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西の魔女が死んだ

2008年、「西の魔女が死んだ」製作委員会、梨木香歩原作、矢沢由美脚本、長崎俊一脚本+監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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魔女が倒れた。

もうダメみたい。

まい(高橋真悠)は、ママ(りょう)が運転する車でおばあちゃんが住む山の家に向っていたが、 雨の中、ウインカーを動かすのも忘れているママに注意する。

まいは、2年前の今頃、おばあちゃんと過ごした一ヶ月あまりの事を思い出していた。

タイトル

中学が始まって一ヶ月ほど経ったある日、急にまいは、仕事に出かけるママに学校には行かない。あそこは私に苦痛を与える場所でしかないと言い出す。

それを聞いたママは、特に理由も聞かずに、行きたくないのなら、しばらく行かなくても良いと言い残して出かけて行く。

ママも又、ハーフであったため、子供の頃は色々大変だったらしいので、まいの気持ちを少しは理解しているようだった。

しかし、その夜、まいは、あの子は感受性が強すぎる。生き難いタイプの子なのだ、しばらくおばあちゃんの所で過ごさせてみるとパパに電話をしている声が聞こえたまいは、「あの子は扱い難い子」と言う言葉に少し落ち込んでいた。

おばあちゃんの家に向うママの車の中、まいは、きっとおばあちゃんは私にがっかりするだろうと予測していた。

おばあちゃんの家に繋がる山道の入口横には、シェパードを飼っている家があり、その犬たちがうるさく吼えていた。

おばあちゃん(サチ・パーカー)は、ママとまいを優しく迎えてくれる。

ママは、おばあちゃんに、工場の仕事が忙しくてなかなか一緒に暮らせないパパが宜しく言っていたと、おばあちゃんに伝える。

まいは、まだ「あの子は扱い難い子」と言うママの言葉を気にしていた。

まいは、おばあちゃんの事は大好きで、小さな頃から、おばあちゃん大好きと言っていたのだった。

そんなおばあちゃんが、昼食にサンドウィッチを作るから、畠からレタスを取って来てと言うので、表に出て、畠のレタスをもぎ取ったまいは、そのレタスに、大きななめくじがついているのを見て腰を抜かす。

昼食後、車から荷物を取って来るようにと言われたまいは、車に独りで戻るが、その車の中を覗き込んでいる怪しげな男を見て立ちすくむ。

男は、まいに気付くと、お前はどこのもんじゃ?と脅すように聞くので、学校を休んでしばらくここで住む事になったとまいが説明すると、遊びで来たんか、結構な身分じゃの〜と嫌味を言って立ち去って行く。

荷物を持って戻って来たまいからその男の事を聞いたおばあちゃんは、それはゲンジさんでしょう。小道の入口に住んでいる人で、時々、庭の手入れなどをやってもらっていますと教えてくれる。

一人暮らしと言うので、離婚したのか?とママが聞く。

その後、おじいちゃんの部屋か、ママの部屋かどちらにする?と住む部屋の事をおばあちゃんから聞かれたまいは、ちょっと考えて、ママの部屋にすると答えると、急にママは、部屋を片付けて来ると言って二階に登って行く。

おばあちゃんは、ママもまいに見せたくないものがあるので片づけに行ったのでしょう。大人になる時、そう言うものが増えて来るのだと教えてくれる。

台所のテーブルの横に置かれた写真立てには亡くなったおじいちゃんの写真が飾ってあり、それを見たまいは、石が好きだったおじいちゃんは中学の理科の先生をしており、そこに英語の教師としてイギリスから赴任して来たおばあちゃんと結婚した事を思い出す。

翌朝早く、ママは帰って行った。

おばあちゃんから、今日は裏山で働くから、その前に少し散歩でもして来たら?と勧められたまいは、一人で裏山に登ってみる。

鶏小屋の前では、突然、鶏が暴れたのでまいは腰を抜かす。

裏山に行ってみると、見事なワイルドストロベリー(野イチゴ)畑があり、まいは感動する。

山の天辺で寝転がったまいは、中学校で孤立していた日々を思い出しながら、取りあえずエスケープだ…と笑ってみる。

そこへおばあちゃんがやって来て、一緒に野いちごを摘みはじめる。

おばあちゃんは、亡くなったおじいちゃんは、この野いちごで作ったジャムが大好きで何にでもつけたが、ある日、きゅうりにまでつけたのには驚いたと話してくれる。

この場所は以前、何も生えていなかったが、おじいちゃんが亡くなった後、ちょうどおばあちゃんの誕生日に急に出来ていたので驚いた…と言う話を聞かされたまいは、まるで、おじいちゃんからのプレゼントみたいねと答えると、おばあちゃんは、あの日は嬉しくて、ここに座って泣きましたと言う。

