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超能力者 未知への旅人

1994年、東映東京、早坂暁脚本、佐藤純彌監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

北京空港に降り立ったタカツカヒカル(三浦友和)43才は、内気功研究所を訪ねる。

そこでは、病気の人に研究員たちが気を当て、直す研究が進められていた。

タカツカ自身、そこで内気功治療を受けてみる。

そんなタカツカも、かつては平凡なサラリーマンだった。

タイトル

5年前、38才だったタカツカは、広告代理店SOUTSUの営業3課に勤めていた。

ある日、会社にいたタカツカは、母危篤の電話を受ける。

病院に駆け付けると、主治医(北村総一朗)から、心筋梗塞で心臓破裂を起こしたと説明を受ける。

病室には、妻の明子(原田美枝子)も来ていた。

ベッドに横たわっている母親の側に来たタカツカは、自分の手が勝手に動きだし、いつの間にか、母親(岩崎加根子)の心臓の上に手の平をかざしていた。

間もなく、心泊数が戻って来る。

報告を受けた主治医は唖然となる。

検査の結果、母親の心臓は、嘘のように感知していたからだ。

母親は間もなく退院する。

タカツカが、不思議な力で母親の病気を直したと言う噂は、たちまち社内中に広がり、面白がった同僚の田村(長谷川初範)がスプーンや鍵を渡してみると、タカツカはそれらをいとも簡単に曲げてみせる。

又、誰かが企画書がなくなったと探し回っていると、机の隅に落ちているとタカツカが教え、何故、そんな所にある事が見えるのか、自分にも分からないと本人も不思議がるのだった。

ある日、明子と共に実家の母親を見舞いに出かけたタカツカは、母親から、タカツカが六つの時、奥多摩の谷に落ち、川の中に五分以上沈んでいた事がある事を打ち明けられる。

それを聞いた明子は、怖いと怯える。

そんなタカツカに、再生性不良性貧血と言う病気に苦しんでいる高校1年の少女がいるのだが、それを診てもらえないかと、社内カメラマンから相談を受ける。

少女の家に行ってみたタカツカは、その少女に手をかざしてみる。

同行したカメラマンはその様子を写真に撮り、雑誌に載せる事にする。

後日、その雑誌を見た後藤専務(勝部演之)は、タカツカを部屋に呼び寄せると、自分の頭痛を直してくれないかと頼む。

タカツカが専務の頭に手をかざした所、頭痛は嘘のように消えてしまう。

その後、受付から面会の連絡があったので、何事かとタカツカが受付にやって来た所、週刊誌を見た病人たちが、多数、ロビーに集まっていた。

タカツカは、追い返す訳にも行かず、ロビーの片隅に病人たちを集めて、一人一人手をかざして行く。

間もなく、タカツカのこうした行為は医師会の知る所となり、医師たちは、インチキに決まっているとちょっとした騒ぎになっていた。

田村たちと飲みに出かけたタカツカは、これまで5〜60人を直して来たが、最近、体質が変ったせいか、アルコールが飲めなくなったと告白する。

帰宅してからも、特に食欲もなく、水を飲めば満足するようになったとタカツカは感じる。

ただ、喫煙量だけは増えた。

睡眠時間も3時間も寝れば十分に感じられるようになる。

ある日、いつものように、会社のロビーで、足が悪い老人に手をかざすと、その場で歩けるようになったので、感激した相手は、治療代として30万渡そうとするが、金儲けが目的ではないタカツカは受取らなかった。

そこへ、芝浦署の佐久間と言う刑事がやって来て、タカツカに医師法違反の疑いがあると連行する。

しかし、取調室で色々事情聴取した結果、タカツカは、ただ、相手のどこが悪いのか自然に見えるだけなのだと説明するし、患者たちには「手をかざす以外、治療のような行為は何もしていないし、治療費も一切受け取っていない」事が分かって来たので、刑事たちは、医師法にも触れないし、詐欺罪も成立しないと判断して、タカツカを帰すしかなかった。

だがそうこうする内、会社のロビーに患者が溢れる事に困惑した上司は、会社での治療行為をタカツカに注意する。

仕方がないので、会社での手かざしはやめる事にしたが、患者からの治療依頼は後を立たない。

見かねた妻の明子は、もう依頼を断わったら?と忠告するが、タカツカは、今後は土日だけ自宅に来てもらう事にしようと思う。どの依頼人も、医者から見放されたような人ばかりで、自分だけが頼りだとすがりつかれては、断わる訳にはいかないと答える。

