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初笑い寛永御前試合

1953年、新東宝、八住利雄脚本、斉藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

時は寛永3年。

天下の御意見番大久保彦佐衛門(古川緑波)が鎧兜を身につけ、桶に乗って江戸城に登城する。

その頃、連日連夜、腰元達が踊るのをのんきに観て愉快に過ごしていた三代将軍家光(キドシン)は、そんな大久保の出現をけむたがるが、先君徳川家康から拝領したと言う鎧兜を身につけ、先君の声を伝えに参ったと言う彦佐衛門には頭を下げねばならなかった。

彦佐衛門は、世はまさに天災、インフレの御時世。そんな中で、連日饗宴に耽るとは何ごとかと叱りつける。

家光は、日頃の防衛には予備隊があるではないかと反論するが、逆コースと世論から叩かれるかも知れないが、日頃から、保安隊、自衛軍の準備だけはしておかねばならないと力説する彦佐衛門は、この際、御前試合を広く一般に公開して、武芸を鼓舞しようと提案する。

かくして、市中には、来る正月二日、吹上御苑において、御前試合を執り行うとのお触れが立てられる事になる。

そのお触れを見ている町人達の中に、スリの勘八(堺駿二)も混ざっていた。

勘八は、近くを通りかかった一人の侍の懐から財布を抜き取る。

その様子を見ていたスリ仲間のお浜(藤間紫)は、やったなと気付く。

その頃、生駒一心斉道場では、琴を弾く娘の弥生(光岡早苗)に、今度の御前試合に出場したら、自分は引退し、布袋市兵衛(花菱アチャコ)と弥生の祝言を挙げさせ、二人にこの道場を継がせつもりだと、生駒一心斉(江川宇礼雄)が伝えていた。

一心斉は、内弟子中、一番正直者である市兵衛を、武芸者としても買っていたのだ。

その当の市兵衛、道で鳥追いの女が三味線と唄を披露しているのを聞き惚れていた。

そんな市兵衛の懐を狙ったのが勘八で、財布をすられたことに気付いた市兵衛は、すぐに後を追い、勘八から財布を取り戻すが、気がつくと、それは自分の財布ではなかった。

一方、生駒一心斉道場では、弥生にかねてから目をつけていた穴沢玄達(益田キートン)が訪ねて来て、一心斉から、市兵衛との婚約の話を聞かされると、内心がっかりしながらも、今度の御前試合で自分が活躍したら、この道場の師範番として雇ってくれないかと持ちかけていた。

一心斉は、御前試合に出るには、免許皆伝を持っている事が条件のはずだが、大町伊勢守に破門されたと聞く貴公はお持ちか?と聞くと、侮辱されたので、この場で果たし合いを申し込みたいと玄達から言われてしまう。

それでは道場で…と応じかけると、竹刀等ではなく、この場で「こづか突き」でやりたいと言い出す。

「こづか突き」と言うのは、将棋盤の上に互いに右手の手のひらを乗せ、相手側が振り降ろすこづかを瞬時に避けると言うもので、互いの胆力を見極める勝負である一方、失敗すれば、利き腕の手のひらを傷つけるため、二度と剣を持てなくなると言う危険な勝負だった。

やむなく、それに応ずる事にした一心斉は、まず自分がこづかを振り降ろす事にするが、玄達は見事に避けてみせる。

市兵衛の方は、勘八から奪い取った他人の財布の中に「竹内直人」と書かれた新鮮流免許皆伝が入っていたことに気付き、一刻も早く持ち主に返さねばならぬとうろたえていた。

そんな市兵衛に、事情を聞くふりをしながら気安く近付いて来たお浜は、あっという間に、その財布を取り上げると逃げ出してしまう。

市兵衛は、又しても、お浜の後を追おうとするが、ちょうどやって来た駕篭屋と衝突してしまい、もたもたしている内に、お浜の姿を見失ってしまうのだった。

道場では、一心斉の方が右手を将棋盤の上に置く番になるが、その時、庭で控えていた玄達の仲間の一人、小山権次(星十郎)が、ひきょうにも手鏡で光を反射させ、一心斉の目に当てて目くらましをやったため、一瞬の隙を突かれ、玄達のこづかに手のひらを貫かれてしまう。

穴沢道場に戻って来た玄達らは、新選流の免許皆伝をするよう命じていた勘八が、市兵衛にその財布ごと奪われてしまったと報告を受け、何とか市兵衛の手からその財布を奪い返さなければならぬと息巻いていた。

