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ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発

2008年、「ギララ」製作委員会、右田昌万脚本、河崎実監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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北海道の洞爺湖。

今しも、G8サミットが始まろうとしており、マスコミ陣がごった返す中、東京スポーツの 隅田川すみれ(加藤夏希)とカメラマンの戸山三平(加藤和樹)は外に抜け出す。

三平は、すでに33回目も開いているのに、世の中悪くなる一方のサミットなんか、何の意味もないのではないかと口にするが、すみれは何もしないよりはマシじゃない?とポジティブに答える。

そんなすみれは、どこからともなく聞こえて来る不思議な音に気付くと、森の中に入り込んでしまう。

しかし、三平とすみれは森の中で道に迷ってしまう。

やがて二人は、宮司らしき老人(中田博久)が太鼓を打鳴らす中、神社の境内で不思議な踊りを踊っている村人らしき一団を発見する。

これは面白い素材を見つけたと、カメラのシャッターを切りはじめた三平だったが、その気配に気付き、村人達は動きを止める。

その中の一人(きくち英一)が何者かと誰何し、三平とすみれに出て行け!と怒鳴り付ける。

その頃、サミット会場では、京都議定書の開催国でありながら、その後、二酸化炭素を増加させている日本に対し、ドイツ首相が厳しい意見を述べていた。

それを聞いていた伊部首相(福本ヒデ)は、ストレスで胃の調子が悪くなり、一時退場する。

フランスのソルコジ首相は、会議を他所に、通訳席にいる美人通訳、奈美(森下悠里)に色目を送っていた。

その頃、札幌近辺に、巨大隕石が墜落する。

そこから、謎の宇宙大怪獣が出現したとの連絡を受けたサミットの首脳達は緊張する。

タイトル

都市部を破壊したギララは、赤い光珠に変化し、空に飛び上がって行く。

サミット会場に、木村参謀(黒部進)、高峰参謀(古谷敏)らを伴いやって来た地球防衛軍の鳴海長官(夏木陽介)は、伊部首相に、各国首脳達をただちに自国へ返すように進言する。

その指示に従い、各国の首脳達は会場を後にしようとするが、その時、アメリカ大統領が、自分は逃げずに戦うと言い出す。

アメリカ国民は、怪獣から逃げる大統領等望んでおらず、戦えば、支持率も上がると言うのだ。

それを聞いた他国の首脳達も足を止め、まずはフランスのソルコジ、イギリス、次いでアンジェリカドイツ首相、カナダ、イタリア、最後のロシアも、自国の近くなので自分も留まると言い出す。

サミット会場は、ただちに「宇宙怪獣大作本部」となり、スポークスマンが、マスコミに対し、G8首脳達が、協力して、怪獣退治に乗り出すと発表する。

東スポの編集長河西(井上純一)から、うちは一般紙とは違うんだから、全社一斉に流される記者発表等ではなく、独自に特ダネを掴んで来いと、携帯で発破をかけられていたすみれは、会場に設置してあるテレビに写し出された怪獣の姿を観て、どこかで見覚えがあるような気がしてならなかった。

作戦会議中の本部では、突如、ペロペロキャンディーを持った見知らぬガキが出現し、「怪獣の名前はギララってどう?目がギラギラしているから」と言い出したので、木村参謀は慌ててつまみ出すのだった。

