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暗号名 黒猫を追え!

1987年(公開は2008年)、プロダクションU、河田徹(井上梅次)脚本、井上梅次+岩清水昌宏監督作品。

※この作品には謎解き要素があり、最後に意外な展開が待っていますが、その部分も含め、詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

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B連邦の言葉で、数字が読み上げられる。

それを傍受している警視庁外事第2課の野々村志郎警視(柴俊夫)とその部下達。

ただちに、最近手に入れた乱数表を使って、ただちに暗号解読に取りかかる。

発信者は「ブラックキャット(黒猫)」発進先はB連邦。

内容は、「黒猫が筏を買った」とか、「パンダと猿が…」という不思議な文章だったが、それぞれ、「船を買った」「中国と日本」などを意味すると推測できた。

その文章を読みながら、野々村警視は、この暗号文を日本から送っている、スパイの「ブラックキャット」が、どこの屋根裏に潜んでいるのかと考え込むのだった。

タイトル

城南大学のラグビー部。

今日は、来るべきライバル城北大との決戦を前に、激励をかね、OBが4人、現役に混じって練習に参加していた。

練習後、部室に集合した部員達を前に、キャプテン(内藤剛志)が、そのOB4人を紹介して行く。

まずは、一番年長で、元ラグビー部キャプテン、今は、警視庁で最年少警視になった野々村志郎。

次いで、その野々村と共に副キャプテンをしていた吉野年男(榎木孝明)、今は商事会社の営業部長で重役。

少し下の学年になる、「未来社会ジャーナル」と言う雑誌の編集次長、高松晃(国広富之)

そして、学生時代からひげ面で有名だった大田黒洋(高岡健二)、今は貧困救済運動をしているそうだが、実際は無職、無収入の状態らしい。

その後、OB4人は、野々村の最年少警視昇進祝いをかねて、飲み屋に集合する。

イデオロギー嫌いの吉野は、理想論ばかり語っている大田黒と意見があわず、ちょっと口論になりかけるが、高松は、長年働いて自分を養ってくれた妻が最近入院しているので、金になる原稿を書きまくっていると近況を打ち明ける。

忙しい野々村は、先に失礼すると席を立ち、吉野と同じタクシーに乗り込むが、その中で、吉野に、京子をいつまで待たせておくつもりだと吉野に聞く。

テレビのニュースキャスターをしている野々村の妹、京子(田中美佐子)とつき合っている吉野が、なかなか結婚を言い出さない事を指摘したのだが、吉野は謝るだけ。

外事第2課に戻って来た野々村は、部下達が、荒川に住むカメラ店経営者島田公平(伊吹剛)なる人物が臭い、ブラックキャットではないかと話し合っている所に合流する。

部下達の話では、しょちゅう基地周辺や日本海側に出かけては写真を撮りまくっているし、頻繁に外国にも出かけていると言う。

その島田には姉が一人いると言うので、坂本刑事(三ツ木清隆)に話を聞きに行かせる事にした野々村だったが、そこに1課の三上警部(新藤栄作)がやって来て、コルノフビッチと言う人物がB連邦のGKP幹部に真違いない。日本のチタン技術情報がB連邦に流れてしまったと知らせる。

それを聞いた野々村は、やつらは人間のあらゆる弱味に付け込んで来ると憤る。

日本には、今6000人の諜報員が潜入していると言われているからだった。

その頃、とあるパーティ会場にいたコルノフビッチは日本人客に媚びを売っていた。

そのコルノフビッチ、別室に入ると、電話でとある人部の所に電話を入れる。

「また巨人が勝ちましたね。」と伝えると、相手は「ホームランバッターの背番号は?」と聞き返し、「99」とコルノフビッチが答える。

彼が、エージェント99と言う事を相手に知らせる合い言葉なのだった。

その夜、帰宅した野々村は、実家からくみ子(中島ゆたか)が来ていた事に気付く。

久美子は、父親の知り合いの娘なのだが、その知り合いが亡くなった後は、父親が引き取り野々村と小さな頃から兄弟同様一緒に育てられた仲だったが、互いに愛し合うようになり、近々結婚するつもりの相手だった。

