1976年、香港、ホウ・メンホア監督作品。
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この映画は、東南アジアに伝わる怪奇伝説を元にしている。
撮影はマレーシア。
物語は、やし園から始まる。
タイトル
マレーシアのフー弁護士事務所で働くシェン(ダニー・リー)は、子供の頃の病気が元で足が悪いため、引っ込み思案で気の弱い青年だった。
ある日、シェンは幼馴染みの女性ユエアルと一緒に、彼女の父親リンが働くやし油の会社に出かける。
ヤン兄弟が、やし油会社の若き社長フーシンから無理矢理会社を乗っ取ろうとしている現場に 、弁護士フーと共に立ち会うためだった。
社長室にやって来ていたヤン兄弟は、最初から脅し口調で、5年前にフーシンの父親が書いた借用書を盾に、ナイフを振りかざして凄んでみせていた。
しかし、借用書に書かれていた契約金の5倍も吹っかけられては、到底払えないとフーシンは困惑する。
同席していたフー弁護士は、付帯条件をつけるなど、ヤン兄弟に和解案を持ちかけようとするが、気が短い兄弟の強圧的な姿勢は変らず、その場にいたユエアルを捕まえ、いたぶり始めると、警察に連絡できないよう、電話も壊してしまう。
その場にいたユエアルの父親リンは、40年間この会社に勤めて来たが、こんな事ははじめてだと憤り、娘を助けるため兄弟と争いはじめるが、その時、フーシン社長は、兄弟が持っていた借用書を奪うと、その場で破ってしまう。
次の瞬間、リンは、相手から奪い取ったナイフでヤンの腹を刺してしまう。
リンは呆然とし、そのままその場から逃げ出すと近くのやしの林に逃げ込もうとするが、何故かすぐに駆け付けて来た警官隊によって、あっけなく逮捕されてしまう。
刑務所に留置されたリンは、さらにあっさり死刑が確定してしまう。
処刑直前、最後の面会に訪れたシェンは、自分やユエアルが事件当時の事を説明しようとしても、身内の証言だから採用されないと、フー弁護士から拒絶されてしまったのだと言い訳する。
リンはすでに自分の運命は受け入れたようだったが、ただ一つ気にかかるのは娘のユエアルの事らしく、シェンに今後も守ってくれと頼む。
そして、自分の背中にある奇妙な刺青をシェンに見せると、これは呪術師だったお前の父親が20年前に魔除けで描いてくれたものだから、これを今すぐ写しておけと命ずる。
マレーのジャウイ文字を解するお前なら、書いてある言葉の意味も分かるはずだから、それを解読して役に立ててくれ。
ただし、悪事に使うと、お前は無惨な死を遂げる事になるだろうともリンは言う。
処刑直前のリンの言葉だけに、無我夢中でその刺青を紙に写し取ったシェンだったが、その直後、リンはルオ警部らに引き連れられて処刑場へ向う。
その後、フー弁護士事務所に戻ったシェンは、リンを救えなかった自分の無力さを恥じ落ち込むが、そんな彼の席に来て励ましてくれたのは、同僚の女性シャオリーで、シェンが刑務所に出向いていた間に彼がやるべきだった裁判のタイプを仕上げておいてくれた。
その時、フー弁護士の部屋から依頼人らしき女性が帰っていくので、誰なのかとシェンがシャオリーに聞くと、あれはランと言うダンサーで、強姦事件の相談に来たのだと言う。
フー弁護士と共に姿を見せた女性秘書は、そんなシェンに近づくと、仕事を抜け出して勝手に出かけた事を責め、今度会社をサボったら首にしてやると脅すのだった。
その日、シェンの自宅にやって来たユエアルは、父親が処刑された事に泣き崩れ、今後は自分がヤン兄弟から狙われるの違いないと怯える。
そんなユエアルに対し、何とか自分が守ってみせると誓ったシェンは、ユエアルと口づけを交すが、今晩は危険なのでここに泊まっていけと言う誘いにもかかわらず、ユエアルが、自分で身を守ると言い帰ってしまったので、独り部屋に取り残されたシェンは、自分の身体の不自由さ、無力さを呪い、深夜一人荒れるのだった。
その時、刑務所から持ち帰って来たあの刺青の写しの紙を発見、それを改めて読んでみると、「部屋の真ん中に穴を掘れ」と書いてあるではないか。
