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1959年、東京映画、三宅艶子原作、八住利雄脚本、豊田四郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

佐谷伸吉(森繁久彌)の妻、波恵(淡島千景)は、朝から忙しかった。

趣味の演劇研究会にも出席しなければいけなかったし、女子校の同窓生達で作っている姫百合会での議題「母子寮」建設の予算問題も解決しなければいけなかったからである。

あれこれ電話をして食卓に戻ってみると、まだ主人が食卓についていないのに出されたステーキが冷めかけているではないか。

お手伝いに、早く出し過ぎと注意した後、自らスープを持って浴室に入る。

中では、主人の伸吉が冷温浴をやっている最中だった。

二槽に区切られたバスタブには、それぞれ温水と冷水が張ってあり、その両方を行き来するように椅子がクレーンのように動く仕掛けの上に、裸の伸吉があぐらをかいて座っているのであった。

波恵は、そんな伸吉にスープを飲ませながら「母子寮」建設のための寄付金を出して欲しいと頼む。

伸吉は鷹揚に了承した後、着替えて車に乗り込み出社して行く。

自ら経営する土地建物会社にやって来た伸吉は、見知らぬ御夫人が帰りかける姿を見かけ、あれは誰かと社員に聞くと、土地の相談に来た未亡人だと言うので、そう言う人はすぐに自分に紹介するようにと注意して社長室に入り、東京湾に海底都市を作ると言う「大東京都市計画」の素案について、部下からの報告を電話で受ける。

一方、銀座の料亭「まる伊」の店の前では、近々売り上げが悪い大森店が閉鎖され、大森店の従業員達が全員解雇されると言う話を聞き、ストをやろうと板前たち(八波むと志、由利徹、南利明)や仲居達(都家かつ江、菅井きん)が騒いでいた。

そんな騒ぎを心配する妻の三代(淡路恵子)を他所に、主人の丸山伊兵衛(花菱アチャコ)は、あれこればあや(三好栄子)に言い付けていた。

そこへ三代の兄、つまり伊兵衛にとっては義理の兄に当る伸吉から電話がかかって来る。

信吉は、妹を後妻にした伊兵衛が自分より遥かに年長なので「お義兄さん」と呼び掛けるので、その度に伊兵衛は「義弟です」と訂正する。

伸吉は後で話があるので出向くと伝える。

その頃、波恵が出席していた演劇研究会では、めいめいが作って来た古典劇の舞台模型を、先生(伊藤熹朔)に寸評してもらっていた。

一方、佐谷家に遊びに来た三代は、波恵の帰りを待つ間、家ではなかなかやらせてもらえない小歌の稽古を思う存分やっていた。

そこへ、波恵が、妹の多美子(水谷恵子)と一緒に帰って来る。

三代は新婚の多美子をからかうが、波恵が言うには、夫の田部圭太(小林桂樹)が仕事中毒なので、全く多美子の相手をせず、相当欲求不満状態なのらしい。

それを聞いた三代は、年が離れた自分の夫伊兵衛は、毎晩しつこい程自分を求めて来て困ると、のろけ話しを始め、多美子ももっと積極的に夫にアピールした方が良いとアドバイスするのだった。

「まる伊」にやって来た伸吉は伊兵衛に、この店を閉めるのだったら住宅地として利用した方が良いと提案した後、今度、東京湾に海底都市を作るので、5000坪の土地に投資してくれないかと持ちかけていた。

しかし、伊兵衛の方は、なかなか帰宅しない若妻の三代の事が気にかかるらしく、始終そわそわして、話に集中してくれない。

団地に帰って来た多美子は、三代から聞いたアドバイスを実行すべく、口紅等塗って夫の帰りを待っていたが、帰って来た圭太は、そんな多美子の事等眼中にないかのごとく、自分の部屋に入ると、すぐに顕微鏡を覗き込みはじめる。