そのくみ子は野々村に、兄さんから、父さんがもう長くなりそうだと伝えてくれと言われて来たと言う。

しかし、くみ子は、婚約して5年経つのに、まだ結婚してくれない野々村に催促する気持ちもあって上京したのだった。

そこに、妹の京子も帰って来るが、二人の仲を知っている京子は、自分は近々マンションに引っ越すので、このまま居座っちゃいなさいとくみ子の応援をする。

その頃、自宅で執筆していた高松の所に電話がかかって来る。

相手は「またタイガースが勝ちましたね」と言う。

高松が「ホームランバッターの背番号は?」と聞くと、相手は「99」と相手は答える。

コルノフビッチからの電話だった。

電話の内容は「あなたにインドネシア料理をごちそうしたい」と言うものだった。

翌日、坂本刑事は、島田公平の姉せつ子(月丘千秋)を訪ねていた。

姉は、消息が分からなかった弟が見つかったと知り、弟には借金があるので久々に電話をしてみると言い出す。

その頃、加藤刑事は「島田写真店」を見張っていた。

そこに、甲山(片桐竜次)と言う馴染みの業者らしき男がアルバムを運んで来る。

島田は、その甲山に荷物を屋根裏部屋の暗室に運ばせると伝票を受け取るが、その際、互いに意味ありげな目配せをしあう。

見張っていた加藤刑事は、フィルムを界に来た客を装い店内に入り、中の様子もうかがう。

加藤刑事が外に出た後、写真店に電話が入り、島田の妻みどり(音無真喜子)が出ると、相手は島田の姉だと言う。

夫にそう言いながら電話を渡すと、夫は自分はただの従業員で、公平は今出かけていると言って電話を切ってしまう。

あなたに姉がいたのか?と不振気に聞くみどりに対しては、たちが悪い姉なので、今後、電話がかかって来ても無視するように夫の公平は告げるだけだった。

その夜、インドネシア料理店でコルノフビッチと食事をした高松は、自分に親友である大田黒と言う人物を利用するよう指示を受け悩んでいた。

しかし、そうした二人の様子は、しっかり、外事第1課の刑事達に監視されていた。

高松は、もう辞めたいと漏らすが、それを聞いたコルノフビッチは、辞めるのなら、これまでの事を全て発表すると脅して来る。

その後、ビアガーデンに大田黒を呼び出した高松は、B連邦に、お前の運動に共鳴している組織がいて、事務所を開設する資金を提供したいと言って来ていると伝える。

外国からの金だから内密に…と言う高松の言葉を、根が単純な大田黒は素直に受け入れる。

その頃、警視庁では、捜査から戻って来た坂本刑事が、姉が弟の島田公平に電話を入れたが、不在だったと野々村に報告していた。

しかし、それを横で聞いていた加藤刑事は、それはおかしい。島田なら、今日一日、店にいたぞと教える。

一方、1課の三上警部は、店を出た大田黒の車を尾行していた。

そんな尾行に気付かなかった大田黒は、ザコセフと名乗るB連邦の人間と落ち合うと、トランクに入った現金を受け取る。

その際、領収書にサインをくれと言われる。

野々村は、その後、警視庁内で、三上警部の口から、一連の行動について教えられ、高松と大田黒から、今事情聴取していると報告を受ける。

取調室に顔を出した野々村の姿を見た高松と大田黒は、とんでもない言い掛かりだと必死に弁解をする。

大田黒は、ザコセフには世界貧困救済運動の資料を渡しただけだと言うし、高松も、コルノフビッチは自由主義者として良く知っているので時々会うだけと言う。

その場は一応、野々村に免じて帰宅を許された二人だったが、三上は、高松が三年前、B連邦に旅行していると言う事から、スパイであると自分達は見ていると野々村に打ち明ける。