シェンは決意すると、ツルハシを持ち出し、部屋の床を掘りはじめる。
やがてある程度の穴が出来上がると、シェンはその中に入り、 「油よ、助けたまえ!」と祈ると、穴の底から油が湧いて出て来る。
油は穴に満ち、その中に身を沈めたシェンは、次の瞬間、無気味な姿になって甦る。
液体人間オイルマンの誕生だった。
その姿は、油が固まって人間風に固まった中、光る目と口は開き、心臓部分は外に露出し、その鼓動をする様が生々しく見えるのだった。
その頃、自宅のベッドで寝ていたユエアルは、人の気配を感じ目覚めていた。
ヤン兄弟が、部屋に忍び込んで来たのだ。
襲われそうになったユエアルは、枕元に用意していた刀で抵抗しようとするが、あっさり奪われ気絶させられると、ヤン兄の方から抱いてくれと、弟の方は外に出ていく。
そんなユエアルの自宅前の敷石の上を、黒い液体が移動していた。
上半身裸になり、今にもユエアルに襲いかかろうとしていたヤン兄は、部屋の中に出現したオイルマンに殺されてしまう。
異変を聞き、部屋の中のオイルマンを見た弟は、恐怖のあまり逃げはじめる。
オイルマンは、肌も露にされたユエアルに衣装を着せ、自宅に戻ると、床に倒れ気絶すると、やがて元の身体に戻るのだった。
警察に駆け込んだヤン弟は怪物に襲われたと訴えるが、ルオ警部はじめ誰も信じようとしないばかりか、ショックのせいでおかしくなったのだと言われ、有無も言わせず精神科に連れて行かれる。
裁判所では、ランのレイプ事件に関する公判が行われていた。
証言台に立った被告人ホンは、1965年3月11日の夜の行動を聞かれると、アパートの同じ階に住んでいるランと、たまたま帰宅時間が重なったが、その時、ランは泥酔しており、自分の部屋の鍵を開ける事も出来ない様子だったので、自分が代わりに開けてやったら、酔ったランは部屋の中に倒れ込んでしまい、自分を誘うような目つきをして来た。
それで仕方なく、彼女をベッドに連れていこうと部屋に入って抱き上げると、彼女は急にドアの鍵を閉めてしまい、ベッドで自らキスを求めると、帰ろうとするホンに対して身体を自分から見せつけ、誘って来たのだと説明する。
続いて、証言台に立ったランに、同じように事件当夜の説明を求めるフー弁護士。
ランは、映画を観て帰宅すると、向いの部屋の前に、上半身裸になったホンが酩酊状態で立っており、自分が部屋に入ると、強引に自分も侵入して来て襲われたのだと、全く逆の事を言いはじめる。
フー弁護士は、ランがどのように陵辱されたのか具体的な説明を求めるが、傍聴人がいる前では…とランが口籠ったので、裁判長に傍聴人の退席を求める。
傍聴人が出ていった後、ランは、ホンに暴行を受けた様子を具体的に陳述しはじめる。
それを聞いていた陪審員たちはランに同情し、ホンに有罪判決を下すと、20万ドルの賠償金を命ずる。
ホンは、信じられない顔で、その判決を聞くしかなかった。
裁判所からの帰り道、20万ドルを手に入れる事になったランにフー弁護士は、その8割を報酬として自分が受取る事を納得させるのだった。
それを横で聞いていたシェンは、ランの証言が金目当ての嘘だっただけでなく、そう仕向けたフー弁護士の悪質振りにも怒りを露にするのだった。
その夜、食事を準備していたユエアルの家を訪ねたシェンは、思いきって、自分と結婚してくれないかと打ち明けるが、ユエアルはすでに別の相手がいると断わる。
その直後、その相手の男がやって来てキスをするので、気まずくなったシェンは家を飛び出すが、やはり気になって窓から中を覗くと、すでにユエアルと恋人はベッドインしている最中だった。
雨が降り始めた中、外で佇んでいたシェンは「女なんて…」と恨みの言葉を吐くのだった。
その後、シェンは、店じまいしたガソリンスタンドに向うと、上半身裸になり、スタンドから直接軽油を浴びると、オイルマンに変身する。
その頃、ランは自宅で男と抱き合っていたが、途中、風呂に入ろうと、バスタブのコックをひねって裸になる。
