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冷血十三鷹

1978年、香港、スン・チュン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

山の中を、白馬に乗った男が一人旅している。

馬の足からは血が出ており、かなり無理な旅をして来た事が予想される。

乗っている男も疲労の限界だったのか、落馬して、崖下に転がり落ちてしまう。

気絶したその男の側に、黒い馬に乗ったもう一人の男が近付いて来て、水を与える。

水を与えた男が、気がついた男の名を問うと「風来坊」と答えるのみ。

水を与えた男は「宿無し」と名乗り、この先は砂漠だと教える。

風来坊は、この三日間何も食っていないと言うと、いきなり、宿無しに襲い掛かり、その馬を奪い取ると逃げ出す。

黒馬を奪われた宿無しは、残されていた白馬を連れ、砂漠に入り込む。

廃屋に辿り着いた宿無しは、そこに馬を奪って逃げた風来坊がいるのを発見。

落ちていた枯れ木に火をつけると、風来坊と名乗った男は、火は嫌いだと叫び、その枯れ木を奪おうとする。

格闘の末、風来坊は奪った枯れ木を側の沼に捨てるが、宿無しは又、別の枯れ木に火をつけると、廃屋のベッドに横になり、一晩泊めろと傍若無人。

その時、近付いて来るひずめの音を二人は聞く。

宿無しは「隊商だ」と言うが、風来坊は違うと言う。

廃屋に近付いて来たのは、三人組の男達で、チーと風来坊に呼び掛けると、襲い掛かって来る。

チー(ティ・ロン)は、三折棍で戦いはじめる。

廃屋に寝ていた宿なしも、分銅を武器に戦う男から襲われ、巻き添えの形で仕方なく、その男と戦いはじめる。

チーの方は、兄弟らしき二人の追っ手から、鉄船幇に戻れと言われるが、それを拒否して戦い、二人とも殺してしまう。

宿なしの方も、分銅使いを殺していた。

廃屋を出て、宿なしと一緒に旅を続ける事になったチーは、自分が鉄船幇と言う殺し屋組織から逃亡して来た事を語りはじめる。

鉄船幇とは、買われてきた子供達をエユと言う人物が、殺し屋になるべく厳しい訓練を受けさせるところで、才能がないと分かった子供達は殺されたと言う。

自分は7歳の時にその組織に売られ、13鷹と言われる13人の一人になったと言う。

その話を聞いた宿なし、名前はチュオ(アレクサンダー・フー・シェン)と言うらしいが、何故、そのユエを裏切ったのかと聞くと、チーは疲れたと答える。

ある日、チーは、いつものように仲間達と共に、大きな強奪作戦に加わった。

その金を輸送していたグループには、腕の立つ用心棒が加わっており、先頭に立って、その男と戦っていたチーは、金を盗んだ仲間達を先に引き上げさせる。

しかし、その用心棒から、チーは右手を傷つけられてしまう。

森の中に逃げ込んだチーは、何とか、いつも胸に下げていた鉄船幇の印である飾りを木の下に隠すと、その場に気絶してしまう。

気がついたチーは、見知らぬ家族の家で看病されていた。

美しい娘が兄を呼ぶと、やって来たチャンと名乗るこの家の主人は、チーの回復を喜び、妻や家族達を紹介する。

美しい妹の名はフォンと言うらしい。

身体が回復するまで、その家で過ごす事になったチーは、人間らしい家族の温もりに触れ、今までの殺伐とした自分の生き方に疑問を持つようになる。

そして、フォンに、自分が殺し屋である事を打ち明けるが、フォンは素直にそれを受け、あなたは今、改心したのであり、大切なのは未来だと答える。

森に戻り、隠していた鉄船幇の飾りを見つけだしたチーだったが、フォンの言葉を思い起こしていた。

その頃、鉄船幇の住処では、センリンが、義父と呼ばれるユエ・シーホンに、ワン・アンの住処を突き止めたと報告していた。

ユエは、かつて自分を水牢に漬けた憎いワン・アンには恨みがあるので、その一家を皆殺しにしろと命ずる。

そこに、数日振りに、チーが戻って来る。

最初は無事を喜んだユエだったが、チーが鉄船幇の飾りを胸に漬けていない事に気付くと、わしに逆らったと怒り出す。

慌てて、手に持っていた飾りを胸につけたチーに、ユエは、昔のある強奪計画の際、三人殺したもののワン・アンと言う男を一人を逃がしてしまったが、そのワンの家を見つけたので殺してこいと命ぜられる。