その時、窓の外から笑いながら声をかけたのがお浜で、その財布ならここにこうして持っていると見せびらかすと、一体幾らで買ってくれる?と持ちかけて来る。

しかし、中の免許皆伝を出してみようとしたお浜は、中には小銭しか入っていない事に気付き、悔しがるのだった。

弥生から手のひらの手当てをしてもらいながら、市兵衛の帰りを待ちわびていた一心斉だったが、その市兵衛なら、竹内直人と言う人に免許皆伝を届けねばならぬと言い残して、書状に書かれていた住所の総州富士沢に向かったと婆やから教えられる。

それを聞いた一心斉は、今さらながらに、市兵衛の正直さに感心するのだった。

その市兵衛、富士沢に近付いていたが、免許皆伝を奪い返せとの玄達の命令を受け、その後を追っていたのが勘八で、さらにその後を追っていたのがお浜だった。

その頃、長い修行を終え、自宅に戻っていた竹内直人(森川信)は、免許皆伝をすられてしまったと打ち明け、妻の父である三十郎(小川虎之助)から厳しく叱責を受けていた。

そのような男に、この家の敷き居を跨がせるわけには行かぬと言うのだ。

家の中では、妻おあき(相馬千恵子)と一人娘のおなつ(打田典子)が、事の成りゆきをハラハラしながら聞いていた。

三十郎は、本当に新選流の免許皆伝をもらったと言うのなら、妻のお秋とこの場で手合わせしてみろと言い出す。

娘のおあきには、日頃からそれなりの訓練はさせているから、そのおあきを倒せたら認めてやると言うのだ。

それを聞いていたおなつは、父上は、昨日から何も食べていないのだから、そんな惨い事をやらせないでくれと頼むが、三十郎は許そうとはせず、やむを得ず、おあきはなぎなたで、夫と対決する事になる。

その結果は、おあきの勝ちで、腹に力が入らず、思わぬ不覚をとったと言い訳をしながら、直人は家を出て行くのだった。

そんな直人とすれ違い、竹内家を訪ね当てたのが市兵衛で、ちょうど玄関口で父親を見送っていた娘のおなつから、父親の直人ならたった今出て行ったと聞かされる事になる。

しかし、直人の行く先は「あっち」と言う漠然としたもの。

途方に暮れた市兵衛は、取りあえず、近くの大きな木の下で腹ごしらえをしようとするが、そこで男が倒れているのに気付く。

助け起こしてみると、それはスリの勘八だった。

すぐに、昨日のスリと見抜いた市兵衛だったが、お前から奪い取った財布は、すぐに別の女にすられてしまった。自分からすった財布はお前にやるから許してくれと頼み、相手が腹を空かせて動けないと知ると、持っていた握り飯を分けてやる。

その正直な言葉に心動かされた勘八は、じつは自分の母親はこの近くに住んでいるで一目でも会いたいが、もう自分は一歩も動けないと言うので、小さい頃に母親を亡くしていた市兵衛は不憫に思い、その母親をここへ連れて来てやるから、今日から真人間になれと諭す。

そんな二人の会話を、大木の後ろで盗み聞いていたのがお浜だった。

勘八から自宅の場所を聞いた市兵衛は、そこへ出向き、母親おけい(清川虹子)に出会ったので、息子が近くに来ていると伝えるが、江戸で真面目に大工をやっていると信じ込んでいたおけいは全く信用しようせず、実は勘八はスリだったのだと聞かされると、激怒して市兵衛を追い返す。

勘八の待っている大木の所へ戻って来た市兵衛は、役人達から引き立てられて行く勘八の姿を見て驚く。

勘八は市兵衛が密告したと思い込んでいるようで、真人間になろうと思ったが、こんな事をされたんでは恨んでやると市兵衛に言い残して連れられて行く。

全く身に覚えのない事で逆恨みされたと知った市兵衛は、何とか勘八の誤解を晴らそうと、役人達の後を追おうとするが、そこにお浜が笑いながら出て来る。

競争相手をひとり片付けたと言いながら別方向に歩き始めたこのお浜こそ、勘八の居場所を役人に密告した張本人だった事を悟った市兵衛は、どちらを追うべきか迷ってしまう。

その頃、勘八を連れていた役人達は、数名の浪人に襲撃されていた。

勘八を救い出したのは、玄達の仲間達だった。

その中の一人、小山権次は、何食わぬ顔をして、後から追って来た市兵衛にばったり出会ったように装うと、勘八を見なかったかと聞く市兵衛に、それなら先ほど斬って捨て、手傷を追った勘八は川に落ちてしまったと嘘を教える。