気がつくと、バスタブの中にたまっていたのはお湯ではなく油で、その中からオイルマンが出現すると、ランを絞め殺して、浴室から外に出る。
その様子をベッドの上で観た男は、手を合わせて命乞いをするが、オイルマンは、その男には興味がなさそうに去って行く。
油の怪物出現の噂をマスコミ陣から追求されたルオ警部は、何と、その犯人ならすでに捕まえている強姦魔のホンだとかわす。
翌日、弁護士事務所に来たシェンは、前夜の疲れの為、机で居眠りをしていた。
そんなシェンを心配し、飲み物を持って来たシャオリーは、フー弁護士に面会に来た新しい依頼人に見覚えがあると言うシェンに、あれは歌劇団のトップ女優モーなのだと教える。
モーの依頼とは、胸の整形手術に失敗して、右の乳房がただれてしまったので、損害賠償金15万を要求したい言うものだったが、聞いていたフー弁護士は、あなたはその整形医は闇医者である事を承知の上で誓約書にサインをした上で手術をしているし、相手方には強力な顧問弁護士がついているのでまず勝ち目はない。
私が個人的に話をつけて1万だけ金を取るから、それで別の医者で再手術をすれば良いだろうと説得する。
あまりの金額の少なさに愕然とするモーだったが、マスコミに知れたら大変だろうと言われると返す言葉もなく、さらにその手間賃として、1万の半分を寄越せとフー弁護士から言われても承知するしかなかった。
不承不承モーが帰って行った後、別室にいた日本人女性を呼び寄せるフー弁護士。
着物姿のその日本人こそ、今、モーが訴えようとしていた闇整形医の今井女史だった。
フー弁護士は今井に向って、モーの訴えを押さえた手数料として15万出せと言う。
あんたは闇医者である事がばれたら、禁錮5年は喰らう。
今の仕事を続けていれば、毎年、200万は稼ぐだろうから、15万くらいの出費は何でもないはずと嘯く。
今井は仕方なく、その場で小切手を書く。
今井が帰り、フー弁護士も、これからチェン議院と会う約束があると秘書と出かけたので、言い付けられていた書類を持ってフーの部屋に置きに行ったシェンは、そこで回り続けていた小型テープレコーダーを発見。
試しに再生してみると、それまでのフー弁護士の悪らつな手口が全部録音されていた。
病院に戻った今井は、患者である売春婦の処女膜再生手術を始める。
その手術室の天井に現れた油はオイルマンに変身すると、床に降り立ち、手術室をメチャクチャに破壊する。
今井女史は、オイルマンに踏み付けられ圧死する。
待合室にいた売春婦の付き添いは、手術室の騒ぎを聞き付け、オイルマンが逃げて行く姿を目撃する。
自転車に乗ったその男は、逃走するオイルマンの後を追跡し、シェンの自宅までやって来ると、点点と入口まで続く油の痕跡、さたに窓から見えた半裸のシェンが油まみれである事から、オイルマンの正体を察してしまう。
整形医今井殺害現場に駆け付けたルオ警部だったが、まだ怪物の存在など信じておらず、あくまでも冗談でごまかしてしまうのだった。
翌日、出社したシェンは、見知らぬ男からの電話で、夕べの今井先生の事を警察に訴えられたくなかったら金を出せと脅迫される。
夜の12時に港のドックに来るようにと指示した男は、仲間たちを引き連れシェンの出現を待ち受けていた。
仲間は、警察に連絡されたらどうすると心配していたが、男は逃走用のボートまで用意しているから安心しろと答える。
そんな海面に浮かんだ油からオイルマンが出現する。
次々と仲間たちはオイルマンの餌食になってゆき、自転車で逃げ出そうとした男は、目の前に現れたオイルマンに自転車を取り上げられると、それを叩き付けられ死亡してしまう。
最近、シェンの様子がおかしい事を心配したシャオリーは、彼の自宅を訪ねてみるが、シェンは不在らしく、諦めて帰りかけるが、その時、自分が握った門扉に油が付着している事に気付く。
翌日、シェンに会ったシャオリーは、今夜8時に自宅に来てくれと頼む。
しかし、その夜、シェンがやって来たのは10時近くだった。