まいは、その時のおばあちゃんの姿を、つかの間、見たような気がした。

野イチゴを摘み終わった二人は、家に帰り、ジャム作りを始める。

大量の砂糖を使う事を知ったまいは、身体に悪いんじゃないか?と心配するが、一度にそんなにたくさん食べないし、たくさん使う方が腐らないのよとおばあちゃんは教えてくれる。

今年は、まいに手伝ってもらったので良かったとおばあちゃんが嬉しそうに言うので、まいは、来年も再来年も来るよと答える。

夜、まいが絵を描いていると、おばあちゃんが誉めてくれて、その後、何やら、古着をいじり出したので、それは何かと聞くと、ママのナイトウェアをほぐして、まいのエプロンを作るのだと言う。

おばあちゃんの心遣いを知ったまいは、おばあちゃん、大好き!と抱きつくと、おばあちゃんはいつものように「I know(分かってるわよ)」と優しく答えるのだった。

やがて、おばあちゃんは不思議な事を言い出す。

まいに、魔女と言うのを知っていますか?と言うのだ。

まいが、アニメなどで知っていると言うと、魔女は本当にいる。私の祖母がそうでしたと言うではないか。

予知や透視能力に優れていた祖母は、明治時代、19才の頃、日本に来た事があるのだとおばあちゃんは続ける。

ある日の午後、布巾を縫っていた時、祖母は突然、大海原のイメージを観、そこで泳いでいる祖父の姿が見えたので、思わず「右へ!」と叫んだのだそうだ。

その時、私の祖父は、本当に船から転落して、海で浮かんでいた状態だったのだが、その時、どこからともなく、祖母の「右へ!」と言う声が聞こえて来たので、夢中でその言葉に従って泳ぎ続けると、砂浜にたどり着いて助かったのだと言う。

後から、その不思議な体験を祖父から手紙で知らされた祖母は、自分がした事は何も言わないままにしておいたのよ…と言うおばあちゃんの話を聞いたまいは、家はそう言う家系なのか?と問いかける。

すると、おばあちゃんは「大正解!」と微笑む。

その夜、まいは、自分が海で独り泳いでいると、どこからともなく「西へ!」という声を聞く夢を観る。

翌朝、庭の手入れの手伝いをしていたまいは、おばあちゃんから、バラの花の近くににんにくを植えておくと、バラに虫がつかないし、香も良くなると教えられる。

まいはその後、森の中へ散歩に出かけ、昔から大好きだった秘密の場所に腰を下ろすと、自分も魔女なのか?頑張ったら、自分も超能力が持てるのだろうかなどと想像してみる。

家に戻って、おばあちゃんにその辺の事を確認してみると、まいの場合、基礎トレーニングが必要で、超能力を使うには強い精神力が必要なのだと言われる。

それを養うためには、毎日、早寝、早起き、食事をしっかり取るなどの、規則正しい生活を送らなければダメなのだそうだ。

魔女になるためには、自分で決める力、自分で成し遂げる力が必要であり、今から、朝起きてから寝るまでの計画表を作りなさいとまいは命じられる。

まいは、午前中は家事の手伝いをし、午後は勉強する事にする。

毎晩、何時頃に寝るのかと聞かれたまいは、2〜3時と答え、おばあちゃんを呆れさせる。

おばあちゃんは、まいの事を意思が弱いなどと思った事は一度もありませんよと、優しく励ましてくれる。

夜、ベッドにまいが入っていると、おばあちゃんがゆっくり眠るおまじないとして何かを壁に吊してくれる。

それは「たまねぎ」だった。

翌朝から、鶏舎の中に入り、こわごわ卵を取って来たりする、まいの「魔女修行」が始まる。

ある日、ゴミを出しに、小道の入口付近の集積所にやって来たまいは、そこに無造作に捨ててあるエッチな雑誌を見つけ、それを捨てたのがゲンジだと勘付くと、ますます彼の事が嫌いになっていき、何故、あんな男が、自分の生活に入り込んで来るのか?せっかく巧くいきそうだったのに…と、心の中で怨むのだった。