4人の仲間と共に、そのワンの住処に馬で出かけたチーだったが、あれがそうだと教えられた家は、忘れるはずもない、自分が世話になったフォンや、チャンたち優しい家族が住む家だった。

チーは、人違いではないかと仲間達に訴えるが、間違いないと言う。

家に到着した彼等はワンを呼び、出て来たチャンは、自分がワンである事を認める。

すぐさま、一家を殺そうと襲い掛かった鉄船幇の鷹たちであったが、チーはさすがにそれに加担する事ができず、仲間達に見のがしてくれと止めに入る。

しかし、その願いも空しく、恩人であるワンもフォンも、チーの目の前で惨殺されてしまう。

鉄船幇の住処に帰って来たチーに、ユエは、何故、ワンの首を取らぬかと問いつめる。

許しを乞うチーだったが、お前に十二鷹を倒せるかと、仲間との戦いを命じられる。

チーは、やむなく他の仲間達と戦うが、その場は何とか許される事になる。

思い出話しをしていたチーは、共になったチェンに、その後ある事件が元で、自分は組織を裏切る事になったのだと言う。

しかし、二人の行く手は砂漠だった。

その頃、廃屋の近くで、仲間の馬を見つけた鉄船幇の新たな四人の追っ手は、廃屋で先に発った三人の死体を見つける。

死後三日と読んだ彼等は、まだそう遠くには逃げていないはずと後を追い、とうとうチーとチェンの姿を発見する。

追っ手に気付いた二人は、二手に別れ、敵を二分にする作戦に出る。

チーの三折棍を知り抜いている二人は、木の枝が邪魔になり、三折棍が思うようにに使えない事を見越して、林の中に入り込む。

はたして、木の枝に引っ掛かってしまった三折棍を無理矢理引っ張り、二折棍状態にしたチーは何とか二人を倒す。

チェンの方は、手甲を両腕に巻くと、そこから刃が飛び出す。

それを見た鉄船幇の二人の追っ手は、秘技の武器と知り驚くが、瞬時に倒されてしまう。

そこにやって来たチーが、何で倒したと不思議がると、すでに手甲を隠していたチェンは、敵が持っていた手斧だととぼける。

その夜、野宿をする事になったチーとチェン。

チェンは、自分は帰る家もなく、家族を殺した仇を探しているのだと打ち明ける。

それを聞いたチーは、自分も力を貸すと言い出すが、あんたに、その余裕はないとチェンは断る。

しかし、チーは、ユエを殺して、自分が組織を潰すと宣言すると、自分が組織を裏切る事になったある夜の事を話しはじめる。自分も、武術者として名高いツオ・イーファンという人物を探しているのだと言いながら…

ある晩、ユエは、ツオ・イーファンと言う人物の屋敷を十三鷹たちと襲撃する。

しかし、肝心のツオは留守で、捕まったツオの父親はユエに対し、お前は悲惨な最後を遂げるぞと言い放つが、そんな父親をあざ笑うように、ユエは、ツオの妻ユイチンを庭に連れて来ると、身ごもっている彼女をその場で殺せとチーに命ずる。

そのあまりに残酷な仕打ちに驚愕したチーだったが、義父や仲間達の前では逆らう事もできず、その事件で、ユエを見限り、自分は組織を抜け出したのだとチーは告白し、鉄船幇には、まだ強い仲間が残っていると言うのを聞いたチェンは、自分も手伝うと言うが、本当の名前をチーが尋ねると、やはり「宿なし」としか答えなかった。

翌日、次なる追っ手が迫る中、二人はとある町に到着していた。

チェンは、宿の主人と二人の従業員にこの店を買い取りたいと言い出す。

金を出してみせ、半月後に戻って来いと言う。

その時には、ここに死体があるだろうから、それを埋めてくれとも。

そして、承知し出て行こうとする主人達に、服を貸してくれと付け加える。

やがて、予想通り、追っ手の三人ワン、ヤン、チョウがその宿にやって来る。

その三人を出迎えたのは、宿の主人に成り済ましたチェンだったが、もちろん、追っ手は誰も彼の事は知らない。

三節棍を持った男が来なかったかと追っ手が聞くと、前にも三人組の男が来て同じ事を聞かれたが、実は、うちで働いている男がそうじゃないかと答えても、誰も自分の言う事を聞いてもらえなかったとチェンは言う。

それを聞いた三人も、やはり、にわかには信じられないようで、取りあえず、食事の支度をチェンに頼むと、念のために、追っ手の一人チョウが二階にいると言うその男を確認しに登ってみる。