夕食用にカレーの準備をして待っていたシャオリーは、暖め直そうとするが、夕食はタユエルの家で済まして来たし、彼女の作るカレーは最高だと言うシェンの言葉に落胆する。
さすがに自分の発言の無神経さに気付いたシェンが謝罪して帰りかけると、シャオリーは、自分が知った秘密を話しはじめる。
何と、ヤン弟とフーシンとフー弁護士は前から結託しており、リンが処刑されたのも、最初から、ヤンが暴れ、その間にフーシンが借用書を破ると言う計画を知らずに巻き込まれた不運だったと言うのだ。
その頃、フーシン社長は、これでやし油の会社もユエアルも、両方手に入れたなとからかうヤン弟に、ユエアルなんかお前に譲ってやると嘯いていた。
ユエアルは、自宅前に置かれていた手紙の「フーシン社長が来て欲しい」と言うメッセージを読み、会社に出かける。
しかし、やし油の会社内で待ち受けていたのは、ヤン弟だった。
ヤン弟はユエアルに襲いかかると、陰でフーシンが見守る中、その場で押し倒して乱暴する。
床に倒れたまま気がついたユエアルは、下の事務所から聞こえて来るヤン弟とフーシン社長との親しげな会話を聞き、自分が今まで騙せれていた事を悟る。
しかし、すでに身体を汚された彼女は、近くに落ちていた鉄の鈎を手に取る。
その頃、ユエアルの自宅の訪ねたシェンは、残されていた手紙からやし油の会社へ急行するが、そこには、すでに鈎で自分の首を刺し、自殺したユエアルの死体が残されているだけだった。
死体にすがりつき泣き出すシェン。
やがて、近くの道路工事の現場にやって来たシェンは、ドラム缶で熱せられていたコールタールの中に身を投ずると、オイルマンに変身するのだった。
それを見て逃げ出す工事関係者たち。
その頃、フー弁護士は秘書と共に、車で帰宅していた。
地面を走る油と化し、その後を負うオイルマン。
愛人でもある秘書は、妻の待つ自宅に帰ろうとするフー弁護士を車内で誘惑すると、途中で車を停めさせ、その中でカーセックスを始めるのだった。
やがて秘書は、車のウインドウに天井から流れている油に気がつく。
次の瞬間、後部座席にオイルマンが出現し、フー弁護士と秘書を殺してしまう。
その頃、シェンの家に来ていたシャオリーは、無人の部屋に入ると、床の絨毯の下から奇妙な匂いがして来るのに気付く。
絨毯をめくってみると、床の真ん中に穴が明いており、そこに油が充満しているではないか。
そこにオイルマンが帰って来たので、慌てて部屋の隅に隠れるシャオリー。
オイルマンは絨毯の中央に倒れ込むと、徐々にシェンの姿に戻ってゆく。
驚きながらそれを見守るシャオリー。
立ち上がったシェンは、シャオリーが部屋の中にいた事に気付くと、ナイフを取り出し迫って来る。
しかし、シャオリーを殺す事は出来ないと打ち明けたシェンは、自分が殺人を犯した事を告白すると、この場で殺してくれと頼む。
シャオリーは、死んだのは全て悪人だと言い、シェンの自暴自棄を諭そうとするが、シェンは自分の身体に染み付いた血は落ちないと自らの犯罪を正当化するつもりがない事を断言する。
自首したらとシャオリーが勧めると、いや、まだやる事がある。ユエアルを殺したヤン・テンシャイとフーシンをやらねばならぬと言い残し、シェンは家を出て行く。
フー弁護士とその秘書殺害の捜査で、弁護士事務所にやって来ていたルオ警部は、足の悪いシェンだけ容疑者リストから外してしまうが、その他の社員たちには徹底した捜査をするよう命令。
その結果、ヤン・テンシャイに身辺を注意するよう社内から電話で忠告したシャオリンは、逆探知ですぐ見つかって拘束されてしまう。
一方、電話を受けたヤンの方は、念のために、子分たちに周囲を固めさせる。
やし油工場のタンクに浸かってオイルマンに変身したシェンは、ヤンの屋敷に流体化して侵入、護衛していた子分たちと戦いはじめる。
オイルマンは、口から油を吐き出し、子分たちに浴びせかける。
子分たちが、オイルマンの腕をたたき落とすと、その腕は油と化して地面に吸い込まれると、いつの間にか、オイルマンの身体は復元している。
首をたたき落としても、同じように復元してしまう。
オイルマンは不死身なのだった。
