2008年、「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」製作委員会、水木しげる原作、沢村光彦脚本、本木克英監督作品。
※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。
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人間と妖怪の諍いは、千年前に遡る。
海の近くの一軒家に、夜中、漁民達が松明を持って押し掛けて来る。
そして、家の中から女を引きずり出す。
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現代…
雨の夕方、一人の女性が傘をさして帰っていると、みみずくの泣き声が聞こえ、どこからともなく、「♪かごめ かごめ」の歌が聞こえて来る。
女性が気味悪がって声の方向を見ると、道ばたの地蔵の辺りに、濡れ女の顔が浮かび上がる。
道には、女性が持っていたかさだけが転がっている。
比良本楓(北乃きい)は、ブラスバンドの練習の後、部員仲間たちから「かごめ女」の都市伝説について聞かされていた。
そんな楓は、近付いて来た先輩から「音のイメージが出来ていない」と注意される。
その日、一人で帰宅していた楓は、どこからか聞こえて来る「♪かごめ かごめ」の歌を聞く。
さらに「お前の魂、もらいに来た」と言う無気味な女の声も…
恐くなってその場を逃げ出した楓は、怪し気な人物とぶつかってしまう。
その奇妙な男は「怪奇現象研究所」所長を名乗るビビビのねずみ男(大泉洋)だった。
ねずみ男は、アシスタントを紹介すると言う。
近くにいたアシスタントとは、鬼太郎(ウエンツ瑛士)の事だった。
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タイトル
「岩子」と書かれた墓の下から赤ん坊が生まれる。
地面に倒れたミイラの目の部分から抜け出した目玉親父、這い出した赤ん坊に付いて行く。
目玉親父に指導され、子供の鬼太郎は下駄を作り、目玉親父の方は、先祖の霊毛を編んで、ちゃんちゃんこを作っていた。
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翌日、楓は、いつものようにブラスバンド部の練習に参加していた。
しかし、その左手には包帯が巻かれていた。
昨日から、手にウロコのようなものが出来ていたからだった。
携帯を使って「かごめ女」の事を調べようとするが、ほとんど何も分からなかった。
一人、自宅に戻ると、そこに夕べ会ったねずみ男が立っているではないか。
あの時、楓が落とした生徒手帳を届けてくれたのだ。
ねずみ男は、何故か、楓の手に出来たウロコの事を知っているようだった。
その後、楓はねずみ男に連れられて、一反もめん(声-柳沢慎吾)に乗っていた。
怪奇現象研究所と言われて着いたのは、鬼太郎の家だった。
家の中で、鬼太郎(ウエンツ瑛士)は、左目の義眼を入れ替えていた。
ネコ娘は、かつお節を嘗めている。
目玉の親父(声-田の中勇)は、これまでの鬼太郎の功績が認められ、閻魔大王の計らいで、近々、妻の岩子の魂と会えるらしいと嬉しそう。
しかし、鬼太郎自身は、照れているのか、母親に会える事を素直には喜んでいない様子。
その頃、砂かけ婆(室井滋)と子泣き爺(間寛平)は、三浦半島でバカンスを楽しんでいた。
そんな所に、ねずみ男が楓を連れて来る。
目玉の親父は、楓の手に出来たウロコを見るが、心当たりがないと言う。
その目玉親父に鑑定をしてくれないかと、ねずみ男は鼓を取り出す。
そこに帰って来た砂かけ婆と子泣き爺は、ねずみ男に、何をやったんだと詰め寄る。