チョウは、その男がいるという部屋の扉を開け、後ろを見ている男の顔を確認しようとする。

振り向いたのは、まぎれもなくチーだった。

チーは、素早くチョウに立ち向かうと、扉の後ろから入って来たチェンと協力して、あっという間に殺してしまう。

チーは、下にいるワンが使う武器に気をつけろと、チェンに教える。

下の食堂で、チェンが用意した食事を食べていた二人は、はばかりに行ったとチェンが教えたチョウの帰りが遅いのでどうしたと聞く。

その時、チーが飛び出して来て一人と戦う。

輪っかを武器とするワンも戦おうとするが、突然チェンが相手をする。

ワンが先に倒れ、チーとチェン二人で、残ったヤンに立ち向かう。

ヤンに組み付いたチェンは、おれの名前はツオ・イーファンだと小声で耳元で囁くと、驚いた相手を殺してしまう。

その夜、チーは、ユエにはまだ二人護衛がいると話ながら、未だに正体がはっきりしないチェンに対して、おれたちは不思議な関係だと呟く。

チェンは、おれは鉄船幇を潰したいと答えるのみ。

やがて、その鉄船幇の住処に到着したチーは、下っ端達と戦いながら中に入り込む。

そして、二階に姿を現したユエに対し、固めの銀の盃を投げ返す。

ユエは、何故戻って来た?お前を殺さねば気がすまぬと逆上する。

チーの後を追う形で、住処に入って来たチェンは、手甲をつけてみせると、そこから刃を飛び出させる。

その武器を目にしたユエは、その正体がツオ・イーファンである事を見抜く。

その名前をユエの口から聞いたチーも又、半ば予想していたとは言え驚くと、何故今まで、おれを殺さなかったと聞く。

すると、チェン、実はツオは、あの夜の真相を知りたいからであり、それはユエを殺してからだと答える。

13鷹の最後の二人、互いに左右の片足がない男が登場する。

しかし、ツオとチーは協力して、最後の二人も倒す。

すると、ユエは小箱を持って来る。

大勢の手下達が二人に立ち向かう中、ユエは小箱から取り出した鉄の爪を取り出すと、それを両腕に装着する。

子分達をなぎ倒したツオとチーは、ユエに立ち向かうが、ユエは強く到底かないそうにもない。

ユエはチーに、今ツオを殺せ。おれを倒すと、妻子の仇として、そいつに殺されるぞと説得しはじめる。

ツオは、相手の言葉に引っ掛かるなと忠告する。

しかし、ユエは、鉄船幇の宝は全てお前にやると言い出す。

それを聞いたチーは、にわかに迷いはじめる。

それを見て取ったユエは、ツオに、お前の妻を殺したのはチーだと教える。

それを聞いたツオは、チーと向き合う。

チーは、おれは生まれついての悪党だと開き直る。

ツオと戦いはじめたチーの三折棍は切れてしまう。

その時、ユエは鉄の爪でツオを襲い、二人は組み合う形となる。

ユエは、チーに何をしていると、今こそツオを襲うチャンスだとばかりに叱責する。

チーは飛び上がると、ツオの背中に飛び乗り、ユエの首を突き刺す。

驚くユエの腹をツオが刺し、とどめを刺す。

チーは、倒れたユエに対し、20年育てられても、お前を憎むと言い捨てる。

そして、ツオに対しては、仇を討てと言う。

ツオが、おれの仇は死んだと言うと、チーは自らツオに飛びかかり、ツオの刃に自ら刺さるのだった。

チーは、お前の手にかかって死にたかった…と呟いて、息絶える。

その後、父や妻子の眠る墓を参るツオの姿があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本では馴染みのない俳優が出ているカンフー時代劇だが、何やら「子連れ狼」「カムイ外伝」や「あずみ」と言ったコミックを連想させるような、悪の組織を逃げ出したヒーローが、次々と襲いくる追っ手達と戦う、分かりやすいアクション映画になっている。

途中で薄々観客にも気付く程度の設定だが、もう一人の謎めいた道連れとのコンビが協力して戦う様は、シンプルながら痛快である。

追っ手たちが、皆、得意技や武器が異なっていたり、特異な体つきだったりする所等も、コミックのようで楽しい。

途中、主人公を救ってくれた家族が無惨に殺されるシーンや、道連れが復讐の旅をしているらしき設定等は、いかにも70年代映画と言う感じで、その辺には、日本映画の影響があるのかも知れない。