その日、まいは、盥の中に入れたシーツを足踏みで洗濯させられると、そのシーツをラベンダーの上に広げ干す事になる。

そんなまいに、おばあちゃんは、自分の土地の中で好きな場所に、まい専用の畑を作って良いと言ってくれる。

喜んだまいは、いつも行く、お気に入りの場所におばあちゃんを連れて行くと、そこにしたいと言い出してみる。

おばあちゃんは、ここに畑はできるかしら?強くて優しい植物を植えてみましょうと提案し、感激したまいは、又、おばあちゃん、大好き!と言い、おばあちゃんは「I know(分かってるわよ)」と答えるのだった。

おばあちゃんは、その場所を「マイ サンクチュアリ(聖域)」と呼んだ。

ある朝、まいが、台所の入口付近に咲いていた「ヒメわすれな草」と勝手に名付けた植物に水をやっていた時、表から大きな破裂音が響いて来る。

驚いて出てみると、郵便屋さん(高橋克実)のバイクが故障した音だった。

郵便屋さんがおばあちゃんに届けてくれたのは、イギリスに住む妹からのエア・メールだった。

おばあちゃんによると、妹は占師をやっているのだと言う。

バイクが壊れ、帰れなくなった郵便屋さんは、電話を借りて、息子に迎えに来るように連絡すると、おばあちゃん手作りの「花梨酒」を御馳走になる。

人の良さそうな郵便屋さんは、息子の健太郎は、将来、自分と同じ郵便屋になりたいと言っていると上機嫌で話し込む。

夕方近く、その息子の健太郎が自転車で、郵便屋さんを迎えに来て、一緒に帰って行く。

その夜、まいは、テーブルの上に置かれた缶の中身を当てようとしてみるが巧くいかない。

おばあちゃんは透視ができるのかと聞くと、そんな事はしないと言う意外な答えが帰って来た。

でも自分には、一つだけ、何時起きるか分かっている事があると意味ありげな事も言う。

その答えをまいも又、2年後に知る事になる。

ある日、いつものように、鶏舎に卵を撮りに言ったまいは、鶏舎が壊れ、中の鶏が無惨にも殺されている姿を発見し、悲鳴をあげる。

驚いて駆け付けて来たおばあちゃんは、その後、ゲンジさんに鶏舎の修理を頼む。

おばあちゃんは、あれは野良犬かイタチの仕業でしょうと言うが、まいは、鶏舎の網にたくさん付着していた茶色い毛の事が気にかかっていた。

ある日、森の中にまいがいると、突然空が曇り、大雨が降って来る。

まいは、ずぶ濡れになって、何とか小道まで抜け出た所でうずくまり、たまたま通りかかった郵便屋さんに助けられる。

まいは「森が…、森が…」と呟いていた。

その夜、不安が去らないまいは、おばあちゃんと一緒に寝る事にする。

まいは、おばあちゃんに「人が死んだらどうなるの?」と聞くが、おばあちゃんは「分かりませんよ、まだ死んだ事がないので」と答えるだけ。

まいは重ねて「パパは、死んだらもう最後の最後、何もなくなるんだって言うので、まいが死んでも、何時のものように太陽が登って、みんな普通の生活を続けて行くの?って聞いたら、そうだと言われた」と訴える。

おばあちゃんは、そんなまいを抱いて、「おばあちゃんが信じている事を聞かせましょう」と言い出す。

死ぬと言う事は、魂が身体から離れて自由になる事。まいは身体と魂があってまいなんですよと教える。

それを聞いたまいは、私は身体が消えてなくなると言うのが怖いと怯える。

おばあちゃんは、お腹が空くと怒る人がいるでしょう?身体が魂に影響を与えているのです。魂は身体を持っているから色々な経験をし、成長ができる。魂は成長したがっているのですと教える。

おばあちゃんが死ぬ時には、まいにだけ知らせてあげる。怖がっては行けないので、証拠を見せるだけにしましょうと約束する。

翌朝、まいは、鶏舎を修理してくれた謝礼を持って、ゲンジの所へ行かされる。

シェパードが吠えるゲンジの家に行ったまいは、こわごわ、持って来た封筒をゲンジに渡すが、その時、遊びに来ていたらしい仲間が、その子は何だと聞くと、ゲンジが、外人と所の子じゃ、学校をサボって来ていると嫌な事を言うので、まいはますます心を閉ざしてしまい、逃げるように家に帰るが、その時、もう一度シェパードを見て、鶏舎に残っていた茶色い毛の事を思い出す。