高松は翌日、入院中の妻ひろみ(木村弓美)を見舞いに出かける。

木村は、夫が来てくれた事に喜びながらも、自分の病気に金がかかる事を謝る。

しかし、高松は、自分が大学を卒業できたのは、君が面倒を見てくれたからであり、今では、自分は給料以外に原稿も売れるようになって来たので心配するなと慰めるのだった。

島田公平の家族は、又、店に「三日間休業」のはり紙を出して、旅行に出かけるようだった。

近所の主婦がみどりにどこへと聞くと、新潟から佐渡の方へと答える。

見張っていた加藤、坂本両刑事は、出発した島田のライトバンを追跡しはじめる。

その報告を上司の中田忠雄警視(本郷功次郎)に報告していた野々村に電話が入る。

郷里に帰ったくみ子からのもので父親が危篤だと言う。

ただちに中田警視の許可を得た野々村は、急遽、郷里の奥能登に帰る事にする。

実家では、兄の徹(森次晃嗣)とくみ子が、寝ている父、源一(久保明)の様子を見守っていた。

源一は、まだ意識はしっかりとしており、徹に全て、苦労の多い網元を任せてしまい申し訳ないと話していた。

志郎に続いて、妹の京子も駆け付けて来る。

京子は、昔から良く、父親に、B連邦に抑留されていた事に事を聞かされたと話すと、源一はその頃の事を思い出すように、再び話しはじめるのだった。

シベリアに抑留されていた源一達日本人は、B連邦の連中から、忠誠の証として、踏み絵をやらされたと言う。

源一は、それに逆らったが、踏み絵に従ったものの中には、敵国から金を受け取ると、内部告発書と言う形で自分を売った奴がおり、村井一郎と言うその男は、自分達より早く日本に戻る事を許され、その後、GHQに通訳として入り込んだのだとも。