しかし、その言葉を鵜呑みにした市兵衛は、必死に勘八の姿を探して川岸をうろつきながら、もし本当に死んだのなら、一人遺された母親の面倒は自分が見ると誓うのだった。

そして、すぐにおけいの元に駆け付けると、自分が面倒を見るので、一緒に江戸へ行ってくれと、無理矢理家を連れ出すのだった。

品川の三州屋では、大の武芸ファンである主人辰助(横山エンタツ)が、来る御前試合に出る武芸者なら無料で泊めると立て札を出したので、続々と怪し気な武芸者たちが集まっていた。

宮本武蔵の妾の子で二代目宮本無三四と称する男(シミキン)や、佐々木小次郎ジュニア(内海突破)、荒木又衛門(並木一路)、塚原卜伝、岩見重太郎等々…

そんな主人の話を聞いた一心太助(川田晴久)は、その気風にほれて、持って来た魚を全部ただで置いて行く。

辰助は、今夜は大晦日なので、芸者を集め大宴会をやると息巻く。

そんな中、おけいを連れた市兵衛も泊まっていたが、主人から、御前試合に出るのかと聞かれた市兵衛は、自分は試合が大嫌いで、剣は心だと言う始末。

同じ三州屋の別の部屋には、市兵衛を連れ戻しに旅に出た弥生と婆やも泊まっていたが、互いに相手の事には気付かないままだった。

おけいは、息子の勘八が死んだと聞かされ、その位牌に念仏を唱えていた。

その部屋に風呂から帰って来た市兵衛は、万一の用心のためと、衣装入れの中の腹巻きの中に免許皆伝を忍ばせておく。

同じ三州屋の別の部屋には、竹内直人も泊まっていたが、その部屋に入り込んで来たのが、今、市兵衛が免許皆伝を衣装入れの中に隠すのを盗み見ていたお浜だった。

彼女は、かつて水茶屋で働いていた頃、この直人から捨てられた過去を持つ女だったが、まだ直人への未練を断ち切れてなかったのである。

しかし、お浜と久々の再会に驚いた直人だったが、妻も子もいる自分にはどうにもならぬと相手にしない。

そんなつれない直人に、お浜は、すられた免許皆伝のある所を知っていると言いながら、身体を預けようとして来るが、直人にはねつけられると、逆上して、夕食のそばを投げ付けると外に飛び出して行く。

その後を追おうとした直人だったが、ちょうど廊下を通りかかった市兵衛とぶつかってしまい、女の大事なものを取ったらいけないと言われ、そのまま部屋に押し戻されてしまう。

おけいが風呂に出かけ無人になった部屋にやって来たお浜は、衣装入れの中の腹巻きから免許皆伝だけ抜き取ると逃げ出す。

その直後、窓から部屋に侵入して来たのが勘八だった。

勘八は、同じく腹巻きを盗み、部屋を出ようとするが、その時、自分の名前が書かれた位牌を見つけたので、それを見ていた所に、おけいが風呂から帰って来て、生きていた息子と対面する。

部屋に忍び込んでいたその様子から、息子の正体が本当にコソ泥だった事を悟ったおけいは激怒し、散々、勘八を殴ると、「この親不孝もの!」と叫びながら、窓から外へ放り出してしまう。