ねずみ男の手配書が出回っていたのだ。
実は、ねずみ男、三浦半島のとある洞くつの中の岩に、千年間封じ込められていた鼓を、勝手に盗み出していたのだった。
それを聞いた目玉親父は、そう言えば、千年前、三浦半島で封印された妖怪がいると言う話を聞いた事があると言い出す。
ネコ娘の提案で、より詳しい事を調べるために、鬼太郎たちは、楓を連れ妖怪図書館に出かけてみる事にする。
そこには、常連のあかなめや百目などがいた。
一見、ボーリング場のような場所に来た鬼太郎が、ボーリングをするとストライクになり、その奥へ通じる扉が開く。
奥の部屋では、文車妖妃(中川翔子)が、データベースが入ったノートパソコンを持って来てくれる。
そこに記されていたのは「暁を二つ越えた夜、迷いミミズクが鳴き、魂を奪いに来る」と言う「かごめ歌」に関する情報だった。
文車妖妃は、「かごめかごめ」の歌は、江戸時代より以前から歌われていた可能性があり、昔、五人囃子で悪霊を封じ込めたと言う伝承があるとも説明する。
その際、五人囃子が使用した楽器は、鉦鼓(しょうこ)、楽琵琶(がくびわ)、方響(ほうきょう)、篳篥(ひちりき)、鞨鼓(かっこ)の五種類。
その楽器は、今、日本各地のあちこちに散らばっているらしい。
その説明を聞いていたネコ娘は、「暁を二つ越えた夜」と言うのは、明日の夜だと言う事に気付く。
その頃、蛇骨婆(佐野史郎)は、ぬらりひょん(緒形拳)の元を訪れていた。
ぬらりひょんは、空中に向かい炎を飛ばす。
鬼太郎達は、手分けして、各地に散らばった五人囃子の楽器を集めて来る事するが、目玉親父は、一つだけ行方が分からない篳篥(ひちりき)の事を調べる役を受け持つ。
鬼太郎と楓は、楽琵琶(がくびわ)があると言う神山へ、ネコ娘は高尾山へ、そして子泣き爺と砂かけ婆は、三浦半島の海へ出かけて行く事にするが、それぞれの連絡用として、三つ木霊のハルカ(向井地美音)、ヒビキ(佐々木麻緒)、ワタル(荒木博斗)を出現させると、こけしに変身させ、それぞれを携帯代わりに渡す。
鬼太郎と楓は、からすブランコに乗って出発する。
子泣き爺と砂かけ婆はボートで海に乗り出し、砂かけ婆の導き砂で方向を決めていた。
一方、一反もめんで高尾山に到着したネコ娘の前に、ねずみ男が出現し、今回の事の発端は自分にも責任があるので同行すると勝手に説明する。
鬼太郎の家では、文車妖妃が入れてくれたハーブ湯の茶わん風呂で、目玉親父がくつろいでいた。
高尾山で鉦鼓(しょうこ)を探しはじめたネコ娘に、ねずみ男は、鬼太郎の事をどう思っているのかと聞いて来る。
ネコ娘がとぼけると、その内、人間の女の子に取られてしまうかもよとからかいはじめる。
やがて、たぬきの置き物の前に備えられていた酒を見つけたねずみ男は、意地汚くそれを盗み飲みし始め、ネコ娘にも備えてあったスルメを食えとすすめる。
次の瞬間、二人は、たぬきの置き物の下に仕掛けてあった罠に弾き飛ばされ、落ちた所を、竹切り狸の群れに囲まれてしまう。
一方、海を探していた子泣き爺と砂かけ婆は、嵐に遭遇、ボートのオールも流されてしまう。
鬼太郎の方は、疲れた楓に水を与えようと持って来るが、楓は、祖母から「人を信用するな」と教えられたと言い出し、本当はあなたも妖怪とグルなんじゃないかと怒りをあらわにすると、一人で帰りはじめる。
彼女の手に生えたウロコは、いつの間にか増えていた。
いろいろこれからやりたい事がたくさんあったのに、もう死ななければ行けないんだと悲しむ楓を、追って来た鬼太郎が慰める。
しかし、頑なになった楓は、嘘つきと怒鳴ると、又逃げはじめるのだった。
子泣き爺と砂かけ婆は、どこかの海岸に打ち上げられていたが、三つ木霊のハルカに起こされる。
気がついて見ると、そこは見覚えのある場所だったので、砂かけ婆は森の奥に分け入り、そこにあった井戸を覗き込むと、井戸仙人(笹野高史)と再会する。