まいは、鶏を殺したのは、ゲンジの所のシャパードに違いないと訴えるが、それを聞いたおばあちゃんは、魔女は自分の直感を信じなければいけないが、上等じゃない魔女は、直感と勘違いして妄想に取り付かれて自滅したのよと注意する。

疑惑や憎悪で一杯になっているあなたの事が心配だ。そう言う気持ちは疲れる…と言い聞かせたおばあちゃんだったが、その夜、まいの寝室に、クッキーを焼いて持って来てくれる。

まいが自己嫌悪に陥ると、おばあちゃんはまいは立派にやっている。時間がかかる事もあると慰めてくれたおばあちゃんは、まいがここが好きと訴えるのを聞くと、ママに頼んでみると答えるのだった。

そのママは、一人のマンションで、夜茶漬けをすすっていた。

翌日、そのママからおばあちゃんに電話があり、パパが三日後にそちらに向うと言う。

そのパパが、おばあちゃんの家にやって来たのを出迎えたまいは、郵便屋さんが淋しげにやって来て、息子の健太郎がサッカー選手になりたいと言い出したと愚痴って帰る。

パパの要件は、そろそろ三人で暮そうという話になっており、ママも仕事を辞めても良いと言い出していると言う事だった。

まいは、今すぐ、自分も答えを出さなければいけないのかと尋ねると、パパは明日帰るから、それまでに決めたら良いと言ってくれる。

その後、久しぶりにパパの車でドライブに出てみたまいは、きだ市に三人で住む事になると、もうここへは来れなくなるねと聞いてみる。

パパも、ここまで来ようとすると半日もかかってしまうので、来れなくなるだろうと答える。

その夜、おじいちゃんの部屋で寝る事になったパパは、自分を本当の息子のように接してくれた亡くなったおじいちゃんが大好きだったとまいに教える。

そんなパパは、自分のベッドメイキングを、まい自らやってくれたのを見て、その成長振りに目を見張るのだった。

その後、ベランダで考え込んでいたまいは、近づいて来たおばあちゃんに、何故、パパは私が学校へ行かないのか聞かないんだろう?と尋ねる。

おばあちゃんは、みんな、まいの事を信頼しているからよと答えてくれる。

まいは、女の子同士の付き合いが微妙である事を話しはじめる。

すぐに仲良しグループが出来、一日中、そのグループと共に行動する事になるけど、今年はそう言う事をやらなくなったら、一人になってしまったし、以前仲が良かった子も、話し掛けてくれなくなった。

その子はきっと話したいんだろうけど、私とグループのどっちが大切かを試される事になるのは分かっているので、その子を責める気持ちにはならないとも言う。

今度、転校したとしても、その根本的な問題は解決できないと思うと話す。

私にも問題があると思うとまいは続ける。

これからも一匹狼として生きるのか、群れで生きるのか…と悩みを打ち明けると、おばあちゃんは、白熊が北極で生きていたとしても誰も責めないと言うので、まいは、いつもおばあちゃんに巧く誘導されているような気がするとまいは正直に言う。

翌朝、パパが寝室から降りて来ると、まいはママの所に行くと答える。

自分で学校も選びたいと言うのだ。

その時、パパへのお土産に、ジャムの瓶を詰めていたおばあちゃんの手が一瞬止まる。

パパが帰って行った後、まいは雨が降る中、雨具を着て、一人、お気に入りの場所に出かけてみる。

すると、そこで勝手に土を掘り返しているゲンジの姿を発見する。

ゲンジは、マイの姿に気付くと、「庭に使う土を掘っているのだ」と笑う。

家に逃げ帰ったまいは、おばあちゃんにゲンジがサンクチュアリに侵入してきたと怒りをこめて報告すると、おばあちゃんは「庭の土を掘っている」と言うならそれで良いじゃないの。それよりもあなたは、挨拶もせずに帰って来るなんて、相手に対して大変失礼な事をしたんですよと落ち着かせる。

しかし、まいは抵抗し、私はあの人を好きになんてなれないと叫ぶと、思わず、おばあちゃんは、まいの頬を叩いてしまう。

まいは涙ぐみ、おばあちゃんは私よりあの人の方が大事なんだ!と言いながら、二階の自室に駆け上がって行く。

心配して、食事を取るように二階に上がって来たおばあちゃんに、まいは、でもおばあちゃんも、私の言葉で、魂が反応して動揺したねと言い放つ。

雨が上がって、霧が立ちこめた森の中に独り彷徨い歩くまい。

そのまいを心配して探しに来たおばあちゃんは、彼女の姿を見つけると、その肩を抱き家に連れ戻すと、お茶を出しながら、こんな霧を窓から眺めながら、お茶を飲むのが大好きだったおじいちゃんの事を話し出す。