ただ、その後は、自殺したと言う新聞記事で名前を見かけたので、あいつは戦争中、B連邦のスパイになる契約を結んだのだろうと源一は回想する。

その頃、島田家族の車を追って、新潟までやって来た坂本、加藤両刑事は、島田がしょっちゅう、海岸線の様子を写真におさめている様子を目撃する。

翌朝、港に出てみた野々村は、兄徹の船から出て来る見知らぬ男とすれ違う。

誰かと聞くと、この船の新しい船長なのだと言う。

徹が言うには、港に係留中の船の大半も、今では人手に渡ってしまっており、自分の船は二隻だけになったのだと言う。

そうした事情を知らなかった野々村は驚くが、そんな弟に、自分にばかり苦労を背負い込ませ、お前は東京で好きな事ができて良いなと嫌みを言って来る。

その兄の態度の急変に戸惑う野々村を残し、徹はその場を立ち去ってしまう。

そこにやって来た京子は、徹兄さんも、東京に出たかったし、くみ子さんの事を好きだったのよと打ち明ける。

その時始めて兄の気持ちを知った野々村は、くみ子や兄と過ごした幼い日の事を思い出すのだった。

そこへくみ子が、父の容態が急変したと走って来る。

一方、島田のライトバンを追尾していた坂本、加藤両刑事は、目の前で、島田の車が衝突事故を起こす所を目撃する。

その頃、大田黒は、「世界貧困救済運動」の事務所を開き、マスコミから注目を浴びはじめる。

そんな大田黒に、アメリカから来たリンダ・マーシュと言う女性が接近して来て、運動に共鳴したので、一緒に働かせて欲しいと申し込んで来る。

大田黒は、華々しく講演活動などを始め、一躍時の人になって行く。

警視庁に戻って来た野々村は、坂本、加藤両刑事から、追っていた島田公平は、本物ではなかった事が分かったと知らされる。

実は、事故での示談書から検出された島田の指紋と、姉が持っていた領収書についていた弟の指紋は一致しなかったと言うのだ。

高松のマンションに、久々に妹が子供連れで帰って来て、夫はちょっと遅れて来ると言う。

その妹とは、島田の妻のみどりだった。

高松は、どうしていまだに、夫の島田は、妹と籍を入れようとしないのかと聞く。

すると、みどりは、夫は多額の借金を抱えていて、今まで何度も名前を変えて来たかららしいと説明するが、その表情は寂しそうだった。

そこに玄関チャイムが鳴り、みどりが出てみると、大田黒だった。

その直後、再び、玄関チャイムが響き、今度入って来たのは、みどりの夫の島田だった。

取りあえず、島田達家族は脇の部屋に置き、大田黒から用事を聞く事にした高松は、資金が足りなくなったと聞かされる。

しかし、今自分達は、警視庁からも狙われているので…と高松は躊躇するが、乗りに乗っている大田黒は、どうしても追加資金が欲しいと言ってそそくさと帰って行く。

その後、高松は島田に対し、もうみどりと結婚して7〜8年も経つので、籍を入れてやってくれと頼むのだった。

帰宅した島田は、その夜、屋根裏の暗室に一人で上がると、どこかに電話を入れる。

「猫をお飼いですか?」と島田が聞くと、今日は猫の目が良く光る」と相手は答える。

島田は「大田黒が金に困っているので、今なら簡単に付け入れる」と連絡する。

その日の夜中、警視庁の傍受係りは、又、暗号の発進を捕らえる。

最初の数字から「ブラックキャット」が発進したものと分かったが、それ以後の本文は解読できなかった。

担当者は、乱数表を変えられたと悔しがる。

ある日、テニス場に現れたザコネフの姿があった。

一汗かいた後、休憩室で練習相手と会話をしている。

内容は「アメリカの弾薬庫の資料のコピーが欲しい」とザコネフが、相手に依頼しているのだった。

別れた二人の様子を、1課の刑事達が監視していた。

ザコセフが会っていた相手は、米軍基地に出入りしている二世だと分かった。

一方、大田黒は、中華街の王公司と言う店にやって来ていた。

大田黒に出会った王と言う人物は、食料の輸入をやっていると言い、あなたの運動に共鳴したので、何でも協力したいと申し出て来る。

金に困っていると大田黒が言うと、一番簡単な事だ、一千万出し、その上、月々百万提供しようと言い出す。

その代わり、日本の航空基地の騒音データを調べて欲しいと王が言うので、それは諜報活動ではないかとさすがに大田黒も警戒する。

しかし、王は、騒音測定はどこにでも公表されている、秘密でも何でもない資料なので、何の問題もないと笑う。

その夜、資金が手に入って上機嫌の大田黒は、リンダと食事をし、その際、プロポーズする。

リンダも感激して承諾をする。

警視庁では、島田公平は、過去、鹿野松三、川本忠と言う三つの名前を名乗っており、戸籍が存在しない事を突き止めていた。

実は、昭和53年、島田なる男は、行き倒れていた鹿野を助け、病院に連れて行った事がはじまりだと言う。

やがて、その鹿野の実家を訪れた島田は、鹿野は自分の所で働いてもらう事になったので、今後は外国などへも出張する必要があるので、パスポートを東京に移して欲しいと両親に願い出たと言うのだ。

その鹿野は、その後病死し、昭和54年、島田公平なる人物が出現する。

島田は、軍事産業も司る三ツ星グループの傘下の一つ、アズマ工業に、シュレッダーの修理係として時々出入りするようになり、廃棄処分にされようとするマル秘書類を、時々くすねていたらしい。

では、本物の島田公平はどうなったかと言えば、北へ拉致された可能性が高いと言う。

野々村は、島田の妻、旧姓高松みどりの過去も洗わせる事にする。

何となく、その名前に聞き覚えがあったからで、調査を待つ間、屋上に登った野々村は、沈み行く夕日を眺めて、数日前、一緒にラグビーをした高松らの顔を思い出していた。

報告に来た部下によると、やはりみどりは、あの未来社会ジャーナル社の高松晃の妹だったと言う。

翌日、宝井商事の吉野を茶店に呼び出した野々村は、先日、父親が他界した事を報告した後、妹との結婚話をもう一度確認してみる。

すると、自分の父親は小さい頃に亡くなったと打ち明けた吉野が、京子の事に関しては、他に好きな女性ができたので…と謝ってきたので、野々村は素直に承諾するしかなかった。

