芸者も、小型の弓矢の技を披露していた。

村の食堂には、ウェイがやって来ていた。

旗が裏返っているのを見て、チェンが留守である事を知る。

そのウェイが、二階に案内された時、ワンがやって来て、今からこの店を貸し切ると言い出す。

ウェイは、ワンに見つからないように、柱の陰に身を隠す事にする。

ワンは、剣を持った部下達に、今から一切音をたてるなと命ずる。

部下達は、剣を構えた姿勢のまま、チェンの帰りを待ち構える。

その頃、チェンは物乞いに化け、天道荘に様子を見に来ていた。

その側で、トーは招待客のチェンを歓迎していた。

やがて、チェンは、待ち伏せが待っているとも知らず宿兼食堂に帰って来る。

チェンが帰って来たのを見たウェイは、ワンの配下から襲われながらも、二階の柵を破壊して、チェンに異常を知らせる。

チェンは、すぐにルオと戦いはじめる。

その様子を見ながら、ワン執事は一旦ルオを連れ、天道荘に戻る。

ワンは、チーにリンを紹介する。

しかし、チーはリンの技を露骨にバカにし、リンは面目を潰される。

チーは、ワンの技、流星弾もバカにし、自分にぶつけてみろと挑発する。

仕方なく、ワンは、鎖分銅をチーの身体にからめるが、チーは瞬時に、その鎖を引きちぎってしまう。

チーは、トーの弟弟子に当る武芸者なのだとその場で名乗る。

その頃、村にやって来たワン・イーは子供達と無邪気に遊んでいた。

ルオは一人で、鍛冶屋に戻っていたウェイを襲おうと後ろから近付くが、ウェイは、首から下げていた鏡に写るルオに気付き、鉄串を腹に突き刺して倒す。

その様子を近くで目撃したワンの配下が、天道荘に報告に来る。

ルオの死を知ったワンは、トーに知られぬように配慮して来た事が、かえって仇になったと後悔する。

すぐにでも、ウェイとチュンのふたりを始末しようと決心したワンだったが、自分の武器である流星弾が破壊されていた事を悔やむ。

チーは、家人達の動きから異変を察知し、ワンとリンが宿にいる二人を始末しに行った事情を聞く。

宿に来たワンは、チェンと戦いはじめる。

それを弓で狙うリン。

ワンの配下達はドラを持ち込み、チェンの周囲を囲むと、相手の聴覚を奪うためドラを鳴らしはじめる。

ウェイは、胸に下げていた鏡を奪い取られていたが、ワンと共に協力して戦いはじめたので、ワンは明かりを消せと配下に命じるが、目の不自由なチェンにとってはかえって有利になると、その時店にやって来たチーが告げる。