そんなタカツカの評判を聞いた塙社長(フランキー堺)は、タカツカを社長室に呼んで、自分の血圧を下げてもらうと、今度から君には、情報開発部をやってもらおうと言い出す。

タカツカの超能力を生かして、色々な人脈に近づき、強力なコネを作ってもらおうと言う戦略だった。

自宅マンションには、土日、朝から長蛇の列がタカツカの部屋の前から表にかけてできるようになる。

関東テレビの取材班も、タカツカへのインタビューを申込んで来るが、明子は丁重に断わる。

治療代は受取らないタカツカの家には、患者が気持ちとして持って来る土産の箱で溢れかえっていた。

この頃になると、深夜になっても、興味本位のいたずらも含め、電話が鳴りっぱなしの状態になったので、さすがに応対する明子は疲れきり、ある夜、電話線を引きちぎって「もう、ついて行けない」と酒を飲みはじめる。

タカツカは、自分だって、人助けする力なんて欲しいと思わなかったと説得するが、妻はその場に昏倒してしまう。

タカツカは、自分の力を使わず、救急車を呼ぶ。

診断の結果、急性アルコール中毒だった。

明子は、元のあなたに戻ったのね…と、病院のベッドの上で喜ぶ。

ある日、京急電鉄の村沢社長(丹波哲郎)が呼んでいるので行くようにと、専務から電話がある。

会ってみると、村沢は足が悪く、骨に癌があるらしいと説明する。

その頃、マンションの明子の元へは、管理組合のメンバーがやって来て、マンションを住居以外の目的で使うのは迷惑なのでやめて欲しいと訴える。

村沢佐長への手かざしを終え、社に戻ったタカツカを、通産省の山路(加藤純平)と言う人物が待ち受けていた。

東京電気大学の町博士が、タカツカの超能力は人間が本来持っている自然治癒力を増大させているのではないかと興味を持っているので、一度、科学的に調べさせてくれないかと言う要件だった。

しかし、タカツカはモルモットにはなりたくないので断わる。

タカツカは、その後、やはり専務から呼ばれ、国立病院に竹下建設の関係者の娘さんが入院しているので、診て来てくれと依頼され、その病室に向うと、いつものように少女に向って手かざしを始める。

ところが、そこへ担当医の田辺医師(本田博太郎)が入って来て、タカツカの姿を見ると不審がり、迷信的な治療をするのなら出て行ってくれと、タカツカに注意する。

しかし、治療を受けていた患者の姉清水とも子が、おじさん助けて、妹を直して欲しいと、帰りかけていたタカツカを追って来る。

タカツカは、その姉に対し、心の中で直ると繰り返すんだとアドバイスし、自分のエネルギーを入れてあげると、とも子に手かざしをする。

その日、帰宅して、医者から自分の事を迷信的だと言われたと話すと、明子は、一度名心的なものなのかどうか調べてもらったらと答える。

タカツカは、以前、話があった、町好雄なる工学部教授の実験を受けてみることにする。

河野貴美子研究所に行って、タカツカの身体を装置で測定してみた所、タカツカが気を発すると、手の温度が上がり、血圧も上がるなどの現象が見られた。

脳波を調べてみると、アルファ波が脳の全体を覆い、脳波の同調現象が見られる事、どうやら気を、赤外線と言う形で送っているらしき事などが判明する。

後日、塙社長は、京急電鉄の村沢社長は、今や、ゴルフができるまでに回復したので、わが社に広告の一切を任せると言って来たとタカツカに報告し、その効果は100億を超えるほどだと感謝すると共に、タカツカには特別ボーナスを出すとまで言ってくれる。

さらに、今後は、週4日だけ出社すると言う形にしてくれないか?後は人助けしなさいと言ってくれる。

ただそれでは、契約社員になれと言う事であり、そうなれば残業手当もボーナスもない事になる。

月給は上がるが、トータルとしては年収が200万ほどダウンしてしまい、マンションのローンが払えなくなってしまう。

明子は、元の正社員に戻ってくれと頼むが、タカツカは、人を直す事が今の自分なんだと説得する。

結局、マンションを引っ越す事になるが、その準備をしている最中、タカツカに近づいて来た宗教研究会の室伏(石橋蓮司)なる人物は、超能力を事業化してみないか、宗教法人にすれば、税金はかからなくなると話し掛けて来るが、タカツカはきっぱり断わり、明子と一緒に、その人物を追い返してしまう。