持って帰って来た多美子手作りの弁当も全く手付かずの状態。

それは、ご飯の上に「I LOVE YOU」とデンブで書かれたものだったので恥ずかしくて食べられなかったと圭太は言う。

ショックを受けた多美子は、何で結婚なんてしたのよ?と泣き出すと、何かと便利だからと平然と答える圭太は、たばこをくわえながら「マッチ」と言う。

いらついた多美子が、私よりあなたを夢中にさせている大事な仕事って何をしているの?と聞くと、圭太は嬉しそうに彼女を部屋に招くと顕微鏡を覗かせてくれる。

彼の仕事は、試験管ベビー用の精子の冷凍保存の研究だった。

それを聞いた多美子は驚き、そんな事が成功したら、夫婦なんて必要無くなるじゃないと憤る。

伸吉は会社にやって来た三代にも、すぐに楽な未亡人になれるよう、あんな年寄りの後妻にしてやったのだから、自分の事業に協力するよう伊兵衛を説得しろと頼む。

三代は、秘書(横山道代)から渡された精力剤を飲んでいる兄を見ながら、伊兵衛はマグロの肝臓を飲んでいると教える。

そんな伸吉に圭太から電話が入り、精子保存の研究費を援助して欲しいと頼まれる。

圭太の大学の研究室に出かけた伸吉は、精子提供希望者としてやってきた男三人の顔を見て、どこかで見た顔だと不思議がる。

それは、「まる伊」の板前達だった。

板前達の方も店の主人の義兄を知っていたので、バツが悪くなり、慌てて帰ってしまう。

その頃、姫百合会の面々は、戦争で夫を亡くした婦人達のために母子寮建設を始めると、夫人達を集めて建設予定地で演説をしていたが、聞いていた婦人の中から、この土地は、すでに他人に買われたと新聞社の人から聞いたと疑問の声が上がる。

それを聞いた姫百合会のメンバー(荒木道子)は、すでに手付け金もうってあるので、そんなはずはないと戸惑うが、その後、波恵の家を訪れ、母子寮建設予定地は、間にお宅の御主人の土地会社が入って、銀座の「まる伊」と言う所が買ってしまったらしく、地主に問い合わせたら、手付け金を返却して来た。あんな安い土地は二度と手に入りそうにもないし、これはあなた達家族がグルになってやっているとしか思えないと詰め寄る。

寝耳に水だった波恵は、驚くやら戸惑うやらだったが、メンバー達がそそくさと怒って帰ってしまったので、ひとり取り残されてしまう。

その「まる伊」の寝室では、三代が立てたお茶を、ふとんに座った伊兵衛が嬉しそうに飲んでいた。

三代は、それとなく、大盛りの店は閉鎖しなくても、他のチェーン店鋪の売り上げで補填できるのでは?と聞いてみるが、仕事の事に口を挟むなと伊兵衛は釘をさす。

すると、三代の方も、早く一緒に寝ようとしている伊兵衛をじらすように、なかなかふとんに入ろうとはしなかった。

そんな所に、板前や仲居達が大挙押し掛けて来て、首にしないでくれと玄関口で騒ぎ出す。

応対に出た三代は、自分に任せてくれと仲居達を説得する。

一方、多美子は圭太に対し、試験管ベビーだの精子の冷凍保存などと言う研究は、人間の何もかもをおもちゃにする研究であり、そんな事をしていたら人間の尊厳はどうなるの?と詰め寄り、自分は決心をしたと宣言していた。

翌日、波恵の家に集結した民子と三代は、波恵に夫達との付き合いの仕方について相談に来る。

その波恵も翌朝、伸吉に母子寮建設予定地を勝手に買ってしまった事に大して文句を言っていたが、伸吉はビジネスだからと相手にしない。

さらに、女権が拡張したら不良が増えるとも言い、いつものように出かけようとするので、癇癪を起こした波恵は、私はあなたを思う通りにするわと叫ぶと、玄関に飾ってあった女性のトルソを倒して割ってしまうのだった。