その後、ギララは、中国の宇宙船AACベーター号に付着していたギララ胞子が、地球上で巨大化したものとの連絡を受けた鳴海長官は、各国首脳達に伝える。

鳴海長官は、会場内のスクリーンに科学者の佐野博士(和崎俊哉)を呼び出し、各国首脳達らへも詳しい解説を依頼する。

佐野博士は、高熱エネルギーを好むギララは、そうしたエネルギーがない太平洋上に抜けると言う事はなく、おそらく、当分、北海道に居座るだろうと推理する。

その言葉を裏付けるように、ギララが登別に出現する。

一刻も早い攻撃を勧めるアメリカ大統領に対し、鳴海長官は、今、怪獣を分析中なので、今しばらく待つように制止する。

その頃、ギララに近付こうと、三平の運転する車で向かっていたすみれは、防衛軍の検問に引っ掛かってしまい、取材はマスコミ発表を待ってくれと言われてしまう。

仕方なく、少しバックして停車した車の中で、すみれと三平は、テレビで流しているギララに関する著名人達のインタビューを聞くしかなかった。

みうらじゅん、リリー・フランキー、水野晴郎氏らが「いや〜、ギララって、本当に凄いですね」とコメントを述べていた。

ギララが留まっている登別では、早くも商魂逞しく、ギララまんじゅうや、ギララドロップスが売り出されていた。

作戦本部では、防衛軍の秘密兵器「はげわし」を昭和新山から発射すると発表する。

木村参謀は、昭和新山の地底にたまっているマグマを操作して、疑似高熱エネルギー体を作り、ギララを誘き寄せるのだと説明する。

その昭和新山では、深見博士(堀内正美)がマグマを抑制する装置の側にいたが、そこへ、もっとマグマを活性化してくれと、防衛軍が依頼に来る。

深見博士は、危険だと一旦は断るが、どうしてもと言われ、仕方なく、助手達に周波数を600に上げるように指示を出す。

その途端、昭和新山に地震が発生する。

深見博士は、慌ててスイッチを切ろうとするが、時すでに遅く、新山は噴火を始める。

しかし、その結果、ギララは新山の方向に向かったので、「はげわし」の照準をギララに固定する事が出来た。

鳴海長官は、その発射スイッチを伊部首相に託すが、意気地のない首相はなかなか押そうとしない。

それを横で見ていたアメリカ大統領は、苛立って、自分が押すと言い出す。

すると、伊部首相はすぐにそれを勧める。

「はげわし」は発射されたが、そのミサイルはギララの口にくわえられ、飲み込まれてしまう。

作戦の失敗を目の当たりにした伊部首相は、又しても腹の調子が悪くなり、トイレに行ってしまう。

見兼ねたイタリア首相が、自分にアイデアがあるとい言い出す。

「はげわし」作戦が失敗した所を、他のマスコミ陣と一緒に遠くから見ていたすみれは、ばったり、以前、神社で踊りを踊っていた子供と出くわす。

子供は、ギララは人間には倒せないと告げる。

詳しい話を聞こうとしたすみれだったが、ちょうど、編集長から携帯がかかってきたため、それに気を取れているうちに、子供の姿を見失ってしまう。

イタリア首相のアイデアは「ローマ魂作戦」と名付けられ、ギララを誘き寄せる場所の近くにテントが設営され、陣頭指揮をする高峰参謀が部下達に指示を出していたが、そこに鳴海長官とイタリア首相本人が視察にやって来る。