その後、大田黒や高松の話になり、最近、大田黒をやたらと高松が持ち上げているなと吉野は指摘して来たので、野々村の方も、高松には妹がいたなと確認してみるのだった。

その夜、ブラックキャットは、指令が来たとエージェントに電話をする。

大田黒は、約束通り、基地の騒音データを王に渡し、謝礼を受け取っていたが、又、新しい依頼として、基地の非戦闘員と戦闘員の比率を知りたいと言われる。

さすがに、今度の依頼は、諜報か集うそのものではないかと気色ばむ大田黒だったが、王は、基地に食料を納入したいので必要なだけだと、又しても笑顔で答えるのだった。

その頃、リンダは、コルノフビッチとザコセフに呼び出され、新しい命令を受けていた。

実はリンダの正体はアメリカ人ではなく、B連邦のスパイをやらされていたポーランド人だったのだ。

その日、帰宅したリンダは、シャワーを浴びた後、大田黒に甘え、自らベッドに誘うのだった。

大田黒は、その後も各地で、精力的に世界貧困救済連合の講演を行うだけでなく、民衆を先導しデモ運動にも積極的に関わって行く。

そうして日本中を回った大田黒は、手に入れた資料を、約束通り王に渡すのだった。

そんなある夜、高松は、コルノフビッチから明日会いたいとの連絡を受ける。

その指定場所は遊園地の観覧車の中だったので、1課の刑事達は近付く事ができず、下から眺めているだけだった。

コルノフビッチが言うには、我々の情報が北に流れていると言う。

大田黒が接触している王なる人物は、北方共和国の人間であり、二重スパイだと言うのだ。

こちらから大田黒への援助は止めるので、あなたも記事で大田黒を叩いてくれと、高松は指令を受ける。

リンダは、今後は中国大使館に近付くよう、新たな指令をコルノフビッチから受けるが、急に大田黒から離れる事にリンダは抵抗を示す。

しかし、スパイに反抗は許されないとコルノフビッチは突き放すのだった。

その後、大田黒への中傷記事が未来社会ジャーナルに掲載され、組織内でも疑惑の目で観られるようになった大田黒は窮地に立たされる。

電話をしても高松はいないと言うので、直接編集部に乗り込み、高松の帰りを待っていた大田黒は、これはどう言う事かと聞くが、高松は、はめられたのはこちらの方だ、この記事が間違いだと言うのなら、自分で証明してみせろと開き直る。

憤然と大田黒が帰った後、吉野が珍しく顔を見せる。

その後、料亭で落ち合った吉野は、最近、野々村から、お前の妹の事を聞かれたと高松に打ち明ける。

カメラ店をやっている妹の事を、何故、野々村が?と高松は不思議がる。

その夜、島田をマンションに呼び寄せた高松は、この前、大田黒がここに来て、金が欲しいと言っていた時、あなたも聞いていたね?と問いかける。

島田はとぼけるが、その後、北方共和国から大田黒に金が流れたそうだけど、あなたはもともと戸籍がなく、北の人ではないのか?と高松から問いつめられると、気色ばんで帰ってしまう。

帰宅した島田は、甲山さんから電話があったとみどりが言うので、すぐに暗室から電話を入れるが、相手は話し中。

もう一度、かけ直すと、出た相手のブラックキャットは「警察に目をつけられたので、すぐに脱出するしろ」と言うではないか。

それを聞いた島田はさすがにがく然とする。

一方、泥酔して自宅に帰って来た大田黒は、リンダの姿を探すが、残っていたのは、鏡に口紅で書かれた「エアタシハ ココロカラ アナタヲ アイシテイタ グッバイ」と言う文字だけだった。

翌朝、島田は荷物をまとめ、急に旅行に出かける事になったとみどりに伝える。

甲山の姿も見えたので、見張っていた加藤刑事は、店の様子がおかしいと 野々村に報告する。

野々村は、今夜、ずらかる気だなと読み、こちらも準備をしておくように伝える。

島田家では、その日、父親はしばらく旅行に出かけるので、子供達とのささやかなパーティを開いていたが、ごちそうが並んだ食卓を前に、島田の表情は曇っていた。

夜中、仲間の乗った車が到着し、それに乗り込んだ島田は、何も事情を知らず、笑顔で見送っている妻や子供達の顔を見ながら、涙を流すのだった。

その直後、店の電話が鳴り、みどりが出ると、兄の高松からだった。

島田は今出かけたと、何も事情を知らないみどりが言うと、高松は、止めろ!もう、帰って来ないぞ!と叫ぶが、みどりは訳が分からず、酔っているのねと呆れると、高松の方もそれ以上説得する気力を失い、電話を手放してしまうのだった。