その頃、ネコ娘は、竹切り狸(ブラザー・トム)に言われるがまま、ネコ踊りを披露していた。
踊りを見せたら、高尾の大天狗から預かった鉦鼓(しょうこ)を貸してやると言われたからだった。
しかし、踊り終わっても、酒を飲んで喜んでいた竹切り狸は鉦鼓(しょうこ)を渡そうとはせず、まだ踊れと言うではないか。
しかし、そんな竹切り狸は、いきなり現れた女房(星野亜希)に叱り飛ばされる。
竹切り狸の女房は、事情を知ると、謝罪して、ネコ娘に鉦鼓(しょうこ)を貸してくれただけではなく、笹だんごの土産まで持たせてくれた。
海の断崖にやって来た楓は、ウロコまみれになって醜く死んで行くくらいだったら、その前に楽になった方が…との声に突き動かされていた。
そのまま、ふらふらと崖に足を向けた楓を、鬼太郎が抱きとめる。
何者かに、楓が心をあやつられた事に気付いたのだ。
井戸仙人は、砂かけ婆に方響(ほうきょう)を渡しながら、封印したいのは濡れ女の事かと聞いて来る。
砂かけがそうだと答えると、あれは邪悪な霊等ではないと言い出す。
その頃、鬼太郎と楓は、妖怪さとり(上地雄輔)に遭遇していた。
さとりは鬼太郎に向かって「人間の味方を気取ってヒーローになったつもりなのか、この、偽善者!」と罵り、鬼太郎達に向かってフンを飛ばして来る。
高尾山のネコ娘は早く帰ろうと、ねずみ男をせかしていたガ、ねずみ男は、またもや、鬼太郎がお取り込み中なのではないか?と嫌みを言う。
鬼太郎は、下駄攻撃を仕掛け、さとりは逃げ出す。
楓は鬼太郎に、どうして私を助けるの?と問いかけるが、鬼太郎は、気がついたら身体が勝手に動いていた…。そうか!考える必要なんかなかったんだな。人間を助けるのに、理由なんかいらなかったんだと、自らに言い聞かせるように答える。
さとりはその後、森の中で、見なれぬ異国の妖怪に出会う。
その妖怪夜叉(ソ・ジソブ)は持っていた胡弓を弾き、そこから発する妖力で、さとりを倒してしまう。
鬼太郎と楓は、濃い霧で道に迷っていた。
鬼太郎は、ちゃんちゃんこを脱ぐと、それで霧を払う。
やがて、大きな木の元に来た鬼太郎は、ちゃんちゃんこを丸めると、それを木に当てて放電する。
すると、木の上に隠れていた楽琵琶(がくびわ)の妖怪琵琶牧々(河本洋一)が感電して落ちて来る。
琵琶牧々は、自分を連れて行きたいのなら、お前達の力量を試させてもらう。おれを弾いてみろ、弾きこなせたら、どこへも付いて行ってやると言う。
琵琶牧々が名指ししたのは、鬼太郎ではなく楓の方だった。
楓は、昔、おばあちゃんに習った事があると言い、楽琵琶を手に取ると「桜」を奏ではじめる。
すると、琵琶牧々は、快感を感じはじめたようで、うっとりしながら喜び、合格だと答える。
その時、こけし携帯に着信が入り、砂かけ婆から図書館の資料は間違いだったとの知らせが入る。
自宅に戻った鬼太郎たちは、一本の映画を見せられる。
それは、ぬりかべ(声−伊集院光)のお腹に写し出された「妖映」と言うものだった。
本来「濡れ女」とは、いたずら好きな人魚の仲間の事で、時々、漁師の網を破ったりするくらいしか悪さはしなかった。
ある日、海彦(萩原聖人)と言う一人の若者が、濡れ女の姿を海で見つけ、名前を尋ねて来る。
濡れ女は一目でその若者を好きになり、人間になりたいと願い続け、とうとうなみと言う名の人間の女になって、海人と暮らしはじめる。
やがて、二人の間には子供も生まれ、幸せな日々が続くかに思えたが、人間達はそれを由としなかった。
山の向こうにいると言う鬼道衆を呼んで来て、魔道封じをしようと言う事に村人達は衆議一決する。
鬼道衆は、五人囃子で、濡れ女を石に封じ込めてしまい、濡れ女の皮膚は醜いウロコに被われてしまったのだと言う。