天井を伝ってヤンの部屋に降り立ったオイルマンだったが、そこに駆け付けたのが、シャオリーを連れたルオ警部。
オイルマンを射殺しようと銃を向けるが、シャオリーが必死に制止する。
それでも、他の警官たちが放った銃弾はオイルマンに命中。
しかし、撃たれたオイルマンは、又、流体化し逃亡する。
後には、殺されたヤンの死体が転がっており、ルオ警部は次にやられるのは誰だろうと呟く。
その頃、やし油会社の社長室では、フーシン社長が、トランクに現金を詰め込み、拳銃を手にすると、逃亡を計ろうとしていた。
すると、止まっていたはずの機械類が、突然動き始める。
そこへ、人間の姿をしたシェンが出現したので、フーシン社長は思わず発砲する。
何発かは、シェンに命中するが、外れた弾は、近くにあった油貯蔵タンクを撃ち抜いてしまい、そこから噴出した油がシェンの身体に降り注ぎ、オイルマンに変身する。
そこに、シャオリーから事情を聞いたルオ頚部が駆け付けて来て発砲するが、またもや流体化し、弾を逃れたオイルマンは、フーシンに飛びつくと殴り殺してしまう。
さらにルオ警部をも殺そうと捕まえたので、思わずシャオリーが止めて!と叫びながら、近くにあった松明の火をオイルマンに押し付けると、たちまちオイルマンは炎上し、苦しみながら倒れてしまう。
その姿を見たルオ警部は、シャオリーの肩を抱いてその場を去る。
床に残っていた油のカスは、風に吹き飛んでしまう。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
「北京原人の逆襲」で知られる監督の前年度の作品。
怪奇映画と言うよりも、「超人ハルク」や「スパイダーマン」を連想させるようなアメコミヒーローものと、日本の「美女と液体人間」や変身ヒーローの要素に、「必殺」もどきの復讐&世直しパターンを融合させたような内容である。
70年代のB級映画らしく、シェンが嗅ぎ付ける事件は、全部エロ絡み…
オイルマンは明らかにグロ趣味なので、正にエログロナンセンスの見本のような仕上がりになっている。
裁判の偽証で冤罪人を作ったり、闇医療行為などは確かに悪い事には違いないが、即刻殺してしまうほどの極悪人とも思えない所が、観ていて微妙に感じる所。
所詮、行動の動機が主人公シェンの私怨に過ぎないので、ヒーローもののような爽快感もなければ、着ぐるみモンスターでは怪奇性も希薄。
展開も単調な上に、登場する女優たちが、皆脱ぐために呼ばれたような人たちばかりで、顔の系統が似ているため、キャラの区別がしにくく、途中かなりダレる事も確か。
この「液体人間」の発想が、東宝変身人間シリーズ「美女と液体人間」から来たのがどうかは定かではないが、オイルマンは移動する時、地面に這いつくばると液体化し、地面や壁を伝って動く所の描写などはそっくり。
アニメでマスクを作って、そこに油素材を合成しているだけなので、特にリアルにも見えないが、子供向け怪奇ものとして見ると、それなりのレベルだと思う。
又、フイルムの逆回転による、地上から高所への飛び上がりなど、初歩的なトリックも多く、何やら、東映ヒーローものの雰囲気も漂う。
全体としてはどうと言う事もないB級作品だが、今回、この作品を観ていて気付いたのは、オイルマンは、相手から手や首を殴られ、その部分が地面に落ちても、落ちた部分は液体化し地面に吸い込まれ、いつの間にかオイルマンの身体は元に戻っている描写などは、「ターミネーター2」のT1000の元ネタじゃないのかと言う事。
最後、工場で戦う所なども同じなのが、ちょっと気になる。
T1000はCG処理で今風の金属表現っぽくなっていたが、元を正せば「液体人間」の発想。
つまり、この「液体人間オイルマン」は、「美女と液体人間」(1958)と「ターミネーター2」(1991)をアイデア的に繋ぐ「ミッシング・リンク」的作品なのではないかと想像させたりする。
海外ロケによるエキソティシズム、エロ満載要素、エンディングのあっけなさなどは、そのまま次の「北京原人の逆襲」にも受け継がれている。