その頃、市兵衛は、部屋に押し戻して話を聞いた目の前にいる男こそ、竹内直人だと知り、大喜びしていた。

すぐに部屋に取って返し、腹巻きの中の免許皆伝を取り出そうとした市兵衛だったが、それがなくなっている事に気付きがく然とする。

さらに、おけいの姿も見えず、残されていた手紙には「勘八は生きていたが、おわびに死にます」と書かれていた。

又しても、問題が重なり困惑した市兵衛だったが、取りあえず、直人の所に戻り、免許皆伝を紛失したと謝罪するしかなかった。

その後、こんな事を言えた義理ではないかと前置きし、取りあえず、あなたは家に戻り、もう一度、奥様と勝負をすればどうかと勧める。

前回負けたのは、あんたが相手を奥さんと思っていたからで、今回はそんな事は思わずポーンとやってみなはれと勇気づける。

すると、直人も納得し、明日すぐに帰宅すると言うので、無事勝負に買ったら、千葉新明町の道場まで知らせに来てくれと市兵衛は頼む。

江戸に戻った勘八は、持ち帰った市兵衛の腹巻きの中が空だったと知った玄達から、またしても怒鳴られていた。

それでも勘八は、母親に会ったので、渡す金が欲しいので貸してくれと頼み込むが、玄達は聞くはずもなかった。

それで、品川の三州屋には、弥生も泊まっていたと教えると、すぐに仲間達を率いて、玄達は道場を後にする。

その頃、床についていた弥生は、宴会場のどんちゃん騒ぎがうるさくて、なかなか寝つけないでいた。

そこに侵入して来た玄達一行は、弥生を連れ去ろうとする。

それを偶然目撃した女中が悲鳴を上げ、宴会場にいた辰助に強盗だと知らせるが、その場にいた武芸者たちに手助けを乞うと、皆後込みするのを見た一心太助は、ここにいる全員が、ただで泊まる目当ての偽者と気付き、たたき出してしまう。

元旦

お浜は、竹内直人の自宅にこっそりやって来る。

庭内では、再び夫婦の勝負が始まっていた。

今度は直人が妻を負かし、その姿を見た三十郎はでかしたと喜ぶのだった。

おあき、おなつと涙の抱擁を果たした直人の近くに紙切れが投げ込まれる。

開けてみると、なくしていた免許皆伝ではないか。

すぐさま、玄関から外に飛び出した直人は、逃げていたお浜を捕まえる。

お浜は、夫婦の情愛には歯が立たないと負けを認め、なおも引き止めようとする直人を突き飛ばしてしまう。

すると、直人はそばの門松の竹の間に首を挟んで身動きができなくなってしまったので、仕方なく助けてやろうと身体に触れたお浜は、直人が高熱を発している事に気付く。

その頃、江戸の町中では、いなくなったおけいを探し求め、歩き回る市兵衛の姿があった。

そんな市兵衛と出会った小山は、穴沢道場に戻ると、偽の免許皆伝を手に入れたと玄達に渡す。

そんな所に、泥酔した勘八がやって来て、偽の免許皆伝を作った事は知っているぞ。おれがばかだった。お前達に、体よく利用されただけだった。お払い箱になるのは覚悟しているが、せめて銭を暮れと玄達に絡みはじめる。

玄達は、そんな勘八を、鍋に入れて煮てしまえと仲間達に命じたので、慌てた勘八はその場を逃げ出す。

弥生は、その道場外の物置きに縛られていたが、勘八が逃がしてやる。

その直後、様子を見に来た玄達に殴り掛かり、ドタバタの末に捕まってしまった勘八は、柱に縛り付けられてしまう。

その頃、一心斉の所に礼を言いに来ていたのは、竹内直人の妻あおきとおなつの二人だった。

その話で、はじめて市兵衛の手柄を知った一心斉だったが、そこへ当の市兵衛がようやく戻って来る。

一方、子分の小助(西岡タツオ)と一緒に町を歩いていた一心太助は、身投げを仕掛けているおけいを見かけ、助けようとして駆け寄り、勢い余って逆に自分が川に落ち、おけいたちから早まるなと言われ助けられていた。

いよいよ1月2日、町には、一心太助が乗った宣伝カーがくり出し、本日行われる御前試合の事を町民達に唄で広報していた。

大久保彦左衛門邸に連れて来られていたおけいは、恩を受けた布袋市兵衛の名前を聞き、それなら、今日の御前試合に、生駒一心斉の代理として出る事になっていると教える。

そこに戻って来た太助に、おけいの事を市兵衛に知らせに行ってくれ、そして、勘八も探してやってくれと彦左衛門は頼む。

生駒道場では、帰って来たなり、いきなり御前試合に出る事を知らされた市兵衛が呆然としながら裃を着せられていた。

全く試合には乗り気になれない市兵衛だったが、籤で決まった対戦射手が穴沢玄達で、弥生からお父上の仇を討ってくれと言われると従うしかなかった。

道場を出かけた市兵衛は、そこに置かれた手紙を見つけ、中を読んでみると、勘八の母が森の中にいるとあるではないか。

正直者の市兵衛は、迷わず森に出かけて行く。

吹上御苑では、いよいよ御前試合が始まろうとしていた。

生駒道場に辿り着いた一心太助は、市兵衛がどこかへ出かけてしまったと聞き慌てていた。

その頃、森にやって来た市兵衛は、玄達の仲間達に取り囲まれていた。

一心太助とおけいは、宣伝カーに乗り、市兵衛と勘八を探しはじめる。

その声を、物置きの中で聞いた勘八は、バカ力を出し、後ろ手に縛られていた柱を根元から引っこ抜くと、その柱を背負ったまま外に飛び出し、ちょうど通り過ぎる所だった母親おけいと対面する。