さらに、楽器の一つ、篳篥(ひちりき)は、その鬼道衆の末裔に伝わっているらしい。
それを観た楓はショックを受ける。
悪いのは、妖怪ではなく、人間の方だったからだ。
砂かけ婆は、大切なのは罪なき命を守る事と言い聞かせる。
目玉の親父は、図書館の資料から、鬼道衆の部分が破り取られていた事を明かす。
その頃、ぬらりひょんの元にやって来た濡れ女は、鬼道衆の末裔、比良本楓の事を、蛇骨婆から教えられ、その魂を奪う事こそ、そなたの復讐になるだろうとぬらりひょんから指示されていた。
濡れ女が去った後、ぬらりひょんの元へは、夜叉が訪ねて来る。
そのぬらりひょんの宝物庫に近付いていたのはねずみ男だったが、見張り役の「手の目」がいたので中に入る事ができない。
ねずみ男、実は、ぬらりひょんの下で働いていたのだった。
楓は、自宅の蔵を整理してみて、おばあちゃんが鬼道衆の末裔だった事を知る。
そのおばあちゃんが良く漬けていたという漬物樽の中を開けてみた楓は、その中に袱紗に包まれたものを発見する。
鬼太郎がそれを広げてみると、篳篥(ひちりき)が入っていた。
ついに、五つの楽器が揃ったので、それらを持って、三浦半島の洞くつに集まった鬼太郎達は、楽器を並べると、楽器達は共鳴するように気を発しはじめる。
しかし、それを見ていた楓は、本当に濡れ女を封印して良いのかと迷いはじめ、とうとうたまらなくなって、篳篥(ひちりき)を奪い取ってしまう。
すると、五人囃子の気が止まり、それに乗ずるかのように、どこからともなく攻撃が仕掛けられて来る。
夜叉が出現して、胡弓を弾きはじめたのだった。
さらに岩陰からぬらりひょんが姿を現す。
濡れ女を封印させるわけには行かない。いつまで人間の肩を持つ?と鬼太郎を嘲る。
長く生きて来て、自分は人間が何をして来たかを見て来たと、ぬらりひょんは続ける。
海や山を汚し、妖怪を蔑んで来た…
その言葉を聞いていた夜叉は、涙をこぼす。
このままでは世界は滅びの時を迎える…。鬼太郎、目を覚ませ!今夜わしは、あれを蘇らせると、ぬらりひょんは言い放つのだった。
わしの元へ来い!滅びの道を選ぶのか?と鬼太郎に迫ったぬらりひょんだったが、鬼太郎が動こうとしないのを見て取ると、やはり血は争えんものじゃなと呟く。
それを聞いていた目玉親父が、それ以上言うなと止めるのも聞かず、ぬらりひょんは続ける。
幽霊族は、人間によって滅ぼされたのだ…と。
その言葉に、一瞬凍りついた鬼太郎に、夜叉の胡弓矢が飛ぶ。
その時、ネコ娘が鬼太郎の身体を突き飛ばし、その矢を自らの身体で受けると、その場に倒れる。
ネコ娘は、鬼太郎を見ながら「無事で良かった」とつぶやき目を閉じる。
それを見た鬼太郎や砂かけ婆は怒り、夜叉に攻撃する。
しかし、逆に反撃を受けた鬼太郎は、ちゃんちゃんこの固まりのようになってしまう。
一旦、家に戻った砂かけ婆は、その胎動するちゃんちゃんこに呪文をかけ、鬼太郎を蘇らせる。
鬼太郎は、ネコ娘はどこだ!?と問い、又倒れる。
体力が、まだ完全には回復していないのだ。
砂かけ婆は、先祖の霊毛が守ってくれたと言う。
鬼太郎は目玉親父に、ぬらりひょんが言っていた事は本当かと尋ねる。
親父はつらそうに、幽霊族は人間によって滅ぼされたのじゃと教える。
何故、今までその事を教えてくれなかったのかとと責める鬼太郎に、目玉親父は、恐かったんじゃ。お前が人間を恨み、憎んでしまう事が…と答える。
その親子の会話を横で聞いていた楓は、そんな人間に力を貸して下さい、濡れ女を助けたいと鬼太郎に頼む。
その言葉を聞いた鬼太郎は、君を信じると返事する。
その頃、ぬらりひょんの住処にいたねずみ男は、磯塚の封印を解いた働きに対するギャラをくれと蛇骨婆に迫っていたガ、蛇骨婆は、一言「ないわ!」で片付ける。