しかし、それを見た伸吉は、この日のあるのを予期し、それはイミテーションだと涼しい顔。

夫に業を煮やした三人の女たち、波恵、多美子、三代は、あの人たちの足をすくってやりましょうと、ある日相談しあう。

波恵は、演劇研究会で作った舞台セットのミニチュアを見せながら、古代ギリシャの芝居にすばらしいヒントがあるのと話しはじめる。

(劇中劇)夫達が戦争に明け暮れていたアテナの夫人達は城山に集まっていた。

敵であるスパルタの女ラムトピー(中村たつ)たちも呼び掛けに応じてやって来ていた。

代表して、ギリシャの婦人(淡島千景)がみんなに訴えかける、「夫達に戦争を止めさせるには、私達はみな、男を遠ざけねばなりません!」と。

すると、それを聞いたほかの婦人達(淡路恵子、水谷良恵)は驚いて戸惑い、一瞬、顔を背けてしまう。

男を遠ざけるくらいなら、戦争をしている方がまだましと言うのだった。

しかし、スパルタのラムトピーは、仕方ないとあっさり納得する。

本当に、そんな事で戦争を止めるのかと言う問いに対しては、肌が透けるような透明な衣装を着て、男達のそばを通ったら我慢できるかしら?と呼び掛けた婦人は逆に問いかけるのだった。

(現在)波恵は、女の武器を使ったストライキと言う事ねと作戦を説明し終わる。

その話を聞いた多美子は、あの人の研究が成功したらベッドもいらなくなるのだからやると言い出す。

一番乗り気ではなかった三代すら、やろうかしら…と言いはじめる。

かくして、ギリシャ劇から触発された女達の作戦は開始され、5日、7日と経過する。

夜、妻に相手にされなくなった伊兵衛は、あれほど自分が着るのは嫌がっていたパジャマを着てまで、三代の寝室に御機嫌伺いに行くが、中で小歌を歌っていた三代は、大森店を開いたら?と半ば脅し文句を言いながら、ガラス戸を障子で閉ざされてしまう。

しかし、三代自身もちょっぴり伊兵衛に対しては罪悪感を抱いていた。

作戦開始から十日目の朝が明けた。

波恵は、夫の寝室の様子を鍵穴から覗いてみるが、まだ一人で寝ているようだったので、そろそろ我慢できなくなるはずとほくそ笑んでいた。

(劇中劇)アテナの城山の門の前にやって来た兵士(森繁久彌)は、門の中に立てこもったきり出て来なくなった妻を想い、苦悶していた。

そんな夫の前に姿を現した妻は、抱きつこうとする夫の持つ、剣が邪魔だから外してくれと頼むが、夫はそれだけはできないと拒否する。

すると、妻の方も、敷物を取ってくるだの、枕がないだの、身体に香油を塗ってくる等言い出し、欲求不満が高まった夫を愚ろうするような態度に出る。

さらに、他の夫人達も、その様子を見て、塀の上から嘲笑するのだった。

(現代)そろそろ許してやろうかしらと、夫の寝室に入り込んだ波恵がふとんを剥がしてみると、中はもぬけの殻だったのでびっくり、お手伝いのしづ(市原悦子)を呼び寄せ事情を聞くと、もうとっくに御主人様はお出かけになったと言うではないか。

その頃、多美子の方も、自分が欲求不満で鼻血を出していた。

そんな妻を見た圭太は、特に心配すると言う事もなく、のぼせだから、換気を良くして耳鼻科に行けと忠告しただけで出かけてしまう。

多美子は姉の波恵に電話をし、自分の方が先にダメになりそうと弱音を言う始末。

それを聞いた波恵は、勝手にしなさいと怒って電話を切るが、その直後にかかって来た電話は、母子寮転売についての新聞社からの取材だったので、又慌てて切ってしまう。

伸吉の社長室に集まった伊兵衛、圭太は、伸吉から、以前妻から「女の平和」を読めと言われた事があったのでピンと来たが、今回、三人の妻達は結託して、ギリシャの古典劇と同じ事を始めたらしいと聞かされる。