警察から追われている事に気付いた高松と仲間は、途中で車を乗り換えると、逃亡に成功してしまう。

加藤は、尾行していた車を止めたら前田と言う運転手しか乗っておらず、途中で島田に逃げられたと、翌日、野々村に詫びていた。

本名は「りゅうかくげん」だったと報告を受けながら、甲山の写真を受け取った野々村は、その男に見覚えがあった。

実家に帰った時、兄から、船の新しい船長になった人だと教えられたあの男だった。

連中の行き先は奥能登だ!と野々村は叫ぶ。

それを聞いた中田警視は、ただちに石川県警に連絡すると言い、全員を奥能登に向かわせる。

実家のチカムまで車でやって来た野々村を出迎えたのはくみ子だった。

密輸団だと兄の徹に叫ぶ野々村。

聞けば、たった今、問題の船は出航したばかりだと言う。

野々村は、ただちに兄の船に乗り、その後を追跡する。

島田と甲山が乗った船は、やがて待ち構えていた「第二十八寿丸」と書かれた白い船に出会うと、二人はそちらの船に乗り移る。

双眼鏡でその様子を見ていた野々村は、何とか新しい船を追おうとするが、「第二十八寿丸」は物凄いスピードで逃げはじめる。

兄によるとエンジンが違うので、とても追いつけないと言う。

野々村は、海上保安庁に「第二十八寿丸」の紹介を依頼すると、港に待機させていたヘリに乗り換える事にする。

港で待ち構えていた石川県警の報告では、「第二十八寿丸」は今、新潟港に入港しているそうで、先ほどの高速船は偽物だったと分かる。

ヘリで「第二十八寿丸」に接近してみると、乗っていた甲山らは発砲して来る。

やがて、巡視艇「はやぶさ」も接近して、停船を呼び掛けるが、白い高速船はいっこうに止まる気配も見せず、そのまま逃走して行く。

ヘリの燃料が切れかけて来たと言うので、野々村は、巡視艇に後を頼むと、自分達は帰還する事にする。

結局、白い高速船は、その後も追尾を振り切ると、北の海域に逃げ込んだと言う。

2課では、中田警視が、野々村達にその後、捕まえた運転手の前田と言う男から聞き出した新事実果を教えていた。

島田の本名は、金万世、本物の島田は、前田も協力して北に連れて行ったのだと言う。

ひどい話だ…と中田警視が話し終えようとしていた時、「事件が発生!外事課全員に召集がかかった」と言う伝令が飛んで来る。

集合した外事課メンバーを前に、天野警視監(山村聰)が、B連邦のコルノフビッチがアメリカに亡命し、自分はGKPの中佐だったと告白したと発表する。

彼の日本での任務は、日米間に相互不信感を抱かせる事、日中の親密化を阻止する事、親B派を増やす事、北方領土の返還を諦めさせる事…などだったらしい。

コルノフビッチの証言の数々から、日本にいるエージェントの正体が徐々に明らかになって行く中、吉野は夜、近くの公園で待っていた高松に呼び出される。

妻のひろみが三日前に他界したと伝えた高松は、自分はコルノフビッチに協力していたエージェントだったのだと打ち明ける。

B連邦に旅行した際、あちらに愛人ができてしまい、その女が妊娠したと言うので、堕胎手術を受けさせていた所、警察に踏み込まれて逮捕されたのだと高松は続ける。

B連邦では堕胎は罪で投獄は免れなかったが、助かりたければ、エージェントになれと勧められたのだと言う。

今考えれば、愛人は売春婦だったし、警官もみなGKPの変装だったのだと、高松は自嘲する。

さらに、自分の妹のみどりの亭主は北の人間だったとも打ち明ける。

それを聞いていた吉野は、君は犠牲者なんだと慰めるが、高松はこれから自首するつもりだときっぱり言い切る。

島田写真店では、徹底的な捜査が入り、そうした中、みどりは子供達を前に呆然としていた。

野々村の元に出頭した高松は、1課に引き渡され、さっそく事情聴取が始まる。

チタン技術情報をB連邦に流していたエージェント55は、先ほど、飛び下り自殺をしたと知らせた三上警部は、高松がエージェント99だった事を確認した後、村井と言うらしいエージェント33の事を知らないかと聞くが、高松は知らなかった。