ギララに対し、熱誘導弾ミサイルが発射され、ギララは、そのミサイルが反転し向かう方向に歩き始める。

やがて、目的地に到着したギララの足下が崩れる。

「ローマ魂作戦」とは、「巨大な落とし穴」にギララを落とす作戦だった。

一瞬、作戦は成功したかに思えたが、ギララはすぐに穴をはい出して来る。

作戦本部に戻って来たイタリア首相を、待ちかまえていたアメリカ大統領がこき下ろす。

そんな中、イタリアのソルコジ首相がいなくなっていた。

その頃、ソルコジは、美人通訳奈美と近くのホテルで食事をしていた。

ソルコジは、奈美が、あまりに食事の豪華さに感激するので、日本人なら、この程度の食事は普通だろう?と聞く。

すると何故か、奈美は慌てたように、今までの態度をごまかすのだった。

そこにボディガードが二人やって来て、ソルコジを本部に連れて帰る。

ギララには、バズ−カを抱えた怪し気な男が近付いていた。

ロシアのプッチン大統領が差し向けた、新たな作戦「ポロニウム210毒殺作戦」の暗殺者だった。

バズーカが発射され、毒薬を入れた巨大注射器はギララの背中に命中する。

やがて、ギララは倒れてしまう。

作戦成功と思われたが、ギララは死んだのではなく、ただ眠っているだけのようんだった。

その頃、オホーツク上空に、ドイツ機が待機しているとの連絡が入る。

ドイツ首相が考案した「ダブリン�毒ガス作戦」用に飛んで来たのだった。

防毒マスクを装着した地球防衛軍の姿を見たマスコミ陣は何ごとが始まるのかと色めきたつが、防衛軍は、ギララの周囲5km四方には近付くなと、マスコミを遠ざけるだけ。

編集長からの携帯を受けたすみれは、三平を誘い、あの不思議な神社へ行く事を決心する。

その頃、作戦本部に一人の男が姿を現していた。

大泉純三郎元首相(松下アキラ)だった。

彼は、各国首脳達に対し、生物兵器の使用は国際的に禁止されているのではないか?それが許されるのなら、核もありうると言う事になると言い放つ。

さすがに、それを聞いた首脳達は、悪い冗談だと顔をしかめる。

巨大なビニールでギララを被い、その中に毒ガスが注入されるが、ギララは死ぬどころか、起き上がり、あろう事か笑いはじめる。

強力な毒ガスも、ギララにとっては、笑いガス程度の威力しかなかったのだ。

すっかり陽気になったギララは、夕日をバックに踊り始め、シェー等も始める。

次なる作戦は、イギリス首相が発案した「洗脳作戦」だった。

その頃、あの神社に辿り着いたすみれと三平は、神社の欄間彫刻に描かれた怪物がギララそっくりだった事を確認する。

その欄間の右側には、見覚えのない不思議な魔像のようなものが掘ってある。

二人がそれを見ていると、又しても急に出現したあの少年からが、あれは「タケ魔人」だと教えてくれる。

すると、神社の中から、先日、太鼓を叩いていた森川宮司(中田博久)が出て来て、すみれと三平を神社の中に招き入れると、古文書を出して来てみせる。

そこには、ギララにそっくりな怪獣と戦うタケ魔人なる、洞爺湖の守神の姿が描かれていた。

さらに、奥に安置してあったタケ魔人像を見せられたすみれは、何故か、急に気が遠くなりそうになる。

全く信じられない三平が、帰ろうとすみれを外に連れ出すと、外の地面に、タケ魔人の姿を描いている少年がいた。

少年は、二人の姿に気付くと、又すぐに逃げてしまったが、急に現れた老人(渡部又兵衛)が言うには、しんいちと言うあの少年は、赤ん坊の時、母親に死なれ、その後男手一つで育ててくれた父親を5年前の土砂崩れで亡くしたそうなのだが、その事故の際、担架で運ばれる途中の父親が、今際の際にしんいちに「タケ魔人がお前を守ってくれる」と言い残したと言うのだ。

それだけに、しんいちにとってのタケ魔人は、絶対的な存在になったのだ。

そのしんいちが、神社の中でタケ魔人像を拝んでいるのを発見したすみれは、自分も再び上がり込んで、一緒に祈りはじめる。

呆れた三平が、すみれを無理に連れ帰ろうとすると、しんいちはその腕に噛み付いて反抗する。

そこに、あの踊りの時にいた村人たちが現れて、帰れと言っただろうと、すみれたちに石を投じはじめる。

額に石が当り、流血したすみれだったが、自ら、しんいちと二人で、「ネチコマ、ネチコマ…」とタケ魔人を讃える踊りを踊り始める。

森川宮司も、二人に合わせて太鼓を叩く。

それを見ていた三平も、信じてみると言い出し、一緒に踊り出す。

そんな二人の真摯さに打たれたのか、村人達も少しづつ、踊りに加わりはじめる。

一方、ギララには、輸送機から発射された巨大なヘッドフォンが頭部に装着され、洗脳電波が送り込まれていた。

ギララは、狂ったようになり炎の球を口から吐きはじめる。

前線基地にいた高峰参謀は、救援要請を本部に送って来る。

すると、その様子を見ていた大泉元首相が高笑いしはじめ、いよいよ核しかないと言う事だねと言いいながら、顔をめくると、その下から現れたのは、北の大物(ジーコ内山)だった。