チーは、宿の周囲を配下達に固めさせると、自分がまずチェンらの技を三発受け、その後に自分が攻撃すると言い出す。

その申し出を受けたチェンは、三発相手の身体に突きを入れるが、全くチーは動じない。

続いて、ウェイが三回蹴りを入れるが、こちらも全く利き目がない。

これはやられると二人が感じた時、義足のフー・ファイがやって来て、自分達は3人で一人だと言う。

チーは、ワンから、あの男は義足だと教わるが、平然とフーに三回殴らせる。

しかし、その後、蹴りを受けた途端、顔を歪ませる。

フー・ファイの足が、本当の鉄である事を悟ったのだ。

チーは怒り倒れかけるが、ぐっと机に捕まり身体を支える。

チェンは、ウェイとフーに部屋に入るよう命じる。

そこにリンを連れてワンが戻って来る。

チーが、机に捕まったまま動かないのを見て不思議がるが、チェンから早く遺体を運んでやれと言われ、はじめて、立ったまますでにチーが死亡している事を知る。

天道荘では、チーの死を知ったトーが、いつもは細心であるはずのワン執事がどうして…と問いただしていた。

ワンはただただ、めでたい誕生会を汚したくなかったためと、言い訳をするだけ。

トーは、宴会の前に奴らを始末してやると言い切る。

宿では、ウェイ、チェン、フーが、トー親子がやって来たのに気付く。

チェンは二人に、これは前哨戦に過ぎないのですぐに逃げろと言う。

そしてチェンは、対峙したトーに対し、自分達の師匠はリー・ホェイだと告げ、黒虎三式の技を見せて欲しいと申し出る。

その言葉に従い、トーは黒虎三式の技を披露する。

その途端、ウェイ、フーは窓から外へ飛び出し、チェンも又逃げだしてしまうが、トーは行かせろと、深追いを止める。

宴会の時間が迫っていたからだった。

一旦逃げたチェンは、トーの目的は武林を制覇する事なので、数日後にケリをつけるつもりなのだろうと推測し、こちらは、その裏をかいて、明日、急襲しようと相談する。

天道荘では、盛大なトーの誕生会が始まる。

外の監視を命じていた配下から、ワン・イーも含めた四人がやって来た事を知らされたワンは、用意してあったたくさんの大太鼓をうちならし始める。

さらに、吊り下げてあった丸鏡には、太陽光が反射して、目くらましになる。

ワンは、直った自分の武器の流星弾を回しながら、敵の到着を待ち受ける。

最初にやって来たワン・イーは、大太鼓の皮を破りはじめる。

さらに、チェンは丸鏡を破壊しはじめ、ウェイも大太鼓を破壊する。

ウェイは、リンとワンを相手に戦いはじめる。

ワン・イーは、配下の者達と戦う。

やがて、ウェイはワンと、チェンはリンと戦い、チュンはリンの腹を突いて倒す。

ウェイも、流星弾の鎖をワンの首に巻き付け、絞め殺す。

その頃、ワン・イーは、割れた丸鏡の枠が、ちょうど金輪になっているのに気付くと、おもしろがって、金輪を集めはじめる。

一方、屋敷の中に侵入していたウェイはトーと、チェンは息子のチャンと戦っていた。

チャンの技の前に、危うくなりかけたチュンだったが、そこにワン・イーがやって来て、つまらないから遊んでくれと金輪を投げて来る。

チュンは、ワン・イーから受け取った金輪を使い戦いはじめる。

さらに、ワン・イーとの息の合ったコンビネーション技で、チャンを翻弄しはじめる。

怒ったチャンは、ワン・イーに対し、義手を飛び出させると、鉄の指を発射して、腹に突き刺す。

しかし、その攻撃の意味が理解できなかったワン・イーは、そのままチェンと二人でチャンを倒すが、その直後、何かが刺さって痛いよと、自分の腹を見つめながら息絶えるのだった。

その死体を残したまま、屋敷の中に入り込んだチェンは、ウェイと協力して、トーを追い詰める。

さらに、義足のフーも参戦し、三対一の戦いになる。

天井の梁に飛び乗ろうとしたトーの足を、チュンが掴み、フーが鉄の義足で蹴りを入れる。

トーは絶命し、チェン、フー、ウェイの三人は、天道荘を後にするのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本の座頭市映画の影響を受け、香港でも「片腕ドラゴン」など、身体的ハンデを持った武芸者ヒーローの映画が作られた事は有名だが、この作品はその延長線上にある作品で、東映の「博徒七人」のカンフー版と言っても良いような、身体的ハンデを持った人物ばかりが登場する破天荒な内容になっている。

身体的ハンデを負う事になる説明描写はまだしも、頭を締め付ける事で知的ハンデを与える等と言う発想などは、もはや常識を超えており、はっきり「漫画世界」と割り切って観るべき作品だろう。

鉄の義手から、指型ナイフが飛び出す等と言う発想は、もはや特撮ヒーローものかアニメの世界である。

そう割り切って観ると、展開は寓話のように分かりやすく、ひたすら、超人たちの技の数々を楽しむだけである。

登場するキャラクターは、皆、分かりやすく造型されているが、なかでも、いきなり知的ハンデを負い、子供のようないたずらっ子になってしまうワン・イーは印象的。

無邪気な表情とは裏腹に、長年身につけた武芸は衰えていないと言う設定なので、戯けながら見せる技の数々には思わず唸らせられる。

特に、後半の、目の不自由なチェンとのコンビ技は圧巻。

とても、今のテレビ等で放映できるような内容ではないが、娯楽に徹したカンフー映画としては、傑作の一本と言って良いのではないだろうか。

余韻も何もないラストのあっけなさも、いかにも香港映画と言うしかない。