一方、鬼太郎は、地面に手をかざし、夜叉の妖気を辿ると、富士の樹海にいる事を突き止めていた。
さっそく砂かけ婆や子泣き爺が向かおうとすると、鬼太郎は先に行ってくれ、自分は寄って行きたい所があると言う。
鬼太郎は地獄へ、そして、楓、目玉親父と砂かけ婆、子泣き爺らは、富士の樹海に出発する。
再び、宝物庫にやって来たねずみ男は、見張りの手の目に臭い息を吹き掛け気絶させると、鍵を盗んで、宝物庫の中に侵入する。
その頃、樹海の地下にある石地蔵の所にやって来た子泣き爺は、それを破壊して、中に入る道を発見していた。
むらりひょんは、彼等の侵入に気付く。
砂かけ婆の前には蛇骨婆が姿を現し、楓と子泣き爺は夜叉と出会う。
蛇骨婆は、砂かけの砂壺を取り上げて捨ててしまう。
楓をかばいながら進む子泣き爺は、夜叉の背中におぶさる。
さらに、ぬりかべも登場、夜叉の胡弓矢の攻撃を防ぐ。
宝物庫に入ったねずみ男は、黄金製のぬらりひょん像が膨大に詰まっているのを発見、その一つを頂く事にするが、その時、部屋の隅に縛られていたネコ娘を発見する。
紐をかじって助けてやったねずみ男を、気がついたネコ娘は、ぬらりひょんの味方かと思っていたが、見直したと感謝する。
楓と子泣き爺は、ぬりかべを盾にしながら、洞窟を進んで行く。
砂かけ婆は、岩肌から出現した無気味な石の魔像たちに追い掛けられていた。
楓の背後に、いつの間にか、ぬらりひょんが出現する。
そこに、一反もめんに乗った鬼太郎がやって来る。
夜叉は、強力な妖力で、ぬりかべの腹に穴を開けたので、鬼太郎はその穴を通して毛針を発射する。
さらに、鬼太郎は、ちゃんちゃんこを丸めて棒状にし、それを剣のように使い夜叉と戦い、胡弓の弦を切ってしまう。
さらに、互いに組み合うと、妖力を放電しあい、夜叉は息絶える。
鬼太郎は、楓を人質に取ったぬらりひょんに対し、残ったのはお前だけだと迫るが、ぬらりひょんは、自分ははじめから一人だと平然と答える。
その洞窟の天井には、人間達の怨念を集めた巨大な「がしゃどくろ」がへばりついていた。
その心臓部は、今まさに動き出そうとする胎動が響いていた。
ぬらりひょんは、この「がしゃどくろ」こそ、罪深き人間どもの鏡だと言う。
しかし鬼太郎は、おれは人間を信じると言い切る。
そこに、ネコ娘とねずみ男、砂かけ婆、子泣き爺らがやって来る。
すると、どこからともなく「かごめ かごめ」の歌が聞こえて来て、迷いミミズクと共に濡れ女が出現する。
ぬらりひょんは、もう遅いと鬼太郎達を嘲る。
しかし、捕まっていた楓は、私、やってみると言い、そのまま、濡れ女に抱かれるように消えてしまう。
濡れ女は、魂を全て集めたので、早く元の姿に戻してくれとぬらりひょんに願うが、ぬらりひょんは知らんと答えるだけ。
その時になって、はじめて濡れ女は、ぬらりひょんにたばかられていた事を知る。
怒った濡れ女は、巨大な蛇の姿に化身し、がしゃどくろと一体化する。
がしゃどくろが復活し、動き始める。
ぬらりひょんは、人間の善意とやらで止められるか?と鬼太郎に迫るが、がしゃどくろが迫って来たのは、ぬらりひょんの方だった。
ぬらりひょんは驚くが、がしゃどくろは、そんなぬらりひょんを闇の彼方に弾き飛ばしてしまう。
がしゃどくろは、洞窟の中を進み、とうとう地上へ出てしまう。
鬼太郎達も後に続き、雪が降りしきる山中に出現したがしゃどくろの目に、ちゃんちゃんこを飛ばす。
すると、がしゃどくろの中の濡れ女は苦しみはじめる。
がしゃどくろの中に捕らえられていた楓は、持っていた篳篥(ひちりき)を吹きはじめると、怒りを鎮めて下さい!人間と妖怪だって、きっと分かりあえるはずです、なみさん!と呼び掛ける。
すると、その声が届いたのか、がしゃどくろが動きをとめる。
海人はあなたを裏切っていなかったんだ!と鬼太郎が叫ぶと、濡れ女は千年の恨み!と叫び返す。