秘書をはじめ、愛人には事欠かない伸吉は、そんな作戦にはひっかからないと平然としているし、圭太も全く関心なさそうに、研究費を出して暮れの一点張り。

一人、伊兵衛だけが困っていた。

伸吉から小切手を受け取った圭太と伊兵衛が帰りかけると、ガラス戸の向こうで、伸吉と秘書がキスをしている様が透けて見えたので、伊兵衛は呆れてしまう。

団地に帰って来た圭太は、研究費が入ったので、又研究ができる。君たちストライキをやっているんだって?と、しらっと多美子に聞く。

一方、三代は波恵に、伊兵衛が降参して来たと嬉しそうに報告に来たので、母子寮の事は承知してくれたかと波恵が聞くと、その事は忘れていたようで、三代はしまったと言う。

波恵の方は、うちは一筋縄では行かないとぼやくが、男って本当に辛抱できないのよと言いながら、三代はさっさと帰ってしまう。

その夜、「まる伊」の店では、大森の店も始める事にしたと言いながら、嬉しそうに伊兵衛が妻の寝室にやって来る。

一晩、夫の帰りを待っていた波恵は、翌朝、伸吉の車が帰って来たのを見て、やっぱり帰って来たわと喜び、ベッドに潜り込み、ノックの音がしたで、ようやく作戦が成功したと喜ぶが、入って来たのはしづで、帰って来たのは車だけで、御主人は忙しいので帰らないそうですと言うではないか。

それを聞いた波恵は、思わず泣き出してしまう。

その頃、温泉旅館で待つ未亡人に会いに来た伸吉は、相手は今、風呂に入っていると仲居(水の也清美)から教えられる。

すると伸吉は、持って来たプープークッションを取り出し、未亡人が座る予定の上座の座ぶとんの下に入れると、一見隙がない人こそ、こういう悪戯で心が砕けてしまうものだと、嬉しそうに仲居に説明する。

そこに、風呂から上がって来た未亡人(坪内美詠子)が来るが、案に相違して上座に座ろうとしない。

しかし、テーブルの上に、伸吉があらかじめ置いておいた二匹の犬のミニチュアには興味を示し、ちょっと触ってみると、仕掛けてあった磁石の作用で二匹の犬は瞬時にキスをするので、未亡人は恥ずかしがる。

さらに、とうとう上座に座った時、「ブー」と言う大きな音が出たので、驚いた未亡人は羞恥心で顔が上げられなくなり、机に突っ伏してしまう。

そこに近付いた伸吉が、「出物腫れ物、所嫌わずってね…」などと言いながら、優しく抱きとめてやるのだった。

翌朝、自宅に戻った伸吉は、しづから、先ほど秘書の方から電話があったと知らされるが、秘書は仕事の事で自宅に電話はしないと無視する。

波恵はと聞くと、演劇研究会に出かけたと答えたしづは、車の中で見つけたブーブークッションに興味を示す。

大学で研究中だった圭太の所へ訪ねて来た多美子は、今日、自分も人工受精を受けて来た。私、全然知らない人の子供を生みますと告白すると、さすがに動揺した圭太を無視するように、しばらく軽井沢の姉の別荘に行くと言い残し帰ってしまう。