御前試合では、鼻が異様に高い剣客白野弁十郎(柳家金語楼)が、フェンシングで勝利をおさめていた。

続く試合は、ジンギスカン(伴淳三郎)対猿飛佐助だったが、灯籠やたぬきの置き物に化けたり、透明になって戦う佐助の忍術にジンギスカンはきりきり舞いをさせられて負けてしまう。

同じ頃、森の中では、市兵衛が玄達の仲間達と戦っていた。

御前試合では、高熱を押して、竹内直人が出場していたが、鎖鎌をあやつる対戦相手に苦戦していた。

それを見兼ねたおなつが、母親に助けを求めると、思いあまったおあきが、審判長の大久保彦左衛門 の元に駆け寄り、夫は病気なので、自分が代わりに出ると申し出、健気なりと許させる。

かくして、なぎなたで出場したおあきは、見事に相手を打負かすのだった。

応援団の辰助も大喜び。

市兵衛は、敵と戦いながら森から抜け出そうとしていたが、そこにやって来たのが、勘八も乗った宣伝カーで、真人間になるよと誓う勘八や、その母親のおけいの姿を確認した市兵衛は安心して、後を任すと言い残し、城へと走る。

棍棒を手にした太助の仲間や勘八は、車を降り、玄達の仲間に立ち向かって行く。

城では、今まさに、市兵衛と玄達の呼び込みが始まっていた。

彦左衛門は、市兵衛の姿が見えないので、玄達の不戦勝にすべきか迷っていた。

そこへようやく、市兵衛がやって来たと、発見した辰助が叫ぶ。

市兵衛と対決する事になった玄達はいまいまし気に竹刀を取り出すが、ストップをかけた市兵衛は、その竹刀の中に鉄が仕込まれていると彦左衛門に申告する。

続いて玄達が槍を取り出すと、又してもストップをかけた市兵衛は、その槍が飛び出す仕掛けになっていると、彦左衛門に申告する。

結局、二人は「こづか突き」で決着をつける事になる。

先攻の市兵衛がこづかを構えると、客席の隅で待機していた小山が、又しても手鏡を取り出し、太陽光を反射させ、市兵衛の目をくらませようとする。

それに客席から気付いた弥生は、こづかを投げ、小山を倒す。

目くらましがなくなった市兵衛は、瞬時に、玄達の手のひらを突き通して勝利する。

喜んだ弥生が駆け寄り、市兵衛に抱きつくが、そこに玄達が襲い掛かろうとしたので、市兵衛は斬って捨てる。

すぐさま、玄達の死体を始末する葬儀班が駆け付けて来る。

御前試合が無事終了し、参加者達が皆踊り始める。

大久保彦左衛門もそれに混ざって踊っていたのを見に来た家光は、嬉し気に語りかけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルからも明らかなように、当時の人気コメディアンが総出演した正月映画である。

顔見せ興行的色合いが強いため、コメディとしてはやや平凡な印象を受けなくもないが、懐かしい顔が大勢登場するので、その顔ぶれを発見するだけでも楽しい。

女猿飛佐助を演じている女性も、当時は有名人と思われるが、今は誰なのか分からないのが残念。

主役花菱アチャコのお人好し振りが、爆笑ものと言うよりは、ややお涙調で描かれており、 宿屋の場面で、名コンビ、エンタツ、アチャコの漫才も少し披露される。

「男はつらいよ」シリーズの初代おいちゃん役でお馴染みだった森川信が、意外と二枚目役をやっているのも見物。

藤間紫演ずる悪女も色っぽい。

冒頭で、家光が言う予備隊とか、彦左衛門がそれに応ずる保安隊とは、今の自衛隊の前身の警察予備隊、保安隊の事で、劇中、軍艦マーチがかかったりして、軍国調復活の風刺が描かれている所にも注目したい。