その後、又、暗号が流れる。

王公司を調査した結果、麻薬と新しい乱数表が見つかっていたため、それを使って新たな暗号を解読した所、嵐が来て、猫たちは皆、床下に隠れた…と読めた。

どうやら、北のスパイ達は潜伏したと言う事らしいが、問題は、発信者がブラックキャットであった事だった。

てっきりブラックキャットの正体は、北に帰った島田だと思い込んでいた2課のメンバーたちは、まだ、ブラックキャットが日本にいる事を知りがく然とする。

そんな中、野々村に京子から電話が入り、久々に昼食を一緒にと誘われる。

野々村は、吉野が結婚話を謝っていた事を話す。

それを聞いた京子は、負け惜しみではないけれど、吉野に好きな女ができたと言うのは嘘だと思う、あの人はそんなタイプではない…と呟く。

警視庁に戻って来た野々村に、どうやら、ブラックキャットの名前は村井一郎と言う人物らしいと判明したとの報告が入る。

その名前を聞いた野々村は、すぐに1課の三上警部に連絡を入れ、エージェント33の名前を確認すると、同じ名前だった事が分かる。

コルノフビッチの話によると、B連邦に流す情報が北にも流れていたらしいと言うのだ。

どうやら、その村井一郎なる人物は二重スパイかも知れないと判明する。

野々村達2課は、さっそく村井なる人物の住所を突き止め、そのマンションの402号室に向かう。

野々村が玄関チャイムを押すと、出て来たのは吉野だった。

エージェント33、そしてブラックキャットこと村井一郎とは、吉野の事だったのだ。

部屋に入った野々村は、高松はお前の事を知っていたのか?と聞くが、知らなかったと吉野は答える。

吉野は、今の会社に入った時、そこが同族会社で、到底出世の見込みがない事が分かった時から、日本に絶望したと話しはじめる。

自分がアメリカを憎んでいる事を、コルノフビッチは知っていた吉野は続ける。

戦後、自分の父親も村井一郎と言い、アメリカのスパイとなった後、自殺したのだと言うので、姓が違うのは何故だと野々村が問うと、吉野と言うのは母方の姓だと言う。

コルノフビッチは、そんな自分に、東欧の営業権をくれたので、自分は今の地位を得る事ができたのだと説瞑する吉野。

二世のジョージ・真野と高松をコルノフビッチに紹介したら、GKPは高松をB連邦で陥れたとも。

北の王には、高い金で吊られて情報を渡したと告白する。

野々村は、おれの親父は、B連邦で、村井一郎と言う日本人に陥れられたと言っていたと話すと、吉野は、親子二代とも、国を裏切っていたのか…と、吉野は悄然とする。

しかし、京子さんの事だけは本当に愛していた。愛していたからこそ、結婚できなかったのだと、吉野は呟く。

そんな吉野は、最後の良心を守りたいので、自首させてくれと言う。

一抹の不安を感じながらも、吉野の言葉を信じる事にした野々村は、念のため、部下を独り尾行に付け、自分は先に帰る事にする。

その後、着替えて、マンションを出た吉野の様子をうかがっている車があった。

乗っているのはゾコセフだった。

ゾコノフの車は、一旦、吉野の横を通り過ぎ、横に曲がる。

その道を吉野が横切ろうとした時、一台のライトバンが迫って来て、吉野をはねる。

その後、夕方のテレビでは、商社マン吉野が事故死したと、京子が読み上げていた。

この事故に対し、野々村は、マスコミから集中攻撃を受けるが、一言も答える事はなかった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦後の日本で発生した複数のスパイ事件をベースに、独自に脚本化したスパイ防止キャンペーン映画。

いろいろ反対運動が起き、これまで上映ができなかったらしい。

様々な事件を、限定された仲間達のエピソードとして集約しているため、かなり不自然と言うか、わざとらしい展開になっているのは否めず、見た目的にも凡庸な刑事ドラマのようで、映画としては特にどうと言う事もない出来なのだが、特筆すべきはその特異なキャスティング。

まず、主人公、警視庁の野々村志郎警視を演じているのが柴俊夫(シルバー仮面)

その父親は久保明(マタンゴ)

兄は森次晃嗣(ウルトラセブン)

上司である中田警視は本郷功次郎(昭和ガメラ、大魔神)

部下の一人、坂本刑事は三ツ木清隆(光速エスパー)

もう一人の部下、加藤刑事は真夏竜吾(ウルトラマンレオ)

これだけ集結していると、「たまたま」とか「偶然」とは考えにくい。

何か意図的に、これらのジャンル系役者をそろえたと考えるしかないだろう。

井上梅次監督が「特撮オタク」だったと考えるより、当初、こうした特撮ヒーローたちに興味を持っている世代を、観客のターゲットとして考えていたのかも知れない。

久保明と真夏竜(吾)を最近映画で観るのは珍しく、久保明は本郷功次郎と共に「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)にも出ていたが、ほとんど目立たなかったのに対し、この作品ではかなりしっかり写っている。

特別出演している山村聰の姿などと合わせ、貴重だと思う。

メインとなる榎木孝明、国広富之、高岡健二らも、今観ると、皆若々しい。