タカツカらが、引っ越しの荷物を積んでトラックで出発すると、諦め切れないのか、室伏が車で追って来るので、タカツカが手かざししてみると、室伏の乗った車のタイヤがパンクしてしまうのだった。

明子は、予知能力をあなたが持っているのだとしたら、私たちはこれからどうなるの?と尋ねてみるが、タカツカは何も見えないと答えるだけだった。

そんなタカツカに、又しても塙社長のお呼びがかかり、日本を動かしている大切な人を直して欲しいとの依頼がある。

その人物の病名は、一応胆管閉塞と言う事になっているが、本当は癌なのだと言う。

塙社長から命がけの仕事だと大仰な事を言われたタカツカは、迎えに来たガードマンらしき人物に連れられてとあるホテルに向うが、そこで待っていたのは、時期首相候補と言われている某大物政治家(大滝秀治)だった。

その人物の姿をみた途端、タカツカは、日本の運命を自分の手で操作するなんてとても出来ないと感じ、一目散に逃げ帰って来る。

夜の町中を駆けタカツカは、自分の力で運命を駆ける事ができたのだろうか?と自問するが、改めて、自分の力の恐ろしさに気付き、自宅に帰り着いて以降は、もう二度と超能力は使わないと誓う。

かくして、自宅の扉にも「治療中止」の貼り紙を出したため、表には患者が溢れてしまう。

それでも、タカツカは自宅に籠り続ける。

その時、向いのマンションから人が飛び下りるのを目撃し、それは後に、自分を頼って来た末期癌の患者だった事を知る。

河原に独り佇んでいたタカツカの元にやって来た明子は、疲れ切った夫を慰める。

タカツカは、この先自分はどこに行くのだろう?自分には未来は見えないと吐露する。

明子は、自分はそんなタカツカに付いて行くと言い、一度、中国に行ってみたらと勧めるのだった。

中国にやって来たタカツカは、そこで様々な気功の研究が進んでいる事、また、世界気功医学大会なるものの存在や、気功による癌治療の実態なども知る。

暗闇の中で、超能力を持つ女医が人間の身体の中を透視する「人間レントゲン」なる治療もあり、脚本家の早坂暁氏自らが診てもらう。

気功の研究者は、タカツカを万里の長城に案内すると、寿命と病気とは別物である事。西洋医学を否定するものではない事など、独自の考えを披露した後、あなたは自分で生きる道を見つけるしかないとアドバイスをする。

中国旅行から帰国したタカツカは、明子に、行って良かったと感謝する。

そこに来客があり、それは俳優のフランキー堺だった。

フランキーは、現実にタカツカに身体を直してもらった経験者として感謝する。

さらに、エイズ発症者が、タカツカの手かざしにより、めきめき症状が改善した例などを紹介した後、タカツカは画面に向い、皆様に気を送りますと言いながら手をかざすのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実在する超能力者の紹介映画と言った所だろうか?

基本的にはドラマ仕立てで、主人公のこれまでを紹介しているが、部分的に現実の教授のインタビューが混ざったり、脚本家や俳優自らが本人として登場して来るなど、単なる「フィクション」ではない事を強調するかのような演出も混ざっている。

ただ、何の為にこの映画が作られたのか、その目的が見え難い事は確か。

この主人公の宣伝と言ってしまえば分かりやすいが、劇中で描かれているように、主人公は商業目的で力を使っていないし、テレビ取材なども断わったりで、世間に広く認知される事によってメリットはないかに見える。

むしろ、報道によって騒がれて患者が急増する事で、自分の生き方そのものまでに疑問を持ってしまっている。

そうした中、この映画の意味は何なのか?

超能力は実在すると言う「啓蒙目的」なのか?

単なる「キワモノ」狙いなのか?

企画者の「不思議大好き」趣味の現れなのか?

企画をした岡田裕介現東映社長本人に、その辺の真意を聞きたいくらいの、何とも奇妙な作品になっている。