そのおじいちゃんと二人で、小さな頃、まいが霧の中で迷子になった時、探し回った事を打ち明けたおばあちゃんは、今は、そのまいもちゃんと帰って来れるようになったと呟く。

ママが迎えに来た。

ママは、自分は仕事を辞めるつもりはない。ママも自分の人生を私に押し付ける事は出来ないとおばあちゃんに告げ、それを聞いたおばあちゃんも、確かにオールドファッションかもねと淋しげに答える。

そんなおばあちゃんの弱気な姿を見たママは、そんな姿はママらしくない。いつも信念に溢れ、揺るがないのがママなのだと力付けて、まいと共に帰って行く。

走りはじめた車の中から、見送るおばあちゃんを振り返ったまいは、おばあちゃんは言って欲しかったんだ。「おばあちゃん、大好き!」って。でも私には言えなかった…と心で呟いていた。

2年経った今、まいは毎日学校に通っていた。

あれから一度も、おばあちゃんに会っていなかった。

あのまま、おばあちゃんを独りにしておくべきじゃなかったんだと、おばあちゃんの家に向う車の中のまいは悔やんでいた。

まいは、涙ぐみながら運転するママに「知っていた?」と聞いてみる事にする。

すると、即座にママは質問の意味を察知したかのように、「そうよ、あの人は本物の魔女よ」と答える。

おばあちゃんの家に到着すると、家から出て来た郵便屋さんが、村人に知らせて来ると出かけて行くのとすれ違う。

家に入ると、あのゲンジがおり、ママとまいに、黙って寝室の方を指差す。

寝室の布団に横たわっていたおばあちゃんの顔には、ハンカチがかぶせられていた。

それを見たママは、うちではこんなものはかけないとハンカチを取り、目をつぶっているおばあちゃんの顔を見る。

そして、まいを台所へ行くように言うと、独り大声を出して泣き出すのだった。

台所のドアを叩く音がするので、まいが出てみると、そこにはげんじが立っており、何かする事があったら、何でも言ってくれ。わしは出来は悪かったが、ここのじさんとばあさんいは良くしてもらった…と淋しそうな顔を見せる。

それを見たまいは、ゲンジの今まで知らなかった人柄を見つけた驚きに溢れる。

帰りかけたゲンジが、以前、まいが水をやっていた植物を見つけると、「良く、きゅうり草が生え取る」と言うので、その地方ではそう呼ぶ事をまいは知る。

その「きゅうり草」に顔を近づけたまいは、その横の壁に「ニシ ノ マジョ カラ ヒガシ ノ マジョ ヘ」と文字が描かれているのを発見する。

文字はこう続いていた。

「オバアチャン ノ タマシイ ダッシュツ ダイセイコウ」…と。

おばあちゃんは、あの夜の布団の中で交した約束を覚えていてくれたのだ。

胸が一杯になったまいは、誰もいなくなった台所に向い、「おばあちゃん、大好き!」と声をかけてみる。

すると、どこからともなく「I know(分かってるわよ)」と言う声が聞こえて来るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

美しい森の中の一軒家を中心に展開する静かなドラマの雰囲気はまるで「実写化されたジブリ作品」

内容は、男性ももちろん感動するが、どちらかと言うと女性がより共感できる類いのものだと思う。

祖母から母へ、そして娘へと言う、「人間として、女性として、基本的でまっすぐな生き方の伝達」

わざとらしいメッセージ映画のような押し付けがましさはなく、美しい自然の風景を観ている内に、じんわり心に染み込んで来るようなものがある。

祖母役を演じているサチ・パーカーの完璧な日本語には驚愕させられる。

日本人が吹き替えしていると言われても分からないほどである。

タイトルからして、一見「ファンタジー」のようだが、いわゆる「スーパーナチュラル(超自然現象)」のようなものを期待してはいけない。

この作品で描いているのは、「自然こそファンタジーであり、それを見い出すのは人間の心だ」と言う事ではないだろうか?

そうした気持ちで観ていると、この映画はリアルな内容でもあり、同時にファンタジックでもある。

おばあちゃんがまいに語り聞かせる言葉の一つ一つは、成長期の子供に向けているようで、実は大人の胸にもしっかり響くものでもあり、むしろこの作品は、大人にこそふさわしいものかも知れない。


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