ある日帰宅した伸吉は、相変わらず、妻の姿がなく、大量の買い物だけをお手伝い達が運んでいるのを見て不思議がる。

いつものように温冷水浴をすまし、電気マッサージ椅子に座っていた伸吉に、おしづが、今のような生活を為さっていると、奥様、浮気なさいますよと忠告する。

それを笑い飛ばした伸吉だったが、髪をすくため、妻の鏡台の引き出しから櫛を取り出そうとした時、波恵の日記が置いてある事に気付き、何気なく読みはじめる。

すると、昨年と今年の私は違う。今の私にはあの人がいる。夫は私を愛してはいないし、私も愛せない…と、浮気を臭わせるような内容が書いてあるではないか。

わざと妻が自分に読ませるために書いたのだろうと推理した伸吉であったが、その文章を読むのをとめる事ができなかった。

妄想の中の妻は、浮気相手の男とドライブに出かけており、波恵が運転席の男にしなだれかかったので、危うく、対向車のトラックと正面衝突しそうになる。

一方、多美子から人工受精を打ち明けられた圭太の方も、妄想に取り付かれていた。

町を歩く男と言う男が全部、生まれて来る赤ん坊の父親に見えて仕方ないのである。

その日、帰宅して来た波恵は、しづに、夫が櫛を使ったかどうか確認する。

伸吉は会社から伊兵衛に電話を入れ、土地の融資の話を断られた事に対して文句を言っていた。

軽井沢の別荘に来ていた多美子は、車が近付いて来たので、てっきり圭太が迎えに来たと喜ぶが、その車は牛乳屋の車と分かりがっかりする。

立ち去った牛乳屋の車から降り立った圭太にはしばらく気付かなかったのだ。

多美子に近付いた圭太は、その子を生むのをやめてくれないかと頼むが、多美子は拗ねたように背中を向けてしまう。

今回の事で、自分の研究は愛情の問題と矛盾すると言う事が分かったので、もう止める事にすると圭太は言うが、多美子は薄野の方に逃げて行ってしまう。

それを追って行った圭太は、隠れていた多美子から目隠しをされ、あれはみんな嘘だったと教えられる。

それを聞いて安心した圭太だったが、その時、目の前の浅間山が突如噴火を始める。

それを見ながら、圭太は、自分が研究を始めたのはあれが原因だと指差す。

これから原水爆実験で多くの奇形児が生まれるかも知れない。だから研究が必要なんだと。

それを聞いた多美子は、思わず圭太にキスをし、あなたの研究はすばらしい事だし、成功したら、私達大金持ちになれるじゃないと今までとは正反対の事を言いはじめる。

その日昼間に帰宅した伸吉は、玄関に男物の靴がぬいである事に気付く。

さらに、二階の夫婦部屋から、波恵の華やいだ笑い声まで聞こえてくるではないか。

てっきり、浮気相手を連れ込んだと思い込んだ伸吉は、憤然と部屋に入ってみるが、そこにいたのは、波恵の洋服の寸法を計っている仕立て屋(細川俊之)だった。

自分の早合点に気付いた伸吉だったが、仕立て屋が帰った後も、波恵に電話がかかったと聞けば、誰からなのかと気になって仕方がない。

完全にノイローゼ状態になっていたのだった。

一緒に昼食を食べようとする波恵を、無理矢理寝室に連れて行こうとする伸吉だったが、呆れた波恵は外に逃げてしまう。

ひとり部屋に残された伸吉は、ギリシャ劇の舞台模型を見ていて苛立ち、壊してしまう。

(劇中劇)城山の門の前でひとり佇む兵士は、おれの妻は逃げてしまった。誰の所へ行ったんだと嘆いていた。

周囲からは、おれかも知れんぞ…などと、兵士をからかうように男の声が聞こえて来る。

追い詰められた兵士は、おれは何もいらない。お前の言う通りになると告白する。

そんな兵士の周りを取り囲んだ女達は、笑いながら舞い出すのだった。

こうして、夫は降参したのです…と、姫百合会の総会で波恵は報告していた。

女の武器を適切に使って、夫を思い通りにしたのです。日記は、お芝居でした…。

その様子を、二階の幕の後ろから覗いていたのは伸吉だった。

その姿に気付いた波恵は、あれが夫です。夫はやはり誠実な人でしたと紹介する。

仕方なく、夫人達の前に姿を現した伸吉は、背広の中から取り出した名刺を、これが今まで罪を犯した女達であり、皆様に自分の贖罪の気持ちを示すために…と言いながら、その場で全部破り捨ててしまう。

それを見ていた夫人達は、拍手で歓迎する。

総会が終わり、一緒の車で帰宅する伸吉に、波恵は何故黙っているのと聞く。

伸吉は、「敗軍の将は語らず」と答えるのみ。

途中、食事のため立ち寄ったレストランで、ちょうど出て来た女性から流し目を送られた伸吉は、鼻の下を延ばすが、思い直したように、波恵の腕を取ると、レストランに向かうのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

仕事に夢中になり、妻をないがしろにしている夫達への、ちょっとした妻達の反乱を描いた大人向けの艶笑譚。

ギリシャの古典劇「女の平和」をだぶらせてあり、その劇を、劇中劇として挿入してある所等が興味深く、青い鬘をかぶり、ギリシャ兵士の服装で芝居をする森繁の姿は珍しい。

女には目がない森繁演ずる社長の姿には「社長シリーズ」のイメージと重なる部分も多いように感じる。

姫百合会のメンバーとして、人気料理研究家だった江上トミさんなどが参加している所も懐かしいし、家政婦役で登場している市原悦子の姿も初々しい。

まる眼鏡をかけ、浮き世離れした雰囲気の小林桂樹演ずる科学者の姿は、どちらかと言うと「江分利満氏」を彷佛とさせたりする。

海底都市とか試験管ベビー等と言う言葉には、未来指向が強かった当時の時代背景を感じさせる。