北の大物は、その場でポテトン55号発射を命ずる。

通訳の女性達も、一斉に衣装を脱き、機関銃を構える。

彼女達も全員「喜び組」だったのだ。

核等を使えば、この会場も放射能で汚染されるぞと首脳達が怯えると、北の大物は、ポテトンは限定核なので、半径2km以内しか放射能は飛び散らないと笑う。

その頃、すみれたちが境内で踊っていた社の中から、光が発生していた。

対策本部の首脳達の中で、ただ一人、会場から姿を消していた人物がいた。

それは、イタリアのソルコジ首相で、彼は奈美とベッドの中にいた。

奈美が、自分は北の女だと正体を明かすと、ソルコジは唖然とする。

首脳達が皆、喜び組に包囲されている本部に戻って来た裸のソルコジは、腰に巻いていたタオルをいきなり外し、喜び組の女達に見せつける。

女達が怯んだ隙に、連れて来た防衛軍のメンバーが飛びかかる。

ポテトン発射ボタンを押す寸前で捕らえられてしまった北の大物だったが、それも想定内だと笑うと、顔を下に向け、かけていた眼鏡を床に落とす。

それを拾い上げた木村参謀は、その眼鏡に本当の発射スイッチが仕込まれていた事に気付く。

すみれ達が踊っている神社にやってきた防衛軍は、間もなく核ミサイルが来るので、みんな逃げるようにと告げる。

踊りは中断され、社からもれていた光も輝きを失ってしまう。

すみれは、連れて行こうとする防衛軍の手を振り払おうと抵抗する。

対策本部のスクリーンに佐野博士が姿を現し、ギララに対し、限定核等と言う中途半端な高熱エネルギーを与えてしまうと、ギララ胞子が活性化し、分裂、増殖して、世界中に無数のギララが出現する事になると訴える。

首脳達は、地球上にギララが溢れかえる可能性に気付き青ざめる。

ジープに乗せられ、神社から遠ざかるすみれは「タケ魔人さま〜!」と叫び、社の中の魔人像は、再び光りはじめる。

北から飛来したポテトン55号が、今まさにギララに命中しようとしたその瞬間、ギララとミサイルの中間点に大きな光が出現する。

タケ魔人が出現したのだ!

ポテトン55号は、その肛門に突き刺さっており、そのまま体内に入ると、タケ魔人の身体の中で爆発する。

タケ魔人は「冗談じゃないよ!」と言いながら、ギララと戦いはじめ、最後には、金の輪を取り出すと、それを「八つ裂き光輪」のように投げて、ギララの首を切断する。

対策本部では安堵の喝采が上がるが、気がつくと、北の大物の姿が消えていた。

アメリカ大統領は、やはり日本は神の国だと、妙な関心の仕方。

思わぬ怪我の功名で活躍したソルコジは、腰のタオルが落ち、くしゃみをする。

すみれは、いつものように三平を叱っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

映画として、しん平監督の「レイゴー」より、さすがに作り慣れている感じはするが、 正直、政治パロディとしては「日本以外全部沈没」の二番煎じの域を出ておらず、全体的にアイデアが単調。

怪獣パロディとしても「映画ネタ」より「テレビネタ」が多く、「ギララ」のパロディと言うより、「ウルトラ初期シリーズ」パロディになってしまっているため、政治パロディの部分は建て前に過ぎず、本音は単に、自分でウルトラマンを作りたかっただけと言う下心が透けて見えてしまう。

笑いに関しては、基本的に監督にセンスがない事もあるが、前述の本音と建て前が水と油みたいに分離してしまっているため、どこにも成功していると思える箇所がないのがつらい。

そう言う笑えもしない「おやじギャグ」レベルのネタを「おばか」「悪ふざけ」などと自ら茶化して、ごまかしているだけにしか見えないのだ。

とは言え、パロディを撮っているはずが、いつしかだんだんとマジな怪獣ヒーローものになって行く様には、同じマニアとして心打たれる部分がある事も確かで、加藤夏希扮するヒロイン(もちろん「ウルトラQ」での桜井浩子のパロディ)の熱演もあって、思わず込み上げて来る部分もある。

「ウルトラQ」〜「ウルトラセブン」辺りの第一期怪獣ブーム世代、導入部の「キンゴジ」とか「バラン」「ゴメスとリトラ」ネタ辺りにすぐにピンと来るような人と、そうでない人とでは、全体の印象もかなり違うはず。

特撮的にあえて難を言えば、たくさん流用されているオリジナル版のレトロな特撮センスと、最近の東映特撮風の撮り方とか、今風のかっこよすぎるメカが、ちょっと違和感がある事くらいだろうか…

登場しているウルトラ俳優たちや、特撮作品でもお馴染みの夏木陽介のあまりの老けようには、懐かしさよりもがく然とさせられる。

皮肉な事に、怪獣映画復活に賭ける河崎監督のかなり空回り感のある熱意や、これら往年の特撮スターの再登場を合わせて観ているだけで、もう完全に「ある時代が終わった感」を強く感じてしまうのが寂しい。

パロディと言うより、哀愁ただよう懐古映画と言うべきかも知れない。