その時、閻魔大王の声が響き、鬼太郎は連れて来てくれたんですね!と喜ぶ。
閻魔大王は、その代わり、もうお前は母親とは会えぬぞと念を押す。
そして、赤ん坊を抱いた海人が姿を現す。
海人は、なみ、辛かってであろう。わしは、村人が家に火を放った時には、もう死んでいたんだと、村人達に産みに投げ込まれた事情を話しはじめる。
わしは、ぬしを心底、好いておるぞと言う海人の言葉を聞いた濡れ女の身体から、ウロコが取れて、元の美しい姿に戻る。
そして、赤ん坊を抱き締めると、私こそ愚かでした。お慕いする人を信じる事ができず…と反省する。
さらに楓に対しては、娘子、そなたの言うた通り、愛しい人は、決して裏切らぬ…、ありがとうと礼を言う。
楓もその言葉に、思わず泣き出す。
海人、なみ、赤ん坊の親子の魂も、光り輝きながら、がしゃどくろから天上界に向かって昇天して行く。
同じように、他の人間の魂達もがしゃどくろから分離して行き、楓の肉体は、鬼太郎が地上でしっかり受け止める。
楓が持っていた篳篥(ひちりき)は、消えていた。
しかし、その時、倒れていたがしゃどくろが、雪の斜面を滑りはじめる。
まだ、怨念は完全には消えてなかったのだ。
鬼太郎は、がしゃどくろの頭を一人で必死に支えようとする。
そこに楓も加わる。
鬼太郎と楓の手が重なると、光が生まれ、がしゃどくろは動きを完全に止める。
そして、空中に消えて行くのだった。
いつの間にか、楓の左手のウロコも消えていた。
一反もめんに乗って、先に帰る事にしたネコ娘を、ねずみ男が又からかう。
しかし、ネコ娘はあっけらかんと、お腹が空いたので、ラーメンをおごってあげると言い出す。
その言葉に喜んだねずみ男は、懐に入れていた黄金のぬらりひょん像を海に落としてしまうのだった。
鬼太郎は、近くのバス停まで楓を送っていた。
楓は、もう二度と鬼太郎に会えない事を知っており、別れが辛くなるから、もう帰ってくれと鬼太郎に頼む。
その言葉を真に受けた鬼太郎は、その場から去る。
やがて、バスが到着し、乗り込んだ楓は、後部座席から遠ざかって行く鬼太郎を見送りながら、心の中で別れを告げるのだった。
一人になった鬼太郎は、目玉の親父に、母親と会えなくなった事を詫び、でも、自分達には時間は幾らでもあるんだから、待っていればいつかは…と、自らに言い聞かせるかのように呟くのだった。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
実写版「ゲゲゲの鬼太郎」の第二弾。
前作が、未就学児〜小学校低学年くらいをターゲットにした、やや単調な人情話だったとすると、今回の作品は、小学校上学年から中学生くらいがターゲットかな?と思える、ちょっとダークでマニアックな作品に変化している。
前作が、アニメで言えば第一シーズンの、どちらかと言うと地味なエピソードの再現だったとすると、今回のは、ヒーローアクションっぽくなった第三シーズンのイメージに近い。
アイデアもいろいろ盛り沢山だし、活劇シーンも増えており、大人でもこの手の物が好きなマニアなら十分に楽しめる、完成度の高い出来になっている。
鬼太郎と目玉の親父の誕生シーンとか、クライマックスの巨大妖怪の実写化は、ファンとしては「おお!あれが実写化されたか〜!」と、ちょっと感動的。
緒形拳がお茶らけないで、最後まで渋い演技を見せているのも作品を引き締めている。
前作から若干臭わせている、ネコ娘の鬼太郎に対する淡い恋心設定は、今作でもさらに掘り下げられており、田中麗奈扮するネコ娘の娘心の一途さには、観ていて胸に迫るものがある。
大泉洋のビビビのねずみ男はじめ、レギュラー陣もそれぞれ板について来た感じで、観ていて安心感がある。
数ある妖怪映画の中でも、出色の一本かも知れない。
